- 更新日 : 2024年11月7日
不動産賃貸借契約書に印紙は必要?不要な場合と金額、負担者を解説
不動産の賃貸借契約書には、印紙が必要なものとそうでないものがあります。印紙を貼る必要がある場合、税額は契約書に記載された金額によって異なります。本記事では印紙の要不要のチェックや印紙を貼る場所、印紙代をどちらが負担するかなどについて幅広く解説しました。
目次
不動産賃貸借契約書に印紙は必要?不要?
不動産の賃貸借契約書のうち、印紙が必要なのは土地の賃貸借に対するものです。一方、建物の賃貸借契約書には、通常の場合、印紙は不要です。以下に、印紙が必要なケースと不要なケースを分けて解説します。
印紙が必要な契約内容
土地の賃貸借契約書には、印紙の貼付が必要です。印紙が必要となるかどうかは、契約書が「課税文書」に当たるかどうかで判断します。
印紙税法では「課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」(第3条)と定めており、納付方法は印紙の貼付です。
課税文書については印紙税法別表に定められています。「土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書」は、同表の第1号文書として定められており、課税文書となります。
土地の賃貸借であっても、駐車場の場合は注意が必要です。更地を借りて駐車場に使う場合は、通常の土地の賃貸借と考えられるため契約書に印紙を貼付します。舗装や白線などの整備が済んだ1区画を借りる事例では、施設の賃貸借となり、印紙は必要ありません。
印紙が必要な契約書についてさらに詳しく知りたい方は、リンク先の記事を参照してください。
印紙が不要な契約内容
アパートやマンションを賃貸するときなどの建物賃貸借契約書は「課税文書」に該当しないため、原則として印紙は不要です。
建物の賃貸借であっても、以下のような場合は例外となり、印紙が必要です。
- 賃貸契約書に「権利金」や「一時金」などの受け取りがある旨の記載がある場合
- ビルなどの賃貸借に際して「保証金」や「建設協力金」などを貸主が受け取り、賃貸借期間に関係なく一定期間据置き後、一括返還または分割返還することを約する場合)
これらの金銭のやり取りがあるケースでは、契約書が「課税文書」に当たります。
土地賃貸借契約のうち、無償で貸し出す「使用貸借」の場合は印紙税が発生せず、印紙を貼り付ける必要もありません。
不動産賃貸借契約書の印紙税が必要な場合の金額
土地賃貸借契約書で必要となる印紙税額は、契約金額によって変わります。契約金額は、以下のような名目でやり取りされる金額(賃借人に返還されることが予定されていない金額)です。土地そのものの価格や賃料が課税のベースになるわけではないため、注意してください。
- 権利金
- 一時金
- 保証金(*返還予定がないものに限られます)
以下に、契約書に記載された金額に対応する印紙税額をまとめました。ビルの賃貸借などで「保証金」や「建設協力金」などのやり取りがある場合も同じです。
記載された金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
建物の賃貸借契約書に「一時金」や「権利金」などが記載されている場合は、土地賃貸借契約書とは課税文書の種類が異なるため、印紙税額も違います。この場合の税額を以下に示しました。
記載された金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 2,000円 |
1000万円を超え2000万円以下 | 4,000円 |
2000万円を超え3000万円以下 | 6,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 1万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
不動産賃貸借契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
印紙が必要な契約書の場合、印紙代は文書を作成した側が負担することになっています。国税庁ホームページには「(課税文書の)作成者が納税義務を負う」との記載があります。
契約書が2通作成されるケースでは、折半で負担するのが一般的です。印紙税法には「(課税文書を)共同して作成した場合には(中略)連帯して印紙税を納める義務がある」(第3条の2)と定められています。
連帯して負担する場合の負担割合は法定されていません。実務上は折半とすることが多いですが、どちらかが多く負担する取り決めをしても有効です。
不動産賃貸借契約書の印紙の貼り方、消印の押し方
印紙は契約書の左上の、空いているスペースに貼るのが一般的です。貼る場所に決まりはないため、当事者の協議によって別の場所に貼っても問題はありません。印紙が複数枚ある場合は、上下または左右に並べて貼るのが通例です。
貼った印紙には、消印を押す必要があります。印紙税法には「当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない」(第8条の2)と定められています。契約書などと、印紙の模様のある部分の両方にかかるように押すということです。
消印をする目的は、印紙をはがして再利用されることを防ぐためです。再利用されないようにすればよいため、消印に使う印鑑には決まりがありません。ゴム印でもよく、印鑑がない場合は署名でもよいとされています。同じ理由で、消印は当事者のどちらかだけでも有効です。
注意点としては、以下が挙げられます。
- 誰が消印したかが明らかになるように押す
- 署名の場合、鉛筆など後から消せるものを使わない
- 署名でなく「印」と書いたり、斜線を引いたりした場合は消印とならない
不動産賃貸借契約書に印紙がないとどうなる?
この項では、契約書に印紙を貼らなかったときのペナルティやリスクなどについて解説します。
契約内容は無効にならない
契約書に印紙を貼らなかったとしても、契約そのものは有効です。印紙があってもなくても、書面の内容に合意している点は変わらないためです。
民法では契約について、「契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と定めています。
過怠税が発生するリスク
印紙を貼付していない書面であっても、契約は成立しています。しかし、印紙税法上は不適当です。印紙を貼らなかったことが発覚した場合、本来の印紙税額に、その2倍の額を加えた過怠税を徴収されるリスクがあります。支払う額は本来の3倍です。
印紙を貼っていないことが発覚するのは、多くの場合、税務調査の際です。税務調査の前に気づき、自主的に申し出た場合は、過怠税は印紙税額の1.1倍で済みます。税務調査が入るタイミングはわからないため、印紙の貼り忘れに気づいたら、すぐに税務署に申し出ましょう。
消印のし忘れにも注意
印紙を貼り忘れた場合と同様に、消印のし忘れにも注意が必要です。印紙を貼っただけでは、印紙税を納付したことにはなりません。消印のし忘れが税務調査で発見された場合は、過怠税を徴収される可能性があります。
鉛筆による消印や、無効な消印の場合も同様のリスクがあるため注意が欠かせません。
印紙が貼られていない場合について、詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
不動産賃貸借契約書の割印の押し方
契約書には割印を押すことが一般的です。割印とは、原本と写しを少しずらして重ね、1つの印影を2枚に分かれるように押印するものです。2つの文書が関連していることと、改ざんされていないことを示す役割があります。印紙の消印とは異なるため、注意が必要です。
割印として認められる方法
割印の押し方や、使う印鑑についての決まりはありません。印影が上下に分かれるようにすることも、左右に分かれるように押印することも可能です。
当事者の一方だけの割印でも有効です。その場合は押印した側が書類を改ざんできてしまうため、リスク回避の観点からは、双方の割印を揃えた方がよいでしょう。
印がうまく押せずにかすれてしまったような場合でも、印影があれば割印としての用は足ります。印影は鮮明な方が望ましいため、押印の際に印鑑マットを使うなどの工夫をおすすめします。
割印として認められない方法
押印に失敗して印影がずれたり、かすれたりした場合は、別の位置にあらためて押し直してください。同じ場所に押し直すと二重になってしまい、改ざんを疑われかねません。失敗した割印は二重線で消すなどせず、そのままにしておきます。
電子契約なら不動産賃貸借契約書の印紙は不要に
契約を書面でなく、電子契約で行えば印紙の貼付は不要です。電子契約で印紙が不要になるのは、印紙税が「文書」を課税対象としており、電子データのような「電磁的記録」は対象外となっているためです。
電子契約であれば、システムが自動発行するタイムスタンプにより真正性を担保できます。印紙だけでなく、署名と押印、割印も不要です。
印紙税法では「課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」(第3条)と定めています。「作成」とは「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」(印紙税法基本通達第44条)です。「用紙等に記載」していることが条件であり、電子データで交わされる電子契約では印紙が必要ありません。
電子契約で印紙が不要になる理由をより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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