- 作成日 : 2025年3月3日
商号及び営業譲渡契約書とは?ひな形をもとに書き方・例文を解説
商号及び営業譲渡契約書とは商号や営業権を譲渡する際に、譲渡側と譲受側が締結する契約書です。この記事では、商号及び営業譲渡契約書がどのような書類であるか、またどのようなケースで締結されるのかに触れ、記載すべき項目や書き方についてテンプレートを交えて紹介します。
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目次
商号及び営業譲渡契約とは?
商号及び営業譲渡契約書(しょうごうおよびえいぎょうじょうとけいやくしょ)は、店舗の商号や営業権を譲渡する際に、譲渡側と譲受側が締結する契約書です。
譲渡対象物、譲渡日、譲渡価格、従業員の雇用、取引先との関係、その他商号・営業譲渡に関わる取り決めが記載され、両者が署名および押印した時点で契約が成立したと見なされます。
なお、営業譲渡契約は口頭でも成立しますが、後に「言った・言わない」のトラブルに発展するおそれがあります。
契約書という書面にて取り決めを明記し、双方が署名・押印することで、契約成立の証拠を残すことが可能です。
参考:民法|e-GOV法令検索
事業譲渡契約書との違い
商号及び営業譲渡契約書に似たものとして事業譲渡契約書が挙げられます。
いずれも会社の事業を譲渡する際に締結する契約であり内容もほぼ同じです。商号及び営業譲渡契約書は、小売店や飲食店、サロンなどの店舗やその商号を譲渡する際に締結するケースが多いようです。
商号及び営業譲渡契約を交わすケース
商号及び営業譲渡契約書は譲渡側がこれまで運営してきた店舗を他者に譲り渡す際に締結します。
例えば、会社の業績が悪化していて事業を譲渡する場合、逆に店舗の業績が好調で第三者から譲渡の打診を受けてそれに応じる場合、事業承継として子、親族、従業員、知人などに譲渡するケース、後継者が見つからないときに第三者に譲渡(いわゆるM&A)するケースなどが考えられます。
商号及び営業譲渡契約書のひな形・テンプレート
商号及び営業譲渡契約書は多くの方にとってはそれほど締結する機会は多くないでしょう。そこで、このサイトではすぐに使えるひな形をご用意しましたので、ぜひこちらを活用ください。
商号及び営業譲渡契約書の書き方や例文
ここからは商号及び営業譲渡契約書に盛り込むべき内容や書き方について、テンプレートをもとに紹介します。
表題
まずはその書類がどのような書類なのか、一目で分かるようにしましょう。大きなフォントで「商号及び営業譲渡契約書」と記載します。
契約の概要
契約者の氏名もしくは会社名と、両者が商号及び営業譲渡契約を締結する旨を記載します。
「株式会社 ○○(以下「甲」という。)と株式会社 ✕✕(以下「乙」という。)」「商号及び営業譲渡契約(以下「本契約」という。)」というように契約者名と契約名を置き換えることで、契約書の文面がスマートになります。
譲渡品目
譲渡側が譲受側に何を譲渡するのか、品目を箇条書きにして整理しましょう。
例えば、商号、営業権のほか、店舗の賃借権、店舗造作、在庫品などが該当します。
また、譲渡側が店舗経営によって生じた負債を譲渡するか否かも明記するようにしましょう。
譲渡日
商号および営業権の譲渡日を「令和〇年〇月〇日」といった具体的な日付で記載しましょう。
また、譲渡品目に関しては、引き渡し期限や店舗の賃貸人からの承諾期限も明確に定めるようにしましょう。
譲渡対価
譲受側が支払う対価を具体的に記載し、支払い方法、支払い期限、振込手数料や公租公課(例:固定資産税)の負担方法について取り決めるようにしましょう。
従業員の雇用
店舗で従業員を雇用している場合、譲渡後の雇用継続の有無を明確にし、継続する場合の条件や、譲受側との雇用契約に同意しない場合の対応について記載するようにしましょう。
善管注意義務
譲渡側が、経営引継ぎまで法律、規則、契約などを遵守し、顧客や取引先との関係を維持したうえで譲渡する旨を明記するようにしましょう。
競業避止義務
譲渡者が譲渡後、譲受者の事業に支障を来す恐れがあるため、例えば「譲渡日後〇年間は、乙の営業区域内で、乙と競合する同種の営業を行わない」といった内容の競業避止義務を盛り込むようにしましょう。
契約解除
双方が本契約を解除(無効とする)できる条件を明記しましょう。
例えば、相手側の契約違反、譲渡側が商号や店舗を期限内に引き渡さなかった場合、譲受側が対価を支払わなかった場合などが該当します。
協議
本契約で定められた内容で解決できない問題が生じた場合、両者が協議のうえで解決を図る旨を記載するようにしましょう。
合意管轄
万一、紛争が生じた場合に備え、調停または訴訟を提起する裁判所を指定しましょう。例えば、「○○裁判所」または、両当事者の所在地を管轄する地方裁判所を指定することが一般的です。また、署名押印済みの契約書を保管する旨も明記しましょう。
店舗物件の概要
店舗の表示、所在地、家屋番号、種類・構造・床面積などの店舗物件の情報を記載します。
署名押印欄
契約の締結日と両当事者の住所、氏名を記入する欄と押印欄を設けます。ここに両者が署名押印すれば契約が成立します。
商号及び営業譲渡契約書を書くうえでの注意点
商号及び営業譲渡契約書を作成する際には、以下のような点に注意して作成しましょう。
譲渡する品目・譲渡日、対価を明確にしておく
商号や営業を譲渡する際には双方で認識のズレが生じることがないよう、何をいつまでに、いくらで譲渡するのかを明らかにしておきましょう。
品目や譲渡する日付、対価の金額は具体的に記載しておくことが重要です。特にこれらは後々トラブルに発展する恐れが高い事項であるため、双方で事前にしっかりとすり合わせをしたうえで契約書を作成しましょう。
印紙税がかかる場合がある
商号及び営業譲渡契約書は印紙税法に定められた課税文書に該当するため、譲渡対価に応じた印紙税が課されます。以下の印紙税率が適用されます。
記載の契約金額(1通または1冊につき) | 印紙税 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
10万円超 50万円以下 | 400円 |
50万円超 100万円以下 | 1,000円 |
100万円超 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超 1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超 1億円以下 | 60,000円 |
1億円超 5億円以下 | 100,000円 |
5億円超 10億円以下 | 200,000円 |
10億円超 50億円以下 | 400,000円 |
50億円超 | 600,000円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
引用:印紙税額|国税庁
例えば譲渡対価が2,000万円の場合、2万円分の収入印紙を購入して貼付しなければなりません。
商号及び営業譲渡契約書の保管期間・保管方法
法人の取引に関する契約書は、法人税法施行規則により7年間保管する必要があります。さらに、青色申告を行っている法人は10年間の保存が求められます。譲渡契約締結後、万一のトラブルに備えて、上記の保管期限に関わらず可能な限り契約書を保存するようにしましょう。
なお、紙のまま保管するほか、電子帳簿保存法の要件を満たせば、スキャンしてPDFなどのデータとして保存することも可能です。
商号及び営業譲渡契約書の電子化は可能?
商号及び営業譲渡契約書は紙の契約書のほか電子契約でも締結可能です。電子契約システムを用いて両当事者がWEB上で契約を締結することで、紙の契約書を作成・郵送・管理する手間が省ける、契約までの時間が短縮できる、契約書を後から確認しやすくなる、高い本人性・非改ざん性が担保できるといったメリットがあります。
また、電子契約の場合は印紙税の納税義務が発生せず、税負担を軽減できるのも大きな利点です。
商号及び営業譲渡を行う際には細部まで詰めましょう
商号や店舗の営業権譲渡は非常に大きな取引であり、譲渡者、譲受者のみならず従業員や顧客、取引先にも大きな影響をおよぼします。
従って、事前に双方で条件を十分に協議し、内容をレビューしたうえで本契約書を作成・締結することが重要です。
契約締結時には、電子契約の活用も検討することで、コストおよび業務の手間を削減できるため、積極的に取り入れるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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