• 更新日 : 2025年4月2日

署名とは?記名との違いや法的効力、契約書への記載方法を解説

契約を締結する際、「署名」という言葉を耳にすることがあります。似た言葉に「記名」がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは「署名」と「記名」の違いや署名が必要になるシーン、記載方法、押印の要否について解説します。署名の定義と使い方をしっかり押さえておきましょう。

署名とは手書きで自分の氏名を書くこと

署名とは、手書きで自分の氏名を文書に書き記すこと、または書き記した氏名のことをいいます。「自署」や「サイン」は署名と同義です。具体的には、契約書にペンや万年筆などで自分の氏名を書き記す行為や、クレジットカードを利用する際に伝票に自分の氏名を書く行為などが挙げられます。つまり、自分が手書きで氏名を書く行為が署名です。

署名と記名の違い

「署名」は手書きで自分の氏名を書く行為ですが、「記名」は手書き以外の手段で自分の名前を記す行為です。パソコンで書類に自分の名前を入力して印刷する行為や、ゴム印で自分の名前を記す行為などが記名にあたります。第三者に手書きで名前を書いてもらうことも記名にあたります。

手書きで相手に自分の氏名を書いてもらう際に「記名してください」というのは誤用で、「署名してください」が正しい使い方です。

署名が必要な場面

署名は単に名前を書く行為ではなく、契約において非常に重要な意味を持ちます。民法228条(文書の成立)の4項では、以下のように定められています。

第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
(略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

引用:民法|e-GOV法令検索

文書に署名もしくは押印(印鑑)を行うと、その文書は本人が自分の意思で作成したと推定されることになります。

売買契約や請負契約などを締結する時や誓約書にサインをする時、クレジットカードでの支払い時に伝票にサインをする時などに行うのが署名です。首脳同士が外交文書にサインするシーンをニュースで見かけることがありますが、これも署名です。

いずれも、「私はこの文書の内容に同意します」という意思を示すために署名を行います。例えば、契約を締結する場合は、契約書に署名した時点で契約が成立し、後に双方でトラブルになった場合はその署名が法的証拠となります。前述の「記名」は、署名と比べると証拠能力は低いといえます。パソコンに名前を打ち込んで印刷する行為や、ゴム印で名前を記す行為は誰でもできるため、本人性が担保しにくいからです。

署名の法的効力

記名と署名、いずれの場合も要件を満たした場合は法的効力を有します。しかし、署名は1つの事実のみで形式的証拠力を有するのに対し、記名は押印とあわせてその印影が本人のものであることを示すことによって、真正に成立し、法的効力を有するという違いがあります。

具体的には、民法第228条4項で「私文書は、本人またはその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定されています。

この「真生に成立したものと推定する」とは、契約書が当事者の意思において作成されたことを証明する際に、特段疑うようなことがなければ、当事者の署名で十分な証拠になり得る、ということを意味します。署名をすることで、裁判で契約の成立が争われた場合に成立を証明する負担が軽減されます。これを「形式的証拠力」と呼びます。

一方の記名は、「記名がある」という事実のみでは法的効力はなく、記名とあわせて押印がある場合に形式的証拠力を有します。また、押印された印影が本人の印影と一致することを示すことにより、その文書が「真正に成立したものと推定」され、そうしてはじめて法的効力を有することになります。これを二段の推定といいます。

契約書への署名の記載方法

契約書に署名する際は、署名欄に住所、会社名、役職名、自分の氏名を記載します。

契約書の末尾に署名するケースがほとんどですが、必ずしも末尾である必要はありません。後で確認しやすいように、表紙や冒頭に署名欄を設けるケースもあります。

また、右寄せや左寄せといったルールが決められているわけでもありません。契約書を作成する際は、記載しやすいよう位置や大きさを調整しましょう。下線や破線、枠を設けると記載しやすくなります。

記載方法の例は、以下のとおりです。

令和3年10月1日

(甲)
住所:東京都●●区●●
会社名:株式会社山田商事
役職名・氏名:代表取締役 山田 太郎

(乙)
住所:大阪府●●市●●
会社名:株式会社鈴木産業
役職名・氏名:代表取締役 鈴木 一郎

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署名は本名をフルネームで書く必要がある?

署名は、本名をフルネームで書かなければならないとする法的な規定はありませんが、フルネームで記入することが望ましいです。

過去の判例によると、署名がフルネームではなく苗字のみや名前のみの署名の場合でも他者との混同を生じない場合は有効(大審院大正4年7月3日判決)とされています。

ただし、混同や疑いの余地がある場合は、トラブル回避の面からもフルネームでの記入を推奨します。

契約書などの重要な文書の場合、社内や担当部署に同じ苗字の社員が複数名いることも考えられ、誰が署名したものかわからなくなることも考えられます。

フルネームでないと必ずしも無効となるわけではありませんが、できるだけフルネームで署名をするようにしましょう。

署名した契約書に印鑑の押印は必要?

契約書を作成する際は、署名に加えて押印を行うケースが多いです。そのため、押印欄が設けられていることもあります。しかし、必ず印鑑を押さなければならないという決まりはなく、署名も契約が成立するための必須条件ではありません。口約束やメールのやり取りであっても、契約自体は成立します。ただし、特に口頭で契約を結んだ場合は「言った」「言わない」といったトラブルに発展することがあるため、注意が必要です。

契約を締結する際は契約書を作成し、署名もしくは押印によって契約が成立したことを証拠として残すのが一般的です。

前述のとおり、民法227条では署名と押印のどちらかがあれば文書は成立するとされていますが、自筆の署名と印鑑登録がなされている印鑑を押印することでより本人性が担保され、証拠能力が高くなります。そのため、契約書では署名と押印の両方を行うケースが多いのです。

押印の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

メールや電子契約では電子署名を使用

最近は、リモートワークや在宅勤務の普及により紙の契約書ではなくメールや電子契約を用いる機会も増えています。メールや電子契約の場合は電子署名を使用するのが一般的です。

電子署名とは

電子署名とは、紙による署名を電子化したものです。

紙に署名や押印をする必要がないため、従来行っていた署名と比べるとコストの削減や書類紛失のリスク軽減、文書の改ざん防止などのメリットがありますまた、電子契約により作成した契約書は印紙税が非課税になり、印紙税の節約になります。

電子署名については下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

電子署名の法的効力

電子署名は、紙の署名と同様に法的効力があります。

電子署名に関する規定は電子署名法に定められています。適切な方法で行われた電子署名は「真正に成立したものと推定する」(電子署名法第3条)と規定されています。電子署名は紙に署名した場合と同じく法的効力を有し、文書が本人の意思によって作成されたものであるという形式的証拠力を持ちます。

電子署名を行う方法

電子署名を行うには、以下の3つの方法があります。

  1. PDFファイルに署名する
  2. Pエクセルやワードなどを用いて署名する
  3. P電子契約サービスを利用する

Adobe AcrobatでPDFファイルに署名をする場合は、署名をするファイルを開き、ツールの中の証明書から電子署名に進みます。その後デジタルIDを取得し、署名ボタンを押すと署名が完了します。

エクセルやワードで電子署名を行う場合は、署名したいファイルを開き、挿入を選択します。

その後、Microsoft Office署名欄に入力することで署名ができます。この方法は、ワードやエクセルのほかGoogleドキュメントでも可能です。

契約書の作成から署名、管理までを一括で行うなら、電子契約サービスを利用する方法もあります。PDFやエクセル、ワードなどと比べるとサービスの利用に費用はかかりますが、電子署名が利用できるだけではなく、契約書を電子化することによりコストの削減や業務の効率化などのメリットもあります。

署名の定義と使用方法を正しく理解しましょう

署名は自分の名前を書く行為ですが、契約においては重要な役割を担うため、内容をしっかり確認した上で署名を行いましょう。

署名の概要を知ることでスムーズに契約を締結でき、後々のトラブルを防ぐことにもつながります。「記名のみ」「署名のみ」「署名+押印」はそれぞれ証拠能力が異なるため、それぞれの違いも正しく把握しておきましょう。


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