• 更新日 : 2024年11月14日

業務委託契約書は電子契約にできる?電子化や締結のやり方(無料テンプレート付)

企業において、業務委託契約書を電子化することで、業務の効率化やコスト削減が大きく期待されます。電子契約を導入することで、契約の締結スピードが向上し、印紙税の負担も不要になるため、特に総務担当者にとっては重要な施策です。

今回は、業務委託契約書を電子契約に移行する際のメリットや具体的な導入方法、締結の流れについて詳しく解説します。加えて、無料で利用できる契約書のテンプレートもご紹介し、実務に役立つ情報を提供します。

業務委託契約書は電子契約にできる?

業務委託契約書の電子化が進んでいます。法的効力や利便性の向上により、多くの企業が導入を検討しています。ここでは、業務委託契約書の電子契約化について、法的根拠や具体的な方法、メリットを解説します。

業務委託契約書も電子化が可能

業務委託契約書は、電子契約で締結できます。これは、2001年に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)に基づいています。同法第3条では、電子署名が行われた電子文書は、真正に成立したものと推定されると規定されています。

さらに、2020年7月17日に公表された「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化などを行う電子契約サービスに関するQ&A」により、クラウド型電子署名サービスの法的有効性が明確化されました。これにより、より広範な電子契約の利用が可能となりました。

業務委託契約は、民法上の典型契約である委任契約(民法第643条)、準委任契約(民法第656条)、または請負契約(民法第632条)のいずれかに分類されますが、いずれの場合も電子契約での締結が可能です。

ただし、電子契約を導入する際は、契約当事者間で合意を得ることが重要です。また、電子署名の真正性を担保するため、信頼性の高い電子契約サービスを利用することが推奨されます。

電子契約化により、印紙税の削減、契約締結の迅速化、保管・管理の効率化などのメリットが得られます。特に、2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法により、電子取引データの電子保存が原則義務化されたことも、電子契約導入を後押ししています。

電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。

業務委託契約書を電子化するメリット

業務委託契約書の電子化は、企業の業務効率化とコスト削減に大きく貢献するなど、多くのメリットがあります。業務委託契約書を電子化することで得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。

印紙税がかからない

業務委託契約書を電子化する最大のメリットの一つは、印紙税が課税されないことです。印紙税法上、電子契約は「文書」に該当しないため、印紙税の課税対象外となります(印紙税法第2条)。これにより、特に高額な契約を頻繁に締結する企業にとって、大幅なコスト削減が可能となります。

例えば、契約金額が1,000万円を超える業務委託契約の場合、紙の契約書であれば2万円の印紙税が必要ですが、電子契約ではこのコストが完全に不要となります。

どこにいても契約が締結できる

電子化された業務委託契約書は、インターネット環境さえあれば、場所や時間を問わず締結できます。これは、電子署名法により、電子署名が手書き署名や押印と同等の法的効力を持つと認められているためです(電子署名法第3条)。

特に、2020年以降のコロナ禍でテレワークが普及したことにより、この利点の重要性が増しています。オフィスに出社せずとも、自宅やサテライトオフィスから契約を締結できるため業務の継続性が向上し、緊急時の対応力も強化されます。

さらに、2021年9月1日施行の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」により、さまざまな行政手続きでの押印が不要となり、電子的な契約締結がより一般的になっています。

契約の更新も迅速にできる

業務委託契約書の電子化により、契約の更新プロセスが大幅に迅速化されます。紙の契約書では、更新時に再度書類を作成し、押印、郵送するプロセスが必要でしたが、電子契約ではこれらの手順が省略できます。

改正電子帳簿保存法により、電子取引データの電子保存が原則義務化されました。これにより、契約更新の履歴も電子的に保存することが求められ、電子契約システムを利用することで、この法的要件を容易に満たせます。

また、多くの電子契約サービスには契約の自動更新機能や期限通知機能が備わっており、更新漏れのリスクを大幅に低減できます。これは、継続的な業務委託関係を維持するうえで非常に有効です。

セキュリティの強化ができる

業務委託契約書の電子化は、セキュリティの強化にも大きく貢献します。電子契約システムでは、暗号化技術や多要素認証などの高度なセキュリティ機能が実装されており、不正アクセスや改ざんのリスクを最小限に抑えられます。

改正個人情報保護法では、個人データの漏えい時の報告義務や、越境移転に関する規制が強化されました。電子契約システムを利用することで、これらの法的要件に対応しやすくなります。

保管スペースの必要なし

業務委託契約書を電子化することで、物理的な保管スペースが不要となります。これは、特にオフィススペースの効率的な利用が求められる都市部の企業にとって大きなメリットとなります。

電子帳簿保存法に基づき、電子取引データは電子的に保存することが義務付けられています。電子契約システムを利用することで、この法的要件を容易に満たすことができ、かつ検索性なども向上します。

業務委託契約書を電子化する方法・流れ

業務委託契約書を電子化することで、契約手続きの効率化やコスト削減が可能です。電子契約の導入にあたっては、適切な手順を踏むことで、安全かつ法的に有効な契約を結べます。以下、業務委託契約書を電子化する具体的な方法と流れを解説します。

書面をPDFファイルに変換する

まず、既存の紙ベースの業務委託契約書を電子化するためには、契約書をPDF形式などのデジタルファイルに変換する必要があります。紙の契約書はスキャナーやカメラを使用してデジタルデータに変換し、その後PDFとして保存します。このステップで、契約書の内容がデジタル化され、以降の電子契約手続きに進む準備が整います。

PDF形式は、変更ができないため、契約書の改ざん防止にも有効です。また、スキャンする際には、できるだけ高解像度でスキャンすることで、契約書の細部も正確に保存されます。

書面を電子契約システムに取り込む

次に、電子契約システムに契約書を取り込むステップに移ります。信頼性の高い電子契約サービスを選定し、そこにPDFファイルをアップロードします。このサービスを通じて、契約書の確認、署名、管理が行われます。電子契約システムでは、契約書に対して電子署名を行い、タイムスタンプを付与することで、法的な証拠力を強化します。電子署名法によって、適切な電子署名は紙の署名と同等の効力を持ちます。

電子契約システム上で業務委託契約書を作成する

電子契約システム上では、業務委託契約書を新たに作成することもできます。クラウド上でテンプレートを活用し、契約内容を入力していきます。契約の内容に基づき、必要な項目(委託業務の内容、期間、報酬など)を順次記載し、契約書を完成させます。システムによっては、法的要件に適合した項目が自動で追加される機能もあるため、正確かつ迅速に契約書を作成することが可能です。これにより、契約書作成時のミスを減らし、スムーズな契約締結が実現します。

 

業務委託契約書に電子契約を導入する手順

業務委託契約書の電子契約導入は、業務効率化とコスト削減に大きく貢献します。しかし、適切な準備と手順が不可欠です。法令遵守と最新の動向を踏まえ、導入手順を見ていきます。

導入目的の明確化

業務委託契約書の電子契約導入にあたり、まず目的を明確化することが重要です。主な導入目的としては、以下の点などが挙げられます。目的を明確にすることで、適切な電子契約サービスの選定や、社内外への説明がスムーズになります。

  • 業務効率化
  • コスト削減
  • ペーパーレス化
  • テレワーク対応

電子契約サービスの選定

電子契約サービスの選定は、導入の成否を左右する重要なステップです。選定の際は以下の点に注意が必要です。

  • 電子署名法第3条の要件を満たしているか
  • 改正電子帳簿保存法に対応しているか
  • セキュリティ対策(データの暗号化、アクセス制御など)
  • 使いやすさ(UI/UXの良さ、モバイル対応など)
  • 他システムとの連携性
  • コスト(初期費用、月額費用、従量課金の有無)

運用ルールの整備・法務関係者への説明

電子契約の導入には、既存の契約プロセスの見直しが必要です。さらなるデジタル化が推進されていることを踏まえ、以下の点について運用ルールを整備します。

  • 電子契約の適用範囲(全ての業務委託契約か、特定の契約のみか)
  • 電子署名の権限者と承認フロー
  • 電子契約書の保管方法と保存期間
  • セキュリティポリシー(アクセス権限の設定など)

また、法務部門への説明や合意形成も重要です。電子契約が法的に認められていること(電子署名法、電子帳簿保存法)や、導入によるリスク低減のメリットを十分に伝えることで、社内承認を得やすくなります。

契約書の文面を調整

業務委託契約書を電子契約に移行する際、契約書の文面調整が必要です。具体的には、「署名・押印欄」を「電子署名にて承認」といった文言に変更する必要があります。また、電子署名が付与される際のフローや、タイムスタンプの使用についても契約文書に記載しておくことで、双方の合意が明確になります。こうした文面の調整は法務部門と相談しながら進めることが推奨されます 。

取引先への説明

電子契約の導入にあたっては、取引先への説明が不可欠です。特に、取引先が電子契約に慣れていない場合には、その法的有効性や、導入による利便性、セキュリティ対策について丁寧に説明する必要があります。取引先にとっても、印紙税の削減や契約締結の迅速化といったメリットがあるため、それを強調することで合意を得やすくなります。導入をスムーズに進めるために、契約フローに関する簡単なガイドラインやマニュアルを提供することも有効です 。

電子契約サービスの導入開始

全ての準備が整ったら、電子契約サービスの導入を開始します。サービスを導入したら、最初にテスト契約を行い、実際の運用で問題がないかを確認します。また、担当者への研修やサポート体制を整えることで、運用初期のトラブルを防げます。導入後は、契約の履歴や進捗をリアルタイムで確認できるため、契約管理の透明性が向上し、効率的な運用が実現します。

業務委託契約書を電子契約で締結する流れ

ここでは、立会人型と当事者型の2つの主要な電子契約方式について、その締結の流れを法的根拠や最新の法改正を踏まえて詳細に解説します。

立会人型の電子契約の流れ

立会人型の電子契約は、電子契約サービス提供事業者が契約当事者の電子署名を代行する方式です。以下が一般的な流れとなります。

  1. 契約書のアップロード
    契約書をPDF形式で電子契約システムにアップロードします。
  2. 署名依頼の送信
    システム上で相手方にメールで署名依頼を送信します。
  3. 本人確認
    両当事者がメールに記載されたURLにアクセスし、メールアドレスやSMSによる認証を行います。これは2020年7月17日に公表された「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化などを行う電子契約サービスに関するQ&A」に基づく本人確認方法です。
  4. 契約内容の確認と同意
    両当事者が契約書の内容を確認し、同意の意思表示を行います。
  5. 電子署名の付与
    サービス提供事業者が両当事者の同意に基づき、電子署名を付与します。
  6. 契約の成立
    両当事者の同意と電子署名の付与をもって契約が成立します。
  7. 契約書の保管
    電子契約システム上で契約書が保管されます。改正電子帳簿保存法に基づき、適切な方法で保存する必要があります。

当事者型の電子契約の流れ

当事者型の電子契約は、契約当事者自身が電子証明書を用いて電子署名を行う方式です。具体的な流れは以下の通りです。

  1. 電子証明書の取得
    両当事者が認証局から電子証明書を取得します。これは電子署名法第3条に基づく電子署名の要件を満たすためです。
  2. 契約書のアップロード
    契約書をPDF形式で電子契約システムにアップロードします。
  3. 署名依頼の送信
    システム上で相手方に署名依頼を送信します。
  4. 電子署名の付与
    両当事者が自身の電子証明書を用いて電子署名を付与します。この過程は2001年に施行された電子署名法に基づいています。
  5. 契約内容の確認
    両当事者が署名済みの契約書の内容を最終確認します。
  6. 契約の成立
    両当事者の電子署名をもって契約が成立します。
  7. 契約書の保管
    電子契約システム上で契約書が保管されます。改正電子帳簿保存法に基づき、適切な方法で保存する必要があります。
  8. タイムスタンプの付与
    契約書に対してタイムスタンプを付与します。

当事者型は、契約のスピードが求められる場面や、繰り返し発生する契約に有効です。ただし、タイムスタンプや第三者の立会いがないため、セキュリティ対策や管理が重要になります。

業務委託契約書を電子化する場合の注意点

業務委託契約書を電子化する際には、法的効力やセキュリティ面など、多くの要素に注意を払う必要があります。電子化することで手間が減り、効率化が図られますが、適切な手続きを踏まないとリスクが生じる可能性があります。電子契約にする際の注意点を解説します。

契約書の文言を電子契約に対応させる

まず、契約書の文言を電子契約に対応させることが重要です。従来の紙契約書では「押印」や「署名」を必要とする文言がありますが、これらは電子契約においては「電子署名」や「デジタル署名」に置き換える必要があります。例えば、契約書内の「押印」や「署名」部分を「電子署名にて承認」といった形に調整します。また、契約書にタイムスタンプの付与や電子署名の使用に関する条項も加えておくと、法的リスクの回避が可能です。

契約相手との合意が必要

業務委託契約書を電子契約で締結する際には、契約相手との合意が必要不可欠です。電子契約の法的効力は日本の「電子署名法」によって認められていますが、紙の契約に慣れている企業や取引先がまだ多く存在します。そのため、電子契約に移行する際には、契約相手に事前に電子契約のメリットや法的有効性を説明し、合意を得ることが重要です。

双方の同意なしに一方的に電子契約を進めると、トラブルになる可能性があるため、適切なコミュニケーションが必要です。

電子署名が適切に行われているか確認する

電子署名の適切な使用は、契約の法的有効性を確保するために非常に重要です。電子契約では、電子署名法に基づく適正な電子署名が求められ、タイムスタンプや認証サービスによって署名が有効であることを確認する必要があります。また、電子署名の技術的な詳細やその運用についても、サービスプロバイダーや法務担当者と協力して理解することが大切です。

特に、電子帳簿保存法の規定に基づいた保存方法を遵守する必要があります。

セキュリティ対策を講じる

電子契約書はセキュリティ対策を講じることで、その信頼性が確保されます。クラウドサービスを使用する場合、契約書が安全に保存されるように、暗号化技術やアクセス制御、定期的なバックアップが重要です。また、万が一の不正アクセスやデータの改ざんを防止するために、システムのセキュリティ体制を見直すことが必要です。

特に、クラウド型の電子契約サービスを利用する場合、ISO 27001に準拠したセキュリティ基準を持つサービスを選定することで、安全性が向上します 。

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業務委託契約書を電子化して、業務効率とコスト削減を実現しよう!

業務委託契約書の電子化は、企業にとって非常に多くのメリットをもたらします。特に、契約プロセスの効率化、印紙税の削減、セキュリティの向上が大きな利点です。
また、導入にあたっては、適切な手順に従い、契約書の文面調整や相手方との合意をしっかりと行うことが成功の鍵となります。テンプレートの活用や、クラウド契約サービスの導入を通じて、契約業務をスムーズに電子化しましょう。

 


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