• 更新日 : 2024年11月14日

電子契約のコストはいくら?費用の相場や内訳、安くする方法

企業の総務などの担当者にとって、契約書の管理とコスト削減は重要な課題です。近年、電子契約が普及し、印紙代や郵送代を削減できることから、多くの企業がその導入を検討しています。しかし、電子契約にも導入費用や利用料金が発生し、利用するサービスによってコスト構造が異なります。

本記事では、電子契約のコストの内訳や相場、さらにコストを安く抑える方法について詳しく解説します。

電子契約は印紙代や郵送代が不要でコストを抑えられる

電子契約は、印紙代や郵送代が不要で、紙の契約書に比べてコストを大幅に削減できる可能性があります。

電子契約が、紙の契約書に比べてコストを抑えられる理由の一つに、印紙代や郵送代が不要である点が挙げられます。紙の契約書では、契約書に収入印紙を貼る必要があり、これが大きなコストとなります。例えば、200万円~300万円の請負契約を毎月100件締結する場合、印紙代だけで月に約10万円がかかります。さらに、契約書の印刷費用や郵送費用も加わり、これらのコストが積み重なると年間で数百万円に達することもあります。

一方、電子契約では、これらの費用が一切かかりません。電子契約はインターネットを通じて契約書を送信し、電子署名を行うため、郵送費用や印紙代が不要です。また契約書の印刷や保管にかかるコストも削減できます。電子契約システムの導入には初期費用や月額利用料がかかるものの、長期的に見れば紙の契約書に比べて大幅なコスト削減が期待できます。

さらに、電子契約は契約締結のプロセスを効率化し、契約書の管理や検索が容易になるため、業務効率の向上にも寄与します。これにより、契約業務にかかる人件費も削減できるため、総合的なコスト削減効果が高いといえます。

電子契約にかかるコストの内訳

電子契約の導入にはさまざまなコストがかかってきます。ここでは、電子契約にかかるコストの内訳を詳細に解説します。

電子契約サービス導入時の初期費用

電子契約サービスの導入時には、以下のような初期費用が発生する可能性があります。

  1. システム構築費
    カスタマイズが必要な場合、システムの初期構築費用が発生します。近年、より高度なセキュリティ対策や他システムとの連携が求められる可能性があり、これらに対応するためのカスタマイズ費用も考慮する必要があります。
  2. 導入支援費
    サービス提供企業による導入支援やトレーニングの費用が含まれます。改正電子帳簿保存法の完全義務化に伴い、法令遵守のための適切な運用方法の習得が重要となるため、この費用は重要な投資となります。
  3. 既存データの移行費用
    既存の紙の契約書や他システムのデータを新しい電子契約システムに移行する際の費用です。改正電子帳簿保存法に準拠したデータ移行が求められるため、専門的な知識と作業が必要となる場合があります。
  4. セキュリティ対策費
    >改正個人情報保護法に対応するため、高度なセキュリティ対策が必要となる場合があります。例えば、多要素認証システムの導入や、暗号化技術の強化などが含まれる可能性があります。

電子契約サービスの利用料金

電子契約サービスの利用料金は、主に以下の要素で構成されています。

  1. 月額・年額基本料金
    多くのサービスでは、月額または年額の基本料金が設定されています。この料金には、基本的な機能の利用やデータの保存などが含まれます。2024年の改正電子帳簿保存法に対応したデータ保存機能も、この基本料金に含まれることが多いようです。
  2. ストレージ料金
    契約書のデータ量に応じて追加料金が発生する場合があります。改正電子帳簿保存法では、電子取引データの保存期間が明確に規定されているため、長期保存に対応したストレージ料金の設定が重要です。
  3. API連携料金
    他のシステムとのAPI連携を行う場合、追加料金が発生することがあります。デジタル社会形成基本法の施行に伴い、システム間連携の重要性が増しているため、この費用も考慮する必要があります。
  4. サポート料金
    テクニカルサポートや法令対応のコンサルティングなどに対する料金が含まれる場合があります。電子署名法や電子帳簿保存法の改正に伴い、専門的なサポートの重要性が増しているため、この費用も重要な投資となります。

送信件数やユーザー数による追加料金

多くの電子契約サービスでは、送信件数やユーザー数に応じて追加料金が発生します。

  1. 送信件数による料金
    契約書の送信回数に応じて料金が加算されるサービスがあります。ただし、マネーフォワード クラウド契約のように、送信料が0円のサービスも存在します。このようなサービスを選択することで、送信回数を気にせず利用でき、特に契約数の多い企業にとっては大きなコストメリットとなります。
  2. ユーザー数による料金
    システムを利用するユーザー数に応じて料金が設定されるケースがあります。改正電子署名法では、電子署名の信頼性確保がより重要視されているため、各ユーザーの適切な管理と認証が必要となります。このため、ユーザー数に応じた料金設定は、セキュリティ確保の観点からも重要です。
  3. 同時アクセス数による料金
    一部のサービスでは、システムに同時にアクセスできるユーザー数に制限があり、これを超える場合に追加料金が発生することがあります。
  4. 機能ごとの追加料金
    高度な承認ワークフローや、詳細な監査ログの記録など、特定の機能を利用する際に追加料金が発生する場合があります。改正電子帳簿保存法では、より厳格な取引記録の保存が求められるため、これらの機能の重要性が増しています。

電子契約と紙の契約のコストの違い

電子契約と紙の契約のコストの違いは、企業の経費削減や業務効率化に大きな影響を与えます。法改正やデジタル化の進展により、電子契約の導入が進んでいますが、具体的なコストの違いを理解することが重要です。

紙の契約で必要なコスト

紙の契約には、以下のようなコストが発生します。

印紙税:契約書に貼付する収入印紙の費用。

ペーパー代:契約書の印刷に必要な用紙代。

インク代:契約書の印刷に必要なインク代。

郵送費:契約書を郵送する際の費用。

保管費:契約書を物理的に保管するためのスペースや設備の費用。

人件費:契約書の作成、印刷、郵送、保管にかかる人件費。

電子契約で必要なコスト

電子契約には、以下のようなコストが発生します。

導入費用:電子契約システムの初期設定や導入にかかる費用。

月額利用料:電子契約システムの月額利用料金。

電子証明書の取得費用:電子署名に必要な電子証明書の取得費用。

システムメンテナンス費用:電子契約システムの保守やアップデートにかかる費用。

コストシミュレーション

紙の契約と電子契約のコストの比較表を提示したうえで、電子契約と紙の契約にかかるコストの違いを、年間100件の契約を想定してシミュレーションします。

紙の契約と電子契約のコストの比較表

紙の契約でのコストシミュレーションは、以下の通りです。

印紙税: 200円 × 100件 = 20,000円

紙代とインク代: 50円 × 100件 = 5,000円

郵送費: 370円 × 100件 = 37,000円

保管費: 5,000円/月 × 12ヵ月 = 60,000円

人件費: 5,000円/月 × 12ヵ月 = 60,000円

年間総コスト: 182,000円

一方、電子契約のコストシミュレーションは、以下の通りです。

導入費用: 50,000円(初年度のみ)
月額利用料: 10,000円 × 12ヵ月 = 120,000円
電子証明書取得費用: 4,590円
システムメンテナンス費用: 5,000円/月 × 12ヵ月 = 60,000円
人件費: 5,000円/月 × 12ヵ月 = 60,000円
年間総コスト: 294,590円

上記のシミュレーションでは、初年度において電子契約のコストが紙の契約を上回っています。しかし、以下の点を考慮する必要があります。

  1. 長期的なコスト削減
    2年目以降は導入費用が不要となり、電子契約のコストが低下します。
  2. 業務効率化
    電子契約では、契約締結までの時間が大幅に短縮され、業務効率が向上します。
  3. コンプライアンス強化
    電子契約では、契約の管理や追跡が容易になり、コンプライアンスリスクが低減します。
  4. 環境負荷の軽減
    紙の使用量が減少し、環境への配慮にも繋がります。
  5. 法改正への対応
    ここ数年、電子契約の法的有効性が拡大しています。

これらの要因を総合的に考慮すると、電子契約への移行はコスト削減にとどまらず、長期的には大きなメリットをもたらすといえるでしょう。

電子契約は相手側に費用負担はあるのか

電子契約は、ペーパーレス化や業務効率化を実現する手段として注目されています。しかし、導入を検討する際に「相手側に費用負担が生じるのではないか」という懸念を抱く企業も少なくありません。電子契約を導入する際、相手側に費用負担が発生するかどうかは、契約の種類や方法によって異なります。

立会人型と当事者型の違い

電子契約には主に「立会人型」と「当事者型」の2つの方式があり、相手側の費用負担はこの方式によって大きく異なります。

立会人型は、電子契約サービス提供事業者が契約当事者の署名や契約内容を証明する方式です。この方式では、相手側は通常、無料で契約を締結できます。特別な機器やソフトウェアを必要とせず、メールアドレスさえあれば利用可能なため、導入のハードルが低いのが特徴です。

一方、当事者型は、契約当事者自身が電子署名を行う方式です。この場合、相手側は電子証明書の取得が必要となり、通常は費用が発生します。電子証明書の取得費用は、サービスによって異なりますが、年間数千円から1万円程度が一般的です。

無料または安い電子契約サービスの注意点

無料または安価な電子契約サービスはコスト削減の魅力がありますが、法的リスクや運用面での制限を理解しておくことが重要です。

電子署名・タイムスタンプなし

一部の無料または低価格な電子契約サービスでは、電子署名やタイムスタンプ機能が提供されない場合があります。電子署名法に基づく電子署名やタイムスタンプは、契約の法的効力を保証する重要な要素です。これらがない契約書は、後にトラブルや改ざんが発生した際に法的証拠としての効力が弱まる可能性があります。従って、サービスを選ぶ際は、電子署名とタイムスタンプ機能が含まれているかを確認することが不可欠です。

送信上限が少ない

無料プランや安価な電子契約サービスには、送信できる契約書の件数に上限が設定されている場合があります。契約件数が多い企業や急成長している企業では、この送信上限が業務のボトルネックとなる可能性があります。マネーフォワード クラウド契約のような有料プランでは、送信件数が無制限または大幅に緩和されている場合が多いため、業務効率を考えるとより適した選択になることが多いようです。

電子契約書の保管が不可

安価な電子契約サービスの中には、契約書の保管機能が不十分な場合があります。契約書の保管機能がない場合、別途クラウドストレージを利用する必要があり、管理が複雑化します。さらに、改ざんや紛失のリスクも高まります。法令に準拠した長期保存が求められる場合、保管機能が充実したサービスを選択することが重要です。

日本語の対応が不完全

安価な電子契約サービスの中には、日本語に完全対応していないものもあります。契約書やユーザーインターフェースが日本語に対応していない場合、利用者間での誤解や業務効率の低下を招く恐れがあります。特に、日本国内での利用が多い企業にとっては、日本語対応が不十分なサービスの利用はリスクとなるため、対応言語も含めたサービス選定が必要です。

電子契約のコストを安く抑える方法

電子契約のコストを抑えることは、特に中小企業にとって重要な課題です。サービス選びや契約管理の工夫次第で、電子契約にかかるコストを効率的に削減できます。

従量課金が発生しないサービスを選ぶ

電子契約サービスには、送信件数やユーザー数に応じた従量課金制を採用しているものがあります。頻繁に契約を行う企業では、この従量課金が大きな負担となることがあります。コストを安く抑えたい場合、従量課金が発生しない定額制のサービスを選ぶことが有効です。マネーフォワード クラウド契約など、企業の利用規模に合わせた定額プランが提供されているサービスを利用することで、予算の安定管理が可能になります。

必要な機能のみが搭載されたサービスを選ぶ

電子契約サービスには、さまざまな機能が含まれている場合がありますが、全ての機能が必ずしも必要とは限りません。自社の業務に最適な機能だけを提供しているサービスを選ぶことで、不要なコストを削減できます。例えば、複雑なワークフローや多段階の承認機能が必要ない企業では、シンプルな機能構成のサービスを選ぶことで月額費用を抑えられます。必要な機能に焦点を当てたサービス選定が、無駄のないコスト管理につながります。

電子契約でコストダウンに成功した事例

ここでは、マネーフォワード クラウド契約を導入し、電子契約でコストダウンに成功した企業の事例を3つ紹介します。

契約業務を月62.7時間から15時間へ工数削減

キューサイ株式会社では、契約業務の効率化を図るために「マネーフォワード クラウド契約」を導入しました。導入前は、契約業務に月62.7時間を費やしていましたが、導入後は15時間にまで削減されました。この大幅な工数削減は、契約書の作成から押印、管理までのプロセスを自動化したことによるものです。特に、押印完了までの時間が平均1.5日、最短30分に短縮されたことが大きな要因です。また、従量課金制ではないため、コストを気にせずに社内展開が可能となり、業務の効率化とコスト削減を同時に実現しました。

収入印紙税の大幅な削減

株式会社第一住建ホールディングスでは、紙文化が根強い不動産業界において、ペーパーレス化を進めるために「マネーフォワード クラウド契約」を導入しました。これにより、収入印紙税の大幅な削減が実現しました。従来は契約書の郵送や押印に時間と手間がかかっていましたが、電子契約によりこれらのプロセスがオンラインで完結するようになり、契約締結のスピードも向上しました。また、オンラインでのワークフロー構築により、内部統制の強化も実現し、業務効率化とコスト削減を同時に達成しました。

月100件以上の締結を紙から電子に

株式会社ADX Consultingでは、月100件以上の契約締結を紙から電子に移行することで、業務効率化を実現しました。リモートワークが主流となる中、製本や押印、郵送作業のために出社する必要があった状況を改善するために「マネーフォワード クラウド契約」を導入しました。これにより、非生産的な業務がなくなり、大幅な業務効率化が実現しました。また、電子契約サービスの導入経験を踏まえた提案ができるようになり、クライアント企業のDX支援にもつながっています。

マネーフォワード クラウド契約なら契約書の送信・保管が0円

マネーフォワード クラウド契約」では、契約書の送信にかかる費用が0円です。通常、電子契約サービスでは契約書の送信ごとに料金が発生することが多いですが、このサービスでは送信件数に制限がなく、追加料金も発生しません。契約件数が多い企業でもコストを気にせずに利用することができます。また、送信料が0円であるため、契約締結のスピードも向上し、業務の効率化が図ることができます。

また、マネーフォワード クラウド契約では、契約書の保管にかかる費用も0円です。契約書の保管件数に制限がなく、追加料金も発生しません。これにより、契約書の管理が容易になり、保管スペースや管理コストを削減できます。また、電子契約書だけでなく、紙の契約書も一元管理できるため、契約書の検索や管理が効率化されます。

加えて、契約書の作成から申請・承認、契約締結、保管・管理までワンストップで対応しており、契約業務の効率化と内部統制の強化が実現します。

電子契約でコスト削減を実現し、業務効率を最大化しよう!

電子契約は、印紙代や郵送代を削減し、業務効率を向上させるための有効な手段です。導入には初期費用や月額利用料がかかるものの、長期的には紙の契約書に比べて大幅なコスト削減が期待できます。

また、無料または安価なサービスを選ぶ際には、法的効力や機能制限に注意が必要です。電子契約の導入を成功させるためには、自社のニーズに合ったサービスを選び、適切な運用を行うことが重要です。具体的な成功事例を参考にしながら、効果的なコスト削減を実現しましょう。


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