- 更新日 : 2023年9月1日
領収書に収入印紙を貼るのはいくらから?印紙税の金額や貼り方も解説
領収書も契約書と同じように課税文書とみなされる場合があるため、領収書を発行する際には収入印紙が必要になるケースがあります。実は受取金額が5万円以上の領収書には収入印紙を貼付しなければならないというルールが決められています。
この記事では領収書の収入印紙が必要となる条件や印紙税の金額、収入印紙の貼り方について解説します。
目次
収入印紙とは?
収入印紙とは、主に国に対する税金(印紙税や登録免許税等)や手数料等を支払う目的で発行される証票です。収入印紙と収入証紙が混同されることが多いですが、両者を区別するのは支払先です。
収入印紙は国に対して支払うもので、収入証紙は地方公共団体へ支払うものという点で大きく異なります。
一定の金額以上の領収書には印紙税がかかる
領収書に収入印紙が必要かどうかは領収書に記載されている金額によります。記載金額が5万円以下の場合であれば非課税となり収入印紙は不要です。一方、記載金額が5万円超えのものでかつ紙で発行した領収書は課税文書に該当するので、収入印紙を購入して貼付する必要があります。
印紙税とは取引にかかる書類を作成する際に支払う税金で、収入印紙を購入して課税文書に貼付することで、納税したことになります。
印紙税は消費税や酒税と同じ国税であり、納税者の代わりに事業者が納税する間接税です。なお、仮に収入印紙を貼り忘れたり必要な金額分が貼られていなかったりした場合は、本来支払うべき税額の3倍もの過怠税がかかるおそれもあるため注意が必要です。
印紙税については下記記事でさらに詳しくご説明しています。
印紙税がかかる主な書類
印紙税法の課税文書を作成した場合に収入印紙の貼付が必要です。代表的なものとして以下が挙げられます。
これ以外にも取引でやりとりするさまざまな文書が課税文書に該当し、それぞれ課税される条件や印紙税額は異なります。詳しくは国税庁のホームページで確認しましょう。
参考:印紙税額|国税庁
領収書に収入印紙が必要なケースは?
領収書に収入印紙が必要なるのは、記載された受取金額が5万円以上の領収書を作成したときです。
なお、収入印紙が必要かどうかは以下の手順で判断します。
(1)印紙税の課税事項を証する文書(契約書、受取書、証書など)であるか
- (1)に該当する場合は、以下の(2)へ
- (1)に該当しない場合は収入印紙不要
(2)非課税文書に該当するか
- (2)に該当しない場合は収入印紙が必要
- (2)に該当する場合は収入印紙不要
上記を領収書に当てはめると以下のようになります。
- 「(1)印紙税の課税事項を証する文書であるか」について
領収書の定義は、印紙税でいうと「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(17号文書)」になります。したがって領収書は受取書になるため、(1)に該当することになります。 - 「(2)非課税文書に該当するか」について
領収書に記載された受取金額が5万円未満(※)であれば非課税文書になります。
※平成26年3月31日までに作成された領収書については、記載された受取金額が3万円未満のものが非課税とされていました。
つまり、領収書に記載された受取金額が5万円以上のものは、収入印紙が必要になります。
ただし、受取金額が5万円を超えている場合でも収入印紙を貼付しなくてもいいケースもあります。
領収書に貼り付ける収入印紙の金額一覧
受取金額が5万円以上の領収書に対しては収入印紙を貼る必要があります。印紙税額は領収書に記載されている金額によって異なります。令和5年4月現在の印紙税額をわかりやすく表にまとめました。
領収書の受取金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1千万円以下 | 2,000円 |
【引用】国税庁|「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
なお、受取金額が1千万円以上の場合は、国税庁のサイト内「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」を参考にしてください。
非課税範囲となる受取金額5万円未満の判定方法とは?
印紙税では、領収書に記載される受取金額を以下の3つに分けています。
区分 | 意味 |
---|---|
売上代金 | 営業として行う資産の譲渡または使用させること、役務の提供をしたことによる対価(手付けを含む)の金額 |
売上代金以外の金額 | 借入金、担保としての保証金、保険金などの金額 |
営業に関しない金額 | 営利を目的としない金額(印紙税は非課税) |
※ここでの「営業」とは、一般通念による営業をいい、おおむね営利を目的として反復継続して行うことを指します。
上記の表に沿って、領収書に記載される受取金額を区分します。
さらに、以下の計算により受取金額が5万円未満かどうかを判定します。
計算の結果、合計金額が5万円未満の場合は非課税となり、収入印紙が不要です。
この合計金額は、消費税及び地方消費税が区分記載されている場合、税抜価格で判断します。なお、「区分記載されている」とは、税込価格と税抜価格の両方が記載されているなどにより、その取引における消費税及び地方消費税が明らかな場合です。
もし区分記載されていない場合は、合計金額の計算を税込価格で行うことになります。
5万円以上の領収書でも収入印紙が不要なケースは?
受取金額が5万円以上の領収書でも収入印紙が必要となるケースとしては、主に「電子的に発行された場合」「クレジットカード・キャッシュレス決済で発行された場合」「債権と相殺して支払った場合」という3つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
電子的に発行された場合
まず受取金額が5万円以上の領収書でも収入印紙が不要になるケースとして挙げられるのが、銀行振込の場合でメールなどによって領収書のPDFファイルを送付するなど、電子的な方法によって発行したケースです。電子データは課税文書にあたらないと解釈されるため、収入印紙を貼付する必要がないのです。ただし、パソコンで受取金額5万円以上の領収書を作成し、それをプリントアウトして紙の状態で渡す場合は収入印紙が必要となります。
クレジットカード・キャッシュレス決済で発行された場合
クレジットカード決済やキャッシュレス決済時に、キャッシュレス決済である旨が記載されていれば、収入印紙が不要になります。
5万円以上の現金をその場でお店が受領し、それに対して紙で発行された領収書は課税文書に該当します。
クレジットカード決済や一般的なキャッシュレス決済では、決済会社からお店に現金などが支払われる仕組みです。たとえ書類に領収書と記載されていても、その時点で金銭を受け取った事実がないため、収入印紙が不要になります。
ただし、領収書に「クレジットカード利用」などと書かれていなければいけません。この記載がない場合はクレジットカードやキャッシュレスで決済したことが証拠として残らないため、受取金額が5万円以上であれば収入印紙が必要になります。
債権と相殺して支払った場合
事業者同士で取引を行う際に、お互いに債権と債務がある場合には代金を相殺することがありますが、相殺部分は非課税となります。
たとえばA社がB社に対して5万円の債権を持っていたとしましょう。A社がB社から7万円の商品を現金で購入する場合、債権と相殺すればA社は差し引き2万円を支払うことで商品を購入でき、B社も債務を履行したことになります。このケースでは7万円の商品を取引しているのですが、実際に動いた金額は2万円なので、収入印紙が不要となるのです。
ただし、相殺できなかった部分の金額に対しては通常の領収書と同じように課税対象になります。上記のケースでA社が12万円の商品を購入した場合、5万円の債権と相殺したとしても7万円をB社に支払わなければならないため、収入印紙が必要です。
収入印紙はどこで買える?購入方法を解説
ここで、収入印紙の購入方法について紹介します。販売されている場所は以下になります。
- 郵便局
- 法務局
- 役所
- 金券ショップ
- コンビニ
- 商店など
役所や法務局では、法的な書類に収入印紙が必要なことが多いため、隣接している売店などで購入することができます。ただし、土日祝日は休みとなるため注意が必要です。その点、コンビニや一部の郵便局などは休みなく開いているケースがあるため、購入しやすいでしょう。
購入する際、収入印紙の金額は事前に決めておくことをおすすめします。
収入印紙は、金額により31種類(200円、1000円、1万円など)に分かれています。一般的に広く使われている200円は購入しやすいですが、高額なものとなるとコンビニなどでは取り扱っていない場合もあります。
収入印紙は経費精算できる?
収入印紙は「租税公課」の勘定科目で、使ったときに経費として計上することができます。
収入印紙における経理の詳細や決算時の処理については収入印紙を買ったときの勘定科目は何を使えばいい?にて解説しています。
収入印紙の貼り方
収入印紙の貼付方法や貼り方、貼る位置には決まりがなく、また領収書のどの部分に貼っても問題ありません。複数枚貼る場合は、上下か左右に並べて貼ることが一般的です。
収入印紙を貼ったあとは、印鑑が収入印紙の彩紋(図柄、模様)と領収書に半分程度かかるように押印します。なお、収入印紙へ押印することを消印(けしいん)といいます。「割印」※ではありません。
※割印は、複数枚の紙に押印し、離したときに印影が割れるため割印といわれます。
収入印紙は紙から離すことがないため、厳密には割印とはいいません。
消印で注意すべき点は、「一見して誰が消印をしたかが明らかとなる程度」かつ「通常の方法では消印を取り去ることができないこと」の2つです。これらを満たすものとしては、印鑑かボールペン(消せないものに限る)が一般的です。
印鑑の場合は、会社名または担当者の氏名がわかる印鑑であればゴム印などでも問題ありません。ボールペンの場合は、会社名や商号、担当者の氏名で自筆をしてもよいとされています。
収入印紙を間違えて貼ったときは、消印をしていない場合と収入印紙が破れたり汚れたりしていない場合にのみ、国税庁で新しいものと交換してくれます。
どうしても不安な場合や間違った場合、失敗した場合は、国税庁または近くの税務署に問い合わせてみましょう。
収入印紙を郵送したいときの郵送方法は?
収入印紙を郵送する場合は、荷物の追跡記録がつく簡易書留や一般書留が望ましいでしょう。
収入印紙の金額が高額な場合は、配送事故の際に補償を受けられるオプションをつけておくほうが無難です。
収入印紙を購入する前であれば、相手に銀行振込などで収入印紙の代金を渡し、相手側で購入してもらうほうが、かかる時間の短縮になる場合もあります。
領収書に収入印紙を貼り忘れると過怠税が課される
領収書に収入印紙が必要な場合、貼り忘れてしまうと、過怠税(かたいぜい)という税金が課されます。
収入印紙が必要な領収書を例にして解説しましょう。
200円の収入印紙を貼る必要がある領収書に対して、貼り忘れた場合は600円の過怠税が発生します。金額の内訳は、当初払うはずだった200円の3倍(200×3=600)という計算です。
ただし税務調査前、貼り忘れを自主的に申し出た場合は、1.1倍に軽減されます。
この場合は220円(200×1.1=220)です。
収入印紙は、領収書を作成するときまでに貼る必要があります。また、相手先から収入印紙を求められることもあるため、日常的に注意しなければいけません。
領収書に収入印紙が必要なケースを把握しておこう
収入印紙について、領収書に関連した部分を主に解説しました。
収入印紙が不要な領収書は、受取金額が5万円未満のものです。また、収入印紙を貼る場合は、領収書と収入印紙の彩紋にかかるように消印をしましょう。
一部のケースを除き、受取金額が5万円以上の領収書を発行する際には収入印紙を貼付しなければなりません。金額や取引の内容、領収書の発行方法などをしっかりと確認し、収入印紙が必要な場合は抜け・漏れなく対応しましょう。
メールで電子ファイルの状態で送るなど、領収書を電子的に発行すれば、収入印紙の貼付が不要となります。印刷する手間やコストも省けるため、領収書の電子化も検討してみることをおすすめします。
【参考】
国税庁|印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
国税庁|印紙の消印の方法
よくある質問
収入印紙とは?
主に国に対する税金(印紙税や登録免許税等)や手数料等を支払う目的で発行される証票です。詳しくはこちらをご覧ください。
収入印紙はいくらから貼り付ける?
受取金額が5万円以上の領収書に対しては収入印紙を貼る必要があり、額面は領収書の受取金額によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
収入印紙はどこで買える?
郵便局、法務局、役所、金券ショップ、コンビニ、商店などで販売されています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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