• 作成日 : 2025年1月31日

支払い停止の抗弁書とは?ひな形をもとに書き方や例文、注意点を解説

支払い停止の抗弁書とは、クレジットカードで購入した商品やサービスなどに何らかの問題がある場合に、カード会社に対して代金の引き落としの停止を求める文書です。本記事では、支払い停止の抗弁書の書き方やレビュー時のポイントなどを文言の具体例を示しながら解説します。

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支払い停止の抗弁書とは?

支払い停止の抗弁書(しはらいていしのこうべんしょ)とは、クレジットカード利用料金の引き落とし停止を求める文書です。クレジットカードの利用者が、カード会社に対して交付します。

利用者はクレジットカードによって購入した商品・権利・サービスについて、販売業者などに対して生じている事由をカード会社に対し主張することができます(割賦販売法第30条の4)。

例えば、購入契約を解除した場合や取り消した場合、購入契約が無効である場合などには、そのことをカード会社に主張し、利用料金の引き落としを止めるよう請求できます。これは「支払い停止の抗弁権」と呼ばれる権利です。

支払い停止の抗弁権を主張するために、カード会社に対して交付するのが「支払い停止の抗弁書」となります。

支払い停止の抗弁書を作成するケース

支払い停止の抗弁書を作成するのは、クレジットカードによって購入した商品・権利・サービスについて、その代金の支払いが免除または猶予されるべき何らかの事情がある場合です。

例えば以下のようなケースでは、カード会社に対して支払い停止の抗弁を主張できることがあります。

Point支払い停止の抗弁を主張できるケース
  • 販売業者が商品を引き渡さない
  • 販売業者がサービスを提供しない
  • 商品に欠陥があるにも関わらず、販売業者が修補や交換の対応をしない
  • 見本やカタログと、商品やサービスの内容が全然違う
  • など

支払い停止の抗弁は口頭でも主張できますが、その内容を明確化するため、カード会社に対して支払い停止の抗弁書を交付することが望ましいでしょう。

まずは電話やチャットなどでカード会社の問い合わせ窓口に連絡し、追って速やかに支払い停止の抗弁書を送付しましょう。

支払い停止の抗弁権が認められないケース

以下のいずれかに該当する場合は、支払い停止の抗弁権が認められません。

支払い停止の抗弁権が認められないケース
  • クレジット契約が割賦販売法の適用を受けないとき
  • 商品、権利もしくはサービスの購入が営業のため、または営業としてのものであるとき
    (業務提供誘引販売個人契約または連鎖販売個人契約に当たる場合を除きます)
  • 現金販売価格に分割払い手数料を加えた総額が40,000円未満のとき
    (リボルビング払いの場合は、現金販売価格が38,000円未満のとき)

上記②により、例えば事業者が法人カードで購入した商品などに問題があっても、カード会社に対して支払い停止の抗弁権を主張することはできません。

その結果、クレジットカードの利用料金が引き落とされてしまった場合は、販売業者などに対して返金を請求することになります。

支払い停止の抗弁書のひな形

支払い停止の抗弁書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に支払い停止の抗弁書を作成する際の参考としてください。

※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。

支払い停止の抗弁書に記載すべき内容、例文

支払い停止の抗弁書には、主に以下の事項を記載します。

支払い停止の抗弁書の主な事項
  1. 契約者の情報
  2. 契約内容
  3. 申出内容(支払い停止を求める理由)
  4. 取扱店(販売業者等)との交渉状況、その他記入欄

契約者の情報

1 契約者の情報

氏名○○ ○○
生年月日○年○月○日
住所東京都○○区……
会員番号○○○○-○○○○-○○○○-○○○○
電話番号○○○-○○○○-○○○○

支払い停止の抗弁を主張する契約者(=クレジットカードの利用者)に関する情報を間違いがないように記載します。

会員番号は、クレジットカードの券面に記載されている番号を記載します。ナンバーレスカードで番号が分からない場合は、カード会社に問い合わせましょう。

契約内容

2 契約内容

取扱店名(販売業者等の名称)株式会社○○ 〇〇支店  担当者名 ○○ ○○
所在地東京都○○区……
商品・権利・役務の名称(例)美顔エステコース
お買上金額(手数料込み)○○円
お買上日(申込日)○年○月○日
申込場所店舗

支払い停止の抗弁権を主張する商品・権利・サービス(役務)に関する情報を記載します。販売業者等から交付される領収書などを参照して、できる限り具体的に記載しましょう。

申出内容(支払い停止を求める理由)

3 申出内容

内容1.商品を引き渡してくれない。

2.役務の提供をしてくれない。

3.商品(役務)は提供されたが、期日に遅れたため役に立たなかった。

4.商品に欠陥があるのに対応してくれない。

5.クーリングオフ、中途解約に応じてくれない。

6.商品(役務)が見本やカタログと異なっている。

7.商品(役務)の販売の条件となっている役務を提供してくれない。

8.販売店が不実のことを告げたことにより、その内容を事実と誤認して購入した。

9.その他

詳細※上記の申出事項について、内容をできるだけ詳しく記載する

(例)○年○月○日に株式会社○○が運営する店舗「○○」において美顔エステコースを申し込んだが、同月△日付で同社に対してクーリングオフ通知を発送した。

支払い停止の抗弁権を主張する理由を記載します。「内容」の部分で該当するものを選択したうえで、「詳細」の部分で具体的な事情を詳しく記載しましょう。

取扱店(販売業者等)との交渉状況、その他記入欄

4 取扱店との交渉状況、その他記入欄

連絡日○年○月○日
受付者名○○ ○○
交渉内容(例)クーリングオフをしたことを伝えて返金を求めたが、応じてくれない。
その他

支払い停止の抗弁書をカード会社へ送付する前に、販売業者等に対して返金などを求めている場合には、販売業者等との交渉の状況を記載します。交渉を行った日時、受付者名(担当者名)、交渉の内容などを具体的に記載しましょう。

また、カード会社に対して特に伝えるべき事項があれば、「その他」の欄に記載しましょう。

支払い停止の抗弁書を作成する際の注意点

支払い停止の抗弁書を作成する際には、以下の各点に注意しましょう。

支払い停止の抗弁書作成の注意点
  • 支払い停止を求める理由は、できる限り具体的に記載する
  • トラブルが発生したら、速やかに支払い停止の抗弁書を作成する
  • 事業者は支払い停止の抗弁権を主張できない

支払い停止を求める理由は、できる限り具体的に記載する

カード会社に対して支払い停止の抗弁を主張する理由(=申出内容)は、できる限り具体的に記載しましょう。

抗弁の理由が明確でないと、カード会社においてそれを認めるかどうかを適切に判断できず、代金が引き落とされてしまう恐れがあります。

トラブルが発生したら、速やかに支払い停止の抗弁書を作成する

クレジットカードの引き落としが完了してしまうと、支払い停止の抗弁は主張できなくなってしまいます。

契約の無効・取り消し・解除、クーリングオフなどの事由が生じた場合には、速やかに支払い停止の抗弁書を作成して、カード会社に対して送付しましょう。

抗弁書の送付が間に合わない場合は、先に電話などでカード会社の問い合わせ窓口へ連絡して、支払いを止めてもらうように依頼しましょう。

事業者は支払い停止の抗弁権を主張できない

事業者が営業のために、または営業として購入した商品・権利・サービスについては、カード会社に対して支払い停止の抗弁権を主張することができません。従って原則として、期限が来れば代金が引き落とされてしまいます。

引き落とされた代金の返金は、販売業者などに対して請求することになります。販売業者等が返金に応じない場合は、訴訟などの法的手続きも検討しなければなりません。顧問弁護士などと相談しながら、具体的に取るべき対応を検討しましょう。

支払い停止の抗弁書の保管年数や保管方法

カード会社に対して支払い停止抗弁書を送付する際には、あらかじめ写しを取って保管しておきましょう。

支払い停止の抗弁書に関しては、カード会社から確認の連絡を受けることがあります。また、代金の引き落としが行われなかった場合も、カード会社において誤った処理がなされた結果、その後の融資審査などに悪影響が生じるリスクも考えられます。

カード会社からの連絡や、トラブルなどに備える観点から、支払い停止の抗弁書の写しは5年間程度保管しておくことが望ましいでしょう。

また、支払い停止の抗弁書の写しを保管する際には、紛失しないような保管方法を検討しましょう。分かりやすいところに置いておく、日付順にファイリングするなどの方法により、必要な際にすぐ探せるようにしておくことが大切です。

支払い停止の抗弁書は速やかに送付、ただし事業者は主張できないので要注意

クレジットカードで購入した商品・権利・サービスについて、その代金の支払いを拒否できる事由が生じた場合は、カード会社に対して支払い停止の抗弁権を主張し、引き落としの停止を求めることができます。

例えば、契約の無効・取り消し・解除、クーリングオフなどが支払い停止の抗弁権の対象です。代金が引き落とされると支払い停止を主張できなくなるので、速やかにカード会社へ支払い停止の抗弁書を送付しましょう。

ただし営業のため、または営業として購入した商品・権利・サービスについては、支払い停止の抗弁権を主張することができません。従って、事業者はカード会社に支払い停止の抗弁書を送付しても、それが認められずに代金が引き落とされてしまいます。

事業者が商品等を購入する際には、それが本当に必要かどうか、騙されていないかなどを慎重に検討することが大切です。万が一トラブルに巻き込まれてしまったら、顧問弁護士などと相談しながら対応することをおすすめします。


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