• 作成日 : 2025年4月8日

取締役会とは?株主総会との違いや設置義務、議事録作成などの流れを簡単に解説

取締役会とは、取締役が業務執行を監督し、重要な経営判断を行う機関です。企業の意思決定機関には株主総会もありますが、それぞれの役割や権限は異なります。

本記事では、取締役会の役割や株主総会との違い、設置義務、開催手順、議事録作成の流れについてわかりやすく解説します。

取締役会とは

取締役会は、会社の運営方針を具体化し、経営の監督機能を果たすために設置される意思決定機関です。一定の条件を満たす企業には設置が義務付けられており、代表取締役の選定や重要な経営判断を行います。

株主総会と違い、取締役会は日常的な経営判断を迅速に行う役割をもつ点が特徴です。ここでは、取締役会の基本的な役割や運営のポイントについて解説します。

取締役会のメンバー構成は?

取締役会は、会社法第362条1項により規定されており、すべての取締役で組織されます。取締役会を設ける会社は取締役会設置会社といいます。

取締役会設置会社では、会社法第331条5項に基づき、取締役は3名以上必要です。このうち、通常は1名が代表取締役として選任されます。

取締役会設置会社では、経営の透明性向上と業務執行の適正性を監督するため、監査役会や監査等委員会を設けることがあります。指名委員会等設置会社では、取締役会とは別に指名委員会・監査委員会・報酬委員会が設置され、厳格なコーポレート・ガバナンス体制が構築されます。これらの仕組みは、企業統治を強化し、経営の安定性と透明性を高める上で重要です。

取締役会の開催時期はいつ?

取締役会の開催時期は、会社の定款や内規によって決定されるのが一般的です。ただし、取締役会は最低でも3ヶ月に1回以上開催する必要があり(法第363条2項)、年に4回以上の開催が義務付けられています。

多くの企業では、毎月または四半期ごとなど定期的に開催されるほか、経営上の重要な決定が必要な場合には臨時取締役会が招集されます。また、決算や大型投資、経営戦略の見直しなど重要な議題が発生した際には、その都度取締役会を開くことが一般的です。

取締役会の開催場所はどこ?

取締役会の開催場所については、法令上の制約はありません。一般的に会社の本社や主要拠点で開催されますが、即時性と双方向性が確保されていれば良いとされています。

近年では、オンライン会議システムを活用したリモート開催が増え、取締役が物理的に集まらずに会議を行うケースも増えています。Web会議や電話会議システムによる開催も法的に問題ありません。

取締役会と株主総会の違い

取締役会と株主総会は、会社の意思決定を担う主要な機関ですが、その役割や権限には明確な違いがあります。

株主総会は、会社の所有者である株主が集まり、取締役の選任・解任や定款の変更、合併・解散など、会社の基本方針や重要事項を決定する場です。

一方、取締役会は、株主によって選任された取締役が集まり、日常の業務執行や経営戦略の策定、重要な契約の承認など、具体的な経営判断を行う意思決定機関です。

決議の対象と権限の違い

株主総会は、会社の所有者である株主が参加し、会社の根本的な方針や経営陣の選任などを決議する場です。株主総会では、定款変更、剰余金の配当、取締役や監査役の選任・解任、合併・分割・解散などが決議事項となります。

一方、取締役会は、株主によって選任された取締役が業務執行の方針を決定し、監督する機関です。事業戦略の決定、資金調達、重要な契約の承認など、経営の実務的な判断を担います。株主総会が「会社の基本方針」を決めるのに対し、取締役会は「日々の経営判断」を行う点が大きな違いです。

開催頻度の違い

株主総会は、原則として年に1回(定時株主総会)の開催が義務付けられています。ただし、必要に応じて臨時株主総会を開くことも可能です。株主総会の招集には、一定の手続きが必要で、決議事項も事前に通知されます。

一方、取締役会は、法律上3ヶ月に1回以上の開催が義務付けられていますが、経営の迅速な意思決定を行うため、より頻繁に開催されるのが一般的です。多くの企業では、定款や内規に基づき、毎月または四半期ごとに定期開催されます。また、緊急の経営判断が必要な場合には、臨時取締役会が開かれることもあります。

取締役会の設置義務がある会社

取締役会は、一定の要件を満たす会社に設置が義務付けられています。

会社法では、以下の会社に該当する場合、取締役会の設置が必要であると規定されています。

それぞれの会社形態によって、設置の目的や求められるガバナンスの仕組みが異なるため、ここではそれぞれの特徴について解説します。

公開会社

公開会社とは、発行する全部または一部の株式について譲渡制限を設けていない会社のことです。株主が自由に株式を売買できる会社は、公開会社に該当します(法2条5号)

公開会社では、取締役会の設置が義務付けられています(法327条1項)。そのため、公開会社では、3名以上の取締役を選任し、取締役会を組織する必要があります(法331条5項)

監査役会設置会社

監査役会設置会社とは、監査役会を設置し、取締役の職務執行を監督する仕組みをもつ会社です。この制度は、経営の透明性を確保し、業務執行の適正性の監督を目的としています。

監査役会設置会社では、監査役は3名以上必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないと規定されています(法335条3項)。

監査役は取締役会に属さず、独立した立場から取締役の職務執行を監査する役割を担います。これにより、取締役の経営判断が適正かどうかを客観的にチェックし、不正行為の防止や企業統治の強化を担います。

また、監査役会設置会社では取締役会の設置が義務付けられており(法327条1項)、取締役は3名以上選任する必要があります(法331条5項)。

監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は、取締役の中から監査等委員を選任することで監査機能を強化した会社形態です。監査等委員会を設置する会社では、取締役会の中に監査等委員会を設置し、取締役の業務執行を監督します。

監査役会設置会社との違いは、監査を行う機関の構成と位置づけにあります。監査役会では監査役が取締役会から独立した立場で監査を行うのに対し、監査等委員会では取締役の中から監査等委員が選任され、取締役会の一員として監査機能を果たします。

監査等委員は取締役会の議決権をもち(法399条の23項)、取締役の選任・解任に関する意見陳述権(法342条の2第4項)および報酬等に関する意見陳述権(法361条6項)を有するため、より強力な監督機能を発揮できる点が特徴です。

監査等委員会は、3名以上の取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません(法331条6項)。また、監査等委員会設置会社では取締役会の設置が義務付けられており(法327条1項)、経営監督の強化を目的としています。これにより、経営判断の透明性が向上し、株主や投資家の信頼を得やすくなります。

指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、コーポレート・ガバナンスを強化するための仕組みを採用した会社形態であり、取締役会の権限を委員会に分割する特徴があります。

この会社形態では、指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置し、それぞれ取締役の選任、監査、報酬決定を担当します(法400条)。各委員会は3名以上の取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければなりません(法400条3項)。

また、指名委員会等を設ける会社は、必ず取締役会を設置する必要があります(法327条1項)。これにより、取締役の業務執行と監督機能を分離し、経営の透明性を高めます。

取締役会の役割

取締役会は、会社の経営方針を決定し、業務執行の監督を行う意思決定機関です。会社法により取締役会の権限が定められており、代表取締役の選定・解職、取締役の職務監督、重要な業務執行の決定などがその主な役割です。ここでは、それぞれの役割について詳しく解説します。

代表取締役の選定・解任

取締役会は、会社を代表する代表取締役を選定する権限を持ちます(法362条2項3号)。取締役会設置会社では、取締役の中から1名以上を代表取締役として選定し、会社を対外的に代表する権限を付与します(法362条3項)。この中で、代表取締役は、契約の締結や経営方針の決定など、会社を運営する上で中心的な役割を担います。

また、代表取締役の解職も取締役会の権限です(法362条2項3号)。取締役会の決議により解職が可能です。

取締役の職務執行の監督

取締役会は、取締役の業務執行を監督し、適正な経営が行われるよう管理する責任を負います(法362条2項2号)。取締役は日常の経営判断を行う立場にあり、その判断が適切であるかを監督するのが取締役会の役割です。特に、経営判断が株主やステークホルダーに影響を与える場合、不正や不適切な業務執行を防ぐため、監視体制が求められます。

また、取締役に法令違反や不適切な経営判断があった場合、取締役会は必要に応じて改善措置を求めたり、職務執行の見直しを指示したりできます。

取締役会は、取締役同士が互いに監督し合うことで、企業の健全な運営の確保につなげることも大きな役割として担っています。

取締役会設置会社の業務執行の決定

取締役会は、会社の重要な業務執行に関する意思決定を行う機関です(法362条2項1号)。取締役会設置会社では、個々の取締役が独自に経営判断を行うのではなく、取締役会の決議に基づき業務が執行されます。取締役会では、資金調達、大規模な投資、合併・買収、事業戦略の策定など、会社経営に影響を与える重要事項を決定します。

取締役会は、法定の重要事項(重要な財産の処分、多額の借財など)を除く業務執行の決定権限を、代表取締役や業務執行取締役に委任できます(法362条4項)。委任する場合でも、取締役会は委任した業務執行が適正に行われているか監督する責任を持ちます。

取締役会の仕組みにより、経営環境の変化に応じた迅速かつ適切な意思決定が可能となります。

取締役会を開催する流れ

取締役会は、会社の重要な経営判断を行う場であり、適切な手順で開催される必要があります。一般的な流れとして、事前に招集通知を行い、議事内容を準備した上で取締役会を開催し、その結果を議事録に記録します。

ここでは、取締役会の開催手順について詳しく解説します。

招集通知を行う

取締役会を開催する際は、各取締役に対して1週間前までに招集通知を行う必要があります(法368条1項)。通常、取締役会の招集は代表取締役が行い、会議の日時、場所を明記した通知を発信します。定款や会社の内規で別途規定がある場合は、それに従って通知を行います。

招集通知の方法は、書面・電子メール・社内ポータルなどが一般的です。取締役全員の同意があれば、招集手続きを省略できるケースもあります(法368条2項)。また、監査役設置会社の場合、監査役にも通知が必要です。

議事を作成する

取締役会で審議・決議する議題を事前に準備し、議事案を作成します。議題には、経営戦略の決定、重要な契約の承認、資金調達、大型投資、役員人事などが含まれることが一般的です。

取締役会の運営を円滑にするため、議事案には議題ごとの背景・目的・決議事項・必要な資料などを整理したものを事前に取締役へ共有し、スムーズな審議を促す工夫が求められます。

なお、緊急事項については事前通知なしでも審議可能です。

取締役会を開催する

取締役会を開催する際は、定められた日時・場所で議題について審議・決議を行います。

取締役会は、議決に加われる取締役の過半数が出席しなければ成立しません(法369条1項)。また、決議は原則として出席取締役の過半数の賛成で可決されます。ただし、その議案に関して何らかの利害関係にある取締役は議決に参加することができません(法369条2項)。

近年では、オンライン会議システムを利用したリモート開催も増えており、定款で許可されていれば、物理的に一堂に会する必要はありません。取締役会をリモートで開催する場合は、即時性と双方向性を満たす適法な手続きで行う必要があり、リモート参加者の出席方法を議事録に記載することが求められます。

議事録を作成する

取締役会の議事については、会社法に基づき議事録を作成し、適切に保存する必要があります(法369条3項)。

議事録には、以下の項目を明記しなければなりません(会社法施行規則第101条3項)。

  • 開催日時
  • 開催場所
  • 出席者
  • 議題・審議内容・決議結果
  • 議事に関して利害関係を有する取締役の氏名
  • 意見・発言の概要
  • 議長の氏名

作成された議事録は、出席した取締役および監査役が署名または記名押印することが求められます。

また、電磁的記録の場合は電子署名など代替措置が必要です。議事録は法定文書であるため、10年間本店に備え置く義務があります。取締役会の議事録を適切に管理することで取締役会の議決の正当性を担保し、将来的な紛争を防ぐ重要な証拠となるでしょう。

取締役会を設置するメリット

取締役会を設置することで、経営の意思決定を迅速化し、ガバナンスを強化できます。また、取引先や金融機関からの信用向上につながる点も重要です。

ここでは、取締役会を設置することで得られる具体的なメリットを解説します。

迅速な意思決定が可能になる

取締役会を設置することで、株主総会を経ずに経営に関する重要な決定が可能です。

株主総会の開催には、招集通知(原則として2週間前まで)、決議要件の充足、議決権行使などの手続きが必要であり、意思決定に時間がかかります。しかし、取締役会を設置することで、取締役の間で決議を行い、比較的短期間で意思決定が可能になります。

特に、資金調達や大型投資など、経営戦略に関わる意思決定を株主総会なしで進められる点は大きなメリットです。また、取締役全員の同意があれば招集手続きを省略できるため、緊急の対応にも柔軟に対応できます。

対外的な信用が向上し、ガバナンスが強化される

取締役会を設置することで、社内の監督機能が強化され、ガバナンス体制が整っている企業として評価されます。

特に、金融機関からの融資審査や大手企業との取引において、取締役会を設置していることが信用力の向上につながるケースがあります。

また、特定の取締役による独断的な経営判断を防ぐ仕組みとして機能します。1人または少数の取締役に権限が集中すると誤った判断が経営全体に影響を及ぼすリスクがありますが、取締役会では複数人で議論・検討するため慎重で適正な意思決定が可能です。

取締役会を設置するデメリット

取締役会の設置は、経営の透明性や意思決定の迅速化といったメリットがある一方で、運営コストや意思決定の複雑化といったデメリットもあります。

ここでは、取締役会を設置することによる主なデメリットについて解説します。

運営コストが増加する

取締役会の設置により、会議運営にかかるコストが発生します。招集通知や議事録の作成、法的手続きの対応に加え、取締役の増員による報酬や手当の負担も増える可能性があります。

特に中小企業では、取締役会の運営にかかる時間的・金銭的コストが経営負担となる場合があるため、事業規模や経営方針を踏まえた慎重な判断が必要です。

緊急時の迅速な意思決定が難しくなる

取締役会は、株主総会よりも迅速な決議が可能なものの、代表取締役が単独で決定する場合と比べると手続きに時間を要するため、緊急時の即断即決が難しい場合があります。

特に、重大な経営判断が求められる場面では、慎重な審議が必要となるため、意思決定が遅れる可能性があります。 そのため、迅速な対応が必要な事項については、代表取締役や執行役員へ権限を委譲する仕組みを整えることが重要です。

取締役会の役割と運営を理解し、適切な意思決定を行おう

取締役会は、企業の重要な経営判断を行い、業務執行を監督する意思決定機関です。株主総会との違いや設置義務を理解し、的確に運営することが企業の透明性向上や迅速な意思決定につながります。

取締役会には、経営判断の迅速化や信用向上といったメリットがある一方で、運営コストの増加や緊急時の即断即決が難しくなるデメリットもあります。そのため、自社にとって最適な運営体制を整え、経営の安定性と意思決定のスピードのバランスを取ることが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事