- 更新日 : 2024年11月7日
契約書に収入印紙が貼られていない場合は無効なの?
ビジネスの場において契約書はとても重要です。一方、契約書の種類によって必要な収入印紙の額が200円~60万円まで変わり、正確な金額の収入印紙を貼る必要があります。
今回はどんな種類の契約書に収入印紙が必要か確認しながら有効でスマートな契約書を作るための要件を確認していきましょう。
目次
収入印紙が必要な契約書と必要ない契約書
収入印紙を貼らなければならない文書であるかどうかは、国税庁のホームページにある印紙税額の一覧表に記載されています。
収入印紙の金額や必要かどうかは契約の種類だけでなく、契約される金額によって変わりますので注意してください。例えば領収書は金額が5万円未満のものは収入印紙が必要ありませんが、それを超える場合は金額によって200円~20万円が課されます。
一覧表では大項目で20種類、金額別に見ると50種類以上とかなり細かく課税文書の区分がなされています。しかし、実際の商取引で頻繁に目にする課税文書はかなり限られています。通常の商取引ではほとんどの課税文書が以下の4つのいずれかに該当します。
まずは下記の4種類を確認するようにしましょう。
1号 消費貸借に関する契約書
例:不動産売買契約書、土地賃貸借契約書、金銭借用証書、運送契約書など
収入印紙の金額200円~60万円
記載された契約金額が1万円未満の場合は収入印紙が不要
2号 請負に関する契約書
例:工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書など
収入印紙の金額200円~60万円
記載された契約金額が1万円未満の場合は収入印紙が不要
7号 継続的取引の基本となる契約書
例:売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書など
収入印紙の金額4,000円
契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めのないものは除く
17号 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
例:領収書、借入金の受取書、保険金の受取書、損害賠償金の受取書、補償金の受取書
収入印紙の金額200円~20万円
下記の3つに該当する受取書は非課税
1.記載された受取金額が5万円未満のもの
2.営業に関しないもの
3.有価証券、預貯金証書など特定の文書に追記した受取書
1号、2号、17号は平成26年4月1日から収入印紙の値段が上がったり、収入印紙を貼る必要がある金額が引き下げられたりしたものがありますので注意してください。
参照:国税庁 印紙税額の一覧表
そもそも無効な4種類の契約書
契約書の内容によってはそもそも契約書として無効と判断されてしまう場合があります。ではどんな場合が無効になってしまうのか確認しましょう。
1.内容が確定していない場合
例「何か良い物を私に売ってください」という内容では、「良い物」という内容が確定していないため、契約が無効となります。
2.実現可能性がない場合
例「月を私に売ってください」という契約は、実現可能性がないため無効となります。
3.違法な内容である場合
例「時給100円で就労する」という雇用契約は、最低賃金法に違反しているため無効となります。
4.社会的妥当性がない場合
例「機密資料を盗んでくる」という契約は、社会的妥当性がないため無効となります。
収入印紙を貼り忘れたらどうなるの?
収入印紙がない契約書の有効性
違法な内容の契約書が無効なのであれば収入印紙が必要なのに貼られていない契約書も違法なので無効なのではないかと思うかもしれませんが違います。
確かに、このような契約書は印紙税法に違反してますが、違反しているのは契約の内容ではなく収入印紙を貼らなかったという行為に過ぎません。つまり、契約書に収入印紙が貼られているか否かという問題は、契約内容の問題ではなく課税文書であるにもかかわらず必要な税金を納めていないという納税の問題となります。
そのため、税金の申告漏れがあった会社の存在や会社の取引が無効とならないのと同様に、収入印紙を貼り忘れた契約書も無効となりません。
収入印紙を貼らなかった場合のペナルティ
収入印紙が貼られていない場合のペナルティには3種類のパターンがあります。
最も重たいペナルティを課せられるのは税務調査を受けたときに発覚した場合です。本来必要であった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、つまり当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。金額が大きいと100万円を超える過怠税が発生してしまう可能性があります。
もし税務調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
また、収入印紙に消印をしなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
ちなみに、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんのでご注意ください。
ヒューマンエラーで損害を出さないために
必要な収入印紙は契約書の種類と金額によって多様に存在します。ですが実際の業務で必要な種類や金額はそんなに多くない場合がほとんどです。これを機に一度自社の事業でよく使用される契約書には何円の収入印紙が必要か確認してみてはいかがでしょうか。
もしかしたら法律の改正で必要以上に払っていたものや、必要なのに貼っていなかったものが見つかるかもしれません。
塵も積もれば山となる、毎日の業務で使うものこそ小さな改善で大きな効果が出るものです。ぜひ一度、振り返ってみてください。
【関連記事】
プロが教える!簡単に契約書の「収入印紙代」を節約できる3つの方法
契約書の収入印紙を節約する「第7号文書」に関する節税術
マネーフォワード クラウド契約では弁護士監修の契約書テンプレートを用意しています。無料で利用可能ですので、以下のページからダウンロードしてご利用ください。
よくある質問
収入印紙が必要な契約書は?
通常の商取引では課税文書の種類によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
そもそも無効な4種類の契約書とは?
内容が確定していない場合や、実現可能性がない場合、違法な内容である場合、社会的妥当性がない場合です。詳しくはこちらをご覧ください。
収入印紙を貼り忘れた契約書は無効になる?
収入印紙を貼り忘れた契約書も無効となりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
収入印紙の関連記事
新着記事
利用規約のリーガルチェックとは?確認すべきポイントや進め方を解説
インターネットサービスやアプリを運営する企業にとって、利用規約の整備は避けて通れない課題です。利用規約は形式的な書面ではなく、ユーザーとの契約関係を明示し、トラブルを防ぐための重要な役割を担います。しかし、その内容が不適切であれば、法的責任…
詳しくみる下請法における役務提供委託とは?適用基準や法改正のポイントを解説
2026年1月に施行される改正下請法(正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法))は、役務提供取引を含む多様な委託関係に対して規制強化を行い、企業間の取引…
詳しくみる【2026年下請法改正対応】資本金3億円以上の委託事業者が知っておくべき義務や禁止行為を解説
下請法は、委託事業者と中小受託事業者の取引における公正性を確保するために制定された法律です。違反があれば是正勧告や企業名の公表が行われ、信用失墜のリスクを伴います。本記事では、資本金3億円・5,000万円の基準や禁止行為、改正への対応などを…
詳しくみる下請法は資本金1億円の企業に適用される?2026年改正内容と対応策を解説
2026年1月に施行される改正下請法(略称:中小受託取引適正化法)は、資本金や従業員数に応じて適用範囲が大きく拡大され、中堅企業にも影響が及びます。中でも資本金1億円の企業は、発注者・受注者いずれの立場でも新たに下請法の規制対象や保護対象と…
詳しくみる建設業に下請法は適用される?2026年改正の変更点・対応策を解説
建設業においても、下請法(2026年1月施行の改正後は「中小受託取引適正化法」)の適用が求められる場面が拡大しています。従来、建設工事の再委託は建設業法の規律下にありましたが、資材の製造や設計図面の作成といった工事以外の業務委託には下請法が…
詳しくみる2026年下請法改正の要点は?企業への影響やとるべき対策を解説
2026年1月施行の改正下請法(通称:取適法)は、企業の取引実務に大きな影響を与える法改正です。本記事では、その背景や目的から、主要な変更点(価格協議義務の明文化、手形禁止、適用範囲の拡大など)をわかりやすく整理し、企業が取るべき対応につい…
詳しくみる