• 作成日 : 2024年12月3日

準委任契約に契約不適合責任は当てはまる?トラブルへの対応や防止策を解説

準委任契約とは業務委託契約の一種で、法律行為以外の業務を依頼する際に用いられます。

準委任契約は業務の遂行(事務作業等)自体に報酬を支払う契約形態ですが、品質などが契約内容に合わない場合、受託者が契約不適合責任を問われることがあります。

今回は、準委任契約と契約不適合責任について詳しくご説明します。

準委任契約とは?

準委任契約は業務を他者に委任する契約形態の一つで、依頼者が実務や事務などの業務遂行を受任者に依頼する際に締結されます。民法第656条では、準委任契約は「法律行為でない事務の委託について準用する。」と定められています。準委任契約で委託される業務の例としては、コンサルタント業務、システム開発のサポート、医師への診療依頼などが挙げられます。

目的物の完成を約束する請負契約と異なり、結果ではなく過程に重点が置かれているという特徴があります。

準委任契約の善管注意義務とは?

準委任契約では受任者が善管注意義務を負う必要があります。善管注意義務とは受任者が委託された業務を遂行するにあたり、その分野の専門家として期待される注意と配慮をもって業務を処理する義務です。

例えばシステム開発で準委任契約を結んだ場合、受任者はそのシステムの完成義務は負いませんが、その業界内および対象となるシステムで一般的に期待されるレベルで業務を行う必要があります。

もしこの義務を怠り損害が生じた場合、受任者には賠償責任が発生する可能性があります。このため、受任者は事前に業務内容や範囲を詳細に確認し、適切な管理体制を整えることを求められます。

準委任契約の種類

準委任契約には主に「履行割合型」と「成果完成型」という2つの形態があり、報酬の支払いタイミングと報酬請求の可否が異なります。ここからはそれぞれの特徴について見ていきましょう。

履行割合型

履行割合型の準委任契約は業務の完了を目的とせず、その進捗や遂行割合に応じて報酬が支払われる形態です。コンサルティングやシステム開発の支援などの業務が例として挙げられ、依頼された範囲内で遂行された業務量や時間に対して報酬が発生します。

履行割合型では契約の完了よりも業務が適切に進められているかが重要視され、業務遂行の過程が評価されます。そのため、作業の中断や途中終了が発生した場合でも進捗状況に応じて報酬が支払われるという特徴があります。

成果完成型

成果完成型では特定の成果物の納品や業務の完了が求められ、その達成により報酬が支払われます。受任者は契約で取り決めた成果が達成された際に初めて報酬を受け取るため、業務の完成や成果物の納品が必須となります。

例えばマーケティングキャンペーンの運営、システムの一部機能の実装などが成果完成型に該当し、履行割合型よりも結果や完成物に重きが置かれます。

もし契約内容に沿った成果が得られないと判断された場合は報酬が発生しないこともありますので、契約時に成果の基準を明確に定めることが重要です。

契約不適合責任とは?

契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)とは、売買契約や請負契約において引き渡された物や提供されたサービスが契約内容に適合していない場合に、売主や受託者が負う責任です。遂行した内容が品質基準に満たない、契約内容とは異なる成果物が納品された場合などが挙げられます。

契約不適合が生じた際、委託者は修理や代替品の提供、場合によっては契約の解除や損害賠償を請求することが可能です。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ変更

2020年4月の民法改正により、従来の瑕疵担保(かしたんぽ)責任が契約不適合責任に変更されました。この改正により、「瑕疵(不具合)があるかどうか」ではなく、「契約内容に適合するかどうか」という観点で受託者の責任が問われるようになりました。

契約不適合責任は目的物の種類(契約内容の目的物と実際の目的物が同じかどうか)、目的物の数量(契約で定めた目的物の数量通りか)、目的物の品質(契約で定めた目的物の品質が劣っていないか)という3点のいずれかにおいて契約内容と異なると判断された場合に生じます。

これにより、納品物が契約に定めた仕様や性能を満たしていないといった場合でも契約不適合責任が適用されるため、購入者や依頼者は修補請求や代替提供の請求が可能です。また、場合によっては価格の減額や契約解除も認められるため、委託側の権利がより強化されました。

契約不適合責任は、不適合を知った時から原則1年間追及できます(新築住宅など一部例外を除く)。

準委任契約には「契約不適合責任」は適用されない

一般的に、準委任契約には売買契約や請負契約における「契約不適合責任」は適用されないとされています。準委任契約は成果の完成を目的とせず、特定の業務の実施を依頼する契約であるためです。業務支援のように依頼された業務を適切に遂行することが目的となるため、仕事の「成果」ではなく「履行過程」が重視されます。

そのため、準委任契約では受任者に対して契約不適合責任ではなく「善管注意義務」が重視され、受任者は高い意識で業務を誠実に遂行することが期待されます。

準委任契約の責任の追及方法やトラブルへの対応

準委任契約において契約者が善管注意義務を怠った場合には責任の追及が可能です。その際の具体的な対処法として、問題の特定や契約書の見直し、債務不履行の確認などが有効です。

問題の特定と話し合い

トラブルが発生した際にはまずは問題を正確に特定し、当事者間で話し合うことが求められます。特に業務の進捗状況や責任範囲について双方で確認することで、誤解が解消でき、円滑な解決につながります。

話し合いでは具体的な改善案や再発防止策を含めた対応策を検討し、それを記録に残すことで、今後のトラブル防止にも役立ちます。

契約書の見直し

問題が生じた際には契約書の内容を再確認し、双方の義務や責任を見直しましょう。準委任契約では、契約書に記載された業務内容や責任範囲がトラブル解決の基盤となります。

そのため、契約書の条項に従い、修正が必要な箇所があれば双方で合意のもと修正し、再度署名することで、契約の実効性を高めることが可能です。

債務不履行の場合

準委任契約であっても業務が適切に遂行されなかった場合、債務不履行として責任を追及できます。債務不履行が発生した場合、依頼者は損害賠償請求や契約解除の権利を有する場合があり、まずは書面で通知を行います(民法541条、542条)。

ただ、準委任契約は成果物の納品ではなく業務の遂行自体を依頼する契約形態のため債務不履行の判断が相違することもあり、事前にしっかりとすり合わせてから契約を締結しましょう。

善管注意義務の違反の場合

準委任契約において善管注意義務違反が認められる場合、受任者は業務遂行の際に求められる注意義務を怠ったことになります。

善管注意義務違反と判断されるケースとしては書類の改ざん・虚偽の記載、法令・コンプライアンス違反、判断の誤りによる重大な損害の発生、その他、故意・過失があると判断される行為があった場合などが挙げられます。

善管注意義務違反と判断された場合、依頼者は損害賠償を請求できる可能性があります。

トラブル防止のための準委任契約書の書き方

準委任契約書を作成する際には、後々のトラブルを防ぐために契約内容や責任範囲を明確に記載する必要があります。以下でそのポイントについてご紹介します。

契約の目的・業務内容の明記

業務の目的や具体的な作業内容を明確に記載しましょう。この部分が曖昧だと業務範囲を巡ってトラブルになる可能性があります。

業務内容には、「何をするのか」「成果物の有無」「作業期間」「納品場所」など具体的な情報を記載し、業務範囲を明確化しましょう。

個別契約の成立方法

契約の成立条件を明確に示します。例えばメールや書面での注文に対する承諾方法を定めることで、口頭での指示による混乱を防ぐことができます。

善管注意義務と業務確認の手続き

準委任契約には「善管注意義務」が課されるため、受任者が業務を遂行する際には高度な注意義務を負います。

業務完了後の報告やその確認手続きについて記載します。報告書の提出期限や確認後の承認手続きなど、手続きの具体的な流れを記載することで、業務終了のタイミングや内容に対する認識の相違を防げます。

委託料と支払い条件の設定

業務の対価、支払い方法、期限、手数料の負担などを明記します。特に準委任契約では業務内容に応じた報酬形態(履行割合型か成果完成型か)を決め、業務進行に応じた支払い条件を定めましょう。

再委任の禁止と責任の明確化

受任者が第三者に業務を再委任する際の条件も定めましょう。許可がない再委託は業務品質の低下や情報漏洩につながる可能性があるため、禁止事項とする場合もあります。また、再委託を許可する場合にも、受託者が責任を負うことを明示しておきます。

反社会的勢力の排除

暴力団などの反社会的勢力に関わる企業や個人が関与しないことを宣言し、違反した場合の契約解除を可能とする条項です。

権利義務の譲渡等の禁止

相手方の承諾なしに契約上の権利や義務を第三者に譲渡できない旨を定めています。この条項により契約当事者以外が業務に勝手に関与しないようにし、取引の安定性を保つことができます。

契約期間と自動更新の設定

契約の有効期間および自動更新の有無を記載します。契約の更新時期が曖昧だと双方の認識がずれて契約や報酬に対してトラブルが発生する恐れがあります。更新のタイミングや更新しない場合の手続きを詳細に定めておくと安心です。

解除条件の明確化

契約解除の条件と手続きを明確に示します。契約途中での解除が必要となった場合の連絡方法や、解除事由(重大な過失や背信行為など)について明記します。

中途終了の場合の報酬請求権

契約が途中で終了した場合でもそれまでに行われた業務の対価を支払う旨を明らかにします。業務の進捗に応じた報酬の支払い基準を設けておくことで、未払いトラブルのリスクを軽減できます。

紛争処理と専属的管轄裁判所

契約に関する紛争が発生した場合に解決する裁判所を指定します。管轄の裁判所を設定しておくことで、トラブル発生時に迅速な法的解決が可能となります。

準委任契約での業務委託契約書のひな形、テンプレート

準委任契約を結ぶ業務委託契約書は委託する業務の範囲や契約に関する諸定義、トラブルが起こった時の対処法など幅広い範囲でルールを決めておく必要があります。当サイトでは準委任契約締結に使える業務委託契約書のテンプレートをご用意しましたので、ぜひ参考に契約書を作成してみましょう。

ルールや注意点を理解して準委任契約を活用しよう

準委任契約はコンサルティングやプロジェクト単位での業務委託などでよく用いられる契約方法です。準委任契約は契約不適合責任の対象ではないため、成果物の品質や内容を理由に責任を問われることはありませんが、善管注意義務(善良な管理意識をもって注意しながら業務を行う義務)はあるので責任感を持って業務を遂行しなければなりません。

準委任契約には請負契約など他の形態とは異なる独自の注意点やルールがあるので、きちんと守りながら活用しましょう。


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