- 作成日 : 2023年9月21日
コンプライアンスリスクとは?具体的な要因や対応方法を解説
近年、企業のコンプライアンス違反などが相次ぎ、人々の企業に対する視線がより一層厳しくなってきています。企業においては「コンプライアンスリスク」を正しく認識した上でコンプライアンスを遵守することが大切です。
この記事ではコンプライアンスリスクの基礎知識から具体例、コンプライアンス違反が起こる要因やコンプライアンスリスクへの対処法について解説します。
目次
コンプライアンスリスクとは
コンプライアンスとは元々「法令遵守」を指す言葉でしたが、近年では法令に加え就業規則や企業倫理、社会規範などもこれに含まれるようになりました。コンプライアンスについては下記記事で詳しく説明しています。
コンプライアンスリスクとは、コンプライアンス違反が発生するリスクのことを指します。いわばコンプライアンス違反の芽といえます。これまでも企業がコンプライアンス違反によって法的責任を問われたり、社会的制裁を受けたりといった事例が数多くあります。こうした事態を避けるためには自社に発生しているコンプライアンスリスクを早期に発見し対策をとることが重要です。
コンプライアンスリスクの具体例
コンプライアンスリスクの具体例としては主に「法令違反」「社内規則違反」「他社との契約違反」「社会的な期待に対する違反」の4点が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
法令違反
前述のとおりコンプライアンスの元々の意味は「法令遵守」であり、法令違反はコンプライアンスリスクの最たるものといえます。企業は労働基準法や消費者契約法、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法(下請法)、個人情報保護法など、さまざまな法律に従って運営していかなければなりません。
また、建築業であれば建築基準法や宅地建物取引業法、運送業であれば道路交通法や貨物自動車運送事業法、金融機関であれば銀行法や金融商品取引法など、業種によって守るべき法律が異なり、それに従って業務を行う必要があります。
法律に違反した状態で業務を行い、それが発覚した場合は社会からの信用が低下するのはもちろん、法的な責任も問われるおそれがあります。
社内規則違反
社内規則は会社内のルールであり、法律ではありません。しかし、法令違反や社会的信用の毀損防止を目的として設けられている規則であり、法律の一歩手前にある防衛線のような存在といえます。社内規則違反が横行しているとやがて法令違反に発展し、やはり行政罰や信用の毀損につながるおそれがあります。
他社との契約違反
企業が他者と取引を行う際には、契約時に取り決めたルールに従う必要があります。契約違反をした、あるいは明確な取り決めを行わず好き勝手に振る舞った結果、取引先や顧客からの信用が失墜し、場合によっては契約解除や損害賠償請求に発展するおそれもあります。
社会的な信用に対する違反
法律や社内規則、契約などに明記されていなくとも、企業やその従業員は社会的な信用やモラル、道徳などを守る必要があります。例えば、最近よくあるのはSNSや動画サイトへの不適切投稿です。内容が名誉毀損などの法令に抵触していなくとも、多くの人を不快な気分にさせることで、企業の信用低下につながります。
コンプライアンス違反が起こる主な要因
そもそもコンプライアンス違反はなぜ起こってしまうのでしょうか。ここからはその要因について考えていきましょう。
モラル・規範意識が低い
経営者や従業員のモラルや規範意識が低いと、当然のことながらコンプライアンス違反が発生する可能性が高くなります。「少しくらいはいいだろう」「バレなければいい」といった甘い認識で違反行為を行った結果、大きな問題に発展してしまったケースも少なくありません。
ひとたび違反行為が成功してしまうと、その後も常態化しやすく、どんどん悪質なものにエスカレートしがちです。
コンプライアンスに関する知識がない
モラルや規範意識は持ち合わせているものの、関連法令や社内規則、契約、その他社会情勢への理解がないことで、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反をしてしまっているケースもよくあります。
例えば、軽い冗談やコミュニケーションの一環のつもりとして行った言動がセクハラやパワハラに該当するケースがあります。これは当人がセクハラやパワハラの該当要件や事例をしっかりと理解していれば防げることもあるでしょう。
コンプライアンス違反が起こりやすい土壌がある
企業の土壌がコンプライアンス違反の要因となっているケースも少なくありません。例えば、経営者や幹部が日常的にパワハラを行っている場合、その部下である中間管理職が追い詰められて一般社員に対してパワハラを行ってしまうケースが考えられます。過度に利益を追求するあまり、法令や契約、社会的モラルに反してしまう事例も多いです。
コンプライアンスリスクへの対処法
コンプライアンスリスクへの対応で大切なのは下記3点です。
- 法改正や社会情勢の把握
- 社内規定やマニュアルの改善
- 内部通報窓口の設置
法律は毎年のように改正され、特にコンプライアンスに関わる法令は厳格化傾向があります。社会情勢も大きく変化してきています。これまでは許容されていた事柄でも、法改正によって処罰の対象になる、人々の価値観の変化によって非難の対象になる可能性もあるため、しっかりとキャッチアップしていくことが大切です。
法改正や社会情勢の変化に応じて社内規定やマニュアルも改定していきましょう。前述のとおり、社内規定はコンプライアンス違反を食い止めるための防衛線でもあります。常に改善を積み重ね、その都度従業員に周知し、必要に応じて研修や指導を行うことで、コンプライアンスリスクの軽減につながります。
また、法務担当者だけでコンプライアンスリスクを把握するのは困難です。従業員からの情報を収集し、いち早く対応していくために、内部通報窓口やハラスメント相談窓口を設置しましょう。窓口の担当者は社会保険労務士などの社外の人材を任用する、個人情報保護のルールを確立するなど、相談しやすい環境づくりも重要です。
問題が起こる前にコンプライアンスリスクを見直しましょう
毎日のように企業の不祥事がセンセーショナルに報道され、これまで多くの会社がコンプライアンス違反で大きな代償を支払う事態に陥りました。しかし、こうした企業もコンプライアンスリスクをしっかりと管理し、適切かつ早期に対応できていれば、そこまで大きな問題には発展しなかった可能性もあります。
コンプライアンス違反は起きてしまってからでは遅いです。問題が起こる前には必ず予兆があるので、しっかりと芽をつんでいきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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