• 作成日 : 2024年11月29日

一般媒介契約書とは?無料のひな形をもとに書き方・記入例・注意点などを解説

所有する不動産の売却や賃貸を希望する時には、宅地建物取引業社(不動産業者)に買主や借主を探してもらうよう依頼することが一般的です。そしてこの際売主と不動産業者が締結するのが「媒介契約」です。

この記事では媒介契約のうちの「一般媒介契約」について、その特徴や他の媒介契約との違い、契約書のひな形・記入例および契約締結時の注意点などを解説します。

そもそも一般媒介契約とは

二当事者の間を取り持つことを仲介といいますが、不動産取引においては単なる取り持ちでなく、売却の条件、価格、仲介の内容、報酬額などを法に則って明確に定めなければなりません。不動産の売買は高額になることが多く、取引の安全が求められるからです。

これを「媒介契約」といい、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任契約」の3種類があります。

一般媒介契約とは

一般媒介契約は、非常に自由度の高い契約です。売主である依頼者は、契約を交わした不動産業者以外の不動産業者とも一般媒介契約ができますし、依頼者自身で買主を探すこともできます。

一般媒介契約のうち「明示型」は、依頼者は、他にどこの業者と契約しているかをそれぞれの会社に通知する義務がありますが、「非明示型」であれは通知義務もありません。

専任媒介契約との違い

一方専任媒介契約では、依頼者は他の不動産業者に重ねて媒介を依頼することができません。ただし、自分で買主を見つけた場合は、契約業者の介入なしに売却することが可能です。

また、不動産業者の方は、一般媒介では不要だった「販売状況報告」を、依頼者に14日に一度以上行うという義務が生じます。

専属専任媒介契約との違い

専属媒介のうち「専任」専属媒介契約となると、さらに条件が厳格になってきます。依頼者は自身で買主を探せませんし、もし買手を見つけても、契約している不動産業者の仲介を経てしか売却することはできません。その分不動産業者の方も、販売状況報告の頻度が7日に一度以上となります。

なお、「専任」の名がつく媒介契約では、当該不動産の情報を「不動産流通機構(レインズ)に登録する義務があります。また、契約期間は最長3カ月と決められており、その後継続する場合は再契約をしなければなりません。

一般媒介では契約期間の規定はありませんが、国土交通省の定める「標準媒介契約約款」により、3カ月以内とするのが一般的とされています。

一般媒介契約書とは

一般媒介契約書とは

不動産業者に一般媒介の形で依頼する際に締結する契約書です。媒介契約では、不動産の専門家でないことが多い依頼者を保護するため、宅地建物取引業法第34条の2で、契約書に記載しなければならない内容が定められています。具体的には媒介の内容、不動産の所在、売買の価額、有効期間、不動産業者が受け取る報酬などです。

なお、不動産業者は原則として先述の「標準媒介契約約款」を使用することが国土交通省により求められています。

売買契約書との違い

売買契約は、売主が、代金と引き換えに、相手方に自身の所有物を与えることを約束する内容の契約です。不動産の場合不動産業者との媒介契約後、買手が見つかれば売買契約を交わすことになりますが、この売買契約はあくまでも売主買主間で締結するものであり、仲介の不動産業者は契約締結時に同席することはあっても、当事者ではありません。

媒介契約は売主が不利益を被らないよう、法律によるさまざまな規定がありますが、売買契約の場合当事者の立場は対等であるため、内容確認と締結は、売主がしっかり行いましょう。

無料ダウンロードできる一般媒介契約書のひな形

汎用性のある一般媒介契約書のテンプレートをご紹介します。ダウンロードしてご参考ください(Word)。

一般媒介契約書の書き方・記入例

契約書には、他の媒介契約との混同がないよう必ず「一般媒介契約書」とし、以下の項目を記入します。

目的物件の表示

テンプレートには建物の所在などしか表示していませんが、実際には登記情報に載っているより詳細な情報を記載することが多いようです。

有効期間

専属媒介の場合、依頼者が不動産業者の見直しが短期間でできるように、法律で有効期間を3カ月以内としています。一般媒介は他の複数の業者にも媒介の依頼ができるため、法律の定めはないものの、一応標準約款に則り、有効期間を記載しておきましょう。

他業者との契約

一般媒介契約の大きな特徴は、同時に複数の不動産業者に売却を依頼できることです。ただし紹介したテンプレートは「明示式」であり、依頼者は今回契約する相手方に、他にどのような業者と同様の契約をしているかを通知する義務があります。

明示型は依頼者にとって手間ではありますが、明示することで、不動産業者は他社に負けられない、と活発に営業してくれることが期待できます。もちろん非明示型でも問題はありません。

どちらの型であっても、どこかの業者で契約が成立した場合は速やかに他の業者に通知をしなければなりません。

報告義務

一般媒介契約では不動産業者側に定期的報告の義務はありません。同様にレインズへの登録義務もないため、このような条項は入っていません。

売主にとって自由度が高く、費用も安上がりな一般媒介契約ですが、業者側にとっても、購入先探しのタイミングを自分で決められる便利な契約だといえます。

売買価額

不動産の売買価額は、不動産業者が依頼者の希望を聞きつつ、専門的知見に基づいた評価額と擦り合わせて決定します。一般媒介契約の場合、他業者との評価額の比較検討も求められます。

報酬

不動産業者は、法律で仲介料の上限が決められており、報酬額を事務所内にわかりやすく明示しておかなければなりません。

契約書にも報酬額またはその計算方法、および支払時期を明記する必要があります。また、後で揉めないよう、経費についてもどの範囲まで業者が負担するかなどを記載しておきます。

一般媒介契約書を締結するときの注意点

 国土交通省が定める「標準媒介契約約款」に対応する必要がある

契約書が、こちらの「標準媒介契約約款」のうち、一般媒介契約の記載通りの内容であれば問題ありません。業者側にとっても標準約款に沿って契約を交わす方が楽ですし、安心です。

ただし「標準媒介契約約款」は、国土交通省から使用するよう指導されているものの法律上の義務ではなく、「標準媒介契約約款に基づくものではない」との記載があればよいとされています。

しかし業者としては、もし標準約款に基づかない条項を入れる事情や必要性がある場合には、契約書の記載だけでなく、依頼者にその旨口頭で説明し、了承を得ておいた方がよいでしょう。

印紙税や収入印紙の貼り付けは不要

一般媒介契約書に収入印紙の貼付は不要です。媒介契約書は売却の「依頼」について約する書類であり、印紙税法上の「課税文書」に当たらないからです。

売買が決まれば別途売買契約を交わし、印紙税はそこで発生することになります。

一般媒介契約は双方に自由度の高い内容の契約

一般媒介契約は、専属媒介契約と比較して、業者にも依頼者にも自由度が高い内容の契約です。一方で依頼者側は、定期的な報告義務がないことで自分の不動産の売却営業を後回しにされてしまう怖れがあるため、一般と専属のメリット・デメリットを把握したうえでどちらの媒介契約を選択するか考えることをおすすめします。


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