- 作成日 : 2025年1月17日
小売業で電子契約は導入できる?メリットや企業事例、サービスを選ぶポイントも
小売業における電子契約導入は、業務効率化やコスト削減に有効な手段です。多岐にわたる契約業務を抱える小売業にとって、電子契約は多くのメリットをもたらす機会となるでしょう。本記事では、電子契約の基本から、小売業で主な対象となる契約書類や導入によるメリット、サービスを選ぶ際のポイントそして導入事例までを詳しく解説します。
目次
小売業で電子契約は導入できる?
小売業においても電子契約の導入は可能です。電子契約の導入によって契約業務を効率化し、コスト削減や環境負荷の軽減に大いに貢献するでしょう。ここでは、電子契約についての概要と法的効力について解説します。
そもそも電子契約とは
電子契約とは、紙の契約書に代わり、電子データを用いて契約を締結する方法です。電子契約では、契約書の作成・送付・保管がオンライン上で完結するため、業務効率が大幅に向上します。
さらに、電子署名やタイムスタンプを利用することで、本人確認や改ざん防止が可能です。また、紙や郵送のコスト削減につながり、環境負荷の軽減という点もメリットとして挙げられます。こうした特徴から、多くの企業で導入が進んでいます。
電子契約の法的効力
小売業においても電子契約の導入は十分に可能です。契約自体は口頭でも成立しますが、契約内容を証明するために契約書が用いられます。電子契約は、この契約書を電子化したもので、一定の条件を満たすことにより、紙の契約書と同等の証拠力を有します。
法律上、電子文書は「電磁的記録」と呼ばれ、紙媒体の書面とは区別されますが、多くの契約において電磁的記録を書面とみなす規定が存在するため、電子契約の導入が可能です。
電子署名法により、一定の条件を満たす電子署名がなされた電子文書は、真正に成立したものと推定されます。電子署名は、多くの契約場面で紙の契約書における押印と同様の役割を果たし、電子証明書によって本人性を証明します。
小売業で電子契約の対象となる主な書類
小売業で電子契約の対象となる主な書類は、以下のとおりです。
- 雇用契約書
- 秘密保持契約書
- 取引基本契約書
- フランチャイズ契約書
- 販売店契約書
- 店舗賃貸借契約書
以下で、それぞれについて解説します。
雇用契約書
「雇用契約書」とは、雇用主と労働者が契約内容を明確にし、双方が署名・捺印することで労働条件を確認するための文書です。勤務時間や給与、休日などが詳しく記載され、双方での保管が一般的であるものの、法律で作成が義務付けられているわけではありません。
一方、「労働条件通知書」は明示が法律で義務化されており、労働条件通知書を電子化する際には、労働者の同意が必要です。小売業では、これらの書類を電子契約で運用することにより、契約管理の効率性向上や業務負担の削減が期待できます。
秘密保持契約書
企業の重要な情報を外部に漏らさないようにするため、秘密保持契約(NDA)が交わされます。秘密保持契約書は、ビジネスパートナーや業務委託先が、自社の機密情報を不当に利用したり、他の人に公開したりすることを防ぐためのものです。
秘密保持契約書は、企業同士が協力して事業を進める際や製造を外部に委託する際など、情報交換が必要となる場面において、機密情報や知的財産を守る上で欠かせません。契約を結ぶタイミングは、従業員を雇用する際や、他の企業との業務提携や製造委託を行う際などです。
契約書の中で、どの情報が秘密として扱われるべきかを具体的に定めることで、関係者全員が守るべき範囲を理解し、適切な情報管理を促します。また、秘密保持契約書には、秘密が漏えいした場合の損害賠償に関する取り決めを盛り込むことで、情報保護をより強固なものにできます。
取引基本契約書
取引基本契約書は、継続的な取引関係を円滑に進めるために締結される契約書です。取引基本契約書では、取引の基本となる条件を事前に合意しておくことで、その後の個別契約締結時の手間を大幅に削減できます。
電子契約システムを導入することで、契約締結プロセスの迅速化や契約書管理の効率化、印紙税や郵送費などのコスト削減といったメリットが見込めます。
フランチャイズ契約書
フランチャイズ契約は、本部が持つ商標やノウハウを加盟店に提供し、その対価としてロイヤリティ(使用料)を受け取る契約です。コンビニや飲食店をはじめとする多くの業種で採用されており、加盟店は本部のブランド力や運営ノウハウを活用できるという利点があります。
電子契約を導入することで、契約業務の効率が大幅に向上します。紙の契約書では必要だった印刷や郵送の手間を省き、契約締結までの時間短縮が可能です。
また、電子データとして保管することで物理的なスペースが不要になり、必要な契約書を迅速に検索することが可能になります。さらに、アクセス権限を設定することで情報漏えいのリスクを抑え、契約書管理の安全性と効率性を高められます。
販売店契約書
販売店契約書は、メーカーやサービス提供者と販売店が交わす契約で、販売店は供給者から商品やサービスを仕入れ、自身の名義で顧客に販売します。
販売店契約により、販売店は自社で製造販売するのに比べ、迅速かつ低コストで市場への商品流通が可能です。契約内容には、販売対象商品・販売地域・独占権・価格・支払条件・商標利用の規定・契約解除などが含まれます。
店舗賃貸借契約書
店舗賃貸借契約書は、店舗を借りる際に交わされる契約書です。2022年5月の宅建業法改正により、賃貸取引においても電子契約が可能になりました。宅建業法改正により、契約手続きが非対面で完結できるようになり、入居者にとっては店舗へ足を運ぶ手間が省けます。
紙の書面への捺印や郵送も不要となるため、遠方に住んでいる場合には、オンラインで手続きを進められる利点があります。
小売業に電子契約サービスを導入するメリット・効果
小売業に電子契約サービスを導入する主なメリットや効果は、以下のとおりです。
- 印紙代や人件費などのコスト削減
- 紙の契約書による保管工数の削減
- 従業員の契約書を一括管理
- 契約の更新漏れ防止
以下で、それぞれ見ていきましょう。
印紙代や人件費などのコストを削減できる
電子契約を導入することで、印紙代や人件費などのコストを削減できます。紙の契約書では、契約金額に応じた印紙税を必要としますが、電子契約では課税対象外となるため、印紙税の削減が可能です。
また、紙の契約書に必要な作成や郵送、受領後の確認といった工程が不要になるため、人的コストも抑えられます。電子契約サービスには、テンプレート登録や一括送信機能が含まれるものも多く、契約業務全体の効率化に役立つでしょう。
紙の契約書の保管工数を削減できる
電子契約を導入することにより、紙の契約書の保管工数を大幅に削減できます。紙の契約書では、保管庫の確保や整理が必要であり、場合によっては書類の紛失や保管場所が不明となってしまうリスクもあるでしょう。
一方で、電子契約は契約書をクラウド上に集約するため、物理的な保管場所を不要にし、管理の手間を軽減できます。
また、多くの電子契約サービスには検索機能が備わっており、必要な契約書を迅速に見つけることが可能です。
従業員の契約書を一括管理できる
電子契約サービスを活用することにより、従業員との契約書を一括管理できます。小売業では多くの従業員が働き、多店舗展開の場合、契約書の管理が煩雑になりがちです。電子化することで、雇用契約書をデータベースに登録し、契約状況を効率的に把握できます。
また、紙の契約書とは異なり、紛失のリスクを低減できるため、安全性も向上します。さらに、管理業務の負担が軽減されることで、他の重要な人事業務に注力しやすくなる点もメリットといえるでしょう。
契約の更新漏れを防止できる
電子契約を導入することで、契約更新漏れのリスクを大幅に低減できます。紙の契約書では、保管場所の確保や更新日の手動管理に手間がかかり、人的ミスも発生しやすいため、契約管理上の大きな課題でした。
電子契約であれば、契約書をデータで一元管理し、契約日や更新日をシステム上で容易に確認できます。そのため、更新時期の見落としを防ぎ、契約の有効性を確実に維持することが可能です。
小売業者が電子契約サービスを選ぶポイント
小売業者が電子契約サービスを選ぶ際には、自社のニーズに合ったサービスの選択が重要です。以下のポイントを参考に、自社に適したサービスを選ぶようにしましょう。
小売業に必要な契約書に対応しているか
小売業で電子契約サービスを選ぶ際は、業界特有の契約書形式や業務ニーズに対応しているかを確認しましょう。小売業では、仕入れ・販売・人事など多岐にわたる契約が発生し、契約書の作成や更新が煩雑になりがちです。そのため、自社の課題を解決し、業務効率化につながる適切なサービス選定が重要となります。
契約情報を一元管理できる機能や、契約内容を迅速に更新できる機能は、業務効率化に有効です。サービス選定時には、まず自社の課題を明確にし、必要な機能を優先的に検討するようにしましょう。
紙の契約書と電子契約書をまとめて管理できるか
紙と電子の契約書を一元管理できる機能にも着目しましょう。小売業では契約先が多岐にわたり、紙の契約書も依然として多く利用されるため、両者をまとめて管理できると便利です。
一元管理機能があれば、紙の契約書をデジタル化したり、他社から受け取った電子契約書を取り込んだりすることが容易になります。さらに、契約情報の検索や更新が迅速化され、業務効率の大幅な向上が期待できます。
更新期日のアラート通知があるか
契約更新期日のアラート通知機能の有無は、契約管理において必要な確認事項です。アラート通知機能があることで、契約終了日・自動更新日・解約通知期限といった重要な期日の見逃しを防ぎ、契約管理を効率化できます。
ただし、アラート通知の設定条件はサービスによって異なるため、導入を検討する際には、各サービスの仕様を十分に確認するようにしましょう。
勤怠管理システムなどと連携できるか
小売業が電子契約サービスを選ぶ際は、勤怠管理システムなど他のシステムと連携できるかを確認することが重要です。電子契約サービスは単独で使用するだけでなく、他のシステムとの連携により業務効率がより向上します。
API連携(異なるソフトウェアやシステム間でデータをやり取りするための仕組み)を利用することで、異なるシステム間でデータを自動的にやり取りでき、手作業でのデータ入力を削減できます。
例えば、勤怠管理システムと連携した場合には、従業員の雇用契約情報を電子契約サービスから自動で取得し、勤怠データとひもづいた管理が可能です。
小売業界で電子契約サービスを導入した企業事例
フェイスマスクブランド『ルルルン(LuLuLun)』を展開するDr.ルルルン株式会社は、電子契約サービスを導入することで契約業務の効率化とコスト削減を実現した企業の一例です。
同社の総務チームマネジャーである佐々木様によれば、従来の紙契約書に基づく業務フローでは、作業の非効率性や煩雑な契約管理、社内からの頻繁な問い合わせ対応などといった課題がありました。そこで、「マネーフォワード クラウド契約」の導入が、これらの問題解決に大いに役立ったといいます。
導入前は、契約書の印刷や製本、郵送作業に多くの時間と手間がかかり、Excelでの契約台帳管理には入力ミスのリスクも伴うため契約状況の確認がその都度必要でした。マネーフォワード クラウド契約導入後は、契約締結の時間が大幅に短縮され、さらに契約書の一元管理による検索性の向上により、必要な契約書に素早くアクセスできるようになったとのことです。
また、営業担当者が自身で契約状況を確認できるようになったことで、社内のコミュニケーションコストも削減されました。過去の契約書もCSV形式で一括取り込みが可能で、導入プロセスもスムーズに進んだと述べられています。
電子契約を活用し、小売業務の効率化とコスト削減を実現しよう
小売業界では、多種多様な契約業務が存在するため、電子契約を導入することでコスト削減や業務効率化、さらにはコンプライアンスの強化といった多くのメリットが期待できます。
電子契約サービスを選定する際には、自社のニーズを明確化し、必要な機能や他のシステムとの連携性を十分に考慮することが重要です。電子契約の導入は、業務効率化にとどまらず、企業の競争力を強化し、成長を加速させるための重要な戦略となり得ます。自社に適した電子契約サービスを選び、ビジネスの発展に活かしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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