• 更新日 : 2024年11月14日

電子契約の印刷は必要?法的効力や印紙税の有無、適切な保存方法を解説

コロナ禍を契機に、非対面でやり取りできる電子契約を導入する企業が増加しています。電子契約の場合、契約書を紙で印刷して保管するべきなのかが気になる方も多いでしょう。
この記事では電子契約で紙に印刷した場合の法的効力、印紙税の有無、保存方法についてわかりやすく解説します。

電子契約の印刷は必要?

契約書を紙で保存していた場合、電子契約を新たに導入するとき、電子契約に関してもプリントアウトして保管する必要があるのか気になる方もいるでしょう。

結論として、電子契約はデータの状態で保管することが原則であるため、印刷する必要はありません。ただし、データでの保存に関しては「電子帳簿保存法」の要件を満たしているかに注意が必要です。

電子帳簿保存法に沿った正しい電子契約の保存方法については、後の章で詳しく解説しますので、そちらもご参照ください。

印刷した電子契約の法的効力

電子契約を印刷した場合、紙に法的効力が認められるかどうかは、印刷した紙が原本かどうかで変わります。印刷した契約書に押印をするなどして原本として取り扱う場合は法的効力があります。

一方、電子データを原本として扱い、控えとして印刷したものは副本です。副本は原本と同じ内容が記載されていますが、あくまで控えであり、原本と同一の法的効力が認められる可能性は低いでしょう。

電子契約を印刷して保管してもよい場合

電子帳簿保存法では、電子契約はデータの状態での保管を原則としており、規定に沿っての保管が必要です。

電子帳簿保存法は1998年に施行されて以来、社会のペーパーレス化を目指すために改正を繰り返してきました。しかし、完全に紙をなくすことは現実的には難しいため、一定の要件を満たせば印刷して保管することを認めています。

2023年12月までは印刷して保管することが可能

2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、電子取引の書類はすべてデータで保管をするように義務化されました。ただし、2022年1月の時点で電子保存の義務化に対応できた企業が少なかったため、義務化は2023年12月まで延期されました。

2023年12月までは印刷して保管することが認められていたのは、これが理由です。

2024年1月以降も要件を満たせば印刷しての保管が認められる

2024年1月以降、電子保存は義務化されました。しかし場合によっては電子保存が困難なケースもあることから、以下3つの要件を満たせば印刷して保管することが認められています。

  • 電子帳簿保存法の規定に沿った保存ができなかったことに関して相当の理由があること
  • 税務職員の電磁的記録のダウンロードの求めに応じること
  • 税務職員に対して電磁的記録の出力書面の提示あるいは提出が可能であること

1つ目の要件である「相当な理由」に関して、具体的な基準などは明確に決まっていません。自社の理由が相当なものであると認定されるかは不透明であり、判断は難しいといえます。

2つ目の「ダウンロードの求めに応じる」とは、データのコピーを税務職員に渡すことです。パソコンなどに保存したデータを、USBメモリなどにコピーして提出します。

3つ目の要件として、データを紙で出力した書面の提示・提出が可能であることも求められます。2つ目の要件と同様、税務職員の要求に応じて対応できるよう準備しておくことが必要です。

印刷した電子契約は再度電子化してはいけない

いったん電子契約を印刷して原本とした後、紙を再び電子化して原本とすることは認められませんので注意しなくてはなりません。

一度プリントアウトした契約書の原本は、法人税法によって印刷した状態で7年以上保存しなくてはなりません。この場合、再度電子化してデータを原本とすることは禁じられています。ただし、原本ではなく控えとして電子化して保存する分には問題ありません。

電子契約書を印刷した場合、印紙税は必要?

契約書を電子データだけでなく、紙で保存したい場合もあるかもしれません。紙の契約書では印紙税が発生します。

印紙税とは経済取引によって、契約書や領収書などの文書を作成した際に、印紙税法によって文書に課税される税金です。印紙税は収入印紙という紙片を書類に貼ることで納税しますが、貼っていない状態では脱税になってしまうため注意しなくてはなりません。

電子契約を印刷した場合に印紙税が発生するかどうかは、契約において何を原本とするかによって、結論が変わります。印紙税が発生するケースと発生しないケースを混同しないように注意してください。

原則として電子契約なら印紙税は発生しない

印紙税の対象は、課税対象とみなされる書面です。しかし、電子契約のデータは書面ではないため、印紙税はかかりません。

一方で、電子契約を締結した後に印刷して保存する場合はどうなるのか疑問に思う方もいるでしょう。電子契約を締結すると原本はあくまでデータとなり、紙は写しであるため印紙税の課税対象にはなりませんので、印紙税は発生しません。

電子契約を印刷したものを原本とする場合は印紙税が発生する

電子契約を利用した場合でも、印刷したものを原本として契約を締結するケースもあります。電子契約から契約書を印刷・製本し、契約書に押印して保存するような場合です。

このケースでは、原本はデータではなく紙であるため、印紙税が発生します。契約額に応じて定められた額の収入印紙を購入し、紙に貼付する必要があります。

電子契約を利用して印紙税を節約したい場合、データを原本とするほうがおすすめです。

電子帳簿保存法による電子契約の正しい保存方法

電子帳簿保存法では、対象となる書類や、電子保存と認められるための要件を定めています。電子契約で締結した契約書をはじめ、取引に関連する書類や領収書などは、適切に保存しなくてはなりません。

2023年までは紙での保存も認められていましたが、2024年以降は原則としてデータでの保管が義務化されています。電子帳簿保存法が定める要件を把握し、電子契約は正しい方法で保管しましょう。

対象になる書類

電子契約に関連する、以下の書類は電子データとして保存する必要があります。

取引に関するあらゆる書類が電子帳簿保存法の対象で、契約書や請求書に加え、送り状も対象です。また、電子データとして発行した書類に加え、相手から電子データで受け取った書類も対象になるため注意しましょう。

電子契約を電子保存する場合の要件

電子帳簿保存法に沿って適切に電子保存をするためには、以下4つの要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保
  • 可視性の確保
  • マニュアルの設置
  • 検索機能の付与

1点目の真実性の確保とは、書類の内容が改ざんされていないことを証明するための要件です。具体的には、タイムスタンプの付与により、いつ作成されたのかを示す必要があります。ただし、訂正・削除の履歴が残るシステムや、訂正・削除ができないシステムの場合は、タイムスタンプは不要です。

2点目の可視性の確保とは、電子データに簡単にアクセスできることを指します。必要なときにデータにアクセスできるよう、パソコンやディスプレイの設置が求められます。

3点目に、電子契約システムや機器の利用方法のマニュアルを設置することが必要です。システムのみならず、ディスプレイやプリンターなど、電子契約に関するあらゆるものに関するマニュアルを設置しなくてはなりません。

4点目は、データを検索可能できる機能を確保することです。具体的には、取引の年月日、取引相手、取引金額などの項目から、取引データを検索できるようにする必要があります。

書面で締結した契約書を電子化する場合の注意点

紙の契約書の場合、紙のまま保存する方法とスキャンして保存をする方法があります。電子データで発行・受領した契約書は、基本的にそのままデータとして保存すればよいですが、紙の場合は以下の点に注意が必要です。

  • 契約書の原本は紙のまま保存する
  • スキャナー保存できないものもある

2つの注意点について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

契約書の原本は紙のまま保存する

紙の契約書ですでに発行・締結した書類は、原則として紙の原本のままで保存することが必要です。電子保存した契約書はあくまで控え・写しとしての扱いとなります。

ただし、スキャナー保存の要件を満たせば紙のまま保存する必要はなく、スキャナー保存をした後に紙を廃棄しても問題ありません。要件とは、先ほど解説した真実性の確保・可視性の確保・マニュアルの設置・検索機能の付与の4つです。

スキャナー保存できないものもある

スキャナー保存した画像には、一定の解像度があることが求められます。解像度が著しく低い画像、一部が途中で切れている画像など、不備のあるものはスキャナー保存として認められません。

また、電子帳簿保存法では、スキャナー保存をするために、適正事務処理要件が定められています。この要件は、2名以上の担当によって、原本の紙とデータの照合をする検査のことです。よって、検査日までは原本の紙も保存しておかなくてはなりません。

電子契約の保存に適した電子契約システムとは?

書類管理において、データと紙が混在すると管理に手間がかかり、ミスも発生しやすくなります。そこで、電子契約書と紙の契約書を一元管理できるシステムを導入するのがおすすめです。

「マネーフォワード クラウド契約」は契約書の作成から申請・承認・締結・保存・管理までをワンストップで対応するサービスです。電子契約書と紙の契約書をまとめて管理することも可能で、他社の電子契約サービスから受け取る電子契約データも、締結完了時に自動で取り込めます。

契約書の送信件数や保管件数による課金・上限設定はないため、管理する契約書が増えても安心して利用できます。

電子契約の印刷は原則不要だが保存要件に注意しよう

電子契約の場合はデータで保存するのが原則のため、紙で印刷する必要はありません。電子契約では印紙税も発生しませんが、電子契約から印刷した紙を原本とする場合は印紙税がかかります。

電子契約を保管する際には、電子帳簿保存法が定める要件を満たす必要があります。具体的には、真実性の確保、可視性の確保、マニュアルの設置、検索機能の付与の4点です。

電子契約システムを選ぶ際には、電子契約書と紙の契約書の両方とも一元管理できるものを選ぶのがおすすめです。


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