• 更新日 : 2024年7月15日

印紙税の税務調査とは?対象になりやすい事業者や調査の流れ、納付漏れのリスクを解説

印紙税の税務調査とは、国税庁や管轄の税務署が行う、企業の印紙税の申告・納付状況を確認するための調査です。

この記事では、印紙税の税務調査について、詳しい流れや対象企業、調査期間、調査の種類などを解説していきます。さらに、調査で問題となるケースや、指摘を避けるための対策もお伝えします。

印紙税の税務調査とは?

印紙税とは、契約書や領収書など、各種の重要書類に貼付する印紙代として納付する税金です。この印紙税について、国税庁や管轄の税務署が定期的に「税務調査」を実施しています。

税務調査の目的は、企業の印紙税の申告・納付状況を確認し、過不足がないかを把握することです。つまり、印紙税の適正な納付が行われているかどうかを、税務当局が確認するのが税務調査の主な内容となります。

印紙税の税務調査の対象となりやすい事業者

印紙税の税務調査の対象となり得る事業者は、印紙税の納付義務があるすべての事業者です。これには、一人親方や小規模な会社など、規模の大小に関わらず、すべての事業者が含まれます。

特に、以下のような企業は調査の対象となりやすいと言われています。

  • 大量の書類を取り扱う企業:契約書や証書など、印紙税が発生する書類を大量に取り扱う企業は、印紙税の納付漏れが発生しやすいため、調査の対象となりやすいです。
  • 高額の取引を行う企業:高額の取引を行う企業は、印紙税の納付額が大きくなるため、調査の対象となりやすいです。

また、税務署は過去の調査結果や申告内容などから、調査対象となる企業を選定します。これらの情報に基づき、税務署は調査対象となる可能性のある企業に対して、事前に通知を行い、調査日を設定します。

印紙税の税務調査の調査対象期間

印紙税の税務調査の対象期間は、通常、過去5年間です。これは、印紙税の時効が5年であるためです。つまり、印紙税の納付漏れがあった場合でも、その納付漏れが5年以上前であれば、時効により追徴税や過怠税の対象とはなりません。

しかし、重大な違反が疑われる場合や、特別な事情がある場合は、5年以上遡って調査を行うこともあります。例えば、脱税の疑いがある場合や、組織的な不正行為が疑われる場合などは、この限りではありません。

また、税務調査は通常、年度ごとに行われます。つまり、1年度分の印紙税の納付状況を調査することが一般的です。しかし、必要に応じて、複数年度にわたる調査を行うこともあります。

印紙税の税務調査の種類

印紙税の税務調査には、同時調査と単独調査の2種類があります。

同時調査は、法人税消費税などの他の税目の調査と同時に行われる税務調査です。同時調査では、一度に全ての税務調査を行うため、企業としては一度の準備で複数の税目の調査に対応できるというメリットがあります。

一方、単独調査は、印紙税のみを対象として個別に行われる税務調査です。印紙税に特化して他の税目との関連性も踏まえて慎重に確認されます。

印紙税の税務調査の流れ

印紙税の税務調査の流れは、同時調査と単独調査で基本的には同じですが、対象となる税目の違いから若干の違いがあります。

同時調査の場合

同時調査は、複数の税目(所得税、消費税、印紙税など)について同時に調査を行う形態を指します。

印紙税の税務調査は、以下の手順で進行します。

①調査日の話し合い

まず、税務署から調査の通知が届きます。その後、税務署と企業との間で調査日の話し合いが行われ、調査日が決定されます。この段階で、税理士の立会いを希望することも可能です。調査日の設定は、企業の業務に配慮した上で行われます。

②必要書類の準備

調査日が決定したら、次に必要な書類の準備に移ります。印紙税の調査では、契約書や領収書など、印紙を貼るべき書類の原本やコピーが必要となります。また、これらの書類に関連する会計帳簿や経理データも準備する必要があります。

③税務調査の内容

調査日になったら、税務署の職員が企業を訪れて調査を行います。調査では、準備した書類の確認のほか、事業の内容や取引の状況についてのヒアリングが行われます。また、印紙税の納付状況や計算方法、印紙の管理状況などについても確認されます。

単独調査の場合

単独調査は、一つの税目についてだけ調査を行う形態を指します。単独調査の場合でも、基本的な流れは同時調査と同じです。ただし、調査の対象となる税目が印紙税のみであるため、印紙税に関連する書類や情報に特化した調査が行われます。

印紙税の税務調査で問題となったケース

印紙税の税務調査では、さまざまな問題が指摘されることがあります。代表的なケースを紹介します。

印紙の貼り忘れ

契約書や領収書など、印紙を貼付すべき書類に印紙を貼り忘れた場合、印紙税の納付漏れとなります。このようなケースでは、過怠税の支払いを求められる可能性があります。

印紙の不足

取引金額に対して、必要な印紙の金額が不足していた場合も問題となります。不足分の印紙税に加え、過怠税の支払いも必要になるでしょう。

印紙の消印忘れ

印紙を貼付した後、消印を忘れていた場合、その印紙税の納付が認められません。この場合、消印を忘れた印紙の額面分の過怠税が課される可能性があります。

印紙税の納付漏れがあった場合

過怠税(かたいぜい)が課される

印紙税の納付が漏れていた場合、その不足分に対して過怠税(かたいぜい)が課されることになります。

過怠税とは、税金を納付すべき期限を過ぎてから納付するまでの期間に対して課される罰則的な税金のことを指します。過怠税の額は、納付すべき印紙税の額と納付が遅れた期間によって決まります。

過怠税(かたいぜい)の金額は状況により異なる

過怠税の金額は、納付すべき印紙税の額と納付が遅れた状況によって異なります。

具体的な例を以下に示します。

  • 印紙を貼り忘れた場合:課税文書に収入印紙を貼らなかった場合、本来の印紙税の額の3倍が過怠税として課せられます。例えば、本来納付すべき印紙税額が1万円の場合、その2倍に相当する2万円との合計額である3万円が過怠税になります。
  • 印紙の貼り忘れを自己申告した場合:所轄税務署長に対して、課税文書の印紙税を納付しなかったことを自主的に申告した場合には、過怠税の額は本来の印紙税の額の1.1倍になります。ただし、申告が税務調査によって印紙税を納付していないことが発覚し3倍の過怠税が課せられることを予知して申告した場合は3倍の過怠税が課せられます。
  • 消印を忘れた場合:課税文書に収入印紙を貼付したものの適切な方法で消印を行わなかった場合には、消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税が徴収されます。

これらの例からわかるように、過怠税の金額は状況により大きく変わるため、印紙税の納付は期限内に正確に行いましょう。また、万が一納付を忘れてしまった場合でも、早めに自主申告を行うことが重要です。

印紙税の税務調査で指摘されないための対策

印紙の貼付漏れがないか確認する

印紙税の納付漏れを防ぐためには、まず、印紙を貼るべき書類に印紙が適切に貼られているかを定期的に確認します。契約書や領収書など、一定の金額以上の取引を証明する書類に、印紙が適切に貼られているか、その額面が適切であるかを確認しましょう。

これらの確認作業を行った記録を作成し、保存しておくことで、税務調査時に印紙の貼付状況を証明することができます。

貼り忘れが判明したら自主申告する

印紙の貼り忘れが判明した場合、すぐに最寄りの税務署に自主申告しましょう。自主申告を行うことで、過怠税の額が軽減される可能性があります。

また、自主申告は企業の税務への誠実さを示すため、税務署との信頼関係を保つ上でも重要です。

電子書類へ切り替える

印紙税は紙の書類に対して課される税金です。したがって、電子書類には印紙税がかかりません。電子書類へ切り替えることで、印紙税の納付漏れを防ぐことができます。

領収書や契約書などを電磁的に管理する場合は、「マネーフォワード クラウド」の利用も便利です。マネーフォワード クラウドでは、領収書や契約書などの書類をデジタル化し、管理することができます。

印紙税を節約できるだけでなく、書類の管理が容易になり、場所を取らずに大量の書類を保存できるというメリットもあります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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