• 更新日 : 2025年5月7日

行政書士に業務を委託するには?契約書の例文・テンプレートを紹介

行政書士に業務を委託するときはまず行政書士事務所に連絡・相談し、依頼が決まれば業務委託契約を締結します。また依頼の際は契約書を作成し、行政書士が作成してくれたとしても各条項を企業側もよくチェックすべきです。

本記事にて、レビューの際や自社で作成する際に役立つ情報、テンプレートをここでも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

行政書士に業務を委託するには?

行政書士に業務を委託するには、まず依頼内容に精通した行政書士を探すことから取り組む必要があります。そしてアポを取り、相談し、対応してくれることが決まれば、業務委託契約を締結します。

なお、行政書士は官公署に提出する公的な書類作成のプロであり、公的制度の利用などに際して行う行政への届出・申請などをサポートするのが主な仕事です。法律分野の専門家ではありますが、弁護士のように広範な法律相談に対応することはできません。
そこで行政書士に業務を委託するときは、依頼内容が行政書士の対応可能範囲であることの確認しておく必要があるでしょう。

行政書士に業務を委託するケース

企業が行政書士に仕事の依頼を出す具体的なシチュエーションとしては、次のような例が挙げられます。

  • 法人設立に伴い定款作成を行うとき
  • 新規事業を立ち上げるために許認可の取得を申請するとき
  • 外国人の雇用に伴いビザ申請や在留資格の更新手続きが必要になったとき
  • 社内の契約書フォーマットの見直しや標準化を図るとき
  • 国や地方自治体に対し、助成金や補助金の受給を求めて申請を行うとき
  • 社内に法務部門がなく契約書の作成やレビューを外注したいとき など

訴訟代理など紛争が起こったときは弁護士に依頼する必要がありますが、日常的な法務の外注や公的書類の作成・申請に関しては行政書士に依頼できます。なお、それらの業務に関しては弁護士でも対応可能ですが、行政書士に依頼した方が低コストで済む傾向にあります。

業務委託契約と雇用契約の違い

人手が欲しいときは、業務委託のほか雇用も選択肢の1つに挙がります。

外部の行政書士に依頼するときは業務委託契約を締結することになりますが、専門知識を持つ法務担当者を社内に置きたいときは雇用契約を締結します。

どちらも、報酬の支払い(業務委託)や給与の支払い(雇用)など、コストがかかることに変わりはありませんが、業務の進め方には大きな差があります。
雇用契約だと使用者である企業が直接指揮命令を行うことになり、細かく指示を出すことが可能です。その反面、社会保険などを負担することになり、労働法による規制も受けます。
一方の業務委託契約だと、受託者である行政書士は独立して業務を遂行し、細かな指示を受けることなく自らの裁量で業務を遂行します。

業務委託契約の種類

業務委託契約は、働き方の実態に応じて、法的には①請負契約、②委任契約、③準委任契約に分類されます。

※契約類型に応じて適用される法律上のルールが変わってくる。

請負契約は、建設工事のように一定の成果物の納品を求めるときの業務委託が該当します。一方の委任契約と準委任契約は一定の行為・業務遂行を求めるときの業務委託であり、前者は法律行為、後者はそれ以外の事実行為の場合に該当します。

そこで、許認可の申請手続きなどを行政書士に依頼するときは委任契約に該当することとなります。しかし行政書士への依頼が常に委任契約に該当するとは限りません。法律行為とは権利義務など法律効果が発生する行為を指し、それ以外の、例えばコンサルなどを依頼するときは準委任契約として業務委託が成立することになります。

業務委託契約の詳細についてはこちらのページもご参照ください。

業務委託契約書はどちらが作成する?

契約書は当事者のどちらが作成しても構いません。業務委託契約でも同じことがいえますし、相手方が行政書士だとしても変わりはありません。

ただ、行政書士は書類作成のプロであり契約書作成にも詳しいため、行政書士への依頼時には相手方から契約書案の提示を受けることもあるでしょう。その場合でも自社が不利になるわけではなく、提示された契約書の内容を精査していけば問題ありません。

なお、口頭でも契約は成立し、契約書のない契約も違法ではありません。しかし行政書士相手だとしても、報酬の支払いなどを巡ってトラブルになる可能性はゼロではないため、少しでもリスクを下げるため契約書を作成しておくことが推奨されます。

行政書士との業務委託契約の特徴

行政書士は法的手続き・公的手続きに関する文書作成のプロであり、その業務遂行のために必要な相談などに対応してくれますが、弁護士のようにあらゆる法律相談に対応できるわけではありません。

事業活動に関連して業務委託可能な内容としては次の例が挙げられます。

  • 契約書作成・リーガルチェック(業務委託契約書や売買契約書などの作成やチェックを行い企業のサポートをする)
  • 許認可申請(建設業許可、飲食店営業許可など、行政による許認可が必要な業種を始める際の申請手続きのサポート)
  • 法人設立支援(株式会社や合同会社などの設立手続きのアドバイス、定款作成支援など)
  • 助成金・補助金申請(助成金や補助金に関するアドバイスや申請書類の作成支援)
  • ビザ申請(就労ビザや永住許可申請などのサポート)

取引形態としては「顧問契約」や「スポット契約」があり、前者は継続的な委任契約を交わす場合の取引形態、後者は必要な業務単位で単発の依頼を行う場合の取引形態を意味します。
報酬体系や具体的な金額も依頼先によって異なりますが、顧問契約であれば月額費用が発生し、スポット契約であれば固定報酬または成果報酬により費用が発生します。

※顧問契約でも特別な依頼があるときは別途固定報酬または成果報酬が発生することもある。

行政書士に業務委託をするメリット・デメリット

行政書士という専門家を企業が活用することのメリットは次のようにまとめることができます。

行政書士活用のメリット
専門知識の活用公的手続きや書類作成に専門的知識を持つプロのサポートを受けられる。複雑な法令や規制にも対応でき、安心して業務を任せられる。
業務効率の向上社内のリソースを本業へ集中させることができ、業務効率の向上が期待できる。
コストの削減専任の法務担当者を雇用するより、必要なときだけ専門家に依頼した方がコスト効率は高まる可能性がある。特に小規模の企業の場合、限られた予算で法的サポートを得る手段として有効。
リスクの軽減書類の不備や手続きのミスによるリスクを減らせることで、法的トラブルの予防につながる。また、行政書士には法令上の守秘義務も課せられていることから機密情報の取り扱いにも安心感がある。

一方、法務担当などの雇用を考えておらず経営者自身が書類作成などに対応する場合と比べれば、コストの負担は大きくなります。許認可の申請などを資格のない個人や業者に外注することはできませんが、自社で対応することに法的な問題はありません。
そのため時間と労力に余裕があるのなら、行政書士を活用する場合、コスト面でデメリットが生じます。

また、行政書士は税務相談や訴訟対応、登記にも対応できないため、依頼内容に関連してこれらの業務も発生したとしても、行政書士への依頼で完結させることはできません。ほかの専門家への依頼も別途行わなければなりません。

※行政書士がほかの士業と連携しているケースもあり、この場合は引き継ぎもスムーズ。

行政書士と業務委託契約を締結する流れ

行政書士との業務委託契約を締結するのに特別な手続きは必要ありません。

まずは自社が行政書士に頼みたい業務内容を明確にし、併せて許容できる予算なども検討しておきましょう。

そして行政書士の選定を始めます。得意とする分野、これまでの実績、報酬体系などに着目して複数の候補を比較検討するとよいでしょう。

その後、選定した行政書士にアポを取り、面談を通して依頼したい内容について相談。そして契約内容についての協議を始め、業務内容、報酬、納期、秘密保持条項など契約の詳細条件について定めていきます。

あらかた合意が得られればその内容を契約書にまとめ、両者が署名捺印して契約を成立させます。

なお、顧問契約を締結すれば今後依頼のたびに契約を締結する必要はなくなり、継続的なサポートを受けることができます。連携もスムーズになるなど利点は大きいですが、毎月の顧問料が発生することには注意が必要です。

行政書士との業務委託契約書のひな形・テンプレート

行政書士との業務委託契約書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードできます。適宜加筆修正して活用してください。

行政書士との業務委託契約書に記載すべき内容

業務委託契約書を自社で作成するときは、上記ひな形も参考にしながら以下の内容を記載していきましょう。

主な記載事項例文
前文簡潔に契約内容をまとめる。

「○○株式会社(以下「甲」という。)と行政書士✕✕(以下「乙」という。)は、本日、以下の通り業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結した。」

委託内容行政書士に委託したい業務内容を記す。

「甲は、乙に対し、乙が設立した会社が行う事業に必要な建設業免許の取得業務および当該免許取得に付帯する業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。」

報酬の支払い具体的な金額または計算方法を明示する。

「甲は乙に対し、本件業務にかかる報酬として、金〇円を支払う。」

着手金の定めがあるときは、次のように詳細も示す。

「2 前項の支払は以下の通りとする。支払いは甲が乙に直接手渡して行う。
①本契約締結後直ちに金〇円
②本件業務終了後1ヶ月以内に残額金〇円」

守秘義務特に重要な情報を取り扱うときはより具体的なルールを設け、場合によっては別途NDAを締結する。

「乙は、本件業務に関して得られた、個人情報を含む一切の情報につき、本契約の目的の範囲内のみで使用し、甲の事前の書面による承認がない限り、第三者に開示・漏洩してはならない。」

業務遂行のルール再委託を認めるかどうか、認める場合の要件などを明示する。

「乙は、甲の本件業務の全部または一部を、甲の事前の書面による承諾を得て、第三者に再委託することができる。」

進捗が把握できるよう、報告義務を課すことも検討。

「乙は、甲に対し、適宜本件業務の進捗状況を報告するものとする。」

行政書士との業務委託契約で確認したいこと

行政書士と業務委託契約を締結する際には、トラブルを防ぐために事前に確認しておくべき事項があります。期待通りの成果を得るため、そして想定より大きな手間やコストが発生しないよう、以下の点について事前に確認を行いましょう。

専門分野や実績

行政書士といっても、それぞれに得意分野や専門領域が異なります。企業法務、建設業許可、外国人在留資格、知的財産に関することなど、法律上は対応が可能とはいえ専門家個々の能力には差があります。

そこで、自社が委託したい業務に精通した行政書士を選定することが大事です。行政書士事務のWebサイトの閲覧、面談などを通じて「過去の実績(特に自社と類似した案件)」「専門分野における経験年数」「業界や業種に関する知識の深さ」を確認しておきましょう。

専門性の高さを評価するのが難しいときは、直接話をしたときの対応、説明の丁寧さやわかりやすさなども参考にするとよいでしょう。

行政書士に依頼可能な業務

上述の通り、行政書士が対応できる法律相談や代理行為には限界があります。部分的に対応可能であっても、あとで司法書士や税理士、弁護士などを探す手間が生じる可能性があるため、依頼しようとしている内容が行政書士で完結させられるかどうかは確認しておく必要があります。

※行政書士だけでカバーできない場合でも、ほかの士業と円滑な連携が取れる行政書士事務所であれば大きな問題とはならない。

料金体系

同じ業務でも報酬の金額は、依頼先によって異なります。そこで、着手金の有無、成功報酬の有無や計算方法、追加報酬の可能性などもよく確認のうえ、契約を締結すべきです。

複数の行政書士から見積もりを取るとコスト面を比較しやすくなります。
ただしコストだけに注目するのは避けましょう。低コストでも期待する結果が得られなければ意味がありません。

行政書士との業務委託契約書の保管方法や電子化について

行政書士との間で締結した業務委託契約書は、契約終了後も一定期間大事に保管しましょう。法人税法会社法に従い、10年間保管しておくことをおすすめします。

電子取引が認められていない契約類型も一部ありますが、業務委託契約など多くの契約類型では電子ファイルのまま保管することが認められています。一度紙で作成した契約書をスキャンし、電子化して保管することも可能です。

ただしこの場合は電子署名やタイムスタンプの付与、可視性や検索性の確保などの要件は満たすよう注意してください。この点、最新の法令に準拠した電子契約システムを導入していれば対応もスムーズです。

届出・申請は行政書士への業務委託も検討しよう

国や自治体、行政に対する届出や申請は自社で対応することも可能ですが、手間がかかることやミスに対するリスクが大きいため、行政書士への依頼も検討しましょう。

このとき業務委託契約(委任契約)を締結することになりますので、委託内容や具体的な条件は契約書にまとめてください。トラブル防止の観点からも口頭で済ませるのではなく、書面または電磁的記録として形に残すべきです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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