• 作成日 : 2024年11月7日

契約書管理規程とは?目的や決め方、運用するポイントを解説

契約書管理規程とは、契約書の作成から保管、廃棄に至るまでのルールを定めた社内規程のことです。

当記事ではこの契約書管理規程について目的や決め方などを詳しく解説し、運用にあたって知っておきたいポイントについても紹介しています。企業の法務担当の方や経営陣の方、個人事業主の方などもぜひ参考にしていただければと思います。

契約書管理規程とは?

「契約書管理規程」とは、企業が取引先と締結する各種契約書について、安全かつ効率的に管理するための一連のルールを定めた社内規程のことです。

契約書は企業活動においてとても重要な文書で、取引内容を明確化し、当事者間の権利義務を確定させるために必要な情報を記載しています。証拠として役立つことで、後々のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。
しかし、この契約書も適切な管理がなされていなければ紛失や改ざんのリスクが高まり、法的効力に影響をおよぼす可能性も出てきてしまいます。そこで契約書管理規程を策定し、契約書の作成から保管、廃棄に至るまでの一連のプロセスを標準化することが重要になってきます。

契約書管理規程を作成する目的

契約書管理規程を作成する目的は、大きく分けて①契約書管理業務の効率化、②契約リスクの管理の2つです。

契約書管理を効率化するため

企業活動の中で契約書は日々増えていくものです。そのため契約書を効率的に管理することは業務を円滑に進めるうえで重要といえるでしょう。

この点、契約書管理規程を策定しておけば契約書に関わる一連の業務フローを標準化でき、誰でも同じように業務を処理できるようになり、業務の効率化を図れます。

例えば契約書管理規程において契約書の保管場所や保管方法、命名規則などを明確に定めることで、必要な場面にすぐ契約書を見つけやすくなるでしょう。
また、契約書の承認プロセスをわかりやすく策定しておけば承認にかかる時間を短縮し、業務のスピードアップを図ることも期待できます。

契約リスクを管理するため

契約書管理規程の策定は、契約に関わるリスクの管理にもつながります。

例えば契約書管理規程において契約書の更新期限を管理するルールを設けることで、更新漏れを防ぎ、契約上の不利益を回避しやすくなるでしょう。

契約内容の変更履歴を管理しておけば過去の契約内容と現在の契約内容を容易に比較でき、内容変更に伴うリスクも評価しやすくなります。

契約書管理で必要な4つのポイント

契約書を適切に管理するためには、以下の4つのポイントを押さえることが重要です。

  1. 契約書の一元管理
  2. 項目の管理
  3. 期限の管理
  4. 内容の管理(バージョン管理)

各ポイントの詳細やその必要性について言及します。

契約書の一元管理

「契約書の一元管理」とは、全ての契約書を決められた場所に集約して管理することを意味します。

各部署や担当者が個別に契約書を管理していたのでは契約書の紛失や情報漏えいのリスクが高まってしまいますし、契約書を見つけ出すのに時間がかかってしまうなどの支障が生じてしまいます。

一元管理を行えばこれらの問題を回避し、契約書の検索性を高められます。また、誰がどの契約書を閲覧・編集したのかを記録することもできれば、セキュリティ面での強化も図れます。

項目の管理

契約書には、契約当事者・契約期間・契約金額・支払条件などさまざまな項目が含まれます。これらの項目を適切に管理することで、契約内容を正確に把握し、必要なときに必要な情報へアクセスできるようになります。

例えば、契約の相手方や契約の種類ごとに契約書を分類したり、重要な項目で整理したりすることで、契約書の検索性を高められます。また、契約書に関連する書類や情報を紐づけて管理することで、契約の内容に対する理解を深めることも可能です。

なお、項目の管理をより効率的に行うにはルールを策定するだけでなく契約書管理システムの導入も重要になってきます。

期限の管理

契約書には、契約期間・更新期限・解約予告期限などさまざまな“期限”も設定されます。これらの期限を適切に管理することで、期限切れによるトラブルや損失を防げます。

逆に、期限の管理を怠ると契約違反や損害賠償などのリスクが生じる可能性が高くなってしまいます。契約書管理システムを導入するなどして期限管理を徹底しましょう。

内容の管理(バージョン管理)

契約内容は、同じ相手方との取引であっても、長く関係性を続けていく中で変更されることもあります。例えば取引条件の変更や新たな条項の追加などがあったとき、契約書のどの部分が、いつ、どのように変更されたのかを把握できるように管理することが大事です。

トラブルがあった際に過去のバージョンを参照することもあるでしょうし、担当者が変更となったときも経緯を確認しやすくなります。

自社なりの方法で管理してもかまいませんが、効率的な方法はやはり専用のシステムを利用するというやり方でしょう。システム上で自動管理ができれば余計な手間も発生しません。

契約書管理規程を作成する方法・流れ

契約書管理規程を作成する手順は以下の通りです。

  1. 契約書管理の担当者を決定する
  2. 契約書管理台帳を作成する
  3. 契約書の棚卸しをする
  4. 契約書管理台帳へ入力する
  5. 契約書管理規程を作成する

各手順の要点を簡単に説明していきます。

契約書管理の担当者を決定する

まずは、契約書管理規程の作成および運用を担当する者を決定しましょう。

法務部や総務部など、社内の状況に合わせて適切な部署・担当者を決めます。担当者としては、契約書管理に関する専門知識を持ち、責任感の強い人物が適任です。

契約書管理台帳を作成する

契約書管理台帳は、契約書の管理状況を一覧で把握するための台帳です。Excelなどの表計算ソフトや専用のシステムを使用して作成できます。

台帳には少なくとも以下の項目を盛り込むようにしましょう。

  • 契約書番号
  • 契約書名
  • 契約の相手方
  • 契約締結日
  • 契約期間
  • 契約金額
  • 保管場所
  • 担当者
  • 更新日

契約書の棚卸しをする

既存の契約書を全て洗い出し、契約書管理台帳に記載されている情報と照合します。この作業を「棚卸し」といいます。

棚卸しをすることで、現在どのような契約書がどれくらい存在するのか、契約内容に問題はないか、といったことを把握できます。

契約書管理台帳へ入力する

棚卸しで確認した契約書の内容を、契約書管理台帳に入力していきます。入力漏れや誤入力がないように注意しながら丁寧に作業を行いましょう。

契約書管理規程を作成する

上記の作業を踏まえ、契約書管理規程の作成を始めましょう。契約書管理規程には以下の内容を盛り込むのが一般的です。

  • 契約書管理の目的
  • 同規程の適用を受ける範囲
  • 契約書の作成・承認・締結のプロセス
  • 契約書の保管方法
  • 契約書へのアクセス権限
  • 契約書の更新・変更の手順
  • 契約書を破棄するための手続き
  • 契約書管理台帳自体の運用方法

規程の内容は自社の規模や業種、取り扱う契約の種類などによって異なることにも留意してください。

契約書管理規程の決め方

契約書管理規程には、契約書に関わる一連のプロセスを網羅し、具体的なルールを定める必要があります。以下では、規程に盛り込むべき主要な項目について解説していきます。

契約書の作成や受領についての規程を決める

契約書の作成や受領に関するルールを明確化しましょう。具体的には、以下の項目を検討します。

  • 誰が契約書を作成するのか
    → 部署や担当者、それぞれの役割を明確にする。
  • どのような書式で作成するのか
    → 標準となる書式を定め社内全体で統一することで、契約書作成の効率化を図り、内容のばらつきを防げる。
  • 契約書の受領方法
    → 郵送・FAX・メールなど、契約書の受領方法を規定してそれぞれの場合における処理方法を決めていく。

契約書の承認や回覧についての規程を決める

作成した契約書は、適切な承認プロセスを経て締結にいたります。この承認フローを分かりやすく定めることで責任の所在も明らかになり、不正やミスも防ぎやすくなります。

  • 承認フローについて
    → 誰がどの段階で承認するのか、階層構造を明確にする。例えば「担当者→部署長→法務部→経営層」といった承認フローなど。
  • 承認方法について
    → 押印や電子署名など、承認方法を規定する。
  • 回覧方法について
    → 関係部署への回覧が必要な場合、その方法や順番を定める。

契約の締結についての規程を決める

契約の締結に関するルールも定めておきましょう。

例えば書面以外、電子取引も認めるのかどうか、その場合は電子署名の使用に関するルールなども明確にします。なお、署名捺印と電子署名も併用していく場合は、後述するように電子署名管理規程も置いておくとよいでしょう。

契約書の管理についての規程を決める

締結後の契約書をどのように管理するのか、具体的なルールを定めます。

  • 保管方法について
    → 原本、写しをどのように保管するのか、ファイリング方法や保管場所、セキュリティ対策などを定める。
  • アクセス権限について
    → 誰が契約を管理し、契約書の情報や原本へのアクセスについて決定権を持つのかを定める。

契約書の破棄についての規程を決める

保管期間が経過した契約書など、破棄をする場合のその方法についても定めておきます。

例えばシュレッダー処理や溶解処理などいくつか方法がありますが、その方法を決めておきます。このことに加えて、破棄に関する記録も残すようルールを策定しておきます。誰がいつ、どのように破棄したのか、記録を残すようにしておけば紛失なども防ぎやすくなります。

契約書管理規程を運用するポイント

せっかく作成した契約書管理規程も形骸化してしまっては意味がありません。効果的に運用するため、以下のポイントを押さえましょう。

  • 規程の存在や内容を周知する
    • 作成した規程は全社的に周知させることが重要。
    • 具体的には、社内ポータルサイトに掲載する、マニュアルを作成して配布する、説明会や研修を実施するなどの方法がある。
  • 継続的に改善に取り組む
    • 運用状況を定期的に見直し、必要があれば規程の内容を改訂する。
    • 運用上の問題が見つかった場合はもちろん、法改正の影響を受ける場合や社内体制に変更が生じた場合などにも見直す。
  • システムを導入する
    • 契約書管理システムを導入することで規程どおりの運用を徹底しやすくなる。
    • 管理業務の効率化も期待できる。

印章管理規程を合わせて作成しておこう

契約書管理規程と同じく契約業務に関わる「印章管理規程」も作成しておくことが大事です。これは印章、つまり「ハンコ」を管理するための社内ルールのことで、不正な使用や盗難・紛失などのリスクを回避するために作成します。

具体的には、使用するハンコの種類を定義して各ハンコについての管理責任者を定め、どのように使用を承認するのか、どのように保管するのか、といったことを決めていきます。

印章管理規程の詳細はこちらでも解説しております。

電子契約は電子署名管理規程も必要

前項の「印章」を使用するのは紙ベースで契約業務を進める場合です。最近だと電子契約を導入するケースも増えており、この場合は印章に代わり「電子署名」を利用します。

印章同様、慎重に取り扱う必要がありますので、この電子署名についての「電子署名管理規程」を作成しましょう。印章管理規程の一部、あるいは契約書管理規程の一部として規程を設けることもなしではありません。

定めるべき内容は、電子署名の管理責任、電子署名の利用手順やその条件、セキュリティ対策などです。詳細はこちらのページで解説しておりますので気になる方はぜひチェックしてみてください。

システムの導入で契約書管理の負担は軽くなる

契約業務には大きなリスクも伴いますので適切に管理する必要があります。また、契約業務の効率化のためにも契約書管理規程は重要な役割を担います。

これらに加え、電子契約サービス、契約書管理システムの導入を検討するとよいでしょう。
管理にかかる手間やコストは紙で作成した契約書の方が大きいといえます。電子契約を導入して電子化させこれを契約書管理システムで管理すれば、属人化も防げますし契約書管理規程も運用しやすくなります。


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