- 更新日 : 2024年8月29日
人材紹介契約書とは?記載すべき事項などを雛形をもとに解説
企業が人材を採用する方法は、求人広告やハローワークなど複数あります。人材紹介もその一つです。人材紹介は求人広告よりも自社に合った人材を採用しやすい方法なので、多くの企業が活用しています。
その際、人材紹介会社と締結するのが人材紹介契約書です。
本稿では人材紹介契約書の雛形を示すとともに、記載事項や契約締結時の注意点などについて解説します。
目次
人材紹介契約書とは?
人材紹介は、あらかじめ自社が求める人材の要件などを人材紹介会社に細かく伝え、候補者が見つかった場合に紹介してもらう採用方法です。人材紹介サービスを利用する際に作成するのが、人材紹介契約書です。
人材紹介を受けると、紹介された人材と正式に雇用契約を締結することを条件として報酬を支払う必要があります。
有料の人材紹介事業には法的規制があり、活用する側も仕組みを理解しておくことが大切です。
そもそも人材紹介とは
人材紹介を職業紹介事業として行う場合は、職業安定法の規制を受けます。有料職業紹介事業は許可制です(法30条)。無料職業紹介事業は、学校等の特別な法人が行う場合は届出制、地方公共団体が行う場合は通知制ですが、一般の者が行う場合は許可制です(法33条の2~4)。
ここからは、有料職業紹介事業の仕組みを見てみましょう。まず、人材紹介会社が求職者のデータベースを作成します。データベースは自社が運営する求人サイトでの登録や、電話による転職の勧誘によって作成されるのが一般的です。
一方で、人材を採用したい企業と人材紹介契約を締結し、企業の求める人材とデータベース上の求職者のマッチングを行います。
要件に適う人材が見つかれば、人材紹介会社のリクルーターが仲介し、企業が求職者と面接などを行って選考します。両者の間に雇用契約が締結されれば、人材紹介会社に報酬を支払うことになります。
人材紹介と人材派遣の違い
労働力の需要(求人)と供給(求職)を調整する仕組みには、自社による求人広告などを使った募集や、転職サイトのような募集情報提供事業、職業安定機関であるハローワークなどがあります。
人材紹介も職業紹介事業の一つですが、紛らわしいものに労働者派遣事業があります。労働者派遣事業は、労働者派遣法によって許可制で認められるものです(法5条)。法律の規制を受ける点は同じですが、その仕組みは大きく異なります。
前述のとおり、職業紹介事業は職業紹介事業者が求職者と求人者である企業を仲介し、雇用契約の成立斡旋を行うもので、法律上の使用者はあくまでも求人者である企業です。
これに対して労働者派遣事業では、求職者との雇用契約は派遣会社との間で締結されます。派遣会社と求人者である企業との間では、労働者派遣契約が締結されることになります。労働者派遣の場合、労働者は派遣会社に雇用されますが、実際の職場は派遣先の企業であり、そこで指揮命令を受けて労務を提供するのです。
本来、労働者の雇用契約の相手と指揮命令を受ける相手は同一の使用者であるのが原則ですが、労働者派遣は例外であるため、労働者保護の観点から派遣事業は許可制となっているのです。
人材紹介契約書の雛形
人材を採用したい企業と人材紹介会社との間で契約を締結する際に作成される人材紹介契約書には、決まったフォーマットがありません。
ここでは、一般的なテンプレートを紹介します。契約内容に応じて、条項を変更・削除・追加してください。
職業安定法で定められている記載事項
人材紹介契約書に記載すべき事項は、契約内容によって異なります。ただし、職業安定法では人材紹介会社が求人者となる企業に対して、一定事項を明示することが義務付けられています(職業安定法32条の13、同法施行規則24条の5第1項)。
したがって、契約書にも以下の事項を盛り込みましょう。
取扱職種の範囲等
テンプレートでは、第1条(活動事項)の第1項第1号に「取扱職種は、全職種(港湾運送業務及び建設業務を除く)、取り扱い地域は国内とする」と記載されています。
手数料に関する事項
テンプレートでは、第8条(紹介料金)に記載があります。報酬が発生する条件や報酬の算定方法は、明確に規定しておくことが大切です。
テンプレートの条項では雇用契約の締結に加え、採用者が実際に勤務を開始することを報酬発生の条件としています。
苦情の処理に関する事項
求人者である企業及び求職者から苦情の申出があった場合の責任者を明記します。苦情処理の責任者、求人者情報の取扱者及び個人情報の取扱者は、厚生労働大臣に届出を行っている職業紹介責任者です。
求人者の情報および求職者の個人情報の取り扱いに関する事項
人材紹介会社は求人者の個人情報を取り扱うことになるため、その漏えいを防止し、厳格に管理する旨の規定を記載します。
返戻金制度に関する事項
紹介した求職者が早期に自己都合で退職した場合に、手数料を返戻するという内容の条項です。テンプレートでは、第8条(紹介料金)に条項が設けられています。
人材紹介契約書に記載すべき事項
職業安定法上明示すべき事項について、人材紹介契約書において記載すべき条項を紹介しましたが、その他に人材紹介契約書に記載すべき事項を見ていきましょう。
委託業務の内容
契約書である以上、どのような業務を委託するのかを記載する必要があります。テンプレートでは第1条(活動事項)で、職業安定法に定める求職者の紹介と紹介を行うにあたっての相談、助言である旨を定めています。
どのような人材を紹介するのかは、第2条(人材の紹介)に記載されています。
紹介者との直接取引の制限
人材紹介事業者は、求職者と求人者である企業を仲介し、雇用関係の成立斡旋を業として報酬を得ます。したがって、求人者である企業は、求職者との初回連絡から採用までのやり取りを人材紹介事業者に仲介してもらいます。
テンプレートでは、第5条(直接取引の禁止)に明記しています。
秘密保持
人材紹介業務を通して、人材紹介会社と求人者である企業は、営業秘密に関する情報を互いに知ることがあります。
よって、その守秘義務があること及び守秘義務の範囲外となる情報についても明記しておく必要があります。テンプレートでは、第12条(守秘義務)に記載があります。
反社会的勢力の排除
企業が反社会的勢力による被害を防止するための対策として、契約書に反社会的勢力の排除を表明補償条項として設けるケースが増えています。
テンプレートでは、第13条(反社会的勢力の排除)に記載があります。
合意管轄
人材紹介契約に関して、人材紹介会社と求人者である企業との間で訴訟に発展する可能性がないとも言えません。
こうした場合に備えて、どこの裁判所で裁判をするか合意しておく必要があります。テンプレートでは、第16条(管轄裁判所)で職業紹介会社の許可所在地を管轄する裁判所を専属的な管轄裁判所とする旨を定めています。
人材紹介契約を結ぶ際の注意点
人材紹介契約書の記載事項について、テンプレートの例を示しながら解説してきました。
なお、最近では、契約全般について業務効率化の観点から、紙による契約書ではなく、電子契約を活用するケースが増えています。
人材紹介契約も電子文書に電子署名を行って契約を締結することができます。その際には、契約書には「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲及び乙が合意の後、電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」といった条項を記載するとよいでしょう。
人材紹介契約書の概要と記載事項を知っておこう!
人材の採用を考えている企業の中には、無料の職業紹介であるハローワークや求人広告ではなく、有料の職業紹介を検討している担当者も少ないのではないでしょうか。
自社に合った人材の採用が期待できるため、有料の人材職業紹介事業を活用する意義は大きいと言えます。
しかしながら、実際に契約を締結する前に記載事項となるべき条項を想定しておくことも必要です。また、トラブルを回避するため、作成された人材紹介契約書のリーガルチェックを弁護士などの専門家から受けることも重要となるでしょう。
よくある質問
人材紹介契約書とはどのような契約書ですか?
有料の人材紹介サービスを受ける際に作成される契約書です。詳しくはこちらをご覧ください。
人材紹介契約書に記載すべき事項は何ですか?
委託業務の内容、取扱職種の範囲、手数料、苦情処理、返戻金制度など多岐にわたります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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