• 更新日 : 2024年11月14日

電子契約を相手方に求める・求められた場合の対応方法を解説

電子契約の導入にはさまざまなメリットがありますが、電子データによる契約を成立させるには、電子契約の種類によっては相手方も電子契約を導入しなくてはならない場合があります。電子契約を導入していない場合はどうすればよいのか、相手方に電子契約の導入を求めてもよいのか気になっている方もいることでしょう。

本記事では、電子契約を相手方に求める場合、もしくは求められた場合の対応方法を解説します。

電子契約とは?

電子契約とは、紙を使わずインターネット上で締結する契約です。印鑑ではなく、電子署名や電子サインによって本人性を担保しています。多くの企業が電子契約を導入しており、JIPDECの「企業IT利活用動向調査2024」によると、2024年1月時点での電子契約利用率は77.9%です。

ここからは、電子契約の種類やメリットを解説します。

電子契約の種類

電子契約には「当事者型」と「立会人型」の2種類があります。当事者型は認証局が発行した電子証明書を利用する仕組み、立会人型はメールやSMSでの認証を利用する仕組みです。

これら2つは法的効力に違いがあり、電子証明書を利用する当事者型のほうが証明力は高くなります。立会人型は信頼性では当事者型に劣りますが、メールアドレスや電話番号さえあれば認証できるため、導入が簡単です。

電子契約で締結するメリット

電子契約のメリットとしてまず考えられるのは「コスト削減」です。電子契約をはじめとする電磁的記録は課税対象ではないため、印紙税が不要になります。電子データであるため、契約書の郵送費や印刷費もかかりません。

また、オンライン上で契約を締結できるため、契約締結に要する時間を短縮できる点もメリットです。電子署名とタイムスタンプでデータ改ざんのリスクを抑えれば、コンプライアンスの強化にもつながります。

電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。

相手方が電子契約を導入していない場合どうする?

電子契約の締結は、電子契約の種類によってはお互いが電子契約を導入しなければならない場合があります。一方、締結相手が電子契約を導入していなかった場合はどうすればよいのでしょうか。ここからは、締結相手が電子契約を導入していない場合の対応について解説します。

紙の契約書を使用する

相手方の慣習に合わせ、電子契約ではなく紙の契約書を使用する方法です。紙の契約書で署名・押印を行い、自社で保管する際は電子データに変換すれば、紙の契約書と電子契約書を併用できます。

相手方は紙の契約書、自社は電子契約書を保管する場合は、それぞれ1通ずつの契約締結が必要です。ただし、この対応では電子契約のメリットが半減してしまうため、相手方に後述する対応を提案するのもよいでしょう。

片方のみ電子契約する

自社のみ電子契約し、相手方は書面契約という形で契約を締結させることが可能です。電子署名を施した契約書をPDFファイルで相手方に送付し、相手方は受け取ったPDFファイルを印刷して製本・押印を行います。最終的に、押印された契約書が自社に返送されれば契約締結です。

この方法であれば、自社のデジタル化を推進しつつ、相手方が電子契約未導入であってもスムーズに契約を進められます。

PDFファイルに電子署名する

PDFファイルは、電子署名することで電子契約として成立させられます。電子署名は、PDF編集ソフトや電子契約サービスを利用して行うことが可能です。

電子契約サービスの場合、電子署名したPDFファイルと相手方のメールアドレスをシステムに登録すれば、相手方がWebブラウザ上でPDFファイルを確認・署名できるようになります。一般的にPDFファイルには改ざんのリスクがありますが、電子署名した後にファイルが編集されると電子署名が無効になるため、署名時点からファイルが改ざんされていないことを証明可能です。

サービス登録不要の電子契約を利用する

サービス登録不要の電子契約を利用するのもおすすめです。このような電子契約サービスの場合、相手方が必要なものはメールアドレスのみなので、相手方に負担をかけさせることなく契約を進められます。

契約に関するメールを相手方が受け取り、メール内のURLをクリックすれば認証されるため、メールの受信さえできれば契約締結が可能です。

相手方に電子契約を求める場合の説明の仕方

先述したように多くの企業が電子契約を導入していますが、電子契約の種類によっては自社だけでなく相手方も導入していなければ電子契約を締結できない場合があります。相手方に電子契約を導入してもらうには、どのように説明すればよいのでしょうか。

ここからは、相手方に電子契約を求める場合の説明の仕方を解説します。

セキュリティへの懸念を軽減する

電子データとして契約を締結する電子契約には、データの差し替えや改ざんといったセキュリティ上のリスクが存在します。このようなセキュリティへの懸念を理由に、電子契約を導入していない企業もあることでしょう。

このような場合、電子署名やタイムスタンプの有効性を説明し、データの差し替え・改ざんのリスクは最小限に抑えられることを説明します。セキュリティ性が高い電子契約サービスを紹介し、情報漏洩やデータの破損といったリスクを抑えられる点も説明するとよいでしょう。

電子契約のメリットを理解してもらう

電子契約のメリットを説明し、電子契約の良さを理解してもらえば、相手方が電子契約に応じてくれる可能性があります。印紙税や郵送費、印刷費が不要になること、電子データなので事務処理の効率が上がることなどを説明するとよいでしょう。

特にコスト削減に関しては多くの企業が目標に掲げているため、企業が利益を上げるうえで大きなメリットになり得ます。

電子契約を相手方から求められた場合の確認ポイント

電子契約を導入していない状態で相手方から電子契約を求められた場合、どのようなことを確認し、対応するべきなのでしょうか。

ここからは、電子契約未導入なのに相手方から電子契約を依頼された場合の確認ポイントを解説します。

電子化できる契約文書か

まずは、電子化できる契約文書かどうかを確認しましょう。電子化できるかどうかは法令で定まっており、場合によっては電子契約が認められていない契約文書の可能性があるためです。

法改正によりほとんどの契約文書が電子化できるようになったものの、事業用定期借地契約や任意後見契約などは公正証書による書面化が必須のため、電子化できません。

社内規程で問題ないか

電子契約を求められた場合は、社内規程を必ず確認しましょう。電子契約未導入の場合、社内規程が電子契約に対応できていない可能性があるためです。例えば社内規程で紙の契約書の保管に関するルールが定められていた場合、契約書が電子データの場合はどうするのかを検討する必要があります。

今後も電子契約を求められる機会は増えていく可能性が高いため、早めに社内規程を見直しておくとよいでしょう。

契約期間はいつまでか

契約がどのくらい続くのかも確認しなくてはなりません。電子契約は暗号化によって機密性が担保されているものの、技術が進んだ数年後には暗号を解読されてしまう危険性があるためです。

基本的に電子署名の有効期限は長くても3年程度であるため、契約期間が長い場合は長期署名を施すとよいでしょう。長期署名を施せば、電子署名の有効期限を10年に延長できます。契約が10年以上続く場合は、再度長期署名を施してください。

契約者は誰か(当事者か立会人か)

先述したように、電子契約には当事者型と立会人型の2種類があります。それぞれコストや作業負担が異なるため、相手方の電子契約サービスがどちらなのか必ず確認しておきましょう。

当事者型の場合、署名鍵と電子証明書を用意する必要があり、電子証明書の取得には本人確認や取得費用が必要です。立会人型はメールやSMSで認証するため作業負担は小さいですが、法的効力は当事者型よりも高くありません。また、立会人型はメールアドレスが相手方に開示されてしまうため、メールアドレスの開示を踏まえたうえで導入を検討する必要があります。

契約内容を確認する

契約書の内容についても確認しておきましょう。基本的には紙の契約書と同じ内容で問題ありませんが、一部の文言が電子契約に対応していない場合があるためです。例えば「文書」や「押印」などは紙の契約書特有の表現になるので、電子契約に適した表現に訂正する必要があります。

文言を訂正した際は、確認がスムーズに行われるよう、訂正箇所を相手方と共有しておきましょう。

相手方と異なる電子契約サービスを利用している場合

自社と相手方が異なる電子契約サービスを利用している場合、選択肢としてまず考えられるのは、どちらか片方のサービスを利用することです。同じ電子契約サービスを利用して契約するため、比較的シンプルな方法といえます。しかし、どちらか片方はこれまで利用していたものとは異なるサービスに変更する必要があるため、慣れないサービスの利用に抵抗を覚える可能性があるでしょう。

それぞれのサービスを利用して電子署名することも可能です。お互いに自社が利用しているサービスで契約書を作り、契約書のPDFファイルを相手方に送信します。慣れ親しんだサービスをそのまま利用できるメリットは大きいでしょう。

ただし、異なるサービスを利用する場合は双方の契約書を保管する必要があります。紙に比べれば管理は容易ですが、それでも契約書の管理に多少の労力を要してしまうでしょう。

電子契約サービスの選び方

電子契約サービスを選ぶ際のポイントとしてまず考えられるのは、電子契約の種類です。これらは法的効力やコストに違いがあるため、それぞれの特徴を踏まえたうえでどちらを選ぶのか決める必要があります。電子契約サービスを気軽に導入したい場合は立会人型のサービスを選ぶとよいでしょう。法的効力の強さを重視する場合は当事者型のサービスをおすすめします。

サービスのセキュリティ機能が万全かどうかも重視すべきポイントです。セキュリティが不十分なサービスを利用してしまうと、情報漏洩やデータ改ざんによって自社の信頼が大きく失われてしまいます。大きな損失につながる可能性もあるため、十分なセキュリティ対策が施されたサービスを選ぶようにしてください。

どの電子契約サービスを導入するか迷っている場合は、マネーフォワード クラウド契約がおすすめです。契約書の作成から管理まで、契約業務に関わる機能が網羅されており、紙の契約書と電子契約をまとめて保管できます。マネーフォワードの他サービスとの連携により、バックオフィス全体の効率化も実現可能です。

双方が納得した形でスムーズに電子契約を進めよう

相手方が電子契約サービスを導入していない場合、紙の契約書を使用することや、PDFファイルを送る方法がありますが、双方が導入している場合と比較すると、やや手間がかかってしまうでしょう。

相手方に電子契約を求める際は、セキュリティ懸念の払しょくや電子契約のメリットが伝わるような説明が求められます。電子契約を相手側から求められた場合は、社内規程や契約期間、契約内容などを確認して導入を検討するとよいでしょう。

スムーズな電子契約を実現するためにも、双方が納得した形で電子契約を進めるようにしてください。


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