- 作成日 : 2025年1月31日
実印とは?銀行印・認印との違いや印鑑証明、作成する時のポイントを解説
実印は、企業や個人のさまざまな取引に使用される印鑑です。公的な書類や契約書に実印を用いることで、その信頼性が確保され、正式な意思表示であることを証明できます。
この記事では、実印の定義、銀行印や認印との違い、印鑑証明の方法、作成する時のポイントについて解説します。
目次
実印とは
実印は、日本の法的な手続や契約において重要な意味をもつ印鑑です。実印には法的効力があるため、これを使用することで、相手に対して自分が正式な意思表示をしていることを証明できます。ここでは、実印の役割と重要性、日常的によく使われる銀行印や認印との違いについて解説します。
実印と銀行印の違い
実印と銀行印は、どちらも重要な役割をもちますが、その用途は異なります。
実印は、区役所や法務局で登録を行い、公的な書類や手続に使用される印鑑です。例えば、不動産の購入やローンの契約、法人設立登記の申請などの重要な契約・取引で使用され、押印によって法的効力をもたせられます。
一方、銀行印は実印に次いで法的効力をもちますが、主に、預金口座の開設や引き出しなど、銀行において本人を確認するために使用されます。
実印と認印の違い
認印は、個人が自分の意思や認証を示すために使う印鑑で、実印とはその役割と重要性が大きく異なります。一般的に認印は、日常的な手続や書類に使用されることが多く、実印や銀行印に比べて法的効力がさほど強くありません。
用途としては、荷物の受け取りや会社内での承認作業、経費精算といった比較的軽い書類に適しており、実印よりも円滑な手続を目的に使用されます。
実印の印鑑証明とは
印鑑証明は、実印が本人のものであることを証明するための書類です。正式には「印鑑登録証明書」と呼ばれ、個人の場合は実印を登録した地方自治体、会社の場合は法務局によって交付されます。
印鑑証明が求められる理由は、押印された印影が本物であることを確認するためです。実印と併用することで、実印が本人のものであることが証明でき、本人の意思に基づいて手続が行われていると推定できます(民事訴訟法第228条)。
なお、印鑑証明は、主に以下のような場面で使用されます。印鑑証明を取得することで、契約や取引の信頼性が向上し、法的なトラブルを未然に防げます。
- 不動産の売買契約
- 住宅ローン
- 遺産相続
- 保険金の受け取り
- 会社設立時の登記
実印を使ってはいけない場面
実印は、公的な書類や重要な手続にのみ使用されるべき印鑑で、日常的な場面の使用には適していません。実印を頻繁に利用することで、盗難や紛失のリスクが高まり、第三者によって悪用される恐れがあります。
例えば、宅配便の受け取りや会社内での書類承認、稟議書、勤務報告書といった重要度の高くない書類では、認印の使用が一般的です。
また、実印と銀行印の兼用も大きなリスクを伴います。なぜなら、同一の印鑑を使用する頻度が増えると、印影を見られる回数も増え、偽造される可能性があるからです。万が一、第三者によって不正利用されると、法人の場合は大規模な損害を招く恐れがあります。
実印を作成する時の規定
実印として登録する印鑑にはいくつかの規定があり、それに合わせて準備する必要があります。ここでは、実印を作成する際の注意点を解説します。
印影の大きさ・形
実印は、印影の大きさと形にいくつかの規定があります。法人で使用する実印は「印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。」(商業登記規則9条3項)とされており、これに合わせた印鑑の準備が必要です。
また、個人の実印は、登録する役所によって異なりますが、通常は一辺の長さが8mm~25mmとされています。
刻印内容
個人が実印を登録する場合、住民基本台帳に記載された氏名、氏、名のいずれかの刻印が必要です。外国籍の人の場合、自治体によっては通称も認められますが、フルネームのほうが印影が複雑になり、偽造しにくいメリットがあります。
また、会社の実印は、 外枠に会社名、内枠に役職名が刻まれるのが一般的です。刻印内容に関わる規定はありませんが、対外的な印象を考えると、法人名が記載されていない実印は避けたほうがよいでしょう。
使用できる書体
実印は、使用できる書体に規定がなく、一般的な書体であれば印鑑登録が可能です。しかし、実印は可読性よりも、偽造のされにくさが重視されるため、複雑な書体が好まれる傾向にあります。
よく利用される書体として挙げられるのが、吉相体(きっそうたい)と篆書体(てんしょたい)です。吉相体は、文字が枠に接するように配置されることで欠けにくく、篆書体は、中国から伝わってきた漢字で現代文字と大きく異なります。いずれも、可読性が低く偽造しにくい書体であるため、法人・個人を問わず広く利用されています。
実印の印鑑登録の手続
実印の印鑑登録を行うには、個人と法人で手続が異なります。ここでは、それぞれの登録方法を解説します。
個人の印鑑登録
個人の実印を印鑑登録する際は、住民登録をしている市区町村で手続が必要です。登録者本人が、登録する印鑑とともに、マイナンバーカードや免許証などの顔写真付きの身分証明書を持参すれば、備え付けの申請書で即日登録が完了します。
ただし、実印の印鑑登録は15歳以上であることが条件で、代理人による申請は委任状が求められる場合があります。
法人の印鑑登録
法人は、登記申請に実印が必要なため、通常は登記申請と同じタイミングで印鑑登録を行います。その際、登録する印鑑とともに、届け出る本人の実印、印鑑証明書(発効後3カ月以内)を準備して、法務局で手続が必要です。なお、法人の場合はオンラインでの申請が可能ですが、印影をPDF化する際は、原寸大であることや解像度などに細かな決まりがあります。
女性が実印を作成する時のポイント
女性の社会進出が当たり前となった現代では、実印を作成する女性も増えています。ここでは、女性が実印を作成する際の、名前の表記方法や名字の変更に関わる疑問について解説します。
フルネームと名前のみのどちらがおすすめ?
女性に限らず、実印はフルネームと名前のみのどちらでも登録が可能です。実際に、フルネームが長い場合や、見栄え、姓名判断などから、名前のみで実印を作る女性も多くいます。
ただし、法的な手続やビジネスにおいては、フルネームの実印が推奨されます。フルネームの刻印があることで、その人本人であることを明確に証明でき、より高い法的効力をもたせられるためです。利用用途が軽い契約であれば名前のみ、重要な契約に使いたい場合はフルネームといったように、目的に応じた判断が必要です。
フルネームで刻印した場合は結婚後どうなる?
女性が結婚して名字が変更になった際は、基本的には新たな名字での登録が必要です。実印は、住民基本台帳に記載された名前と一致しなければならず、名字が異なる場合は自動的に印鑑登録が失効されます。
ただし、2019年11月5日に施行された「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」によって、そのルールは一部変更されています。住民票に旧姓(旧氏)が併記されていれば、結婚前の名字が刻印された印鑑でもそのまま使用可能です。
なお、旧姓(旧氏)を併記するには、その記載がある戸籍謄本・抄本を準備し、市区町村で所定の手続を行う必要があります。
実印は印鑑登録で一部規定があるため注意
実印は、役所や法務局で登録を行い、公的な書類や重要な手続に使用される印鑑です。印鑑証明書と併用することで、その信頼性が確保され、登録者本人の正式な意思表示であることを証明できます。
実印を作成する時のポイントは、印影の大きさや形、刻印内容、書体の3つです。特に、印影の大きさは法律や各自治体による規定があり、これに沿った印鑑でなければ登録できません。また、盗難や紛失、偽造防止の観点から見て、可読性が低く複雑な書体で刻印された印鑑が推奨されます。
印鑑登録に関する法令には一部規定があるため、十分注意してから実印を作るようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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