- 更新日 : 2024年8月30日
データ入力委託契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
データ入力委託契約書は、データ入力業務の受委託に関して、委託者と受託者の間で締結する契約書です。委託するデータ入力業務の内容や、報酬をはじめとする契約条件などを定めます。本記事では、データ入力委託契約書の書き方や条文の具体例、レビュー時のポイントなどを解説します。
目次
データ入力委託契約書とは
データ入力委託契約書とは、データ入力業務を委託する者(=委託者)と、その委託を受けて実際にデータ入力業務を行う者(=受託者)の間で締結する契約書です。
業務委託契約を締結する際には、委託者と受託者の間のトラブルを予防するため、受発注の条件を契約書において明確化することが大切です。
データ入力委託契約書も業務委託契約書の一種であり、契約条件を明確化することによって、委託者と受託者の間のトラブルを予防する目的で締結されます。
データ入力委託契約を締結するケース
データ入力委託契約書は、データ入力業務を外部委託したい委託者側のニーズと、それを受注して報酬を得たい受託者側のニーズが合致した場合に締結されます。
データ入力業務は比較的単純なので、特別なスキルがなくても行うことができます。そのため、発注の単価は安い傾向にあり、自社の従業員に行わせるよりも、外部委託した方がコストを抑えられるケースも少なくありません。
「すきま時間」の副業などとして、データ入力業務を行っている方をターゲットに、企業がデータ入力業務の担当者を募集する求人を行い、応募者との間でデータ入力委託契約を締結するケースが多いです。
データ入力委託契約書のひな形
データ入力委託契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際にデータ入力委託契約書を作成する際の参考にしてください。
※ひな形の条項と本記事で紹介する条項は、異なる場合があります。
データ入力委託契約書に記載すべき内容
データ入力委託契約書に記載すべき主な事項は、以下の通りです。
②納入・検収
③報酬
④秘密保持
⑤再委託の可否
⑥契約の有効期間
⑦契約の解除
⑧合意管轄
それぞれの項目を、具体例とともに詳しく見ていきましょう。
委託する業務の内容
甲は乙に対し、甲がインターネット上で提供する○○サービスのためのデータ入力業務(以下「本件業務」という)を委託し、乙はこれを受託する。
2 本件業務の内容は、甲が乙に提供する仕様書(以下「本件仕様書」という)に従うものとする。
3 甲は、乙に対し、本件業務の遂行に必要なソフトウェア及び当該ソフトウェアにログインするために必要となるIDとパスワードを無償で提供する。
委託者が受託者に対して、実際に委託するデータ入力業務の内容を定めます。「○○サービスのためのデータ入力業務」などと概括的に記載するとともに、具体的な業務の内容は、別途仕様書などで定めるのが一般的です。
納入・検収
乙は、本件仕様書に基づき本件業務を行い、甲乙間で別途合意した納期までに、その成果物を、甲に対して本件仕様書所定の方法により納入するものとする。
2 甲は、前項に基づいて納入された成果物を、納入日の○日後までに検査し、その結果を乙に対して通知する。納入日の○日後までに当該通知がないときは、本件業務は完了したものとみなす。
3 前項の検査により、瑕疵や修正すべき点等(以下「瑕疵等」という。)が発見されたときは、乙は、ただちに甲の指示に従って瑕疵等の対応を行い、再度成果物の納入を行う。なお、当該対応に要した費用は乙の負担とする。
データ入力が完了して得られた成果物につき、受託者が委託者に対して納入する手続きを定めます。
また、納入された成果物については、委託者において検収を行う必要があります。検収期限や再納入の手続きなども、契約書に定めておきましょう。
報酬
甲は乙に対し、本件業務遂行の報酬として、甲乙間で別途合意する算出基準により算出した金額を支払うものとする。
2 甲は、前項の金額を、毎月〇日締め翌月〇日までに、乙の指定する金融機関の指定口座に振り込む方法で支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
データ入力業務の報酬について定めます。具体的には、金額またはその算出方法、支払期日、支払方法および振込手数料の負担者などを定めましょう。
秘密保持
乙は、本件業務の履行上知り得た甲の業務上及び技術上の一切の秘密情報を、第三者に開示または漏洩してはならない。ただし、甲の承諾を得たときは、この限りでない。
2 乙は、成果物を他人に閲覧させ、複写させ、または譲渡してはならない。ただし、甲の承諾を得たときは、この限りでない。
データ入力業務に当たっては、委託者が受託者に対して、自社の秘密情報を開示することがあります。そのため、データ入力委託契約書において、受託者の秘密保持義務を定めておきましょう。
再委託の可否
乙は、本件業務の全部または一部を、事前に甲の承諾を得ることなく第三者に再委託してはならない。
データ入力業務の再委託については、主に秘密保持について十分な注意を払う必要があります。基本的には、再委託は委託者の承諾を得た場合に限るものとし、契約書にもその旨を明記するのがよいでしょう。
契約の有効期間
本契約の有効期間は、本契約締結日より〇年間とする。ただし、有効期間終了〇ヶ月前までに甲乙いずれかの申し出がなければ、自動的に1年間延長されるものとし、以降も同様とする。
2 甲及び乙は、本契約の有効期間中であったとしても、〇日前までに文書または電子メールによる解除の申し出をすることで、本契約を解除できるものとする。
契約の有効期間については、自動更新を定めるかどうかがポイントの一つです。契約の更新が想定される場合には、更新手続きを簡略化するため、自動更新を定めることを検討しましょう。
契約の解除
甲は、乙が本契約の条項に違反した場合、または次の各号に該当した場合には、催告を要することなく、書面、電子メールまたは口頭による通知をもって、即時に本契約を解除できるものとする。
⑴ 乙が故意または重大な過失により、甲に重大な損害を与えた場合、または重大な損害を与える恐れがある場合。
⑵ 乙が本契約の締結または本件業務の遂行に関して虚偽の事実を申告した場合
⑶ 乙が正当な理由なくして本契約に基づく義務の履行を怠った場合
……
受託者において契約違反その他の不適切な行為がなされた場合には、委託者が契約を解除できる旨を定めます。具体的な解除事由は、委託業務の内容などに応じて追加することも可能です。
合意管轄
本契約に関する一切の法律上の紛争については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
委託者と受託者の間で紛争が発生した場合に備えて、訴訟を提起する裁判所をあらかじめ定めておくのがよいでしょう。
専属的合意管轄裁判所は、自社の本店所在地や営業所の近くとすることが望ましいです。委託者と受託者の所在地域が離れている場合は、交渉によって専属的合意管轄裁判所を定めます。
データ入力委託契約書を作成する際の注意点
データ入力委託契約書を作成する際には、委託するデータ入力業務の内容を、仕様書などで明確に特定することが大切です。受託者がどこまで対応する必要があるのか、疑義のないように明確に記載しましょう。
また、個人情報が含まれるデータの入力を委託する場合は、個人情報保護ガイドラインに従い、委託者が受託者を適切に監督する必要があります。仕様書などにおいて、受託者側で安全管理措置を講ずべき旨を定めたうえで、委託者が受託者側における個人データの取扱状況を合理的に把握できるような報告・検査等のプロセスを整備しましょう。
参考:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)第25条|個人情報保護委員会
データ入力委託契約書は契約条件の明確化・情報管理が大切
データ入力委託契約書を締結する際には、契約条件を明確に記載しましょう。また、秘密情報のやり取りに備えて秘密保持義務を定めることや、個人情報を取り扱う場合は個人情報保護ガイドラインに沿った情報管理を行うことが大切です。
データ入力委託契約書を適切に作成すれば、委託者と受託者とのトラブル予防につながりますので、契約締結時にきちんとレビューを行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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