• 更新日 : 2023年6月30日

ストック・オプションとは?仕組みやメリット・デメリット、導入時のポイントを解説

「ストック・オプション」という言葉は耳にしたことがあるものの、概要や制度の仕組みなど詳しく知らない方は多いでしょう。ストック・オプションとは、自社の株を購入できる権利のことです。購入した株は価格が高くなった時に売却して利益を手に入れることができるため、従業員のモチベーションアップにも繋げられます。

とはいえ、導入する前にストック・オプションの特徴やメリットなど、具体的に知っておきたい方もいるでしょう。本記事では、ストック・オプションの種類や導入するメリット・デメリットを中心について詳しく解説します。導入の手続きや留意するべきポイントについても詳しく説明するので、ストック・オプションの導入を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

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ストック・オプションとは

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプションとは、従業員や経営陣があらかじめ決められた期間に決められた価格で自社の株を購入できる仕組みです。

具体的には、将来株式を購入できる権利のことです。購入できる期間や価格、数量は定められていますが、期間内であればいつでも好きな時に自社株を購入できます。購入した株はそのまま保有していても良いですが、株価が高くなっているなら売却して利益を得ることも可能です。社員のモチベーションアップのために、導入を検討している会社もあるでしょう。

ここでは、ストック・オプションについて以下の2点を詳しく解説します。

それぞれ詳しく解説します。

新株予約権との違い

ストック・オプションと新株予約権は、仕組みがよく似ていることから混同される場合があります。

新株予約権とは、会社が決めた価格で株式が取得できる権利のことです。社員にしか購入できないストック・オプションに対して、新株予約権は誰でも取得することが可能です。社内や社外協力者への報酬と限定してないため、社外の投資家や企業などにも報酬を付与できます。

従業員持株会との違い

従業員持株会もまた、混同されがちな制度です。

従業員持株会では、従業員に対して株式を提供して、会社の成長や利益増加による株価上昇の恩恵を受ける機会を提供します。従業員の給与から自社株分を天引きし、決められた割合の配当などが還元されます。

権利を付与された人にしか利用できないストック・オプションとは違い、福利厚生として定められている場合が多く、従業員であればだれでも利用できる点がポイントです。

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ストック・オプション制度の仕組み

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプション制度は、企業が従業員に対して株式オプションを提供し、従業員が将来的に企業の株式を一定の条件で購入する権利を得られる仕組みです。
ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

例えば、会社の株価が1株5,000円だったとして、「権利付与から5年後」の条件付きで権利を付与された場合、5年たったら株式を購入できます。購入価格は、初めに定められた金額です。仮に、5年後の株式の価格が10,000円になっていたとすると、差額の5,000円が利益になります。

株式を購入できる数量に関しても条件や定めなどがありますが、株価が上がれば上がるだけ、利益が上がります。実際には権利を行使して初めて株式が購入できるため、行使さえしなければ損失を引き起こすことはありません。

つまり、権利付与者に破損がない仕組みになっているのです。

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ストック・オプションを導入するメリット

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプションを導入するメリットとしては、主に以下の3点が考えられます。

  • 従業員や取締役のモチベーションが上がる
  • 優秀な人材の確保や流出の防止につながる
  • 優秀な社外協力者の確保や関係維持につながる

ストック・オプションを導入すれば、社員のモチベーションをアップさせ、一丸となって会社の業績を上げることができるでしょう。
上記3つのメリットについて詳しく解説するので、1つずつ見ていきましょう。

従業員や取締役のモチベーションが上がる

ストック・オプションは、従業員や取締役のモチベーションを上げることができます。

なぜなら、株価が安いときに権利を付与してもらうことができ、高くなったら購入・売却して利益を得ることができるからです。株価をアップさせるためには、業績を上げる必要があり、業績を上げるためには社員一人ひとりが営業成績を上げなければなりません。

そのために、ストック・オプション制度を取り入れることで社員が一丸となって自社の業績向上を目指せるのです。仕事に対して自発的に取り組み、責任感を持って業務を遂行してくれるようになりやすく、結果的に業績も株価も伸ばせるようになるでしょう。

優秀な人材の確保や流出の防止につながる

ストック・オプションは、優秀な人材の確保が可能になります。

理由は、将来的に手に入るインセンティブについてアピールできるからです。インセンティブをアピールできれば、成長の可能性が期待できる企業とみなされやすく、優秀な人材が入ってくる可能性が高くなります。

優秀な人材は、会社の業績が上がればその分、自分の給与もアップできると考える傾向があるため、能動的に仕事に取り組んでくれます。また、付与された権利を使う前にやめてしまっては損だ、と考えることによって人材の流出を避けられる点も嬉しいポイントです。

優秀な社外協力者の確保や関係維持につながる

ストック・オプションは社外の人間にも付与でき、優秀な社外協力者との関係を維持できます。

権利を与えられた社外協力者は、株価が上がる前に協力関係をやめて権利がなくなると損だと考えるため、関係の維持が可能です。

また、顧問やアドバイザー、業務委託など社外の協力者に当事者意識を持ってもらいやすくなり、外部の協力者との長期的に良好な関係を築きやすいのもメリットといえます。

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ストック・オプションを導入するデメリット

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプションを導入するデメリットとして、主に以下の3点が考えられます。

  • 株価が下落すると社員のモチベーションが下がる
  • 権利行使後に離職する従業員もいる
  • 付与対象者とそれ以外の者に軋轢が生じる

ストック・オプションを導入する際には、デメリットについて把握しておく必要があるため、上記について一つずつ詳しく解説します。

株価が下落すると社員のモチベーションが下がる

株価が上がればその分利益を得ることができるストック・オプションは、株価が下落すると利益を得ることができません。そのため、社員のモチベーションが下がるかもしれないというデメリットがあります。

株価は常に変動するため、必ずしも上がるといった保証はありません。株価が下がったことで社員のモチベーション低下を引き起こしてしまうと、優秀な人材が離れていくリスクも高くなってしまうことは大きな懸念点となるでしょう。

さらに、ストック・オプションを売却してその利益を退職金に充てる場合もあるため、自社株が下がってしまうと将来に不安を覚えることも考えられます。

権利行使後に離職する従業員もいる

権利行使後に離職する従業員がいるのも、ストック・オプションならではの懸念点です。

ストック・オプション制度を目的として会社に入社した社員であれば、株価が上がるまでは会社のために貢献したとしても、権利を行使して売却の利益を手に入れたとたんに離職してしまう可能性もあります。

ストック・オプションで利益を得るためだけに会社にいた場合、既に権利を行使してしまったら、それ以上会社にとどまる必要性を感じなくなってしまう可能性があるからです。

優秀な人材が流出する恐れも高いため、そのような事態にならないためにも「ベスティング条項」を設けている企業も存在します。ベスティング条項は、雇用や報酬制度において従業員が特定の権利や所有権を取得するために必要な期間や条件を定める条項です。

権利を行使してすぐに退職してしまう従業員の増加を防ぐ効果があるため、離職率を低くしたい企業にも導入の検討をおすすめします。

付与対象者とそれ以外の者に軋轢が生じる

ストック・オプションを付与するための条件があいまいだと、付与対象者とそれ以外の者に軋轢が生じる場合があります。

他の人が付与されているのに自分に付与されない理由がわからなければ、不満が溜まるのも当然といえるでしょう。不満が大きくなれば、付与された社員とされない社員の間に、組織内の不平等感やモラルの低下を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

ストック・オプションの導入が向いている企業

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプション制度に興味があり、導入を検討している方の中には、自社で導入するべきかどうか迷う方もいるでしょう。

導入が向いている企業は、主に以下2種類に分かれます。

あらかじめストック・オプションの導入が向いている企業について理解しておくことで、自社に導入するべきかどうかの判断がしやすくなるでしょう。

ここでは、それぞれの企業が導入に向いている理由について詳しく解説します。

上場を目指すベンチャー企業

上場を目指すベンチャー企業は、発展途上であり、今後ますます成長できる可能性があります。

将来性が見込まれる事業を手掛けている企業は、まだまだ伸び代があるということであり、株式も魅力的です。実際にストック・オプション制度を導入しているベンチャー企業は多く、将来性をアピールすることによって優秀な社員の確保が可能となっています。

上場を目指しているのであれば、ストック・オプションの導入をいずれ検討してみるとよいでしょう。

上場している企業

株式をすでに上場している企業であれば、株式自体に価値があるためストック・オプションの導入に向いています。すでに上場していて、現在将来性のある事業を手掛けているのであれば、なおさら魅力的に映るでしょう。

また、社員の頑張り次第で株価を上げられる企業は、ストック・オプション制度を活用して優秀な人材の確保を行っている場合もあります。

社員のモチベーションを高めて、優秀な人材と共に業績・株価の向上も引き続き行いたい上場企業におすすめできるでしょう。

ストック・オプションの種類

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプションには、権利行使時の課税の有無や課税対象、株式売却時の課税対象の違いによって、以下のような種類があります。

  • 税制非適格ストック・オプション
  • 税制適格ストック・オプション
  • 株主報酬型ストック・オプション
  • 有償ストック・オプション
  • 信託型ストック・オプション

権利行使時に購入費用が発生しない無料ストック・オプションと費用が発生する有償ストック・オプションがあるため、事前に種類を把握しておく必要があります。

種類権利行使時の課税対象株式売却時の課税対象
税制非適格ストック・オプション無し売却時の株価−権利行使価格
税制適格ストック・オプション権利行使価格売却時の株価−権利行使価格
株主報酬型ストック・オプション権利行使価格売却時の株価−権利行使価格
有償ストック・オプション無し売却時の株価−(権利行使価格+発行価格)
信託型ストック・オプション無し売却時の株価−(権利行使したときの時価)

次から詳しく解説します。

税制非適格ストック・オプション

複数あるストック・オプションの中でも、無償でなおかつ税制適格要件を満たしていないものが税制非適格ストック・オプションです。

権利行使時に給与所得として課税され、権利行使後の株式売却時にも譲渡所得として課税されます。2回課税されるのはデメリットと捉える方もますが、その分権利行使期間の制限がなく、他人へ譲渡が可能などのメリットもあります。

税制適格ストック・オプション

税制適格ストック・オプションは、税制の優遇を受けられ、ベンチャー企業で多く導入が見受けられるストック・オプションのことです。課税のタイミングが権利譲渡時だけとなっているため、税金を安く抑えられます。

ただし、税制適格ストック・オプションとするには、以下の租税特別措置法第29条の2の要件を満たしている必要があります。

  • 発行価額
  • 付与対象者
  • 権利行使期間
  • 権利行使価額
  • 譲渡禁止規定
  • 権利行使限度額
  • 保管委託

引用:租税特別措置法第29条の2

ぜひ参考にしてみてください。

株主報酬型ストック・オプション

株主報酬型ストック・オプションとは、株式を報酬として譲渡するものであり、権利行使価額は1円として設定されていることがほとんどです。

付与された役社員は、将来自社の株が上がった際に権利行使し、自社の株式を取得してから売却すれば、株価上昇した分だけの利益を得ることができます。

また、退職所得として譲渡するのであれば、課税額を安く抑えることができるのも特徴です。

有償ストック・オプション

有償ストック・オプションは、一定の価格(有償)を支払うことで株式を購入する権利を得られるスキームです。

従業員は既にストック・オプションを購入しているため、税務上「金融商品」といった扱いになり、給与所得課税ではなく譲渡課税に該当します。

  • 給与所得課税:最大約55%
  • 譲渡課税:最大約20%

上記のように、譲渡課税の方が税率を低くできるため、課税負担を抑えられます。

有償ストック・オプションを購入する場合、「発行価額(ストック・オプション1個あたりの価値)×購入するストック・オプションの数」のお金を会社に支払う必要があるのも頭に入れておきましょう。

信託型ストック・オプション

信託型ストック・オプションとは、信託を利用した報酬形態のことです。

発行したストック・オプションは受託者に信託期間満期まで保管してもらい、受託者が購入した発行会社の時価発行新株予約権を受益者に新株予約権を交付します。

業績に応じて役員や社員にポイントを付与し、信託期間が満了したらポイントをストック・オプションに交換できる点が特徴です。なお、株式売却時にのみ譲渡課税がかかることを頭に入れておきましょう。

こちらについては先日報じられたとおり、税務上の取り扱いについて注意が必要です。詳細は税務署もしくは税理士にお問い合わせください。

ストック・オプションを導入するための手続き

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプション制度を自社に取り入れたい経営者の方は、以下のような手続きを行う必要があります。

  • 新株予約権の内容の決定
  • 付与対象者・割当数の決定
  • 新株予約権原簿の作成

ストック・オプションを導入するには、所定の手続きが必要です。
ここでは、ストック・オプション導入の手続きについて詳しく解説します。

新株予約権の内容の決定

ストック・オプションの導入に際して、まずは募集要項を決める必要があります。

新株予約権の内容には、以下の項目が含まれていなければなりません。

  • 発行時期・発行内容・発行数の決定
  • 無償か有償か
  • 権利行使期間
  • 権利行使価格
  • ストック・オプションの割当日
  • 有償の場合は払込金額か算定方法

募集要項の細かい部分は、取締役会や株主総会で決定します。中でも、権利行使価格は権利を付与したときよりも高い価格に設定する必要があるので注意しましょう。

付与対象者・割当数の決定

付与対象者や割当数を設定するのは、募集段階でしておくことが肝心です。付与対象者や割当数は勝手に決められるものではなく、株主総会の特別決議で決めなくてはなりません。

付与対象者は、有償の場合は払込をしてもらう必要があるため、注意が必要です。

新株予約権原簿の作成

新株予約権原簿は、発行した新株の内容や新株予約権者を管理するためのものです。

いわゆる株主名簿のようなもので、必ず作成しなければならないと会社法で定められています。新株予約権原簿には、必ず記載しなければならない条項があるため事前に確認をしておくとよいでしょう。

また、新株予約権はいずれ株式となる権利のため、発行するだけでも登記事項となります。

ストック・オプションの導入で留意すべきポイント

ストックオプションとは?仕組みやメリット・デメリット・導入時のポイントを解説

ストック・オプションを導入する際に、注意するべきポイントやリスクについて詳しく説明します。

  • 付与対象者の基準を明確にする
  • 割当数は持分比率から考える

導入時には社員に不満が出ないように十分話し合いをする必要があり、法律などの専門家に相談しながら進めていくことが重要です。

以下で詳しく解説します。

付与対象者の基準を明確にする

ストック・オプションは、だれにでも付与できるものではなく、しっかりと付与対象に該当する方の条件を明確にしなければなりません。

あいまいにしてしまうと、もらえる人ともらえない人の違いがわからないため、従業員間で不満が溜まってしまうリスクがあるからです。例えば、会社への業績貢献度などをわかりやすく表示して付与する対象を決めるといったことも良いでしょう。

従業員に不満が溜まり、離職者が増えないためにも、付与対象者の基準をはっきりさせる必要があるということを頭に入れておいてください。

割当数は持分比率から考える

割当数は、持分比率から考えるのが一般的です。

会社法等に当てはまれば特に問題はありませんが、10〜15%程度がよいとされています。逆に発行しすぎてしまうと、既存の株主が保有している株式の価値の低下に繋がってしまうため、注意する必要があります。

まとめ

本記事では、ストック・オプションの特徴や種類、導入するメリット・デメリットについて解説しました。

社員のモチベーションを上げて業績をアップさせられる効果を期待できるため、ストック・オプション制度の導入をおすすめします。ただし、しっかりとした制度設計や、専門知識が必要です。導入する際は、制度やリスクもよく理解してから検討してください。

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株式会社Natee 取締役CFO 小澤 孝仁様

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よくある質問

全体で何%配るべきですか?

上場時に10~15%を上限として各ラウンドでは3~4%分ずつを配ることが一般的です。ストック・オプションの発行上限は、投資家との投資契約書に記載されていることも多いため、まずは投資契約書の内容を確認しましょう。

社員に配る際の配賦基準は何を使ったらよいですか?

人事評価や在籍年数に応じて配賦基準を決めることが多いですが、企業の方針によってさまざまなため、経営陣とも企業文化に照らし合わせて方針を決めるとよいでしょう。

信託型ストック・オプションは採用すべきですか?

信託型は、付与対象者を決めずに発行時の時価でストック・オプションをプールしておけるため魅力的ですが、何も活躍していない社員がいきなり株式益を獲得できてしまうデメリットもあります。発行方針を決めたうえで活用するとよいでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。