- 作成日 : 2025年2月6日
新リース会計基準でサブリースはどうなる?会計処理や事業者への影響を解説
新リース会計基準の適用によって、サブリースの扱いはこれまでと大きく変わります。今後は資産や負債の計上が必要となるため、会計処理が大きく変わることに不安を感じることもあるかもしれません。
本記事では、新リース会計基準によるサブリース取引の処理方法や事業者への影響を解説します。
目次
サブリースとは?
サブリースとは、不動産オーナーから物件を借り受け、それを第三者に転貸する賃貸経営の形態を指します。この仕組みでは、オーナーとサブリース会社の間で結ばれる契約と、サブリース会社と入居者との間で結ばれる契約という、二段階の賃貸借契約が存在します。
ヘッドリース・サブリースとは
サブリース取引では、2つの契約関係が発生します。不動産オーナーとサブリース会社の間で結ばれるヘッドリース(マスターリース契約)と、サブリース会社が入居者と結ぶサブリース契約です。
サブリース会社は、ヘッドリースにおいては借手として、サブリースにおいては貸手としての立場を有します。この2つの契約は独立して存在し、それぞれの契約に基づく権利と義務が発生します。
転リースとの違い
転リースとは、サブリース取引の一形態で、不動産オーナーから借り受けた物件を、ほぼ同一の条件で第三者に転貸する取引を指します。
サブリースと転リースの主な違いは契約条件にあります。転リースでは原契約とほぼ同一の条件での転貸が行われるのに対し、一般的なサブリースでは、サブリース会社は独自の条件設定が可能です。
このようにサブリースは専門の事業者が介在することで、効率的な物件運営を実現する仕組みとして機能しています。
新リース会計基準でオペレーティング・リースの借手が売買処理に変更
新リース会計基準では、これまで賃貸借取引として処理されていたオペレーティング・リースが、大きく取り扱いを変更されることになりました。旧来の基準では、ファイナンス・リースは借手の資産計上を行う一方、オペレーティング・リースは契約形態がレンタルに近いとの考えから、オフバランス処理(資産や負債に計上しない方法)とされてきました。
しかし、新リース会計基準では、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約」としてリースを定義し、原則としてすべてのリースについて借手側が使用権資産およびリース負債を計上することを求めています。
この変更によって、これまで賃貸借的性格が強いと考えられていたオペレーティング・リースも含めすべてのリースについて使用権資産およびリース負債を貸借対照表に計上することになります。
その結果、企業の財務諸表に大きな影響が及ぶことが予想されます。
新リース会計基準がサブリースの会計処理に与える影響
新リース会計基準では、サブリース取引について、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引として定義されました。
この変更により、サブリース取引の会計処理方法が大きく変わることになります。
サブリース取引も資産および負債で計上しなければならない
新リース会計基準の適用により、オペレーティング・リースの借手は従来の賃貸借処理から売買処理へと変更されます。
これに伴い、サブリース取引においても使用権資産とリース負債をバランスシートに計上する必要が生じました。特に不動産のサブリース事業を行う企業では、資産・負債が大幅に増加する可能性があり、財務指標に重要な影響を与えることが予想されます。
ヘッドリースとサブリースを別個で会計処理しなければならない
新リース会計新基準下では、ヘッドリースとサブリースをそれぞれ別々の契約として扱い、借手と貸手の両方の会計処理を行うことになりました。そのため中間的な貸手は、以下の処理を行う必要があります。
- ヘッドリースにおいては借手として会計処理を行い、使用権資産とリース負債を認識
- サブリースにおいては貸手として収益および関連する費用を別途認識
ただし日本特有の例外規定として、「中間的な貸手がヘッドリースに関連するリスクを負担しない場合」や「転リース取引」においては、異なる会計処理方法が認められています。
新リース会計基準がサブリース事業者に与える影響
新リース会計基準が施行されることで、サブリース事業者は従来のリース会計と比べ、財務諸表や経営指標にさまざまな影響を受けます。特に以下のような点が実務上で大きなインパクトをもたらすと考えられます。
自己資本比率やROAが低下する
リースのオンバランス化によって、ヘッドリース契約の負債(リース負債)が貸借対照表に大きく計上される場合、企業の負債総額が増加します。
その結果として、自己資本比率が低下することがあり、対外的な財務体質が悪化して見える懸念があります。特に金融機関からの借入額が大きいサブリース事業者の場合は、財務指標の変化が経営判断や資金調達に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
また、リース資産の計上で総資産が増加すると、ROA(総資産利益率)も相対的に低下しやすくなります。新リース会計基準は財務諸表に実態をより正確に反映させることが目的ですが、決算書の見かけ上は指標の数値が下振れする局面も増えるため、ステークホルダーへの丁寧な説明と対策が求められるでしょう。
サブリース取引に伴う会計処理の負担が増加する
サブリース事業者は、ヘッドリース契約に基づいて使用権資産とリース負債を計上すると同時に、転貸先とのサブリース契約における収益認識や貸手としてのリース会計を実施しなければなりません。とりわけオペレーティング・リースとしてのサブリース契約が複数存在する場合、各契約のリース期間、リース料の支払い・受取りのスケジュール、残価リスクの有無などを正確に把握する必要があります。
さらに、リース資産の償却費やリース負債の支払利息相当額などを月次で管理し、ヘッドリース側とサブリース側を合算した収益と費用を整合的に捉える体制を構築しなければなりません。
従来の会計処理よりも明らかに手間がかかりやすく、サブリース取引の規模が大きくなればなるほど、管理体制の構築や担当者の負担は増加する傾向にあります。新リース会計基準の導入にあたっては、会計ソフトや社内システムの見直しが必要となるケースも少なくありません。
新リース会計基準への備えが求められる
サブリースの会計処理が複雑になる背景には、新リース会計基準がリース取引を「資産の使用権の移転」と見なす考え方へと変化したことがあります。
サブリース事業者としては、この考え方に沿った資産・負債の認識を確実に行いつつ、転貸先からの収益認識との整合性を保つことが求められます。実務対応が難しい場合は公認会計士などの専門家への相談も視野に入れながら、新リース会計基準への対策を講じることが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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