• 更新日 : 2020年6月10日

営業譲渡とは

営業譲渡とは、事業の一部を他社に売却することである。営業譲渡の対象としては「事業体の財産・債務」「事業に必要な営業資産」「人員」「ノウハウ」「取引先との関係」といった有形・無形のものが包括されるが、譲渡内容の範囲は事業譲受会社と事業譲渡会社の当事者間で自由に決定できる。このため中小企業のM&Aにおいては、株式譲渡に次いで多く利用される手法となっている。
なお旧商法においては会社および会社以外の商人の双方に「営業譲渡」という用語を使用していたが、会社法では会社の営業譲渡は「事業譲渡」として区別している。ここでは旧商法における広義の営業譲渡について解説し、「事業譲渡」もこれに含まれる概念として扱う。

営業譲渡の考え方

上記の通り、営業譲渡とは広い意味での「事業」という抽象概念で捉えられる有形物・無形物の集合体を、金銭を対価として売買することである。これに対し「会社分割」の場合は会社の一部をほかの会社に承継させることを指し、対価としては株式を用いる。
また、M&Aの代表的手段といえる株式譲渡では、取引は会社ではなく買収会社と被買収会社との株主同士で行われるが、営業譲渡では会社同士の取引となる。

営業譲渡のメリット

事業譲受会社にとっての営業譲渡のメリットは
・不要な資産、不良資産、簿外債務を引き継がない
・営業権や引継資産が償却できる
といったメリットがあり、事業譲渡会社にとっては不採算部門などを切り離せるメリットがある。また採算部門であっても多くの社内リソースを消費する部門を会社本体と切り離したり、あるいはいわゆるコアコンピタンス経営に踏み切るため主要部門以外の事業を切り離したりといった目的で営業譲渡を行うこともある。

営業譲渡のデメリット

株式会社における営業譲渡(事業譲渡)には、株主総会の特別決議が必要となる。特に上場企業においては株主総会の開催自体に大きなコストがかかり、なおかつすんなり決議されるとは限らない。また取引基本契約や雇用契約などの引継ぎが煩雑で、債務の移転については個々に債権者の同意を得なければならない。これが上場企業・大企業における営業譲渡のデメリットである。ただしこれらの引継ぎは事業規模が小さければそれほど煩瑣ではないため、営業譲渡は大企業よりも中小企業に向いた企業組織再編手法であるといわれる。
なお事業譲渡会社の譲渡益に対しては法人税が課税される。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。