• 作成日 : 2022年9月22日

土地交換契約書とは?雛形をもとに内容を解説

土地交換契約書とは?雛形をもとに内容を解説

「土地交換契約書」は、交換対象となる土地の所有権を互いに移転させるために作成する契約書です。契約書を作成する際に、不動産売買契約との違いや、契約書に記載するべき条項、収入印紙の取り扱いについて悩む方は多いでしょう。

ここでは企業の法務担当者に向けて、土地交換契約を締結する際に知っておくべき内容や交換契約書の雛形をご紹介します。

土地交換契約書とは?

土地交換契約は、交換対象となる土地の所有権を互いに移転させるために締結する契約です。不動産取引における交換は、いわゆる物々交換です。

【土地交換の例】
A社が所有する土地(時価1,000万円)をB社に引き渡し、B社がその土地の所有権を取得する。同時に、B社が所有する土地(時価1,000万円)をA社に引き渡し、A社がその土地の所有権を取得する。

税法上における「交換」とは?

日常生活において「交換」は、「AとBを取り替える」のように、交換対象を特定しないケースが一般的です。しかし、税法上では交換の定義が異なるため注意しなければなりません。

法人が不動産を交換した場合、「固定資産の交換の特例」を利用すると圧縮記帳によって一時的に税金の負担を軽減できます(節税ではなく課税の繰り延べです)。

ただし、同特例での交換とは、土地と土地、建物と建物など「同じ種類の固定資産を交換すること」を指します。土地と建物のように、違う種類の不動産を等価交換した場合は特例の対象外です。

「固定資産の交換の特例」については後ほど解説しますので、併せてご確認ください。

土地売買契約との違い

土地売買契約と土地交換契約は、どちらも所有権の一部または全部を相手に移転させ、対価を受け取る契約です。

民法におけるそれぞれの定義は、以下のとおりです。

“売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法・第555条)”

“交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。(民法・第586条 第1項)”
引用元:民法 | e-Gov法令検索

売買契約と交換契約の違いは、契約の対価にあります。売買契約は資産を譲渡した見返りとして金銭を受け取る契約で、交換契約は資産を譲渡した見返りとして等価の金銭以外の資産を受け取る契約です。

土地交換契約書の雛形

ここでは、土地交換契約書の雛形をご紹介します。契約書を作成する際の参考として、ダウンロードしてご活用ください。

土地交換契約書の主な記載事項

前章でご紹介した雛形をもとに、土地交換契約書の主な記載事項と概要を表にまとめました。

記載事項
概要
交換物件
交換対象となる土地の所在、地番、地目、地積
交換価格
交換対象となる土地の時価
交換差金
交換差金がある場合の金額、取り扱い
所有権移転登記及び物件の引き渡し
所有権移転登記を行う期日や引き渡しに関する留意事項など
契約の費用等の負担
交換契約にかかる費用や税金の負担に関する取り決め
不可抗力による損失の負担
自然災害等、不可抗力によって契約を履行できなくなった場合の取り決め
契約解除
当事者の一方に契約違反があったときなど、契約解除に関する取り決め
裁判管轄の合意
紛争時の管轄裁判所に関する条項
記名・押印欄
契約当事者の記名・押印欄

土地交換は課税対象になる

土地交換契約は物々交換であるため、基本的には金銭のやり取りが生じません(ただし、交換差金として金銭のやり取りが生じることはあります)。

しかし、交換契約は所有権を譲渡する契約であることから、税法上は自社が所有する土地を時価で売却し、相手方が所有する土地を時価で購入したと見なされます。よって、土地の売買取引に関する納税義務が生じます。

土地の交換にかかる税金の種類は、以下のとおりです。

※1 法人税等は、交換によって生じた譲渡益にかかる税金です。ただし、譲渡益が直接課税対象となるのではなく、事業全体の課税所得を基準に税額を計算するため、事業全体の収支によって税額は異なります。詳細は税理士にご確認ください。

印紙税は契約書に貼付する収入印紙代で、登録免許税は所有権移転登記にかかる税金です。上記のうち、法人税に関しては「固定資産の交換の特例※2」によって、一時的に税額の負担を軽減できる場合があります。

※2 同特例は、節税を目的とした制度ではなく、圧縮記帳によって課税を将来に繰り延べる制度です。

固定資産の交換の特例

「固定資産の交換の特例」には、個人向け(譲渡所得税)と法人向け(法人税)の制度がありますが、ここでは法人向けの特例をご紹介します。(個人向けの特例に関しては、国税庁のページをご覧ください)

法人向けの「固定資産の交換の特例」とは、法人が土地や建物などの固定資産を交換したとき、圧縮記帳の適用を受けられる制度のことです。

特例を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

【圧縮記帳の対象となる交換契約】

  • 交換の対象が同じ種類であること
  • 固定資産の交換であること(棚卸資産は対象外)
  • 所有者が1年以上所有していた資産であること
  • 交換するために取得した資産でないこと
  • 交換直前の用途と同じ用途で使用すること
  • 取得した資産の時価と譲渡した資産の時価の差額が、価値が高いほうの価額の20%を超えていないこと(詳細は後述します)

参考元:国税庁 土地や建物を交換したときの圧縮記帳

交換差金が発生する場合

交換差金とは、交換の対象となる資産の時価に差額が生じる場合に、差額を補うために支払われる金銭のことです。不動産は固有の資産であるため、同じ地域にある土地でも土地の形状や日当たり、接道などによって価値が異なります。

自社が所有する土地よりも相手方が所有する土地の価値のほうが低い場合、交換差金によって差額を補うことができます。

ただし、交換差金の金額が、交換対象の土地の時価のうち高いほうの価額の20%を超える場合は、「固定資産の交換の特例」の適用を受けられません。

【特例の適用を受けられないケースの例】
A社の土地(5,000万円)とB社の土地(2,000万円)の交換契約において、B社が交換差金3,000万円を支払った場合は5,000万円×20%=1,000万円となり、交換差金の金額がA社の土地の価額の20%を超えるため、特例の対象外です。

土地交換契約書に印紙は必要?

土地交換契約書を作成する際は、契約書に収入印紙を貼付し、印紙税を納税する義務が生じます。土地交換契約書は、不動産の譲渡を目的とした契約であるため、印紙税法の第1号の1文書に該当します。

土地交換契約では交換対象の「価値」を要チェック

土地交換契約はいわゆる物々交換ですが、税法上は時価で売却・購入したと見なされるため、法人税等の負担が大きくなる場合があります。

要件を満たせば「固定資産の交換の特例」を利用できるので、制度の対象となるかどうか確認してください。

ただし、交換対象の土地の時価に大きな差がある場合は、特例の適用を受けられません。土地の価値は場所や形状によって異なるので、事前に査定して時価を確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

土地交換契約書とは何ですか?

「土地交換契約書」とは、交換対象となる土地の所有権をそれぞれ移転するために作成する契約書のことです。不動産取引における交換は、いわゆる物々交換に該当します。詳しくはこちらをご覧ください。

土地交換は課税の対象になりますか?

土地交換は課税対象であり、譲渡益が生じれば法人税等の負担が増える可能性があります。ただし、法人税に関しては「固定資産の交換の特例」が設けられています。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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