• 作成日 : 2024年9月27日

根抵当権元本確定合意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

根抵当権元本確定合意書とは、根抵当権者と根抵当権設定者の間で、根抵当権の元本を確定させる旨を合意する書面です。元本の確定により、根抵当権は通常の抵当権へと変化します。本記事では、根抵当権元本確定合意書の書き方やレビュー時のポイントを、条文の具体例を示しながら解説します。

根抵当権元本確定合意書とは

根抵当権元本確定合意書とは、根抵当権の元本を確定させる旨を合意する書面です。根抵当権者と根抵当権設定者の間で締結します。

根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債務を担保しています。つまり、被担保債権の元本は流動的であり、確定していません。

根抵当権の元本は、根抵当権者と根抵当権設定者の合意によって確定させることができます。その際に、両者の間で締結するのが根抵当権元本確定合意書です。

根抵当権の元本が確定すると、特定の債権を担保する通常の抵当権(普通抵当権)へと変化します。

根抵当権元本確定合意書を作成するケース

根抵当権元本確定合意書を締結するのは、根抵当権の元本を確定させる場合です。

根抵当権の元本の確定は、根抵当権設定者から根抵当権者に対して提案または請求するのが一般的です。

根抵当権設定者は、設定時から3年が経過すると、根抵当権の元本の確定を請求することができます(民法398条の19第1項)。根抵当権の元本を確定させることについて、根抵当権者が協力的であれば、両者の間で合意書を締結するケースがあります。

また、根抵当権設定者が元本の確定を請求できる状況でなくても、根抵当権者が応じれば、合意に基づいて根抵当権の元本を確定させることができます。この場合も、根抵当権元本確定合意書を作成します。

根抵当権元本確定合意書のひな形

根抵当権元本確定合意書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に根抵当権元本確定合意書を作成する際の参考としてください。

※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。

根抵当権元本確定合意書に記載すべき内容

根抵当権元本確定合意書には、主に以下の事項を記載します。

①根抵当権の元本を確定させる旨

②元本確定に関する登記手続き

根抵当権の元本を確定させる旨

(例)

○○(以下「甲」いう。)と●●(以下「乙」いう。)は、以下の事項につき合意した。

1. 下記物件に設定した、根抵当権者を甲、根抵当権設定者を乙とする、令和〇年〇月〇日〇法務局〇支局受付第〇号登記の根抵当権の担保すべき元本を確定させること

物件の表示

所在 ○○県○市○町○丁目

地番 ○○番

地目 宅地

地積 ○○平方メートル

根抵当権を特定する情報を記載したうえで、その根抵当権の元本を確定させる旨を明記します。

根抵当権を特定する情報としては、根抵当権者、根抵当権設定者、登記の日付・窓口・番号、根抵当権が設定されている物件の表示を記載するのが一般的です。物件の表示は、登記事項証明書の内容にそろえて記載しましょう。

元本確定に関する登記手続き

(例)

2. 当該元本確定につき、本合意書の締結後、乙の費用負担による登記手続を直ちに行うこと

根抵当権の元本の確定は、不動産に関する物権の変更に当たるため、登記をしなければ第三者に対抗することができません(民法177条)。そのため、根抵当権の元本を確定させた場合には、直ちに登記手続きを行う必要があります。

根抵当権元本確定合意書において、合意書締結後直ちに登記手続きを行うべき旨、および登記費用の負担者を定めておきましょう。登記費用は、抵当権設定者が負担するのが一般的です。

根抵当権元本確定合意書を作成する際の注意点

根抵当権元本確定合意書を作成する際には、元本の確定時点における被担保債権を漏れなく把握することが大切です。根抵当権者と根抵当権設定者の間で認識が異なっているとトラブルの原因になるので、合意書を締結する前に、被担保債権の内容について認識を共有することが望ましいでしょう。

また、特に根抵当権者の側では、元本の確定に応じる必要があるかどうかを検討すべきです。民法の要件に照らして、根抵当権の設定時から3年が経過しているかどうか、その他の元本確定事由(民法398条の20)に該当するかどうかなどをよく検討しましょう。

根抵当権の元本が確定した際の登記費用

根抵当権の元本が確定した際には、速やかにその旨を登記する必要があります。根抵当権の元本確定に関する登記費用としては、主に登録免許税と司法書士費用がかかります。

登録免許税

登録免許税は、登記手続きに当たって納付する税金(国税)です。根抵当権の元本確定に係る登録免許税は、不動産1件当たり1,000円とされています。

紙ベースで登記申請をする際には、登記申請書に収入印紙を貼付して登録免許税を納付します。オンラインで登記申請をする際には、登録免許税の納付もオンラインで行うことができます。

司法書士費用

登記手続きを司法書士に依頼する際には、司法書士費用がかかります。根抵当権の元本確定に係る登記手続きの司法書士費用は、不動産1件につき2万円から3万円程度が標準的です。

司法書士費用の金額は、依頼先の司法書士によって異なります。予期せぬ高額の費用を請求されてトラブルになることを防ぐため、必ず事前に見積もりを提示してもらいましょう。複数の司法書士を比較すると、費用を抑えて依頼できる可能性があります。

根抵当権元本確定合意書は、元本確定請求を穏便に解決したい場合などに締結しましょう

根抵当権の設定時から3年が経過すると、根抵当権設定者は根抵当権者に対して元本の確定を請求できます。

3年の期間が経過していれば、根抵当権者が拒否しても元本の確定が認められてしまいます。根抵当権者としては、根抵当権元本確定合意書の締結に応じ、穏便な解決を目指すのが得策でしょう。

根抵当権元本確定合意書を締結する際には、確定する被担保債権を漏れなく把握することが大切です。根抵当権者と根抵当権設定者の間で、被担保債権の内容について認識を共有し、トラブルの防止に努めましょう。


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