- 更新日 : 2024年11月7日
コンサルティング契約書に印紙は不要?必要な場合や契約の判断方法を解説
コンサルティング契約書における印紙税の取り扱いは、契約の種類によって異なります。契約内容によって契約種類が決まり、それに応じて印紙の要否が判断されるのです。
本記事では、コンサルティング契約締結に必要な印紙の金額や印紙なしのケース、契約当事者のどちらが負担するのか、印紙を貼る場所、割印の方法まで網羅的に解説します。
目次
コンサルティング契約書に印紙は不要?
コンサルティング契約書における印紙税の取り扱いは、契約の種類によって異なります。契約の種類によって、印紙が必要な場合と不要な場合、両方のケースが存在します。一般的に、契約の種類は「委任契約」と「請負契約」の2つに大別することが可能です。ここでは、委任契約と請負契約の違いを理解した上で、コンサルティング契約書における印紙の要否を解説します。
委任契約と請負契約の違い
委任契約と請負契約は、どちらも業務を外部に委託する場合に用いられる契約ですが、それぞれ目的や責任の範囲が異なります。以下に定義と違いを解説します。
まず、委任契約とは、法律行為を第三者に委ねる契約です(民法第643条)。例を挙げれば、弁護士に訴訟を委任する、契約を締結する、といったケースが該当します。
また、委任契約と近い契約の種類に、「準委任契約」があります。準委任契約とは、法律行為に該当しない事務処理などの業務を行うことを第三者に委ねる契約です(民法第656条)。
委任契約と準委任契約には、「法律行為に該当するか否か」に違いがあります。
一方、請負契約とは、一定の仕事の完成を目的とし、依頼者(発注者)に対してその仕事を完成させることを請け負う契約です(民法632条)。請負契約では、請負人は仕事の結果に対して責任を負い、完成させる義務を負います。たとえば、ソフトウェア開発会社にシステム開発を委託する、建設会社に自社ビル建設を委託するといった契約が該当します。
<委任契約、準委任契約、請負契約の違い>
委任契約 | 準委任契約 | 請負契約 | |
---|---|---|---|
目的 | 法律行為の実行 | 法律行為以外の事務処理や業務 | 仕事の完成 |
成果物 | 業務の遂行 | 業務の遂行 | 具体的な成果物 |
受任者の責任 | 善管注意義務 | 善管注意義務 | 完成義務 契約不適合責任瑕疵担保責任 |
契約解除 | 双方いつでも可能 | 双方いつでも可能 | 原則不可 |
参考:e-Gov 民法第六百三十二条、e-Gov 民法第六百四十三条、e-Gov 民法第六百五十六条
コンサルティング契約は「委任契約」「請負契約」のどちらか
上述したように、契約目的によって契約種類が異なります。コンサルタントが助言やアドバイスのみを提供する場合、特段の成果物を約束するものではないことから「委任契約」に該当すると考えられます。ただし、委任の内容が法律行為に当たらない場合には、「準委任契約」とすることも可能でしょう。
一方、コンサルタントが委託者に対しなんらかの成果物の納品を約束した場合、「請負契約」に該当すると考えられます。コンサルティング契約締結の際には、契約内容をよく精査して契約種類を選択する必要があります。
なお、コンサルティング業務は、提供するサービス内容によって契約内容がまちまちです。そのため、コンサルティング契約を民法の条文に定めのない「無名契約」に当たるとする考え方も存在します。
コンサルティング契約書に印紙が必要なケース
コンサルティング契約書に印紙が必要か否かは、先述した契約の種類によって異なります。
なぜなら印紙税法では、課税対象となる文書を具体的に定めているためです。コンサルティング契約が委任契約か請負契約かの違いによって、印紙の要否が決まっているのです。
以下に印紙ありと印紙なしのそれぞれのケースを紹介します。
請負契約の場合、印紙が必要
コンサルティング契約が、請負契約に該当する場合、印紙税が必要です。印紙税法で定められた「課税文書」に請負契約が該当するためです。
印紙税法において、請負契約書は「第2号文書」という区分に含まれることが明記されています。請負契約では、依頼者が報酬を支払い、請負人が仕事を完成させることが目的となるため「課税文書」とみなされます。
委任契約の場合、印紙は原則不要
コンサルティング契約が委任契約や準委任契約に該当すれば、印紙は原則不要とされます。
その理由は、委任契約に係る契約書が、印紙税法の対象となる「課税文書」に該当しないためです。
委任契約は、法律上の行為や業務の遂行を委託するものであり、これ自体には物や金銭の取引が直接的に絡むわけではありません。つまり、金銭や物品の受け渡しを前提とした契約書ではないため、印紙税の対象外とされているのです。
ただし、例外として、コンサルティング契約書内に金銭の支払いや代金受領に関する記載がある場合、その部分が印紙税の課税対象となる可能性がありますので注意が必要です。
コンサルティング契約書に印紙税が必要な場合の金額
ここまでコンサルティング契約書に印紙が必要なケースと不要なケースを解説しました。
ここからは、印紙税がかかる場合にいくらの収入印紙が必要となるのか、具体的な金額を解説していきます。
印紙税の金額一覧
印紙税の金額は、課税文書の種類によってその金額が定められています。コンサルティング契約書で印紙が必要となる請負契約の場合、印紙税は契約金額の違いによって決められています。
以下は請負契約に該当する2号文書の印紙税額一覧です。ぜひ参考にしてください。
号 | 文書の種類 | 印紙税額(1通または1冊につき) |
---|---|---|
2 | <請負に関する契約書> 工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など (注)請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約を含みます。 | 記載された契約金額が
※第2号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第2号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。 (注)平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が一定額を超えるものについては、税率が軽減されています(コード7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」をご利用ください。) |
引用:タックスアンサー|国税庁
印紙税はどちらが負担するか
コンサルティング契約書の印紙税の負担に関しては、印紙税法に定められています。印紙税法第3条によると、「課税文書を作成した者」が印紙税の納税義務者とされます。すなわち、契約書を作成した当事者が印紙税を支払う義務を負うのです。
ただし「共同で契約書を作成した場合、双方が印紙税を納める義務を負う」とも規定されています。通常であれば契約書は契約当事者の数だけ作成され、それぞれの当事者が1通ずつ保管するため、当事者同士がそれぞれの契約書に貼る収入印紙代を負担することが一般的です。
コンサルティング契約書の印紙の貼り方、消印の押し方
この章では、紙の契約書においてコンサルティング契約を締結する際の、印紙の貼り方や消印の方法について解説します。
印紙の貼り方
印紙は、契約書の左上や右下など、目立たない位置に貼ることが一般的です。以下の例を参考にしながら、適切に貼り付けると良いでしょう。
消印の押し方
契約書に収入印紙を貼った後は、必ず消印を押しましょう。単に収入印紙を貼るだけでは印紙税の納付は完了しません。印紙税法では、収入印紙に対して消印を押すことが求められています。消印の具体的な押し方については、以下のサンプルを参考にしてください。
コンサルティング契約書に割印は必要か
割印とは、複数の書類にまたがって印影がつながるように押す印鑑のことを指します。契約書などが複数部作成された際に、それらが同時に作成され、内容が一致していることを確認するために使用されます。割印は、実務慣例的な視点から、コンサルティング契約書にも必要となるケースがあります。
印鑑の種類
ビジネスで使用する印鑑の代表例は、「代表者印(実印)」「銀行印」「社印・角印」「ゴム印」の4種類です。これらのうち、コンサルティング契約書の署名の末尾に押す印鑑は、「代表者印(実印)」を利用するのが一般的といえます。
代表者印は法務局に印鑑登録されている印鑑で、契約当事者であることを示す信用性の高い印鑑であるためです。ただし、割印の場合は、必ずしも契約書の署名末尾に押した印鑑と同一である必要はありません。
署名でも問題ない?
割印の役割は、契約書が同時に複数部作成された際、契約書同士の関連性や同一性を証明することです。仮に割印が押されていなかったり、押印に代えて署名であったりしても、契約書の法的効力にはなんら影響ありません。
コンサルティング契約書への割印の押し方
割印には法律で法的効力が定められているわけではなく、押印の手順についても法律による規則はありません。しかし、実務においては、契約書などで当事者が割印を押すことが一般的な慣習となっています。本章では、この実務上の慣例に従った割印の押し方の具体例についてご説明します。
割印として認められる方法
割印は、各契約書にまたがるように押印する必要があります。これにより、複数の文書を重ねた際に印影が一致し、文書間の関連性や一貫性を証明することができます。
また、割印の押印者が必ずしも契約の全当事者である必要はありません。具体的な割印の押し方については、以下の例を参考にしてください。
割印として認められない方法
割印は、契約書の関連性や同一性を確認するための手段です。そのため、押印は各文書にまたがるように行い、すべての書類に印影が残ることが重要です。文書をまたがずに押印された場合、その割印の効果が十分に発揮されない可能性が高いでしょう。
コンサルティング契約書の無料ひな形・テンプレート
実際にコンサルティング契約を締結する際、「契約書をどうやって書けばいいかわからない。」といったお悩みも多いでしょう。このお悩みを解決するため、無料で使える弁護士監修済みのコンサルティング契約書テンプレートを用意しました。専門的な知識がなくても安心して契約書を作成できますので、ぜひ参考にしてください。
また、コンサルティング契約書の記載内容ついては、以下の記事をご参照ください。
電子契約ならコンサルティング契約書の印紙は不要に
ここまでコンサルティング契約の締結に必要な印紙税について解説してきました。最後に、どのような契約種類であっても印紙税をゼロにする方法をご紹介します。その方法が、電子契約システムの導入です。
電子契約では、印紙税を納付して収入印紙を貼ることが義務付けられていません。電子契約で収入印紙が不要になる理由の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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