- 作成日 : 2025年1月29日
不動産購入申込書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
不動産購入申込書は、買主が売主へ物件購入の意思を示す重要な書類であり、購入手続きの第一歩です。買主の情報や希望条件が記載され、契約に向けた交渉の土台となります。契約締結後ほどの法的拘束力はないものの、提出は物件確保や取引円滑化のために重要なものです。
本記事では、不動産購入申込書の役割や記載事項、注意点、そして提出後の流れを解説します。
目次
不動産購入申込書とは
不動産購入申込書は、買主が売主に対して物件を購入したいという意思を伝えるための書類です。「買付申込書」や「買付証明書」と呼ばれることもあり、買主の情報や購入希望の条件が記載されています。いわば、不動産購入申込書の提出は、物件購入手続きの第一歩といえるでしょう。
申込書には、希望する売買価格や物件の引き渡し時期、ローン特約といった条件が具体的に記載されているため、売主や仲介業者との交渉や契約準備において欠かせない指針となります。
円滑な物件購入を進めるには、買主が意思を明確に示すことが重要です。以下では、不動産購入申込書の役割や法的拘束力、さらに提出から契約に至る流れについて見ていきます。
不動産購入申込書の役割
不動産購入申込書の役割は、購入希望者のために物件を確保してもらい、契約準備に進む意思を明確に示すことです。売買契約を円滑に進めるためには、購入希望者の意思を売主や仲介会社に伝え、手続きを進める必要があります。
不動産購入申込書が提出されない場合、購入意思が不明確と判断され、売主や仲介会社が対応を進めることは困難になるでしょう。また、売主はほかの人に当該物件を売却してしまうかもしれません。一方、申込書を提出することで物件購入の優先権を得られる可能性が高まり、購入希望者として明確に認識されます。
また、売主や仲介会社から新たな情報提供を受けやすくなり、交渉を開始する土台が築かれていくでしょう。このように不動産購入申込書は、物件取得に向けた重要な手続きとして機能します。
不動産購入申込書の法的拘束力
不動産購入申込書は、買主が売主に対して購入の意思を示すための書類であり、直ちに契約成立するわけではありませんので、契約と同じ程度の法的拘束力はありません。あくまで購入希望を表明する段階にとどまり、売買契約書とは明確に区別する必要があります。
売買契約書は、売主と買主の双方が合意した上で締結されるため、法的効力を持ちます。したがって、契約締結後にキャンセルする場合には、手付金の放棄や違約金の支払いが発生するため注意しなければなりません。
一方、不動産購入申込書は、売買契約締結前に提出されるものです。したがって、提出後に撤回しても売買契約書と異なり、基本的にペナルティは発生しません。ただし、申込書に記載した内容を売主側が承諾すれば民法上は契約成立と評価される可能性もあります。その場合、契約成立後の撤回(解除)として一方的に行うことは難しくなるため、その点では法的効力があるといえるでしょう。
購入申込書は買主にとって重要な意思表示の手段となりますが、法的拘束力を持つ売買契約書とは異なる性質の書類であることを理解しておく必要があります。
申込書の提出から契約までの流れ
不動産購入申込書を提出すると、売主から物件の売却意思を示す「売渡承諾書」が提示されます。売渡承諾書の提示は、申込書の有効期限内である1~2週間程度で行われるのが一般的です。その後、不動産会社を通じて条件の最終調整を進めます。
条件が整えば、不動産売買契約の締結です。当日には重要事項説明が行われ、手付金を支払います。重要事項説明では、宅地建物取引業者が物件の状態や契約に関する重要な情報を説明しなければなりません。この手続きは、法律で契約前に行うことが定められています。
契約後、住宅ローンの場合は本審査に進み、審査通過後に融資を受けることにより決済を完了し、物件の引き渡しが行われます。
不動産購入申込書を作成するケース
不動産購入の意思が固まった段階で、購入申込書を提出します。住宅ローン利用時は事前審査通過が条件となる一方、現金決済では審査不要です。
申込書は売主への購入意思表示であり、物件確保と取引円滑化に不可欠です。ここでは、不動産購入申込書を作成するケースについて見ていきます。
購入意思決定時
購入の意思が固まった際に、不動産購入申込書を提出するケースです。売主は申込書を受け取り、物件の優先権を認める場合もあるでしょう。ただし、住宅ローン利用時は「事前審査の通過が条件」であることが一般的です。
一方で、現金決済の場合、審査を経ずに申込書のみで契約を進めることが可能です。購入申込書は、売主に購入意思を伝え、物件取引交渉をスムーズに進めるための重要な手段として活用されます。
住宅ローン事前審査通過時
住宅ローンの事前審査を通過した後に不動産購入申込書を提出するのが一般的です。このタイミングでは、購入資金が確保されていることを売主に示せるため、取引の信頼性が高まります。
売主は資金面での安心感を得るため、契約がスムーズに進行するでしょう。この段階では、購入希望者の購入意思が確定しているため、正式に不動産購入申込書を提出して申し込みを行います。
不動産購入申込書のひな形
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不動産購入申込書に記載すべき内容
購入希望者には、取引を円滑に進めるために必要な情報を漏れなく記載してもらう必要があります。以下、不動産購入申込書における主な記載項目について解説します。
申込者の情報
不動産購入申込書には、申込者情報を記入する欄が必要です。会社・団体名、担当者名、住所を記入し、ふりがなも忘れずに記載します。
また、連絡先として電話番号、FAX番号、メールアドレスも記入します。これらの情報は、売主が申込者と連絡を取るために重要です。さらに、申込日の欄を設け、購入意思表示の日付を確認できるようにします。
物件の情報
不動産購入申込書には、物件に関する重要な情報を記載します。具体的には、土地の登記情報や位置に形状、面積や筆界、地目(用途)などです。また、地番(登記所の番号)や延べ床面積(建物各階の床面積合計)に建物の構造(木造、鉄骨造、RC造など)なども記載します。これらの情報は、物件に関する基本的な特性を明確にするために重要です。
購入条件
購入条件欄を設け、購入希望金額を明記できるようにします。これは、買主が希望する金額を明確に示すためのものです。また、物件情報に記載された金額と異なる場合には、買主は希望額を記入します。
この金額は「指値」となり、買主の意思表示として「この価格で購入します」という意味を持ちます。ただし、この金額は交渉の出発点に過ぎません。契約額がそのまま決定するわけではなく、売主は指値を受けて価格交渉にのぞむかどうかを判断します。
その他の条件
契約希望日や引渡し希望日、有効期限、手付金の金額、住宅ローンの借入額を記載できるようにしましょう。
契約希望日や引渡し希望日を記載することで、売主は今後のスケジュールを見通しやすくなります。また、不動産購入申込書に有効期限を設けることで、売買交渉の円滑な進行が期待できるでしょう。
手付金の金額は、買主の購入意欲を示すだけでなく、契約解除時の違約金に関する取り決めを明確にする役割を果たします。さらに、住宅ローンの借入額が記載されていることで売主は融資が実行される可能性を把握し、契約不成立のリスクを評価できます。
不動産購入申込書を作成する際の注意点
不動産購入申込書を作成する際は、必要項目が漏れなく記載されているかを確認することが重要です。物件情報・希望購入価格・手付金・契約希望日・融資利用の有無・特約事項など、これらの項目を網羅することで、後のトラブル予防につながるでしょう。
次に、書式については購入希望者が記入しやすいよう、見やすい体裁を心がけましょう。不動産取引に不慣れな人もいるため、専門用語は避け、平易な言葉を用いることが大切です。
また、書面全体が見やすく整理されていることも大切です。前述のWordテンプレートを参考にしたり、表組をベースにExcelで作成したりすることで、効率的に制作を進めましょう。
不動産購入申込書は提出後にキャンセルできる?
不動産購入申込書の法的拘束力について正しく理解しておく必要があります。購入申込書の提出は、一般的に仮契約と混同されることもありますが、一方的な意思表示であるため、契約書のような法的な拘束力は持ちません。
申込証拠金を受領した場合も、申し込みの撤回時には返還しなければならないため、顧客から返金を求められた際は、速やかに対応しなければなりません。
ただし、申込書提出後のキャンセルが可能とはいえ、売主側の信頼を損なう可能性もあります。また、売主が申込書の内容を承諾した場合には契約成立と評価される可能性もあります。そのため、購入希望者には慎重な検討を促すべきでしょう。物件内覧や重要事項の確認を十分に行い、申込書への署名押印は落ち着いて判断するよう案内するのが望ましいでしょう。
不動産購入申込書の保管期間・保管方法
不動産購入申込書の保管期間と保管方法は、契約の信頼性とトラブル防止において重要な役割を果たします。以下で、購入者の場合と不動産会社の場合の保管方法について解説します。
購入者の場合
不動産購入申込書の保管期間に法的な定めはありませんが、契約に至らなかった場合でも、トラブル防止のため一定程度保管することが望ましいです。
原本を保管する際は、紛失や破損を避けるためファイルなどに入れて保管しましょう。コピーの場合は、内容が明確に読み取れるかどうかの確認をしましょう。
また、スキャンしデータとして保管する方法も有効です。この場合は、データのバックアップを取ることで、万一のデータ消失にも備えられます。
不動産会社の場合
不動産取引において、購入申込書は取引の意思表示を証明する重要な書類です。この申込書は、宅地建物取引業法で定められている必須の「帳簿」には該当しませんが、取引の経緯を示す重要な証拠書類として適切な保管が求められます。
特に株式会社の場合、会社法において事業に関する重要資料を10年間保管することが規定されています。購入申込書は、重要な取引の起点となる書類であることから、これらの規定に準じた保管が望ましいでしょう。
また、バックアップ体制を整えることで、情報漏えいやデータ消失のリスクを軽減できるでしょう。こうした適切な文書管理は、コンプライアンスの遵守だけでなく、業務の信頼性向上にもつながります。
不動産購入申込書の電子化は可能?
不動産購入申込書の電子化は可能です。電子化により、申込書の保管や管理が効率化され、ペーパーレス化が促進されます。以下では、紙の申込書をスキャンする方法や電子データで作成してもらう方法について解説します。
紙の申込書をスキャンする方法
紙の不動産購入申込書を電子化する際は、スキャナでPDFなどに変換し保存します。この場合、個人情報保護のための安全管理措置と電子帳簿保存法の要件を遵守しなければなりません。
読み取りは解像度200dpi以上、24ビットカラー以上で行い、入力期間内のスキャナ保存が確認できるように対応する必要があります。また、バージョン管理や帳簿との関連性の確保、データの迅速な検索・出力が可能な体制も求められます。
電子データで作成してもらう方法
不動産購入申込書を電子データで記入してもらう場合、購入希望者に様式データを送付し、入力後にメールで返送してもらう方法が適しているといえるでしょう。
有効性を担保するには電子署名が不可欠であり、電子契約サービスの利用が推奨されます。受領したデータは電子帳簿保存法の要件を満たす必要があり、タイムスタンプの付与や履歴管理、検索機能の整備が求められます。
電子帳簿保存法の対象となる
契約に関連する申込書は国税関係書類に分類され、電子帳簿保存法の対象となります。
申込書を電子データとして保存する際には、電子帳簿保存法の要件を遵守する必要があり、「紙の申込書をスキャナで保存する場合」と「電子取引データとして管理する場合」で求められる条件が異なります。
さらに、電子取引に関するデータ保存は完全義務化されているため、電子データで作成・受領した申込書は、電子データとして適切に保存しなければなりません。
不動産購入申込書の必要事項を網羅しスムーズな契約につなげよう
不動産購入申込書は、物件購入の意思を示す第一歩であり、売主との交渉や契約準備に不可欠な書類です。契約書ほどの法的拘束力はないものの、売主への購入意思を明確に伝え、その後の交渉を円滑に進める重要な役割を担います。
申込書には必要な情報を漏れなく記載し、専門用語を避けて見やすく作成することが大切です。物件購入を進める第一歩として準備を整え、スムーズな不動産取引を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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