• 更新日 : 2024年9月26日

継続的取引基本契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

継続的取引基本契約書とは、継続的におこなう取引について基本事項を決めた契約書です。契約期間が3月を超えるものは印紙税法の別表第7号文書に該当し、印紙の貼付が必要です。継続的取引基本契約書の具体例としては、売買取引基本契約書が挙げられます。

作成する際は、代金に関する項目や責任・義務など、必要事項を漏らさないことがポイントです。本記事では、継続的取引基本契約の書き方やテンプレートを紹介します。

継続的取引基本契約とは

継続的取引基本契約とは、特定の相手と複数回にわたって継続的におこなう取引に関する基本事項を決めた契約のことです。一方、個々の取引に対して、具体的な内容を決めた契約を個別契約と呼びます。

継続的取引基本契約を締結する主な目的は、たびたび発生する契約締結手続きを簡略化し、コストや手間を削減することです。契約にあたっては、「継続的取引の基本となる契約書」(継続的取引基本契約書)を締結します。

以下が、継続的取引基本契約書の具体例です。

  • 売買取引基本契約書・貨物運送基本契約書・下請基本契約書
  • 代理店契約書
  • 銀行取引約定書・信用取引口座約定約諾書・保険特約書

ただし、記載されている契約期間が3か月以内で「更新の定め」もない書類は、印紙税法上の継続的取引基本契約書には該当せず、他の課税文書に該当しない限りは印紙を貼付する必要はありません。

参考:No.7104 継続的取引の基本となる契約書|国税庁

継続的取引基本契約を締結するケース

売買取引を複数回にわたって継続的に実施するケースで、継続的取引基本契約を締結することがあるでしょう。たとえば、商品の検査方法や商品に不具合があった場合の対応法のように、各売買契約に関する共通事項を決める場合には、継続的取引基本契約書の一種である売買取引基本契約書を双方で取り交わします。

また、メーカー・保険会社などの代理店として、商品売買や保険契約締結の代理もしくは媒介の業務を営む場合も、継続的取引基本契約を締結するケースです。代理店は、事業を営むにあたって各取引に共通する手数料や販売代金の取り扱い、報告義務などを定めた代理店契約書をメーカー・保険会社側と取り交わします。

そのほか、融資を受けるにあたって、融資取引に共通する事項を定めた銀行取引約定書を銀行と取り交わすことも、事業者が継続的取引基本契約を締結するケースです。

継続的取引基本契約書のひな形

継続的取引基本契約書のひな形は、以下ページより無料でダウンロードできます。

1から作成するよりも楽に作成できるので、ぜひお気軽にご活用ください。

継続的取引基本契約書に記載すべき内容

継続的取引基本契約書の冒頭に、甲と乙が継続的な取引に関する契約を締結することを記載します。また、商品の売買で継続的取引基本契約書を締結する際、記載する主な項目は以下のとおりです。

  • 目的・適用
  • 個別契約
  • 商品や所有権に関する項目
  • 代金に関する項目
  • 責任・義務や知的財産権に関する項目
  • 再委託・権利の移転・損害賠償
  • 解除

それぞれの内容を紹介します。

目的・適用

「目的」には、本契約が個々の取引に適用されることを目的とすることを記載します。「甲乙間で締結される一切の個々の取引契約に適用されることを目的とする」などの文言を入れるとよいでしょう。

「適用」には、本契約の事項が個別取引にも適用することを記載します。継続的取引基本契約と個別契約が異なる事項を定めているケースを想定し、但し書きで「個別契約において本契約と異なる事項を定めたときは、個別契約の定めが優先して適用される」と盛り込むこともポイントです。

個別契約

「個別契約」には、個別契約で別途定める内容や、個別契約が成立するための条件などを記載します。

商品売買で継続的取引基本契約書を作成する場合は、商品の品名・使用目的・種類・データ形式・価格・納期・納品場所・納品形式などを、別途個別契約で定めることを盛り込むとよいでしょう。また、受注側が注文書を確認して問題ない旨を記載した注文請書を発送し、発注側に到達したタイミングで個別契約が成立することなどを盛り込みます。

商品や所有権に関する項目

「商品の変更・追加」「商品の納品」「商品の検収」に関する項目も盛り込みます。「商品の変更・追加」に盛り込むのは、商品を変更・追加する際の条件、「商品の納品」は納期の決め方、「商品の検収」は検査の方法や検査するまでの期日、商品が検査に不合格だった場合の扱いなどです。

「所有権の移転・危険負担」に、商品の所有権が移転するタイミングを記載します。一般的には発注側が検収した時点で移転するという内容が盛り込まれます。また、海外との取引を想定し、「日本の空港に到着する前に生じた本商品の滅失、損傷、変質その他の損害」の扱いを規定することもあります。

代金に関する項目

「代金の支払い」には、売買代金を支払うまでの期日を記載します。海外取引を想定し、レートや送金手段、手数料の負担者なども定めるとよいでしょう。

そのほか、「実費」に、商品取引にかかる費用を誰が負担するかも明確にします。「本商品の取引にかかる実費(輸送費、保険料等をいう。)については、甲の負担とする」などと記載するのが一例として挙げられます。

責任・義務や知的財産権に関する項目

「契約不適合責任」「製造物責任」「秘密保持義務」のように責任・義務を定めた項目も記載しましょう。

契約不適合責任とは、目的物の種類・数量・品質が契約内容と異なる場合に、受注側が負う責任のことです。契約書では、受注側が契約不適合部分を修正することや、契約不適合で契約の目的を達成できない場合に発注側が契約を解除できることなどを規定します。

製造物責任とは、製造者が製造物の欠陥により生命・身体・その他財産に損害を負った被害者に対して負う責任のことです。契約書には、損害が生じた場合の扱いや、賠償方法を記載します。

秘密保持義務とは、保有する秘密情報の第三者への漏洩を防ぐための義務です。例えば継続的な製造委託契約を結ぶ場合、その製品の設計書や仕様書などを発注者から受注者に交付することがありますが、設計書などの秘密情報を漏えいしないように契約書で秘密保持義務を定めておくと良いです。契約書には、秘密情報に該当する範囲などを記載します。

また、製作者の著作物やその他知的財産権が誰に帰属するかを記載した「知的財産権」の記載も必要です。また、該当商品について知的財産権の侵害を訴えられた際などの扱いを定めた「知的財産権の侵害」も記載します。

再委託・権利の移転・損害賠償

「再委託及び権利の移転」に、受注側が委託された業務をさらに他の業者に委託する再委託の扱いについて記載します。発注側が受注側の再委託を禁じたい場合は、「事前に甲の書面による承諾を得ないで、第三者に本契約の全部又は一部を再委託することができない」といった文言を盛り込むとよいでしょう。

また、「損害賠償」には、契約当事者のいずれかが契約違反をして相手方に損害を与えた場合に、損害賠償責任を負うことや、その範囲などを記載します。

解除

「解除」には、発注者がすぐに契約を解除できる条件について記載します。解除可能な主な条件は、受注者が納期までに商品の全部もしくは一部を納入しないとき、受注者が支払い停止や支払不能の状態に陥ったときなどです。

また、解除した場合に発注者が受注者に代金を支払う必要がない旨、解除しても損害賠償請求は可能な旨なども盛り込みます。

そのほか必要な項目

そのほかにも、「反社会的勢力の排除」「契約の期間」「本契約に定めのない事項の扱い」「合意管轄」「準拠法」「完全合意」「ウィーン売買条約の適用排除」などの項目も検討しましょう。

「反社会的勢力の排除」では、契約者が「反社会的勢力」に該当しないことの表明や、違反した際の扱いについて定めます。「準拠法」には、契約が「日本法に準拠し、日本法に従って解釈されるものとする」などの文言が盛り込むことが一般的です。

継続的取引基本契約書を作成する際の注意点

継続的取引基本契約書を作成するにあたって、商品の納期や責任・義務といった必要な項目を漏らさないよう注意しましょう。必要な項目が契約書に盛り込まれていなければ、その分取引のリスクが高まります。

たとえ、必要な項目が網羅されている場合でも、意味が不明確・曖昧な用語や説明がないかをチェックすることが重要です。読み手によって解釈が異なる場合は、契約締結後トラブルにつながる可能性があるため、文言を変更する、双方で統一見解をまとめるなどの工夫をしましょう。

さらに、実際の取引にあった文言が記載されているかを確認することも大切です。とくに、代金に関する項目などは、取引内容とのずれが生じていないか注意しましょう。

継続的取引基本契約書と「第1号文書」「第2号文書」の違い

一般的に、継続的取引基本契約書は印紙税法上の「第7号文書」に該当します。とくに混同しやすいのが、「第1号の4文書」(運送に関する契約書)や「第2号文書」(請負に関する契約書)です。

それぞれの主な違いには、記載金額の有無が挙げられます。請負に関する文書で金額についての記載がある場合は第1号文書もしくは第2号文書、記載がない場合は第7号文書の対象です。単価が記載されていても、契約期間の記載がなければ記載金額を計算できないため、第7号文書に該当します。

なお、第1号文書や第2号文書、第7号文書とは印紙税法で定められた課税文書に該当する書類の種類です。全部で20種類の課税文書があり、それぞれかかる印紙税の額が異なります。

参考:第7号文書と他の号に該当する文書の所属の決定|国税庁

継続的取引基本契約書の印紙代と節約方法

継続的取引基本契約書は第7号文書に該当する課税文書のため、印紙税がかかります。ここから、かかる印紙税(貼る収入印紙の額)や、節約方法について確認していきましょう。

収入印紙は一律4000円

継続的取引基本契約書にかかる印紙税は、1通につき一律4,000円です。

印紙税法第3条には、課税文書の作成者が印紙税を負担することと規定されています。複数で作成した場合は連帯して負担しなければなりません。

なお、契約書は2通作成してそれぞれ保管することが一般的です。その場合は、それぞれが収入印紙4,000円を負担します。

参考:印紙税法第三条|e-Gov 法令検索

電子契約の締結により節約できる

電子契約に切り替えれば、継続的取引基本契約の際にかかる印紙税がかかりません。なぜなら、印紙税の課税対象となるのは「課税物件表の物件名欄に掲げられている文書」に限られるためです。

電子契約とは、紙を使わずオンライン上で契約を完結させる契約行為を指します。電子契約に切り替えれば、印紙税だけでなく郵送・保管費用を節約できるうえに、業務の効率化につながる点もメリットです。

参考:電子契約書の締結について|内閣法制局

継続的に取引する際に継続的取引基本契約書を作成しよう

売買取引を複数回にわたって継続的に実施する場合に、継続的取引基本契約書の一種である売買取引基本契約書を作成することがあります。継続的取引基本契約書には、商品や所有権に関する項目などが盛り込まれることが一般的です。

継続的取引基本契約書を作成すると、作成者が4,000円の印紙税を負担しなければなりません。コスト削減を検討している場合は、電子契約への切り替えも検討しましょう。


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