• 更新日 : 2024年11月14日

合意書とは?書き方とテンプレート、契約書との比較を解説

合意書とは、契約などの交渉事の中で、相手方との話し合いに合意した内容を書面化したものです。同じような文書に契約書や覚書等があります。
ここでは、合意書の概要、例文を交えた書き方・テンプレート、他の文書との違いなどについて解説します。

合意書とは

合意書とは、契約や示談等の様々な交渉事の中で、相手方との話し合いがまとまった際に、その内容を書面として記載したものを指します。こちらが何をすべきなのか、それに対して相手はどれくらいの金額を支払うのか、お互いにこれらをいつまでに行うのかなどを、合意書の内容として記載し、当事者双方が署名捺印して完成させます。

合意書の法的効力

合意書は、当事者双方が署名捺印した書面であるならば、基本的には法律上有効な書面として扱われます。ただし、合意書は契約書と同様の法的効力を持ちますが、強制執行等を行うだけの強制力があるわけではありません。

例えば、「AはBに対して、2021年1月31日までに金100万円を支払う」という内容の合意書を作成し、両者が署名捺印したとします。その後期日までにAが100万円を支払わなかった場合、直ちに強制執行ができるわけではありません。

法律的に強制執行等の強制力があるのは、公正証書と判決、調停調書等、公証役場や裁判所が作成した書面だけです。合意書がもつ法的効力は、端的に言えば、裁判所に訴訟を起こせば、その合意の事実を立証しやすい、ということになります。

先の例で言うと、Bが裁判所に訴訟提起して、合意書を証拠として提出すれば、合意書の内容通りに、Aに対して100万円を支払うことを命じる内容の判決を得られる可能性が高いということです。その判決を以ってBはAの財産に対して強制執行をかけられるようになります。
つまり、合意書は、裁判(訴訟)になった際の証拠として重要な価値を有するものとして使用できるということです。

ただし、合意書の内容が公序良俗(社会の一般的秩序や道徳観念)に反する等の法律上無効とすべきものである場合には、合意書の法的効力は認められません(民法90条 ※)。例えば、BがAの愛人となることに対して、AからBに100万円を支払うという内容の合意書であったとすると、愛人契約は公序良俗に反するので無効となり、訴訟を起こしても裁判所は100万円の支払いを命じる判決を出すとは考えにくいでしょう。

参考:e-GOV 法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」

合意書の書き方

合意書そのものについて、決まった書き方というのはありませんが、法的効力を持たせるために必要な要素が何点かあります。合意書の基本構成や作成例について見ていきましょう。

基本構成

基本的に合意書は、「表題」「柱書」「合意した内容」「合意書の通数・保管方法」「合意書の作成日付」「当事者の署名捺印」で構成されます。

「表題」は「合意書」という文書のタイトルのことです。そして、表題の下に「柱書」を記載します。柱書は、何について合意したのか、合意書の概要を記します。
「合意した内容」は、合意書の本体と言える部分です。合意した内容を項目毎に1、2という番号を付して短く区切って短文で記載していきます。

「合意書の通数・保管方法」は、例えば、「本合意が成立した証として、本書を2通作成し、甲・乙各1通保管する」というように記載します。ただ、この合意書の通数・保管方法は必須の要素ではありません。記載が欠けていても法的効力は否定されません。

「合意書の作成日付」は合意書に双方が署名捺印する日を記載し、最後に「当事者の署名捺印」欄を設けて、当事者が署名捺印します。

作成日付は、合意の成立日を示すものですので、欠かさず記載するようにしましょう。署名はパソコンでタイピングしたものやゴム印などでも構いません。

捺印は認印でも法的効力はあります。ただし、実印による捺印であったほうが、よりその合意書の真実性(他の誰かが勝手に作成したものではないということ)が確保されます。

合意書テンプレート・例文

合意書は様々な場面で作成されますので、一概にフォーマットを示すことはできませんが、例文として、以下のような事案を想定して合意書サンプルを示します。

A会社がB会社に継続的にある機械の部品を販売していたが、その一部に欠陥があり、B会社に損失が発生してしまったと仮定します。AB間で話し合いをして、Aが100万円を支払うことで合意した場合の合意書です。

(表題)               合意書
(柱書)
A(以下、甲という。)とB(以下、乙という。)とは、甲が乙に2020年12月に納入したC部品の欠陥により乙が損失を被った事案(以下、「本件」という。)について、以下の通り、合意する。
(合意した内容)

  1. 甲は、乙に対し、本件解決金として金100万円の支払義務を負うことを認める。
  2. 甲は、乙に対し、前項の解決金100万円を、2021年1月から同年4月にかけて、毎月末日ごとに金25万円ずつ分割して、乙指定口座に振込む方法により支払う。
  3. 甲が前項の支払いを1回でも怠った場合には、直ちに期限の利益を喪失し、甲は乙に対し、金100万円から既払金を控除した残額を直ちに支払うものとする。
  4. 甲と乙とは、本件については本合意書に定めるほか、何らの債権債務を負わないことを相互に確認する。

(合意書の通数・保管方法)
本合意が成立した証として、本書を2通作成し、甲・乙各1通保管する
(合意書の作成日付)
2021年1月10日
(当事者の署名捺印)
甲   A社   ㊞
乙   B社   ㊞

合意書は事案によって様々な内容が想定されますので、テンプレート・雛形として具体的なものを示すのは難しいですが、概ね、以下のような要素を意識して作成すれば欠けるところなく作成できるでしょう。

合意書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

表題

「合意書」等の文書のタイトルです。

柱書

何について合意するのか、概要を記載します。

合意した内容

誰が何をいつまでにどのようにするのか、5W1Hを意識して記載しましょう。

合意書の通数・保管方法

合意書を何通作成して、誰が保管するのかを示します。

合意書の作成日付

契約の日付と同じ効力があります。誤記が生じないよう注意しましょう。

当事者の署名捺印

署名部はパソコンで印字したものでも構いません。
印鑑は認印でも良いですが、実印の方が有効とみなされやすいです。

合意書のNG例

合意書のNG例
合意書を作成する際には、誰が何をいつまでにどうするのか等、5W1Hを意識して具体的な内容を記載するようにしましょう。

まず、柱書のNG例としては、何について合意するのかが曖昧なものが挙げられます。例えば、「AはBに損失を負わせたことについて以下の通り合意する」といった記載だと、Aがいつ、どのようにしてBに損失を負わせたのかが曖昧です。ただし、下部の合意内容部分で具体的に特定されていれば良いので、柱書のみではなく、合意内容を含めて、何について合意するのかを明確に記載しましょう。

なお、「BがAの愛人となることについて以下の通り合意する」や、「BがAの代わりにCを殴ることについて以下の通り合意する」等、違法行為を目的とする合意はそれだけで公序良俗に反するため、無効となることもありえます。

次に、合意内容についても同様に、だれがいつまでに何をするかを明確にするようにしましょう。例えば、「Aは100万円支払うものとする」だけだと、誰に対して、いつまでに、どのように支払うのかがわかりません。また、そもそも何についての100万円なのかが不確かです。「損害賠償として」「解決金として」等の支払う理由も明記するようにしましょう。

作成日付は、合意が成立した日を証明する重要な要素ですので、正確に記載してください。例えば、合意内容で2021年1月末までに支払うとしているのに、作成日付が2022年になっていれば、時系列として矛盾していることになり、それだけで合意書の効力が否定されかねません。

合意書と混合しやすい書類

合意書と似たような用語として、契約書、同意書、覚書、誓約書等が挙げられます。法律上は、その文章の内容がどのようになっているかで効力が判断されますので、文章の表題が何であっても法的効力に特段の差はありません。
しかし、一般的に使われる場面が少し違いますので、できれば使用場面に合わせて、表題を使い分けたほうが良いでしょう。

「合意書」と「契約書」の違い

合意書と契約書は、当事者間で何らかの約束(合意)をしたことを記載するという点では同じです。ただし、一般的に契約書は、これから継続的な取引関係に入る場合に使用されることが多いです。物品の継続的な販売契約や賃貸借契約等では、契約書という表題が使用されます。これに対して、合意書は、何か偶発的、単発的な事象が起きた場合、その問題を解決することのみを目的とした書面によく用いられます。

「合意書」と「同意書」の違い

合意書は、当事者双方が合意するということを示す書面ですが、同意書は、一方だけが何かをすることに同意するという場合に使用されます。例えば、病院で手術を受ける場合や、インターネット上の取引で相手の個人情報を一方が取得する場合等において、「手術を受けることに同意します」、「個人情報を取得・保管することに同意します」というような文書に使用されます。同意書の署名捺印も、一方だけが行うことで法的効力が認められます。

「合意書」と「覚書」の違い

合意書は、偶発的、単発的に起きた事象についての当事者の合意内容を記す場合によく使用されます。
これに対して、覚書は、契約の内容がある程度固まってきた前段階で、その時点での合意内容を確認するために作成されたり、契約締結後に契約内容の不備を補うために作成されたりすることが多いです。

「合意書」と「誓約書」の違い

誓約書は、一方的な意思表示を示す文書の表題として使用されます。例えば、「慰謝料として金100万円を支払うことを誓約します。」「今後は二度と○○という問題を起こさないことを誓約します」等、何らかの義務を負う人がその義務を認めるために作成する書面で使用されます。誓約書は、その義務を負うことを認めたという点において法的効力が発生します。

合意書の正しい書き方を理解しましょう

合意書は、契約書と同様の法的効力を持つものです。ただし、その書き方に不備があれば、望んだとおりの効果が得られないリスクがあります。合意書を作成する際は、何についての合意なのか、合意した内容として、誰が、誰に対して、いつまでに、どこで、どのようなことをするのか、5W1Hを意識して明確に記載するようにしましょう。

よくある質問

合意書に法的効力はありますか?

あります。ただし、強制執行等を行う強制力まではありません。詳しくはこちらをご覧ください。

合意書はどのように作ればよいですか?

合意書の内容として、何についての合意するものなのか、誰が、誰に対して、いつまでに、どこで、どのようなことをするのか、ということを明確に記載します。作成日付と、当事者の署名捺印も欠かさないようにしましょう。 詳しくはこちらをご覧ください。


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