• 更新日 : 2022年3月30日

株主総会議事録の押印は必要?押印義務や押印者について解説

株式会社では必ず株主総会を開かなければならず、株主総会を開いた場合はその内容について議事録を作成する必要があります。企業の中には株主総会を開かず、株主総会議事録を形式的に作成しているところもありますが、法令違反となるため、注意が必要です。今回は株主総会議事録とは何か、議事録に押印は必要か、誰が押印するのか、などについて解説します。

そもそも株主総会議事録とは

株主総会議事録は、株主総会で議論した内容や決議の結果を記録したものです。株式会社は株主の出資によって成り立っており、株式会社の最高意思決定機関として株主総会があります。そこで議論された内容や決定された内容は非常に重要であるため、議事録を作成することが義務付けられています。

株主総会議事録に記載すべき事項は、会社法318条1項、会社法施行規則72条3項各号に定められています。具体的には、①株主総会を開催した日時と場所、②議題についての議事の経過の要領(審議の内容)とその結果、③監査役の意見など会社法に定められた事項について述べられた意見または発言の内容、④株主総会に出席した役員と会計監査人の氏名または名称、⑤議長の氏名、⑥議事録を作成した取締役の氏名などです。

株主総会議事録は本店に10年間、支店に議事録の写しを5年間備え置かなければなりません(会社法318条2項、同条3項)。また、株主と会社債権者からの請求があれば、閲覧・謄写させなければなりません(会社法318条4項)。その他、株主総会議事録は発行可能株式総数の変更や、役員変更登記などの際に必要です。

参考:
会社法|e-GoV法令検索
会社法施行規則|e-GoV法令検索

株主総会とは

株主総会は株主により構成され、会社の重要事項について決定する機関です。株式会社には、必ず株主総会を設置しなければなりません。株主が株主総会に出席して、議題について議論し、議決権を行使することでその内容を決定します。

株主総会の招集手続

株主総会を開催するためには、適法な招集手続がなされる必要があります。ただし、適法な招集手続でない場合でも株主全員が開催に同意し、出席している場合は有効とされています。最高裁も、全員出席総会について決議が有効と判断しています(最判昭和60年12月20日)。

招集手続は、招集権者によって開始される必要があります。招集権者は原則として取締役ですが、取締役会がある場合は取締役会で決定し、代表取締役が執行します。

招集通知の発送は、原則として株主総会の日の2週間前までに行わなければなりません(会社法299条1項)。これは、株主が株主総会までに議案の内容を検討する時間を確保するためです。ただし、非公開会社については、株主総会の日の1週間前までに招集通知を発送すれば足ります。非公開会社の場合は、定款でそれより短い期間を定めることも可能です。

参考:裁判例結果詳細( 昭和60年12月20日)|裁判所

株主総会の権限と議事

株主総会の権限は、取締役会を設置しているかどうかで異なります。取締役会を設置している場合は、会社法の規定による内容と定款で定めた内容に限られます。取締役会を設置していない場合は、すべての事項について決議が可能です。

株主総会の議事を行うのは議長です。定款の定めによりますが、通常は社長が議長を務めます。取締役、会計参与、監査役、執行役は、株主から特定の事項について説明を求められた場合は必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。

株主総会での決議と紛争解決手段

株主総会での議決権は一株一議決権が原則で、決議の内容によって普通決議、特別決議、特殊決議に分けられます。普通決議は、法令や定款に特別の定めがない一般的事項について定める場合の決議方法です。定足数は行使可能な議決権の過半数で、出席株主の議決権の過半数の賛成で成立します。ただし、定足数は定款で下げることができます。

特別決議は、会社法309条2項に定められた事項について決議する場合の決議方法です。定足数は行使可能な議決権の過半数ですが、普通決議と異なり、定款で引き下げられるのは行使可能な議決権の3分の1までです。出席株主の議決権の3分の2以上が賛成した場合に、多数決要件が成立します。

特殊決議は重大な決議内容を決議する場合で、圧倒的多数の賛成が必要になるものです。

株主総会の決議内容の中には会社に大きな影響を与えるものもあるため、決議の内容について争いが生じることがあります。争いの方法としては、①株主総会決議取消しの訴え(招集手続や決議の方法が法令もしくは定款に違反する場合など)、②株主総会決議無効確認の訴え(決議の内容が法令に違反する場合)、③株主総会決議不存在確認(株主総会が物理的に存在しない場合など)があります。

参考:会社法|e-Gov法令検索

株主総会議事録の押印は不要?

会社法には、株主総会議事録に押印しなければならないという規定はありません。しかし株主総会議事録は重要な書類なので、真正の書類であることを明らかにするために押印することをおすすめします。これは定時株主総会だけでなく、臨時株主総会でも同様です。

株主総会議事録の押印が必要な場合も

株主総会議事録に押印の義務はありませんが、例外的に必要になる場合があります。例えば、定款で定められている場合や、取締役会がない会社で代表取締役を選定する場合などです。

定款で定められている場合

例えば、定款に「株主総会議事録には、議長、出席取締役、出席監査役が記名押印する」との定めがある場合は、それらの者の押印が必要になります。定款は、会社の組織と運営に関する根本規則を定めたものです。

「定款自治」といわれるように、定款の内容は法令に違反しない限り、会社が自由に決めることができます。その代わり、決めた以上はそれに従わなければなりません。定款に押印することが規定されている場合、会社はその規定に従う必要があるのです。

取締役会がない会社で代表取締役を選定するとき

取締役会がある場合、代表取締役は取締役会で選定されますが、取締役会がない会社では取締役全員に代表権があるため、代表者を定める必要はありません。ただし、取締役が複数いる場合は、株主総会の決議によって代表者を決めることができます。この場合の株主総会議事録には、押印が必要です。

この場合の押印は、議長および出席取締役全員の実印による押印です。商業登記の手続上、代表取締役として選定されたことを証する書面としての真実性を担保するためです。ただし、代表取締役が重任する場合は、その代表取締役が株主総会に出席し、会社の実印を押印すれば、ほかの取締役の実印の押印と印鑑証明書の添付は不要です。

株主総会議事録の押印者は誰か

株主総会議事録には誰が押印するのでしょうか。会社法では株主総会議事録への押印義務は定められていないので、原則として誰の押印も必要ありません。ただし、定款で押印することが定められている場合や、取締役会がない会社で代表取締役を選定する場合は、前述のとおり押印が必要になります。

定款で押印することが定められている場合は、定款で誰が押印すべき者として規定されているかによります。取締役会がない会社で代表取締役を選定する場合は、議長および出席取締役全員の実印による押印が必要です。

押印する印鑑について

原則として、株主総会議事録への押印義務はないので、記名押印する場合は認印でも構いません。ただし、取締役会がない会社で代表取締役を選定する場合など、登記上実印での押印が求められる場合もあるので注意が必要です。「押印」と似た言葉に「捺印」がありますが、これは署名をしてハンコを押すことを指します。

株主総会議事録の押印について理解できましたか?

今回は、株主総会議事録の押印について解説しました。原則として、株主総会議事録には押印は不要です。ただし、定款で押印について定めた場合や、登記上押印が求められる場合は押印が必要になります。

多くの企業では定款で誰が押印すべきか規定しており、実務上も押印するケースが多いです。株主総会議事録は一定の者に閲覧・謄写が認められているため、押印することをおすすめします。

よくある質問

株主総会議事録に押印する必要はありますか?

会社法では株主総会議事録への押印は義務付けられていないため、原則として押印は不要です。詳しくはこちらをご覧ください。

押印しなければならない例外はありますか?

定款で株主総会議事録に押印すべき者を定めた場合や、取締役会がない会社で代表取締役を株主総会で選定する場合は、例外的に押印が必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。


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