- 作成日 : 2025年11月11日
取締役会の開催頻度は?数え方や例外ケースなど詳しく解説
企業の重要な意思決定を担う取締役会。その運営において「開催頻度」は法律で定められた重要なルールです。本記事では、会社法が定める取締役会の開催頻度はもちろん、間違いやすい「3ヶ月」の数え方、そして開催義務の例外ケースとなる書面決議(みなし決議)まで、担当者が知りたいポイントを詳しく解説します。開催しない場合のリスクや議事録の電子化といった実務知識もあわせて紹介し、企業の健全なガバナンス体制構築をサポートします。
目次
取締役会の開催頻度は?
取締役会は、少なくとも3ヶ月に1回以上開催する必要があります。これは、会社法によって実質的に義務付けられている企業の重要なルールであり、会社の規模や業種に関わらず、取締役会設置会社すべてに適用されます。
取締役会の開催頻度について、法律に「3ヶ月に1回開催しなさい」と直接的に定めた条文はありません。しかし、会社法第363条第2項において、代表取締役および業務執行取締役は「3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない」と定められています。
この報告義務を果たすための場が取締役会であるため、結果として、取締役会は報告のために少なくとも3ヶ月に1回以上は開催しなければならない、ということになります。
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取締役会における「3ヶ月に1回」の数え方とは?
会社法が定める「3ヶ月に1回以上」という基準は、取締役の仕事ぶりに関する「報告」の間隔を指します。そのため、厳密には前回の「報告が行われた日」をカウントの開始日とすべきであり、必ずしも取締役会の開催日と一致するとは限りません。
起算日の具体的なカウント方法
最終日が土日祝日にあたる場合、民法の規定により、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期限は翌営業日に満了となります。ただし、この規定が適用されるかは状況によるため、原則として期限内に開催できるよう、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
具体的な計算例
| 前回の開催日 | 次回の開催期限 |
|---|---|
| 5月15日 | 8月14日 |
| 8月31日 | 11月30日 |
| 11月30日 | 翌年2月28日(または29日) |
このように、単純に「月」だけで管理するのではなく、具体的な「日付」を意識して厳密に管理することが求められます。
厳密な運用と柔軟な対応のバランス
法律の要件を厳密に守ることは大前提ですが、多くの企業では事業年度に合わせて計画的に開催スケジュールを組んでいます。例えば、四半期ごとの決算内容を報告・承認するために、決算月の翌月に取締役会を定例開催するといった運用です。
- 定例開催のメリット
- 開催期限を徒過するリスクを防止できる
- 取締役のスケジュール調整が容易になる
- 定期的に経営状況をチェックするリズムが生まれる
定款で「毎月1回開催する」など、法律の基準より厳しい頻度を定めることも可能です。会社の状況に応じて、厳密な期限管理と計画的な運用を両立させることが、健全な会社運営につながります。
取締役会の開催頻度の例外とは?書面決議(みなし決議)の活用
取締役会は、実際に会議を開かずに書面やメールなどでの同意によって決議を成立させることができます。これを会社法第370条に基づく「決議の省略」といい、通称「書面決議」または「みなし決議」と呼びます。多忙な取締役のスケジュール調整が困難な場合に、機動的な意思決定を可能にする便利な制度です。
書面決議(みなし決議)が成立するための法的要件
書面決議は非常に便利な制度ですが、成立には以下の厳格な法的要件があります。
- 定款に定めがあること:書面決議を行うには、前提として「取締役会の決議を省略できる」旨が定款で定められている必要があります。
- 取締役全員の同意:決議の目的である事項について、議決に加わることができる取締役の全員が、書面または電磁的記録(Eメールなど)で同意の意思表示をすることが必要です。「過半数」の賛成では足りない点に注意が必要です。
- 監査役が異議を述べないこと(監査役設置会社の場合):監査役設置会社においては、監査役がその提案に対して異議を述べないことが条件となります。そのため、事前に監査役へ提案内容を通知する必要があります。
これらの要件が一つでも欠けると決議は無効となるため、慎重な手続きが求められます。
注意点:3ヶ月に1回以上の報告義務は書面決議で代替できない
最も注意すべき点は、書面決議をもって「3ヶ月に1回以上」の取締役会開催(報告義務)を免れることはできないという点です。 なぜなら、法律が定める報告義務は、取締役間で質疑応答ができる「会議の場」でなされるべきと解されているためです。
ただし、この「会議の場」は必ずしも物理的に集まる必要はなく、音声と映像によって即時かつ双方向のコミュニケーションが可能なWeb会議システム等を利用した開催も、適法な取締役会と認められています。
書面決議が有効な活用シーン
開催義務は免れませんが、書面決議は機動的な意思決定が必要な以下のような場面で非常に有効です。
- 緊急性の高い承認事項:次の定例取締役会まで待てない、急な資金調達や設備投資の承認など。
- 軽微または形式的な議案:役職名の変更や、全会一致が明白な契約の承認など。
- 定例取締役会の補完:定例会と定例会の間に発生した個別の議案を処理する場合。
取締役会を正しい頻度で開催しないとどうなる?
定められた頻度で取締役会を開催しない場合、取締役個人や会社全体に重大な法的リスクが生じる可能性があります。
善管注意義務違反と損害賠償責任
取締役は、会社に対して「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」を負っています。取締役会の開催を怠ることは、この善管注意義務に違反する行為と見なされる可能性があります。
もし、取締役会の不開催が原因で会社に損害が生じた場合(例:不正行為の発見が遅れた、重要なビジネスチャンスを逃した等)、取締役は会社に対して損害賠償責任を負うことがあります。さらに、株主から責任を追及され、株主代表訴訟に発展するリスクも否定できません。
取引の無効や代表取締役の解職リスク
会社法では、以下のような「重要な業務執行」については、取締役会の決議が必要と定められています。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
取締役会の決議を経ずに行われた取引であっても、会社は原則として、その事実を知らずに取引した善意の第三者に対して無効を主張することはできません。これは会社法で定められた取引の安全を守るためのルールです。取引が無効となり得るのは、相手方が決議を経ていないことを知っていた(悪意)、または知らなかったことに重大な過失があった、といった限定的なケースです。
また、代表取締役に対する監督義務違反を問われ、代表取締役の解職決議につながる可能性もあります。
そもそも取締役会とは?
取締役会は、会社の業務執行に関する意思決定を行い、各取締役の業務執行を監督するための重要な機関です。役割や設置義務について詳しくみていきましょう。
取締役会の役割と権限
取締役会の主な役割は、個々の取締役に業務執行を委ねつつ、会社全体の経営方針や重要事項を合議制で決定し、その執行状況を監督することにあります。これにより、特定の個人の独断専行を防ぎ、客観的で合理的な経営判断を促します。
以下は会社法で定められた主な決議事項ですが、会社の状況によって決定機関が異なる点に注意が必要です。
- 業務執行に関する重要事項の決定
- 役員の報酬等の決定:取締役の報酬は、原則として定款または株主総会決議によって定められます。株主総会で報酬総額の枠を決め、各取締役への具体的な配分を取締役会に一任する、という運用が一般的です。
- 新株(募集株式)の発行:新株発行の決定機関は会社の種類によって異なります。公開会社では原則として取締役会決議で決定できますが、非公開会社では原則として株主総会決議が必要です。
- 自己株式の取得:自己株式の取得方法によって決定機関は異なります。特定の株主から合意で取得する場合は原則として株主総会決議が必要ですが、市場取引等で取得する場合は、定款に定めがあれば取締役会決議で取得枠を設定することも可能です。
- 取締役の職務執行の監督
- 競業取引・利益相反取引の承認:取締役が、自己または第三者のために会社と競合する事業を行ったり、会社と直接的・間接的に利益が相反する取引をしたりする場合には、会社の利益が不当に害されることを防ぐため、事前に取締役会の承認を得る必要があります。
- 各取締役からの業務執行状況の報告:業務執行取締役は、3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行状況を取締役会に報告しなければなりません。これは承認を求める「決議」ではなく、状況を知らせる「報告」です。
- 代表取締役の選定および解職
取締役会の設置義務がある会社
すべての株式会社に取締役会の設置が義務付けられているわけではありません。会社法上、以下のいずれかに該当する会社は、取締役会の設置が必須となります。
- 公開会社(株式の譲渡制限がない会社)
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
これらに該当しない「非公開会社」で、かつ上記以外の機関設計の会社は、定款で定めることにより取締役会を設置しない選択も可能です。
取締役会については以下の記事でも詳しく紹介しています。
取締役会の開催から議事録作成までの流れ
取締役会を有効に成立させ、その内容を法的な証拠として残すためには、適切な手続きを踏むことが重要です。
ステップ1. 開催の決定と招集通知
まず、取締役会の開催日時と場所(Web会議も可)を決定します。招集権者は定款で定められていることが一般的ですが、定めがない場合は各取締役が招集できます。
招集権者は、原則として開催日の1週間前までに、すべての取締役および監査役に対して招集通知を発しなければなりません。ただし、この期間は定款で短縮することも可能です。また、取締役および監査役の全員の同意があれば、招集手続きを省略して開催することも認められています。
ステップ2. 取締役会の開催と決議
取締役会は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席しなければ、会議を開くことができません(定足数)。そして、議案の決議は、出席した取締役の過半数をもって行われます。この要件は、定款でより厳しく加重することも可能です。
なお、議案について特別な利害関係を有する取締役は、その議案の決議に参加することができないため注意が必要です。
ステップ3. 取締役会議事録の作成
取締役会を開催した後は、その内容を記録した取締役会議事録を遅滞なく作成する義務があります。議事録は書面または電磁的記録(PDFファイルなど)で作成します。
議事録には、主に以下の事項を記載する必要があります。
- 開催日時及び場所
- 議事の経過の要領及びその結果
- 決議事項について特別の利害関係を有する取締役の氏名
- 出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
- 議長の氏名
作成した議事録には、出席した取締役及び監査役全員が署名または記名押印(電子署名も可)をしなければなりません。
ステップ4. 議事録の保管
完成した取締役会議事録は、会社法に基づき、開催日から10年間、会社の本店に備え置く必要があります。なお、支店での備置義務は同じ会社法の中でも株主総会議事録に関するルールであり、取締役会議事録には適用されません。
また、議事録の閲覧・謄写請求は無条件に認められるわけではなく、請求者の立場や会社の形態によっては、裁判所の許可が必要となる場合があります。
取締役会議事録も電子化できる?電子署名の活用と法的要件
取締役会議事録は電子化(電磁的記録による作成)が可能です。ペーパーレス化やリモートワークの普及に伴い、取締役会運営のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める企業にとって、議事録の電子化は非常に重要なテーマとなっています。
取締役会議事録への電子署名は法的に有効か?
はい、法務省令が定める要件を満たした電子署名であれば、法的に有効です。会社法第369条第4項では、取締役会議事録が電磁的記録をもって作成されている場合、署名または記名押印に代わる措置として「法務省令で定めるもの」を講じなければならないと規定しています。
この「法務省令で定めるもの」が電子署名に該当します。これにより、信頼性の高い電子契約サービスなどを利用して付与された電子署名は、手書きの署名や物理的な押印と同等の法的効力を持つと認められています。
電子議事録の作成・保管方法とメリット
電子議事録は、電子契約サービスなどを活用することで、紙の議事録よりも効率的かつ安全に作成・保管できます。
- ワードプロセッサソフト等で議事録を作成し、PDF形式で保存します。
- 電子契約サービスにPDFをアップロードします。
- 出席した取締役・監査役に署名依頼を送信します。
- 各役員は内容を確認し、自身のPCやスマートフォンから電子署名を行います。
- 全員の署名が完了した電子議事録は、クラウド上で安全に保管されます。
このプロセスにより、以下のような多くのメリットが生まれます。
| メリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 業務効率化・迅速化 | 製本、押印のための郵送や日程調整が不要になり、意思決定から記録確定までの時間を大幅に短縮できます。 |
| コスト削減 | 用紙代、印刷代、郵送費、保管スペースのコストが不要になります。 |
| ガバナンス・セキュリティ強化 | 誰が・いつ署名したかの記録が残り、改ざん防止に繋がります。検索性が高く、過去の議事録の確認や監査対応も容易です。 |
| BCP(事業継続計画)対策 | 災害時やパンデミック時でも、場所を問わずに議事録の署名・閲覧が可能になり、事業の継続性を確保できます。 |
取締役会の開催頻度が支える企業のガバナンス
本記事では、取締役会の根幹となる開催頻度の法的義務から、その例外である書面決議、開催しない場合のリスク、そして議事録の電子化といった実務までを幅広く解説しました。
会社法が実質的に定める「3ヶ月に1回以上」という取締役会の開催頻度は、健全な企業統治の基礎となる遵守すべきルールです。この定められた頻度を守ることはもちろん、適切な招集・決議手続きを経て、法的に有効な議事録を作成・保管することが、企業のコンプライアンス体制の根幹をなします。取締役会の適切な運営を通じて、企業の持続的な成長を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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