- 更新日 : 2025年6月23日
株式譲渡契約書とは?作成方法やひな形を紹介!
自分が保有する株式を譲渡する際は、譲受人との間で株式譲渡契約を交わすことになります。しかし、一口に株式といってもさまざまな種類があり、二当事者間の合意のみでは譲渡できない場合もあります。
ここでは、株式譲渡の特殊性や契約書作成時の注意点、記載事項、印紙税の額などを契約書のひな形とともに解説します。
目次
株式譲渡契約書とは?
株式は、原則として自由に譲渡できます(会社法(以下同)第127条)。株式を譲渡するという契約自体は、譲渡する側と譲受する側に意思表示の合致があれば成立する「諾成契約」ですが、株券発行会社の場合は株券の交付がなければ譲渡の効力は生じませんし(第128条)、株主名簿に譲受人の氏名住所が記録されなければ、当該株式会社や第三者に株式の譲渡を対抗することができません(第130条)。
ちなみに、平成21年の株券の電子化によって株式上場会社はすべて株券不発行になり、それ以外の会社でも現在は株券不発行が原則です。コストを削減でき、偽造の心配もないからです。したがって、今回は株券不発行会社の株式譲渡契約について解説します。
株式譲渡契約は個人間で交わされることもありますが、事業承継の方法として利用されるケースも多いです。中小企業ですべての発行株式を社長が保有している場合などは、その株式を譲り受けた者が、事実上新たな経営者になれるからです。
どのような契約であっても契約書は重要ですが、上記のように内容が会社経営に多大な影響を及ぼす可能性がある株式譲渡契約書は、とりわけ注意して作成することが求められます。
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株式譲渡契約書に記載する項目
株式譲渡契約書は「株式」の持つ特殊性を配慮し、それを反映した内容でなければなりません。契約当事者が特定した株式(どの会社のどの株式を何株)の譲渡に合意した旨、譲渡の目的や譲渡額、株式数、支払方法について記載するのは、一般的な契約書と同様です。
しかし、株主名簿の名義書換、さらに当該株式が譲渡制限株式であった場合には、譲渡には当該株式会社の承認が必要なため(第136条参照)、必要な手続きを得ることを約束して契約書に記載する必要があります。
「譲渡制限株式」とは、株式を他人に譲渡する際に、その会社の承認が必要になる株式のことです。好ましくない人物(会社)に自社株が渡らないようにするため、中小企業では定款で譲渡制限を設けているところが多いです。
さらに、株式譲渡契約書には「表明保証」という重要な記載必須項目があります。
表明保証とは、譲渡人が譲受人に当該株式に関する内容が真実であることを、契約時に表明し、保証することです。譲受人が安心して株式を買い取れるように、譲渡人は自分が当該株式を有効に所有し、かつ譲渡額どおりの価値があること、またその株式を発行している会社の運営が適正なものであることなどを、譲受人に対して保証する必要があります。
最後に、契約解除ができる事由や損害賠償について記載します。特に株式が表明保証と異なる内容であった場合の賠償責任については、必ず明記しておきましょう。
株式譲渡契約書のひな形
ここで紹介する株式譲渡契約書のテンプレートは、会社同士が別会社(発行会社)の株式を売買の形で譲渡・譲受する場合のものです。
株式は譲渡制限株式、株券不発行のものです。表明保証内容については基本的な項目を記載していますが、事情に応じてより細かい内容を表明保証事項に加えてください。譲受人においても、反社会的勢力でないことや法令違反のないことなどを表明保証することを求められることもあります。
株式譲渡契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
株式譲渡契約書における注意点
契約書の記載項目以外に、株式譲渡契約において注意すべき点をいくつか紹介します。
株式譲渡契約書に印紙税は必要?
株式譲渡契約であれば印紙税は不要ですが、対価を金銭で受領している旨の記載があれば、第17号文書の1の書類(売上代金にかかる金銭)として印紙税がかかります。
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
株式譲渡契約書に保管期間はある?
株式譲渡契約書を作成したのが法人である場合は、契約書の保管期間は法人税法により基本的に7年間と定められています(欠損金が生じた年度は10年間)。個人間の契約だと、法律上の定めは特にありませんが、確定申告に契約書を使用した場合であれば、5年間の保管が義務付けられています。
非上場会社が株式譲渡する場合に契約書は必要?
非上場会社は、証券取引所で株式を公開していません。非上場会社の株式は自由に売買できず、譲渡制限株式であることが多いので、安全を期するために契約締結は慎重に進めましょう。非上場会社の株式譲渡では、譲渡承認の手続きを記載した譲渡契約書が欠かせません。
個人間の取引でも株式譲渡契約書は必要?
個人間の株式譲渡であっても、「株式」の特殊性や株主名簿の名義書換、譲渡制限株式の発行会社による承認の必要性などは変わりません。トラブルに備えて、契約書は必ず作成しておきましょう。
有限会社が株式譲渡契約書を交わすケースはある?
会社法の施行に伴い、かつて「有限会社」と呼ばれていた会社は「特例有限会社」として存続することになりました(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第2条)。会社の商号には「有限会社」を用いるものの(同法第3条)、従来の出資者が有していた「持分」は「株式」と呼ばれるようになったのです。
したがって、現在有限会社として存在している会社が発行する株式を譲渡することは可能です。ただし、特例有限会社の株式には譲渡制限があるので、株式譲渡契約書を作成する際は譲渡制限株式の譲渡契約と同様の注意が必要です。
参考:会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律|e-Gov法令検索
株式の譲渡に関しては契約書作成を忘れずに!
会社間はもちろん、個人間であっても株式を譲渡する際は必ず契約書を作成しましょう。特に、株式の種類に伴う必要な手続きや、表明保証の内容については慎重に協議した上で作成してください。大口の株式譲渡や事業経営に関わる株式譲渡の場合は、専門家に助言を求めることをおすすめします。
よくある質問
株式譲渡契約書とは何ですか?
株式の譲渡人と譲受人が当事者となって作成する契約書のことです。株式の特定、譲渡価額、株主名簿の名義書換、譲渡制限株式における発行会社からの承認、表明保証など、定めなければならない事項がたくさんあります。詳しくはこちらをご覧ください。
株式譲渡契約書に印紙税はかかりますか?
株主譲渡契約自体には不要ですが、対価を金銭で受領している旨を記載している場合など、内容によっては必要になることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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