- 更新日 : 2026年3月27日
寄託契約書とは?雛形をもとに記載事項など解説
寄託契約書は、物を預けて保管・返還してもらう契約内容を定める書面です。
- 民法657条が根拠
- 有償・無償で責任差
- 再寄託の可否を明記する
口頭でも成立しますが、滅失・損傷時の責任や善管注意義務の範囲を明確にするため書面化が重要です。
自社の商品を物流会社に預かってもらう、仕事で使う資材を社外などの倉庫で預かってもらう、知人に自分の荷物を預かってもらうなど、何らかの物を第三者に預かってもらうことを「寄託」といいます。
今回は寄託する、あるいは寄託を請ける際に締結する「寄託契約書」の書き方について、雛形をもとに解説します。
目次
寄託契約書とは?
寄託契約書とは、物品や金銭などを他人に預けて保管してもらう際に、その合意内容を明確にするための契約書です。日常生活から企業取引まで幅広い場面で利用され、預けた物の返還や管理責任を巡るトラブルを防ぐ役割を果たします。ここでは、寄託契約の法的性質と基本的な特徴を解説します。
寄託契約書は、寄託契約の成立内容を証明する書面
寄託契約は、当事者の一方が物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立します(民法657条)。契約は口頭でも成立しますが、実務では内容を明確にするため書面化するのが一般的です。寄託契約書は、寄託物の存在や預けた事実、保管義務の内容を証明する重要な証拠となります。
寄託契約は無償・有償いずれも成立し得る契約
寄託契約は、報酬を伴わない無償寄託と、報酬を伴う有償寄託のいずれも認められています。例えば友人に荷物を預けるケースは無償寄託にあたり、倉庫業者に商品を保管してもらう場合は有償寄託に該当します。有償か無償かによって受寄者の責任の範囲に違いが生じるため、契約の性質を理解することが重要です。
紛争予防と責任範囲の明確化に役立つ
寄託物の滅失や損傷が生じた場合、責任の所在を巡って争いが生じることがあります。寄託契約書を作成しておけば、当事者間の合意内容を客観的に示すことができ、紛争解決を円滑に進めることができます。企業間取引では、リスク管理の観点から書面化が重要といえます。
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寄託契約書を作成するケースは?
寄託契約は口頭でも成立しますが、預ける物の価値が高い場合や長期間の保管が想定される場合には、契約書を作成します。ここでは、寄託契約書が作成される代表的なケースを紹介します。
高価な物品や重要書類を預ける場合
美術品や貴金属、重要な契約書類、個人情報を含む資料などを第三者に預ける場合は、紛失や毀損のリスクが高いため、寄託契約書を作成するケースが多いです。保管方法や返還条件を明確にすることで、後の責任問題を防ぐことができます。
企業間で商品や在庫を保管委託する場合
倉庫業者に商品を預ける場合や、取引先に一時的に在庫を保管してもらう場合など、商取引の一環として寄託契約が締結されます。有償での保管が一般的であり、保管中の事故や災害への対応を明確にするためにも、契約書を作成しておくことが望ましいでしょう。
期間を定めて一時的に物を預ける場合
イベント開催時の備品保管や、修理・点検のために物品を預ける場合など、一定期間のみ物を預けるケースでも寄託契約書が用いられます。預けた物の内容や数量を明確にし、返還期限を定めておくことで、返却遅延や紛失トラブルを防止できます。
寄託契約書の雛形
では、さっそくワード形式でまとめた寄託契約書の雛形を見てみましょう。下記リンクから無料でダウンロードできるので、契約書を作成する際に参考にしてください。
ここからは雛形に基づいて寄託契約書に記載すべき項目に関して説明します。雛形をご覧になりながら読み進めると、より理解が深まるでしょう。
寄託契約書に記載すべき事項は?
ここでは、寄託契約書に最低限記載すべき事項についてまとめました。後々のトラブルを防ぐためにも、これらの項目はしっかり押さえておきましょう。それぞれについて、詳しく説明します。
なお、民法では寄託契約について、「当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」と定めています(657条)。民法改正により要物契約から諾成契約になったことから、物の引き渡しは契約の成立要件ではなくなりました。
契約者
まずは誰が寄託を依頼し、誰がそれを受託するのかを明記します。寄託者(物品を預かってもらう側)を「甲」、受寄者(物品を預かる側)を「乙」とします。
寄託物件
何を預かってもらうのかを、数量も含めて具体的に明記しましょう。寄託物件が多い場合は目録を作成し、「別紙目録記載の物件」としてもかまいません。
保管費用
有償契約の場合は、保管費用の金額と支払時期を明記します。無償契約の場合でも、実費負担(送料等)の有無は明記しておくと安心です。保管場所
どこに寄託物件を保管するのかを明記しましょう。住所及び「◯◯社の倉庫」「◯◯市所在の物流センター」といったように具体的な保管場所の他、第三者への再寄託の可否についても記載すると良いでしょう。
善管注意義務
有償契約の場合は、寄託先に「善管注意義務」が発生します。善管注意義務とは、善良なる管理者の注意義務のことを言い、簡単に言うと、お金をもらう以上、よくよく注意して、預かったものを保管しておく義務があるということです。具体的にどのように物品を管理するのか、もしも物品に何らかのトラブルが発生した場合はどのように対処するのかを記載しておきましょう。無償契約の場合、善管注意義務は生じず、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管すれば足りますが、管理方法については記載しておいてもよいでしょう。
譲渡等の禁止
寄託先に物品を預けた場合、それが無断で第三者に譲渡されることも考えられます。これを防ぐために、譲渡の禁止についても盛り込んでおきましょう。
保管期間
寄託先が、いつまで物品を保管すればよいのかを明記します。保管期間の延長が予想される場合は、更新についても記載します。
返還
寄託した物品を返還する際のルールについても、しっかりと記載しておきましょう。返還を請求した場合の返還期限、返還場所、返還が遅れた場合の損害金についても取り決めておくと、返還拒否や遅延などのトラブルを防ぐことができます。
契約解除
寄託者と寄託先が、寄託契約を解除できる条件について定めます。相手方が契約違反を行った場合や、倒産のおそれがある場合などが考えられます。
反社会勢力の排除
暴力団などの反社会勢力と取引を行うと暴力団排除条例違反に該当し、刑事罰が科せられるおそれがあります。また、これが社会に知れ渡ると企業の信用失墜にもつながります。相手および自身が反社会的勢力でないことを明らかにするために、反社会勢力の排除についても盛り込みましょう。
合意管轄
紛争などのトラブルが発生した際に、訴訟を起こす裁判所について記載します。
寄託契約を結ぶ際の注意点は?
寄託契約は、物を預けるという単純な行為に見えても、破損・紛失・責任の所在を巡るトラブルが生じやすい契約です。契約締結時には、義務や再寄託の可否、印紙税の扱いなどを十分に確認することが重要です。
有償寄託では善管注意義務の内容を明確にする
有償で寄託契約を締結する場合、受寄者には善良な管理者の注意義務(善管注意義務)が課されます。倉庫業者や保管サービス事業者のように報酬を得て寄託を受ける場合、預かった物を適切に管理し、期間終了後に返還する義務があります。寄託契約書には、保管方法、保管場所、温度管理、保険加入の有無など具体的な管理内容を明記しておくことが重要です。なお、無償寄託の場合、善管注意義務は原則として課されませんが、自己の財産に対するのと同一の注意をもって保管すれば足ります(民法659条)。ただし、その注意義務に反した場合は責任を負う可能性があります。
再寄託の可否と責任の所在を明確にする
受寄者が第三者に保管業務を委託する「再寄託」を行う場合があります。契約書に再寄託の可否や条件を定めていないと、無断での再委託が紛争の原因となるおそれがあります。再寄託を認める場合は、責任の帰属や監督義務についても明確に定めることが必要です。
印紙税の要否を確認する
印紙税法上、印紙税の対象となるのは金銭や有価証券の寄託契約です。物品の寄託契約書については原則として収入印紙は不要です。ただし、契約内容によっては別の課税文書に該当する可能性もあるため、契約書の内容を確認することが望まれます。
寄託物が滅失・損傷した場合の責任は?
寄託契約では、預けた物(寄託物)が滅失・損傷した場合の責任の所在が重要な問題となります。責任の有無や範囲は、有償か無償かによっても異なり、民法の規定や契約内容が判断基準となります。
【有償寄託の場合】善管注意義務違反があれば責任を負う
有償で寄託契約を締結した場合、受寄者は「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」をもって寄託物を保管する義務を負います。通常期待される管理水準を下回る管理により滅失・損傷が生じた場合は、債務不履行として損害賠償責任を負います。ただし、地震や火災など不可抗力による損害であれば、原則として責任は生じません。
【無償寄託の場合】自己の財産と同一の注意義務に反した場合は責任を負う
無償寄託では、有償寄託ほど厳格な義務は課されません。受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管すれば足ります。有償の場合に比べれば責任は軽減されますが、全く責任を負わないわけではない点には注意しましょう。
契約条項によって責任範囲が調整される場合がある
実務では、契約書において損害賠償額の上限や保険加入の有無を定めることがあります。ただし、故意・重過失による免責条項は無効となる可能性があるため、合理的な範囲で定める必要があります。責任範囲を明確にしておくことが、紛争予防の観点から重要です。
寄託契約書作成後の適切な管理・保管における課題
寄託契約書を作成し、物品を預けたり預かったりした後は、万が一トラブルが発生した際にすぐに内容を確認できるよう、契約書を適切に管理しておくことが重要です。しかし、実務の現場ではこうした書類の管理に課題を抱えるケースも少なくありません。
株式会社マネーフォワードでは、契約書の管理や保存に関する業務経験者を対象に、契約書に関する調査を実施しました。契約書の管理や保存を行う中での課題や負担を尋ねたところ、最も多いのは過去の契約書を探し出すのに時間がかかることで、34.4%でした。次いでスキャンや台帳入力などの事務作業の工数が多いことが28.6%、電子帳簿保存法などの法令対応が不十分、または不安があることが24.5%と続いています。
いざという時にすぐ確認できる保管体制を
寄託した物品が滅失や損傷した際などには、責任の所在や善管注意義務の範囲を確認するために、寄託契約書を速やかに探し出す必要があります。調査データからも検索性の悪さが現場の大きな負担となっていることが読み取れるため、必要な時にすぐ契約書類を取り出せるよう、紙の原本だけでなく電子データとしても管理するなど、日頃から整理された保管体制を整えておくことが大切です。
出典:マネーフォワード クラウド、調査③ 契約書の管理・保存における課題・負担(Q4)【契約書の種類・書き方に関する調査データ】(回答者:契約書の管理業務経験者416名、集計期間:2026年2月実施)
寄託契約書を作成してトラブルを未然に防ぎましょう
自分の物を他人に預ける、他人の大切な物を預かるという寄託という行為にはリスクが伴います。寄託を依頼する際や寄託を請ける際は、後々トラブルにならないよう寄託契約書を作成し、寄託物件の概要や数量、寄託期間、費用などを明記しておくことが大切です。
テンプレートを用意しましたので、本記事を参考にしながら寄託契約書を作成してみましょう。
よくある質問
寄託契約書とはどのような契約書ですか?
寄託者(物を預ける人)と寄託先(物を預かる人)が契約を締結する際に作成する契約書です。詳しくはこちらをご覧ください。
寄託契約書にはどのような事項を記載すべきですか?
契約者、保管費用・場所・期間、善管注意義務、譲渡等の禁止、返還方法、解除条項、反社会勢力の排除条項、合意管轄条項などの項目を記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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