- 更新日 : 2026年7月13日
定型約款とは?民法改正のポイントをわかりやすく解説
定型約款は、不特定多数を相手方とする画一的な取引に用いる条項の総体であり、改正民法(令和2年4月施行)により初めて法律上の制度として整備されました。
- 定型取引に使われる契約条項の総体と法律上定義されている
- 個別条項への合意が「みなし合意」として法的に扱われる
- 事業者は不当条項を含む場合、契約内容とはならない可能性がある
フランチャイズ契約や個別交渉を要する建物賃貸借契約は、定型約款の要件を満たしません。
令和2年4月施行の改正民法により、「定型約款」が法律上の制度として正式に位置づけられました。電車の運送約款やインターネットサービスの利用規約など、日常的に接しながらも内容まで確認することの少ない書類の多くが、この定型約款にあたります。
本記事では定型約款の定義・身近な例・改正民法のポイントをわかりやすく解説します。
目次
定型約款(ていけいやっかん)とは?
定型約款とは、定型取引において特定の者(事業者など)があらかじめ準備した契約条項の総体を指します。令和2年4月施行の改正民法(民法548条の2第1項)により、初めて法律上の制度として明確に位置づけられた制度です。
定型約款と定型取引の関係
改正民法により、定型約款は「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義されました。
「定型取引」が指す取引は、民法548条の2第1項で以下のように定義されています。
- ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引
- その取引内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの
1. においては、相手方が誰であろうと同じ内容・方式で行う取引であることが求められます。個別の事情に応じて内容を変更する取引は、定型取引とはいえません。
2. は取引内容の画一性はもちろんのこと、画一的であることが当事者双方にとって合理的であることも要件として求めています。「合理的」とは、取引の迅速性や効率性、コスト削減などの観点から、同一条件で取引を行うことが双方に利益となる場合をいいます。
これらの要件を満たす「定型取引」で使用するものでなければ、定型約款とは認められません。
参考:民法|e-Gov法令検索
定型約款の身近な例
定型約款は、鉄道や航空機の旅客運送、銀行の預金規定、電気・ガスの供給約款、保険契約の約款、インターネットサービスの利用規約など、私たちの日常生活に広く溶け込んでいます。
普段、電車に乗るたびに鉄道会社と旅客運送契約を交わしていることを意識する人は少ないでしょう。しかし事業者は不特定多数に対して、条件が整えば誰にでも乗車を認めるという画一的な取引を行っており、利用者もそれを承知して利用しています。路線バスや飛行機の利用時も同様です。
銀行の「普通預金規定」も、口座開設者が誰であっても適用される定型約款の一つです。また、インターネット上で申し込み前に「内容に同意します」へのチェックを求める条項の規定も、多くは定型約款に該当します。
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定型約款の「みなし合意」はどのような場合に成立する?
定型取引を行うことに双方が合意した場合、定型約款の個別の条項についても合意したとみなされます(民法548条の2第1項)。ただし、不当条項が含まれている場合はみなし合意の対象外となるため、事業者は約款の内容に注意が必要です。
みなし合意が認められる条件
みなし合意は、定型取引を行う旨の合意があることを前提として、さらに契約者から請求があった場合、定型約款の条項が契約者に開示・公表されることが求められます。
切符を購入するたびに駅員が約款を提示していては業務が成り立たないように、個々の契約者への直接提示が難しいケースがあります。そのため鉄道営業法航空法では、民法548条の2第1項2号の「表示していた」を「表示し、又は公表していた」と読み替え、鉄道旅客運送においては運送約款を公表することによっても定型約款の組入れ要件を満たし得るものとしています。
。
こうした規定があることで、日常的な取引のたびに約款を提示・確認する手間を省きながらも、取引の法的有効性を保てています。
みなし合意の例外となる不当条項
契約者のみが一方的に不利になる条項は、みなし合意の対象外となり、相手方を拘束しません。
民法548条の2第2項では、①相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重し、②その定型取引の態様・実情・取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる条項については、合意しなかったものとみなすと定めています。
事業者が定型約款を準備する際は、このような不当条項が含まれていないか、弁護士などの専門家に事前に確認しておくとよいでしょう。
参考:民法|e-Gov法令検索
定型約款に関する改正民法のポイントは?
改正民法では、定型約款の定義の明確化に加え、名称の整理、契約内容となるための要件、変更手続きの規定が新たに設けられました。約款を準備する事業者にとって押さえておきたい点が集約されています。
民法改正以前の問題点
改正以前は約款に関する明確な法的基準がなく、契約上のトラブルが生じた際に双方の解釈が分かれやすい状況でした。
これまでも約款は事業者が不特定多数と取引する場面で日常的に使われてきましたが、細かい条項が長々と記載された約款の内容を契約前にすべて確認する人は多くないでしょう。しかし約款は契約書の内容そのものであり、当事者にとって重要な書類です。
明確な基準がないまま運用されてきた結果、訴訟になった際もケースバイケースで判断するしかなく、法的安定性の面で課題を抱えていました。
改正点① 定型約款の定義と名称
改正民法では「定型約款」という名称を設け、従来の「約款」の概念と切り離すことで、規律の対象となるものを明確にしました。
民法548条の2により「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義されたことで、どのような条項の集合が法律上の定型約款に該当するかが明確になりました。「定型約款」という名称は、それまで浸透していた「約款」の概念と切り離し、法律上の規律対象を明示するために付けられています。
改正点② 定型約款が契約の内容となるための要件
定型約款が契約の内容となるためには、契約内容とすることを目的として、①不特定多数を相手方とする②画一的かつ双方に合理的な取引に③事業者が準備した条項群であること、④当事者が定型取引を行うことなどについて合意していること、という要件をすべて満たす必要があります。
①②の要件は定型取引の定義として前述しましたが、③は「契約時に相手方と交渉することを想定せず、事業者側があらかじめ作成したもの」であることを求めています。個別の交渉が予定されるフランチャイズ契約や一般的な建物賃貸借契約のように個別交渉が前提となる取引は、この要件を満たさないため定型約款には該当しません。
定型約款は施行後10年近くが経過しました。今後どのような約款が定型約款と認められるかは、裁判例を通じて解釈が徐々に明確になっていきつつあります。
改正点③ 事業者が定型約款を変更する場合の手続き
事業者が定型約款の内容を変更する場合、一定の要件を満たせば既存の契約者の個別同意なしに変更できますが、変更のの内容と時期についてインターネット等による周知が変更の効力発生要件とされています。
民法548条の4では、①変更内容が一般的に契約者の利益になる場合、または②変更の必要性や内容の相当性などから変更が合理的といえる場合に限り、個別同意なしの変更を認めています。いずれの場合も、変更の内容と時期についてインターネット等で事前に周知しなければなりません。
消費者の側から見ると、日ごろ利用しているサービスの約款が予告なく変更されることはなく、事業者には変更前の告知が法律上義務づけられている点は覚えておくとよいでしょう。
参考:民法|e-Gov法令検索
定型約款と改正民法の理解を深め、適切な取引に備えよう
約款が関わる取引は日常生活の中に数多く存在します。改正民法の施行により定型約款の定義・要件・みなし合意・変更手続きが法律上明確になったことで、事業者と消費者の双方が約款に関するルールを共有しやすくなりました。
約款を準備する事業者は、自社の約款が定型約款の要件を満たしているか、不当条項が含まれていないかを確認しておきましょう。また、個人の立場からは、電車の乗車や各種サービスの申込みの際にも定型約款が成立していることを意識しておくと、万が一のトラブル時に冷静に対処しやすくなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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