- 作成日 : 2024年5月10日
商号とは?屋号・商標との違いや決め方・ルールについて解説!
商号は、企業や個人事業主が営業活動を行う際に使用する名称です。商法においては、登記された会社の名称を指します。法人は定款内で規定した商号の登記が必須です。
商号を決める際は、一定のルールがあります。本記事では、商号とは何か、商号と屋号や商標の違い、商号をつける際のルールや決め方、変更方法について解説します。
目次
商号とは
商号とは、企業や個人事業主が営業活動を行う際に使用する名称です。商号は登記でき、企業などの法人の場合は会社設立時や社名変更時に登記をしなければなりません。
本記事においては、主に法人が登記をし、法的効果をもった法人名称を「商号」と定義して解説をします。
会社を設立する際は、登記する前に会社の基本的なルールを定めた「定款」を作成します。商号は定款内でも規定しなければなりません。定款内で規定された商号は、登記することではじめて法律上の効力を有します。
商号に似た言葉として、屋号と商標があります。商号と屋号、商標の違いを見ていきましょう。
屋号との違いは?
屋号とは、個人事業主が事業で使用する名称です。屋号は登記する必要はなく、開業届に屋号を記載することで登録が完了します。個人で開業する際には必ずしも屋号を定めなくてもよく、確定申告の際も屋号の記載は不要です。一方、法人の場合、商号の登記は義務となります。
屋号は、商号と違い法的な拘束力がありません。商号の場合、先に登記した企業が権利を主張できます。しかし、屋号には法的な拘束力がないことから、同一名称を使用されてトラブルが起きた場合でも、自分の権利を主張しにくい側面があります。
商標との違いは?
商標は「自社の商品やサービスの名称」で、商号は「企業や個人事業主の名称」です。商標には文字以外の図形や記号などを使えますが、商号で使えるのは決められた文字と記号のみです。
商標は、商標権をもった者以外は当該商標を使用できません。一方商号は、同一所在地に登記しなければ、登記済みの商号であっても使用可能です。
商号を決める上で守るべきルールは?
商号には法令上のルールがあり、ルールを守らなければ希望の商号をつけられない可能性があります。場合によっては、刑罰の対象になるかもしれません。希望の商号で活動するために、商号を決める上で守るべきルールを覚えておきましょう。
株式会社・合同会社などの種類を明示する
商号には「株式会社」「合同会社」など会社の種類を入れることが会社法で定められています。しかし、「K.K.」「Co., Inc.」「Co., Ltd.」など、株式会社の英語表記を商号とすることはできません。英語で表記したい場合は、定款に記載しましょう。
「○○合同会社株式会社」のように、会社の種類を誤認させる文字が含まれた商号も登録不可となります。
同一所在地での同一商号は禁止
同一所在地において他人が商号を登記している場合、後から登記する企業は登記済みの商号を使えません。とくに複数の会社が入居している建物で登記を考えている場合、希望する商号が同じ建物内の会社で登記済みであると、登記不可となってしまいます。同一所在地で同じ商号での登記がないか、事前に必ず確認しておきましょう。
登記の有無は、国税庁法人番号公表サイトで確認可能です。有料ですが、法務局の登記情報提供サービスでも確認できます。
公序良俗に反する名称は禁止
公序良俗に反する言葉を含んだ商号は、認められません。公序良俗とは、「公の秩序」と「善良の風俗」を略した言葉です。公序良俗の判断は、商号を申請する企業の本店所在地を管轄する法務局の登記官が判断します。
官公署の名称と似た商号や、不正の目的で他社と誤認されるおそれのある商号を使用することも認められません。不正の目的をもって商号を使用した場合、罰則として100万円以下の過料が科されます。
不正競争防止法に反する名称は禁止
不正競争防止法により、知名度のある商号と同じ、もしくは似ている商号の利用は禁止されています。知名度のある商号を活用した企業により、先に使用している企業が不利益を被る可能性があるからです。全国的には知名度が低くても、一定の地域で認識されている商号も利用できません。希望する商号の登記有無は、先ほど紹介した国税庁法人番号公表サイトや登記情報提供サービスで検索します。
他社が登録している商標も、商号として使用できません。商標を他人が無断で使用した場合、損害賠償や利用差し止め請求の対象となるからです。
商号に使用できない文字がある
商号は、使用できる文字が決められています。特殊な外国文字、ギリシャ数字などは使用できません。下記の使用可能文字以外の文字を使用した場合、商号の登記ができなくなります。
使用可能な文字 | 使用できない文字 |
---|---|
|
|
※1:符号は字句を区切る場合のみ使用可能
※2:省略を表す場合は、商号の末尾でも使用可能
※3:ローマ字で複数の単語を表記する場合のみ、当該単語の間に使用可能
おすすめの商号の決め方は?
商号を決める方法は多数あります。ここからは、おすすめする商号の決め方を4つ紹介します。自社の状況に応じた項目を取り入れてください。
事業内容が伝わる商号にする
商号は、事業内容が伝わりやすい名称にしましょう。商号を見るだけで、事業内容がイメージしやすくなるからです。「○△石油販売株式会社」「株式会社○△食堂」などが具体例となります。
事業内容がわかる商号にすると、取引先に覚えてもらいやすくなり、初対面の方と話すきっかけ作りもできるでしょう。
短く覚えやすい商号にする
商号は、短く覚えやすくすることも大切です。必要以上に長い商号は取引先の印象に残りにくく、自社の存在を認識してもらえません。存在を認識してもらえないと、依頼する際の選択肢にならず、機会損失につながりかねません。
商号を決める際は、一度聞いて忘れないか、すぐ覚えられるかといった観点からも検討しましょう。
地域密着型の場合は地名を取り入れる
商号の決め方として、地名を取り入れる方法もおすすめです。
地名を商号に取り入れると、インターネットで見つけてもらいやすくなるメリットもあります。とくに地域密着型の企業では、地盤となる地域名を商号にすることで地域の顧客獲得につながる可能性があるため、おすすめの決め方です。
ドメインが取得可能か確認する
商号の決め方として、商号と同じドメインを取得できるかどうかも忘れてはいけません。ドメインとは、ホームページのアドレスです。当記事の場合「biz.moneyforward.com」がドメインとなるので、マネーフォワードのサイトであることが一目でわかります。
商品やサービスをインターネットで検索する際に、合わせてドメインをチェックすることも増えています。ドメインが企業名もしくはサービス名と同じであることが、企業の信用にも直結するのです。インターネット上で信用を得るためにも、事前に商号と同じドメインを取得できるかどうか確認しておきましょう。
商号を変更する方法は?
商号を変更する際は、定款の変更と商業登記の変更申請が必要です。定款、登記それぞれの変更方法や注意点について解説します。
定款を変更する
商号を変更するには、社内にて変更を希望する商号を決定するとともに、定款を変更します。商号は、定款に必ず記載しなければならないからです。商号変更のために行う定款変更は、とくに重要な事項を決定する場合に招集される「株主総会の特別決議」にて実施します。
特別決議で商号を変更するには、議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ出席した株主がもつ議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません。規定数の賛成を得なければ、商号の変更は不可です。賛成を得られやすくなるよう、「議決権の3分の1以上」など、別途株主の出席数を定めても構いません。
商号変更の登記申請を行う
商号を変更する際は、定款変更だけでなく変更の登記も必須です。定款内の商号を変更してから2週間以内に変更登記を申請しましょう。2週間を過ぎて登記が済んでいない場合は、100万円以下の過料となる可能性があります。
商号変更登記の申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。オンラインでの申請もできます。商号変更の登記申請をする際は、登記申請書や株主リストなど必要書類を作成しましょう。登録免許税として、3万円分の収入印紙も必要です。株主リストは、議決権数が上位10名の株主、または議決権割合が3分の2になるまでの全株主の氏名、住所、株式数などを記載した書面になります。
ルールを守り末永く愛される商号を作成しよう
商号とは、企業や個人事業主が営む事業の名称です。企業の場合は登記が必須であり、商号を決める際は、ルールを守る必要があります。ルールを守った上で、短く覚えやすい商号にする、同じドメインが取得できるか確認するなどして、誰からも末永く愛される覚えやすい商号を作成しましょう。
商号を変更する際は、定款の変更だけでなく商業登記の変更申請が必須です。変更申請は、定款の変更から2週間以内に行わなければいけません。本記事を参考に、ルールにのっとった商号を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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