- 作成日 : 2025年3月3日
商品化権許諾契約とは?ひな形をもとに書き方・例文を解説
商品化権許諾契約(しょうひんかけんきょだくけいやく)とは、アニメや漫画、ゲームなどのキャラクターをデザインしたクリエイターと、そのデザインを使って商品を製造・販売したい事業者が結ぶ契約です。この記事では、商品化権許諾契約書が必要となる場面や、契約書に記載すべき項目・書き方について、テンプレートをもとに紹介します。
▼商品化権許諾契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。
目次
商品化権許諾契約とは?
そもそも商品化権とは、創作物を商品化する権利を指します。漫画やアニメなどのキャラクターデザインも著作権の保護対象であり、作者やクリエイターなどの著作権者以外は無断で使うことができません。これを商品化してビジネスを行う場合は、著作権者から商品化権許諾を受ける必要があります。
商品化権許諾契約書には、キャラクターデザインの使用に関するルールなどが記載されており、著作権者と著作物使用者がこれに同意することで、著作物使用者はキャラクターデザインを合法的に利用できるようになるのです。
商品化権許諾契約書を交わすケース
商品化権許諾契約書を締結するシーンとしては、以下が挙げられます。
キャラクターグッズを製造・販売する際
アニメや漫画、ゲームなどのキャラクターデザインの著作権者以外が、人形やぬいぐるみ、アクリルキーホルダー、クリアファイルなどのキャラクターグッズを製造・販売する場合が挙げられます。
この場合、著作権者は著作物使用者から著作物の使用対価として、一定額または売上に応じた一定割合の額を受け取るのが一般的です。
キャラクターを使用して販促活動を行う際
キャラクターを商品のデザインの一部やパッケージ、チラシ、ポスターなどの販促物に使用する場合も、著作権者との商品化権許諾契約書を締結する必要があります。
この場合も、著作物使用者がキャラクターデザインの対価を支払い、許可を受ける形で契約するのが通常です。
商品化権許諾契約書のひな形・テンプレート
当サイトでは、商品化権許諾契約書のひな形を用意しています。初めて作成する際は、ぜひひな形を参考にしましょう。
商品化権許諾契約書の書き方や例文
ここからは、商品化権許諾契約書に必要な項目や書き方について解説します。理解を深めるためにも、ひな形と併せて確認してみましょう。
商品化権許諾の範囲
著作権者がどの範囲で商品化権を許諾するかを明確にします。目的や対象商品、公衆送信(メディアで発信すること)、許諾地域などを定めましょう。
対象商品の詳細情報は、別途資料を添付する方法でも構いません。
契約期限と更新
契約の有効期限と更新方法を記載します。
「本契約締結の日から令和〇年〇月〇日まで」など、具体的な期間を設定し、「期間満了日の〇か月前までに合意があれば、契約をさらに1年間更新できる」などと定めると更新手続きの手間がかかりません。
対価
著作権者がキャラクターデザインを使わせる対価の金額と支払方法、支払期限、振込手数料の負担者を明記します。
「金○○円」といった形で具体的に記載すると分かりやすくなります。
著作権の帰属
キャラクターデザインの著作権は著作権者に帰属する旨を明記します。さらに、対象商品に著作権者の表示を行うことや、著作物使用者が著作者人格権を行使しないことなども盛り込みましょう。
商品の製造
著作物使用者が商品を製造する際の取り決めを記載します。
対象商品の見本を事前に著作権者へ提出し、監修や承認を受けること、商品製造・販売によって生じた損害について著作権者は責任を負わないことなどを明示する必要があります。
第三者による著作権の侵害
第三者が著作権を侵害した場合、著作物使用者は著作権者に報告し、著作物使用者の費用と責任で侵害を排除する旨を定めます。
権利義務の譲渡
本契約によって得た権利や義務を、当事者が第三者に譲渡しないことを確約しましょう。
契約解除
当事者が契約を解除できる条件を規定します。契約違反があり、是正されない場合などを典型例とし、違反によって損害が生じた場合の賠償責任についても定めるのが一般的です。
協議
商品化権許諾契約書に記載の取り決めでは解決できない問題が生じたとき、当事者が話し合って対応する旨を記載します。
合意管轄
商品化権許諾契約に関して訴訟が必要になった場合、どの裁判所を管轄とするかあらかじめ指定しておくとスムーズです。
契約書の保管
契約の成立を示すため、両当事者が署名押印した契約書を保管する旨を定めましょう。
署名押印欄
契約を締結する日付と、両当事者の住所・氏名を記載する欄、押印欄を設けます。ここに署名押印することで契約内容に合意したことになります。
商品化権許諾契約書を書くうえでの注意点
商品化権許諾契約書を作成する際には以下のような点をしっかりと確認しておきましょう。
許諾範囲を明確にしておく
どのキャラクターデザインの商品化権を許諾するのか、どのような目的でどの商品の製造・販売を許諾するのか、どの地域で許諾するのかという範囲を明確にしておきましょう。
ここが曖昧だと著作権者にとっては対象外の商品にまで著作物が使われてしまっている、国内のみでなく海外でも商品が販売されているといったように、想定した範囲を超えて著作物が使われてしまう恐れがあります。
また、使用者にとっては逆に想定していた範囲内で使用していたつもりでも著作権者からクレームを受けてしまったという事態が起こってしまいます。
事前に双方の認識をすり合わせしておき、契約書に反映させておきましょう。
対価の方式には3つある
商品化権許諾契約でよくトラブルになりがちなのがお金のことです。
商品化権許諾の対価には一定の金額を支払う「定額方式」、著作物を使用した商品の売上高の一定割合の額を支払う「定率方式」、粗利の一定割合を支払う「分配方式」という方式があります。
例えば定額方式であれば著作権者は商品の売れ行きに関わらず対価を受け取れる一方で、売上や粗利に比例する他の方式と比較して受け取れる金額が少なくなってしまうというデメリットがあり、使用者に対しては商品が定額を支払えば商品で得た利益を総取りできるというメリットがあります。
その一方で、売れ残りリスクもあるといったように、メリット・デメリットを鑑みたうえで適切な方式と金額もしくは割合を設定する必要があります。
印紙税は不要
契約書の中には印紙税がかかるものも多くなっています。商品化権許諾契約書は課税文書には当たらないので印紙税は要りません。
印紙税法では無体財産権の譲渡に関する契約書は課税文書に該当すると定められていますが、商品化権許諾契約は譲渡には該当しないためです。
ちなみに著作権譲渡契約書の場合は印紙税が課税されることになります。
商品化権許諾契約書の保管期間・保管方法
会社法では「事業に関する重要な資料は会計帳簿の閉鎖時から10年間保管しなければならない」と定められています。商品化権許諾契約書もこれに該当すると考えられ、契約期間が満了してから10年間は保管が必要です。
契約書は書面で保存することもできますが、電子帳簿保存法の要件を満たせばスキャンしてPDFなどの電子データとして保管することも可能です。
商品化権許諾契約書の電子化は可能?
商品化権許諾契約書は電子形式での締結も可能です。WordやExcelで契約書ファイルを作成して相手方に署名してもらうという方法もありますが、おすすめなのは電子契約システムです。ネットを介してスムーズに契約を締結できるうえ、契約を締結した日時が記録されるタイムスタンプが付与されるため、高い本人性や非改ざん性を確保できます。
ビジネスを拡大するためにも、商品化権許諾契約書の内容はよく検討しよう
事業者にとっては有名キャラクターのグッズを販売する、もしくはキャラクターを販促に使うことで、好感度や売上アップにもつながります。一方、著作権者にとってもキャラクターデザインの認知度をアップできて対価も得られるというように、商品化権許諾契約を締結することで双方がメリットを得られる可能性があります。
しかし、使用範囲や対価などを巡って著作権者と著作権使用者が揉めるケースもあるため、事前にしっかりと取り決めたうえで、商品化権許諾契約書に盛り込んで契約を締結しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
IT業界の契約書作成はなぜ重要か?契約形態や使い分けを解説(ひな形あり)
IT業界において、契約書の作成はプロジェクトの成功と円滑な業務遂行のためにきわめて重要です。適切な契約書を作成することで、トラブルを未然に防ぎ、双方の権利と義務を明確にできます。 本記事では、IT業界特有の契約形態や契約書作成のポイント、さ…
詳しくみる立替払契約とは?保証委託契約との違いは?
立替払契約とは、信販会社などが顧客の支払事務を委任する契約のことです。保証委託契約との違いがわかりにくいかもしれません。この記事では立替払契約の概要や法的性質、立替払契約が利用できるケースに加え、クレジット契約における立替払契約や、保証委託…
詳しくみる研究への参加同意書とは?ひな形、例文をもとに解説
研究への参加同意書とは、研究に参加することやその条件について、参加者が同意を表明する書面です。研究を実施する企業は、参加者とのトラブルを防ぐために、きちんとした内容の同意書のひな形を準備しましょう。本記事では、研究への参加同意書の書き方やレ…
詳しくみる建物売買契約書とは?地主が承諾しないケースのひな形をもとに書き方や注意点を解説
建物売買契約書とは、建物の売買に関する条件を定めた契約書です。借地上の建物も売買できますが、地主が承諾しない場合は、裁判手続きの申立てに関する事項を契約書に定める必要があります。本記事では、地主の承諾を得られていない借地上の建物の建物売買契…
詳しくみる土地売買契約書(連帯保証人つき)とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
土地売買契約書(連帯保証人つき)とは土地を売る人と購入する人、連帯保証人の三者が締結する契約書です。この記事では保証人付土地売買契約の意味、通常の土地売買契約との違いや締結するケース、契約書を作成する際の注意点について、ひな形をもとにご説明…
詳しくみる有限責任事業組合契約書とは?ひな形や例文、書き方を解説
有限責任事業組合契約書は、組合を結成する際に締結する契約書です。複数人が共同で事業を行う際に、組合員の責任や出資方法を明確にします。本記事では、有限責任事業組合契約書の書き方のポイントや盛り込むべき条項・内容を、テンプレートを交えてご紹介し…
詳しくみる