• 作成日 : 2022年8月5日

予約契約とは?契約書の種類や締結時のポイントを解説

予約契約とは?契約書の種類や締結時のポイントを解説

将来、あるタイミングである契約(本契約)を成立させたいという場合、「予約契約」が役に立ちます。
ここでは「予約契約とは具体的にどのような契約なのか」「どんな書類で予約契約は成立するのか」や、その他締結時のポイントについて解説しますので、参考にしていただければと思います。

予約契約とは

契約における予約とはどのような意味を持つのか、具体的にどのような書類が予約契約書として機能するのか、以下で見ていきましょう。

契約における予約とは

契約における「予約」とは、将来、当事者のいずれかが希望したタイミングで一定内容の契約(これを「本契約」という)を締結することを約する契約のことを指します。
本契約を成立させる権利のことを「予約完結権」と呼び、その権利者が権利を行使すれば、本契約成立の効力が生じます。

例えば売買契約における予約に関しては民法第556条第1項に、以下のように規定が置かれています。

売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
引用:e-Gov法令検索 民法第556条第1項

同条項にいう「売買を完結する意思」を表示して本契約である売買契約を成立させる権利が「予約完結権」です。ここでは「一方の予約」とありますが、予約完結権は当事者双方が持つことも許されます。これを「双方の予約」と呼び、一方当事者の意思表示のみによらない予約とすることで本契約成立をより確実なものにできます。

予約契約書になるのはどんな書類?

契約の予約を行う場合、必ずしも「予約契約書」と題した書類を交わす必要はありません。どのような題が付された書類であっても、内容が予約契約であれば予約契約書として機能します。
実際、「覚書」や「念書」として書類が交わされることもありますし、その他にも「承諾書」「約定書」「証明書」「協定書」といった多様な名称が使われることもあります。書類の名称にとらわれることなく、常にその書類に記載されている内容に着目するようにしましょう。
この観点は、後述の収入印紙の必要性を検討する場面においても大切なことです。

売買契約や賃貸借契約でも予約は有効

上に挙げた条文の通り、民法は売買契約において予約という行為を想定しています。
しかし売買契約のみ予約が有効になるわけではありません。民法第559条では、予約に関する規定等を、売買契約以外の有償契約に対しても準用するとしているからです。

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索 民法第559条

つまり、賃貸借契約などでも予約契約を交わすことはできます実際。実際、土地や建物の売買・賃貸借といった取引で予約が用いられるケースはよくあります。

例えば「土地賃貸借予約契約書」などと題した契約書が作成されることがあります。この契約書内では、土地の貸し借りという本契約を予約する旨のほか、必須ではありませんが予約保証金や予約の解除に関する事項なども定めることができます。
予約保証金に関しては、「予約保証金として金〇〇円を、〇〇(期日)までに、〇〇(方法)により、預託しなければならない」「本契約の締結後、予約保証金は返還する」といった形で定めることになります。
どのような状況になれば解除ができるのか、ということも併せて取り決めておくことでトラブルを防ぎやすくなるでしょう。本契約に関する効力発生が将来になってしまうため、不確定要素に対する対策を打っておくことが大切です。

予約契約を結ぶ際のポイント

予約契約を締結する上では以下のポイントも押さえておきましょう。

予約契約の内容は変更できる?

予約契約締結後、予約完結権を行使するまでに事情が変わってしまう可能性もあります。そこで予約契約の内容変更に関する規定も置いておきましょう。

例えば本契約が賃貸借契約である場合において、予約完結権行使までに経済事情が大きく変動し、賃料設定を設定し直す必要が出てくるかもしれません。
基本的には当事者間での話し合いにより契約内容を変更することはできるのですが、相手方がその要求に応じてくれるとは限りませんし、一方的に内容を変更することはできません。そこで内容変更の必要性があらかじめ想定される場合には、契約書内で改定についての規定を設けておきましょう。

改定が認められる事由を具体的に列挙しても良いですし、何か著しい状況の変化があったときには双方の協議により改定ができる旨を規定し、幅広く改定の余地を設けても良いでしょう。

収入印紙は必要?

契約書を交わすとき、収入印紙を貼付して印紙税を納めるケースがよくあります。
そして、これは予約契約書も例外ではありません
印紙税法別表第一課税物件表の適用に関する通則5参照)。予約契約書が印紙税法上の課税物件表においてどこに所属するかは、成立させようとする本契約書の内容によって決まります。契約金額と税額を調べて印紙を貼付しましょう。

文書を作成する都度課税されるため、予約契約と本契約で2通の契約書が作成されたならそれぞれの書面に貼付しなければなりません。
また、文書の名称は問われず実質面が見られますので、「覚書」や「協定書」「念書」などと題して交付される文書であっても収入印紙貼付を忘れないように注意しましょう。収入印紙について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

ただし、収入印紙は紙の文書として作成する場合に課税されるものです。電子契約を交わす場面では課税されませんので、電子契約システムを導入して対応することで契約のコストを下げることはできます。今後電子契約の機会が増えると考えられますし、一度導入を検討してみると良いでしょう。

参考:e-Gov法令検索 印紙税法

条件付き契約などとは異なる

予約契約と似た契約に、「停止条件付き契約」「期限付き契約」があります。

停止条件付き契約とは、将来発生することが不確定な事象の発生を条件に、履行請求を認める契約を指します。「私が試験に合格したら」などと条件を付する場合の契約です。

一方、期限付き契約とは、将来発生することが確実な事象をきっかけに履行請求を認める契約を指します。「〇年〇月〇日になったら」や「あなたが亡くなったら」などと期日を設定することになります。

いずれも将来のある時点で契約の効力が生じる点予約契約と共通していますが、それぞれ異なる特徴・性質を持っています。予約契約と違って停止条件付き契約や期限付き契約では基本的に「当事者の意思表示」に依存しません。

ちなみに予約契約の場合においては当事者の意思表示に基づいて契約の無効、取り消しもしくは解除が可能です。

予約契約や条件・期限を上手く使い分けて本契約を成立させよう

将来、ある契約の締結をしたいのであれば予約契約を検討しましょう。最適な手段、契約内容については専門家に相談して決めるようにしましょう。

よくある質問

予約契約とは何ですか?

予約契約とは、将来、売買や賃貸借などの本契約を成立させることを約する契約のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

どのような書類が予約契約書にあたりますか?

必ずしも「〇〇予約契約書」としてなどの名称が付されている必要はなく、予約契約としての内容 を備えていれば、念書・覚書・承諾書などであっても同じ効力が生じます。詳しくはこちらをご覧ください。


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