• 作成日 : 2024年5月10日

電波法とは?法律の内容や規制内容、事業者が気をつけるべき点を解説

電波法とは、電波の効率的・公共的利用を円滑に進めるための法律です。電波を利用する事業者は、法律に違反すると電波利用の停止命令が下る可能性があります。

電波法は一定期間で改正が行われるため、事業者はその変更内容を注視しておかなければなりません。本記事は、電波法の概要と規制内容、事業者として気をつけるべき点などを解説します。

電波法とは

電波法とは、国民が電波を使用するにあたって、その公平かつ効率的な利用の確保を通じて公共の福祉の増進を目的とする法律です電波は国民共有の限られた資源であり、その適正な利用を図るためのルールとして1950年に施行されました。戦後の電波利用ニーズの高まりと、無秩序な電波利用による混信問題への対処が背景にありました。

電波法は総務省の管轄であり、電波の適正な管理を行っている他、無線局の開設許可や秘密の保護などのルールも規定されています。

かつて電波というとトランシーバー、ラジオ、テレビなどが一般的でしたが、すでにスマートフォンやWi-Fiなどの普及が進み、Bluetoothなどのワイヤレス機器も増え、電波の利用は個人レベルで身近なものになりました。あまりに日常的に利用されている一方で、電波利用は電波法により厳しく規制されています。

電波の適正利用を確保する観点から、電波法では無線局や無線設備、無線従事者など、さまざまな側面から規制が設けられています。国内の事業者は、これらの規制を理解し遵守することが求められているのです。

電波法の構成と規制内容

電波法ではさまざまな規制が設けられています。以下では、とくに重要な要素である無線局、無線設備、無線従事者の3つについて解説します。

無線局に関する規制

無線局は誰でも自由に開設できるわけではありません。電波法第4条により、無線局の開設には総務大臣の許可が必要とされています。無線局とは、送信機・受信機などの無線設備を用いて無線通信を行う場所・者の総体のことです。

開設許可申請時には、開設を必要とする理由や電波の型式・希望する周波数の範囲などを記載した書類を提出します(同法第6条)。無線局には放送、通信、実験、アマチュアなど多様な種類があり、一般の企業が関係するのは、主に構内無線局などでしょう。

許可審査を通過し、免許を得た者には電波の利用権と一定期間の更新権が与えられます。一方で、適正な運用や障害対応などの義務も課されます。

無線設備に関する規制

電波法第38条および総務省令(無線設備規則)では、混信や電波妨害などが起きないように、無線設備についての技術基準に関する規定が設けられています。

技術基準は、無線設備の種類ごとに異なります。技術基準をクリアした機器には「技適マーク」と呼ばれる印章が付与されます。たとえば、一般販売されている携帯電話、無線LAN、ワイヤレススピーカーなどにも技適マークが付いていて、技適マークのない電波機器の販売や使用は電波法違反となる可能性があります。

また、電波法では無線設備の工事規制(第7条他)や、設備の定期検査の規定(第73条)も設けられています。これらの規制を通じて、電波の混信防止や他システムへの影響防止が図られています。

無線従事者に関する規制

電波法で規制しているのは、無線局や無線設備だけではありません。それらを操作・監視を行う無線従事者に関する規制も定められています。

無線設備を用いて通信操作を行うには、業務内容に応じた資格や免許を取得した無線従事者の配置が電波法に基づき義務付けられています。企業が関係する資格は、主に無線従事者資格であり、総務大臣が発行する免許を受けなければなりません。もし無線従事者資格のないままに一定規模の無線設備を操作すると、電波法違反で罰せられる恐れがあります。

事業者が気をつけるべき電波法の規制

次に、電波を利用するにあたって事業者が注意するべきポイントについて解説します。

無線局の開設許可

企業が無線局を開設する場合、電波法第4条により総務大臣の許可を受ける必要があります。許可申請時には、開設の目的、通信の相手方および通信事項、設置場所、電波の型式・希望する周波数の範囲などの適合性について審査されます。許可なく無線局を開設した場合は電波法違反となり、罰則の対象となります。

事業者は無線局の開設に先立ち、十分な期間を見込んで申請を行う必要があります。審査プロセスでの対応が遅れれば、事業の開始時期に影響が出る可能性があります。また、許可条件を満たすために、無線設備の変更や設置場所の見直しなども求められる場合があるため、綿密な準備と柔軟な対応が大切です。

無線設備の技術基準への適合

電波法第7条では、無線設備が総務省令で定める技術基準に適合することが義務付けられています。技術基準は、設備の種類ごとに異なる内容となっています。

たとえば、構内無線やデジタル簡易無線局など、企業が新たな無線設備を導入する際は、その設備が技術基準を満たしているかを必ず確認する必要があります。規定に合わない設備を使用すれば、電波法違反となり、課徴金や使用停止命令などの措置を受けかねません。

無線従事者の確保

無線設備の運用を行う無線従事者には、電波法に基づく免許・資格の取得が義務付けられています。無線局を運用する事業者は、無線設備のシステムを組む際に、必要な無線従事者の確保が必要です。資格・免許を持たない者に無線設備の運用を行わせれば電波法違反になります。求められる無線従事者の要件を確認し、計画的に資格者の採用や社内研修を行う必要があるでしょう。

電波法に違反した場合

電波法にはさまざまな規制が設けられ、違反すると罰則や処分が科される可能性があります。管轄省庁である総務省は、各地域に総合通信局を設置し、不法な無線局の調査を行い、集めた証拠をもとに捜査機関へ告発をしています。

とくに無線設備の製造業者、輸入業者、販売業者は、技術基準に反した無線設備を取り扱ってはいけません(同法第102条の11第1項)。電波法の違反が確認されると、次のような処分を受ける可能性があります。

  • 技術基準に適合しない無線設備の製造・輸入・販売する業者に対しては、適正な運用のために必要な措置を講ずるよう勧告を受ける(同条第2項)
  • 勧告を受けた事業者が指示に従わない場合、企業名や商品名について、勧告に従わなかった旨とともに公表される(同条第3項)
  • 勧告を受けてなお是正されず、適正な無線局の運用に重大な悪影響を与える恐れがある場合、勧告にかかる措置を講ずる命令を受ける(同条第4項)

また、無線局を開設する事業者においては、技術基準に適合しない無線設備で、総務大臣の免許を受けずに無線局を開設した場合、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金を科される恐れがあります。

直近の電波法改正のポイント

電波法の改正により、2024年12月1日以降、350MHz帯および400MHz帯のアナログ簡易無線機は使用できなくなります。

電波は有限の希少資源である一方、スマートフォン、テレビ、消防無線などさまざまな用途で利用されており、今後も電波の利用ニーズは高まっていくことが想定されています。そこで、アナログ方式と比べて、占有周波数帯幅を狭帯域化しても通信品質の向上や電波の効率的な利用ができるデジタル方式に移行していくことが決まりました。
法改正自体は2008年8月に決定され、350MHz帯・400MHz帯の使用期限は2020年11月30日までとされていました。新型コロナウイルス感染症の影響から2年間の延長がなされていましたが、予定通り2024年11月30日で当該周波数の使用はできなくなります。

現在、350MHz帯・400MHz帯のアナログ簡易無線局を使用している場合は、デジタル方式の簡易無線機に移行する必要があります。アナログ簡易無線局の免許も、2021年9月1日以降は再免許の取得しか認められていません。

2024年12月1日以降、350MHz帯・400MHz帯のアナログ無線局を使用した場合は電波法違反として罰則の対象となるため、速やかにデジタル無線機に移行してください。

電波法は電波を扱う事業者にとって重要な法律

電波法は、電波を利用して通信を行う事業者にとって、遵守すべきルールが定められている法律です。無線局や無線設備、無線従事者などについて、総務大臣の許可をもらわなければ運用できません。違反すると1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。

また、電波法は無線設備の製造、販売、輸入などに関わる事業者も守らなければなりません。技術基準に適合しない無線設備を取り扱うと、総務大臣からの是正勧告を受け、改善しなければ企業名を公表される可能性があります。

電波法は、デジタル技術の革新に伴い、常に時代に合わせた改正が進められています。電波を使用している事業者は法令違反にならないように、電波法をしっかりと遵守するようにしましょう。


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