• 作成日 : 2024年11月7日

捺印とは?署名・記名・自署の意味や押印との違いを解説

捺印(なついん)とは、一般的に「署名捺印」を省略した呼称のことです。署名とは自筆で書いた氏名のことで、署名捺印はその横に印鑑を押すという意味になります。単に印鑑を押すことを指して使う場合もあります。

本記事では、捺印の意味や「押印」との違い、書類ごとに、どのような印鑑を使えばよいのかを解説します。ぜひチェックしてください。

捺印は「署名捺印」を省略した呼称のこと

一般的に捺印(なついん)とは、「署名捺印」を省略した言葉として使用されます。署名は本人が手書きで氏名を書くことであり、捺印は印鑑を押すことを指します。そのため、署名捺印は自筆で書いた氏名の横に印鑑を押すという意味です。また、単純に印鑑を押す行為を「捺印」と呼ぶケースもあります。

契約では、本人の意思で書類が作成されていることを証明することが大切であり、自筆と印鑑がある捺印は特に証拠効力の高い方法です。そのため、重要な契約では主に捺印が採用されています。

記名捺印は何を指す?署名捺印との違い

署名捺印とは別に、「記名捺印」という言葉もあります。意味は異なるため、混同しないよう注意しましょう。

署名捺印と記名捺印の違い

記名捺印とは、印刷やゴム印など、自筆以外の方法であらかじめ名前が記されている書面に印鑑を押すことです。署名と記名は、それぞれ次のように定義できます。

  • 署名:自分の氏名を手書きすること
  • 記名:自筆以外の方法で氏名を記すこと

署名と記名の違いは「自分で書いているかどうか」であり、両者は書類の法的効力が異なります。契約の場面では署名をすることで本人性が担保され、法的効力が高くなります。一方、記名だけでは本人性の担保が難しく、法的効力が認められない可能性があります。記名の場合は印鑑を押すことで、法的効力を補うことが可能です。

なお、記名捺印は「記名押印」と呼ばれる場合もあり、意味は同じです。「記名押印」を省略して「押印」と呼ぶ場合もあります。捺印と押印の違いは、このあとの項目で説明します。

社印捺印は何を指す?署名捺印との違い

社印捺印の社印とは、会社名が彫られた四角い印鑑のことです。社印捺印は、会社名の横に社印を押すことを指します。

社印は角印とも呼ばれ、領収書請求書など日常的な業務に使われます。実印ではなく、会社の認印というべきものです。

署名捺印と社印捺印の違い

署名捺印は自署した個人の氏名に印鑑を押すことであるのに対し、社印捺印は会社名の横に社印を押すものです。

社印捺印は主に、取引先に渡す納品書・請求書・領収書などの書類に行われます。法律上、これらの書類に社印を押すという決まりはありませんが、捺印により会社が正式に発行した文書であることが伝わります。ビジネス上の慣例として、受け取る書類には社印を求める会社も少なくありません。

電子捺印は法的効力を持つ電子印鑑を用いる

電子捺印とは、パソコンやタブレット上で、電子文書に電子印鑑を押すことです。PDFやExcel、Wordといった電子文書に、直接捺印します。近年は、書類のペーパーレス化に伴い、電子捺印を活用するケースも増えてきました。

電子印鑑とは、印鑑をデータ化したもので、「単純な印影のデータのみのもの」と、「印影のデータに押印者や作成者、タイムスタンプなど個別の識別情報を組み込んだもの」の2種類に分かれます。

印影データのみの電子印鑑は、WordやExcelなどのツールで簡単に制作できるのがメリットです。しかし、改ざんが容易であり、偽造や許可のない捺印であってもそれを証明する手段がありません。そのため、重要な文書への捺印には使用されず、日常業務の書類に認印として使用されるのが一般的です。

電子印鑑に法的効力を持たせるためには、有料のサービスで識別情報や押印した時間などの記録情報が組み込まれた電子印鑑を使う必要があります。費用はかかりますが、情報が組み込まれていることによって捺印の証拠を残せるため、重要な文書にも使用できます。

電子印鑑については、以下の記事も参考にしてください。

「捺印省略可能」は具体的にどういうこと?

「捺印省略可能」とは、書類に印鑑を押すことを省略できるという意味です。近年、行政機関をはじめとして、捺印を省略する動きが加速しています。

従来、行政機関では書類に捺印することが原則とされてきましたが、デジタル化やテレワーク推進の妨げになることを受けて、地方公共団体における押印見直しが行われたという経緯があります。

結果として、行政における手続きの99.4%が押印廃止の決定、または廃止の方向で進むことになりました。

このような行政の動きを受けて、企業でも捺印を省略する動きが進んでいます。捺印の省略によって、業務の効率化や多様な働き方の実現につながる点がメリットです。

捺印廃止により印鑑を押すために出社するといった制約がなくなり、社外からも必要な手続きができるようになります。

リモートワークや在宅勤務など、多様な働き方を採用できるようになり、介護や育児などによる従業員の離職も防止できるでしょう。

捺印の廃止によって文書の電子化も可能になり、業務の効率化を図れます。紙書類の印刷や保管、廃棄などにかかる手間や時間を省き、バックオフィスの生産性向上にもつながるでしょう。

捺印と押印の違い

捺印と似た言葉に「押印」がありますが、印鑑を押すという意味では捺印と同じです。

それとは別に、押印には「記名押印」という意味もあります。前に説明した「記名捺印」と同じ意味で、自筆以外の方法であらかじめ名前が記されている文書に印鑑を押す行為のことです。

「署名捺印」「記名押印」という意味で使われる「捺印」「押印」は、どちらも文書に印鑑を押すことであり、一定の法的証拠力を持たせることができます。

しかし、証拠力の高さで両者は異なります。捺印は印影だけでなく自筆による署名があるため、署名を行った者によって作成されたことを示す「本人性」を担保することができます。

一方、押印は自筆以外の記名に印鑑を押す行為であるため、印鑑の複製や無断利用といった可能性を排除できません。捺印より証拠力が低いと考えられるでしょう。ただし、押印する印鑑に実印(印鑑登録している印鑑)を用いれば、本人が押印したものとして証明力を高めることが可能です。

そのため、契約書などの重要な文書に印鑑を押す場合、押印よりも法的証拠力の高い捺印を行う、もしくは実印による押印を行うのが一般的です。

捺印はどのハンコを使えばいいの?シャチハタは大丈夫?

捺印には、文書に応じて実印、銀行印、認印など、さまざまな印鑑を使用できます。

印鑑ごとの役割は、次のとおりです。

  • 実印:役所に印鑑登録した印鑑
  • 銀行印:金融機関の口座開設などで届け出る印鑑
  • 認印:日常的に使う印鑑

実印は、各市町村区の役所に印鑑登録された印鑑で、重要な書類の作成に使います。具体的には、家や車など高額商品の購入、銀行融資を受ける際などがあげられます。契約の際には、実印とともに印鑑証明書(実印が本人のものであることを公的に証明する書類)の提出を求められるのが一般的です。

実印には自治体によって印影の大きさや形、刻印の内容などが決められている場合があるため、作るときは事前に確認しておきましょう。

銀行印は、金融機関の口座開設などで必要になる印鑑です。銀行窓口で取引をする際は、銀行印が必要になります。

認印は、日常のさまざまな場面で使用する印鑑です。荷物の受け取りや会社の書類確認、申請書などに使用します。

捺印をする際、「シャチハタも使えるだろうか」と気になる方も多いのではないでしょうか。シャチハタとは、印鑑の内部にインクが内蔵され、朱肉がなくても押せる印鑑のことです。正式にはメーカー名であり、製品の名前ではありませんが、現在では朱肉のいらない印鑑の一般的な呼び方として定着しています。

捺印にシャチハタが使えるかどうかは、書類の種類によって異なります。まず、役所での各書類の申請や転入届・転出届などの各種届出、税務署に提出する書類など、公的な書類では原則としてシャチハタは使えません。

また、雇用契約書などの提出書類もシャチハタは不可とする会社が多いでしょう。荷物の受け取りや回覧板、社内の確認書類などでは、シャチハタでも問題ありません。

シャチハタが使えない場面でも、特別な指定がない限り、朱肉を使う認印であれば使用できるのが一般的です。シャチハタが使えるかどうか不明な場面では、朱肉を使う印鑑を用意しておくとよいでしょう。

捺印の意味を正確に覚えよう

捺印とは「署名捺印」の略で、自筆で書いた氏名の横に印鑑を押すことを指します。これに対し、記名捺印は自筆以外で記された氏名の横に印鑑を押すことです。記名捺印は「記名押印」と同じ意味で、略して「押印」と呼ばれることもあります。

捺印にはどのような印鑑が適しているかは、書類によって異なります。印鑑の種類やそれぞれの役割を覚え、正しく使用するようにしましょう。


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