- 更新日 : 2024年11月7日
電子契約書とは?書面契約書との違いや作り方、メリット・デメリットを解説
近年は、電子契約書による契約が増えてきています。電子契約書とは、電子データに電子署名または電子サインを行うことで締結する契約のことです。
本記事では、電子契約書の概要や紙の契約書の違い、電子契約書を導入するメリットなどについて解説します。あわせて、電子契約の仕組みや電子契約書のタイプについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
電子契約書とは
電子契約書とは、従来のように紙に印鑑で押印して取り交わされる契約書ではなく、電子データを用いて作成される契約書のことです。ファイル形式としてはWordやPDFなどが使用され、オンライン上でやり取りされます。また、紙による契約書と同じく、当事者間で合意事項を締結したことを示す書類です。
電子契約書はオンライン上で締結できるため、紙の契約書と比較して締結期間が短縮できたり、作業効率が向上したりするといった効果があるため、近年ビジネスにおいて広く利用されています。
なお、契約書の「書」は「書面」、つまり「紙」「用紙」を指します。一方で電子契約は「電子データ」であるため、電子契約「書」ではなく「電子契約」と書くのが正しい書き方です。
電子契約書と紙の契約書の違い
電子契約書と紙の契約書の違いはどこにあるのでしょうか?ここでは、それぞれの相違点について解説します。
共通の特徴は、それぞれ同等の法的効力を持って締結できる点です。相違点としては、本人性の担保方法や保管場所などが挙げられます。違いは、次の表のとおりです。
電子契約 | 紙 | ||
---|---|---|---|
形式 | 電子データ | 紙 | |
証拠力 | 押印 | 印鑑と印影 | 電子署名 または電子サイン |
本人性の担保 | 印鑑証明書 | 電子証明書 | |
完全性の担保 | 契印・割印 | タイムスタンプ | |
事務処理 | 送付 | 郵送 or 持参 | インターネット |
保管 | 書棚 | サーバー | |
収入印紙 | 必要 | 不要 |
完全性・本人性の担保として、電子契約書ではタイムスタンプ・電子証明書で証明を行います。また、保管方法として紙の書類は書棚などで物理的に保管する一方、電子契約書はオンライン上で管理します。
タイムスタンプ・電子証明書については、後述するためそちらを参考にしてください。
電子契約書に関連する法律
企業において電子契約書の導入を進めるにあたって、確認しておかなければならない法律があります。
- 電子署名法
- 改正電子帳簿保存法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
電子署名法
電子署名法は、電子署名の効力について規定した法律です。電子契約書には、電子的に作成された書類であっても、本人による電子署名があれば真正に成立したものと推定するという旨の記載があります。
電子契約でも、有効な電子署名が行われていれば、押印のある書面に適用される二段の推定(民事訴訟法228条4項)と同様に本人が署名したとの高度の信頼が与えられます。
改正電子帳簿保存法
改正電子帳簿保存法とは2023年の税制改正によって、電子帳簿保存法における電子取引データの保存要件が緩和された法律です。
従来の電子帳簿保存法では、電子取引データを保存する際には、検索機能の確保と改ざん防止措置が義務でしたが、改正によって「システム対応が間に合わなかった事業者(相当の理由により)」はいずれの要件も不要となっています。
ただし、税務職員からデータの提示を求められた際にはデータを提示できることが要件として定められているため、注意しましょう。
電子契約書の作り方
電子契約書の作成方法には法的指定はありません。そのため、一般的に電子契約サービスを利用するケースが多いものの、自社で作成するケースもあるようです。
なお、作成方法に決まりはありませんが、法定書類として認められるためには「e-文書法」の要件を満たす必要があるため注意しましょう。
電子契約サービスを利用する
1つめの方法が、提供されている電子契約サービスを使用して作成する方法です。
電子契約サービスとは、電子契約書の作成はもちろん、申請や承認、契約の締結、保存、管理などをクラウド上で完結できるサービスのことを指します。電子契約サービスが提供しているテンプレートを用いて電子契約書を作成できるほか、自らがWordなどで作成した電子契約書をアップロードできます。
自社で作成する
2つめが、自社で作成する方法です。この方法では、WordやExcelなどを用いて契約書を作成し、その後、PDFファイルに変換して電子署名をして電子契約書にします。
電子契約書の作り方について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
電子契約書のメリット
紙ベースの契約書から電子契約書にするメリットを3つ紹介します。
印紙税が不要になる
電子契約書では、印紙税が不要になる点がメリットです。紙の契約書では、契約金額に応じて収入印紙を貼付しなければなりません。しかし、電子契約書は課税文書に該当しないため、電子契約書では収入印紙が不要です。
収入印紙が不要になることは、企業にとって大きなコスト削減となるでしょう。
郵送コストを削減できる
電子契約書の締結はメールのやり取りなどで済ませられます。紙の契約書であれば押印したものを相手方に郵送で送るなどのコストがかかりますが、電子契約であればこうした郵送コストをカットできます。毎月契約書を多く送付している企業にとっては、大きなコスト削減になるでしょう。
その他コスト削減、省スペースが実現可能
電子契約であれば、オンラインでやり取りが完結するため、紙の契約書でかかっていた印刷代や郵送費用などのコストも削減できます。また、物理的な契約書が存在しないため、保管のためのファイルやキャビネットの費用のほか、保管スペースも必要ありません。
押印のために出社をする必要がなくなる
電子契約書では、紙の契約書では必要だった押印のための出社も不要です。電子契約書はオンライン上で社内決裁まで行えるため、出社が不要なほか、出張先や自宅など、場所を問わずどこでも契約作業を行えます。
電子契約書のデメリット
メリットの多い電子契約書の導入ですが、デメリットも存在するため、あらかじめ理解しておきましょう。ここでは、電子契約書導入におけるデメリットを3点紹介します。
契約書の内容の変更が容易になる
電子契約書は、紙の契約書に比べて改ざんや複製しやすい点がデメリットです。電子署名に対応した電子契約サービスを利用すれば、非改ざん性を証明できますが、そもそも契約書にアクセスできないようにする対応も必要でしょう。
電子契約書では、アクセス権限機能を用いてアクセス制限を行えます。権限の付与を制限するなどして、改ざんされる危険性を限りなく下げる工夫をしましょう。
取引先の同意を得る必要がある
電子契約書の手続きは取引先にも関係することであるため、電子契約書を導入する際には取引先に導入の旨を説明し、同意を得ておきましょう。
もし、取引先が電子契約書の導入を行っていない場合は、電子契約書での取引を拒否される恐れがあります。とくに、電子契約書の保管方法は、情報漏えいのリスクが高まる恐れもあるため、取引先へ丁寧に説明をしましょう。
電子化できない契約書がある
取引の安全や消費者保護の観点から、法令によって電子契約書を利用できない契約書が存在する点もデメリットです。主な契約書としては、次のようなものが挙げられます。
- 事業用定期借地契約
- 任意後見契約書
- 特定商取引(訪問販売等)の契約等書面
- 農地の賃貸借契約書
すべての契約が電子化できるわけではないため、自社が締結する契約において、電子化できないものが含まれていないかは事前に確認しておきましょう。
電子化できる契約書とできない契約書は、以下の記事で確認できます。ぜひ参考にしてください。
そもそも電子契約の仕組みとは?
電子契約においては、電子署名が重要な役割を担っています。電子署名とは、電子契約を紙の契約書での押印と同等の法的効力を持たせる仕組みです。電子署名について把握するためには、電子証明書とタイムスタンプの理解度を深める必要があります。
電子証明書
電子証明書とは、情報の送信者の本人性を担保する仕組みです。紙と同等の効力を担保するために、契約者ではない第三者から契約者本人が契約書を発行したことを証明してもらいます。
実際には、認証局と呼ばれる第三者機関が電子証明書を発行しており、発行時に公開鍵暗号方式と呼ばれる方式でセキュリティ性を保っているのが特徴です。
タイムスタンプ
タイムスタンプとは、刻印された時刻に電子データが存在していたことを証拠付けるための仕組みです。タイムスタンプは、電子契約サービスを介して契約を行う際、システム上で付与されます。タイムスタンプがないと、電子データが契約以降に改ざんされていないことの証明になりません。
2種類の電子契約
電子契約には、電子サイン型と電子署名型の2種類が存在します。それぞれの特徴やメリットを紹介します。
電子サイン型
電子サイン型は、契約締結において当事者ではない第三者が当事者の指示に基づいて電子署名を付与するタイプです。その形式から、立会人型とも呼ばれます。
一般的に、当該第三者が事前に電子契約サービスのユーザー登録を行って、サービスへのログイン認証と登録アドレスに送信した認証メールを問題なく受信できたかどうかの組み合わせで、本人確認を行います。
電子サイン型は、立会人となる第三者がメールアドレスを保有していれば利用できるため、契約者側の負担が少ない点がメリットです。
電子署名型
電子署名型は当事者型とも呼ばれ、電子証明書を利用して本人認証を行うタイプの電子契約です。認証は、第三者機関である認証局から発行された電子証明書を用いて行うため、電子署名法に則った本人認証を行える点が特徴です。
ただし、事前に電子証明書を取得しておく必要があるため、電子サイン型と比べて契約者側への手間は発生します。しかし、認証局による電子証明書があるため、本人認証の信頼性が高く、法的効力を期待できる点は大きなメリットです。
電子契約について詳しく知りたい方は次の記事を参考にしてください。
電子契約書の特徴を正しく理解して導入を検討しよう
電子契約書とは、電子データを用いて作成される契約書のことです。電子契約書はオンライン上で締結できるため、紙の契約書と比較して印紙税や郵送コストを削減できたり、押印のための出社がなくなったりする点はメリットといえます。
また、導入にあたっては取引先の同意を得ることや、契約書の変更が紙に比べて容易に行える点はデメリットです。導入を検討するのであれば、本記事で紹介した電子契約書の特徴をしっかりと理解しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電子契約と紙の契約は併用できる?片方の会社が未導入の場合の注意点
契約時に電子署名を用いて電子契約サービスを導入する企業も増えています。しかし、取引先が電子契約を導入していない場合は、紙の契約と併用できるのでしょうか? 本記事では、電子契約と紙の契約が併用できるのか、併用する場合の注意点などを解説します。…
詳しくみる契約書をペーパーレス化する方法と進め方を解説
契約書を電子化すれば職場のペーパーレスが進み、保管や管理がしやすくなります。ただ法整備が進んでいる段階で移行期にある企業も多いため「全部ペーパーレスにしてもよいのか」という不安を持つ方も少なくないでしょう。 今回は契約書のペーパーレス化の方…
詳しくみる電子契約の後文・文言の書き方は?ひな形の変更方法や文例を解説
後文(こうぶん)とは、契約書や電子契約の末尾に記載された文章を指します。後文には、契約当事者の情報や契約の成立日、契約締結や保管の方法などが記載されています。電子契約の場合、紙の契約書と同じ後文は使えません。本記事では、紙の契約書の後文を電…
詳しくみる電子サインとは?電子署名の比較と導入方法をご紹介
電子サインとは、従来は紙の書類で行っていた同意や承認、本人証明などの認証を電子上で行うプロセス、および電子形式で記録したもののことを広く意味するものです。ペーパーレス化が進む近年のビジネスシーンにおいて、電子サインの導入は重要です。本記事で…
詳しくみる住宅ローンも電子契約で完結できる?メリットや手続きの流れも解説
かつては、住宅ローンの手続きは借り手と金融機関職員が対面して金融機関の店頭で行うのが一般的でした。しかし最近では店頭ではなく、オンラインで電子契約による住宅ローンの手続きができる金融機関が増えています。 この記事では、住宅ローンを電子契約で…
詳しくみる不動産賃貸は電子契約もOK!書類の準備や契約の流れ、保管方法を解説
不動産賃貸は電子契約が可能です。宅地建物取引業法の改正により電子化が可能になり、賃貸契約に関する一連の流れをオンラインで完結できるようになりました。これにより、不動産業賃貸の業務を効率化できます。 本記事では、不動産賃貸で電子契約できる書類…
詳しくみる