- 作成日 : 2024年11月7日
電子消費者契約法の操作ミスの救済とは?取引事例をもとにわかりやすく解説
電子消費者契約法とは、パソコンなどの電子機器を使用した取引における、消費者側の操作ミスに対する救済を定めた法律です。
操作ミスによる誤発注などで、同法のルールが適用されて契約が取り消されることがありますので、ECサイトなどを運用している事業者は留意しましょう。
この記事では、同法の概要や事業者が講ずべき措置を解説しています。
目次
電子消費者契約法(電子契約法)とは
「電子消費者契約法(電子契約法)」とは、電磁的方法による消費者との契約について、民法の規定に特例を設けている法律です。
民放95条では、「錯誤(思い違い)」に基づく意思表示は取り消すことができると定められています。しかし、ただし書きに「重大な過失」によるものは取り消せないとあるため、これまで消費者側は十分な救済が受けられていませんでした。
しかし、電子消費者契約法が制定されたことにより、誤操作による間違えた意思表示をしてしまいやすい状況であれば、消費者に「重大な過失」があっても契約を取り消せるようになったのです。
ECサイトなどの電子商取引における消費者の操作ミスを救済する
電子消費者契約法では、「ECサイトなどの電子商取引における消費者の操作ミスに対し、錯誤に基づく取り消しの範囲を広げる」ための規定を設けています。
電子商取引だと画面上の操作を介して「購入」などの意思表示を行うことになりますので、対面で契約を交わす場面と比べて意思表示を誤るリスクがとても高いのです。
しかし、従来の訴えで適用されてきた民法95条では「錯誤による意思表示」と認めてもらうのが容易ではないことから、電子消費者契約法で錯誤による取り消し要件を緩和しています。
ECサイトなどの電子商取引における契約成立時期の転換
電子消費者契約法が施行された当初は、「発信主義」と呼ばれる「隔地者間契約においては、承諾の意思表示を発した時点で契約が成立する」という民法の考え方が、契約成立の時期に適用されていました。
しかし、インターネットが普及した現代は、メールなどを使った迅速な電子商取引が可能です。そのため、現在の電子消費者契約法では、「到達主義」という「承諾の意思表示が申込者に到達した時点で契約が成立する」という考え方が適用されています。
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電子消費者契約法における消費者の操作ミスの救済とは?
原則にあたる民法95条では、錯誤による取り消しを認めるうえでいくつかの要件を設けており、その1つが「意思表示をした方に重大な過失がないこと※」です。
※なお、重大な過失があったとしても、「勘違いをしていることについて相手方が知っている、または重大な過失により知らなかった」あるいは「相手方も同じ勘違いをしていた」場合には、錯誤による取り消しを主張できる。
しかしながら、電子商取引は対面でのやり取りがありませんし、事業者側が「消費者に重大な過失があったのではないか」と主張することで紛争が長期化してしまうケースも多々ありました。
そうした問題を解消するために、電子消費者契約法では上の要件を緩和し、以下のいずれかに該当していれば錯誤による取り消しができることと定めています。原則として、電子消費者契約法に基づいて錯誤の取り消しができるのは、「一般消費者と事業者間の取引であること」が証明できる場合です。
- 送信したときに契約承諾の意思がなかった
- 内心の意思とは異なる内容の意思表示を送信してしまった
錯誤の取り消しに該当する取引事例
事業としてECサイトを運用していたところ、当該サイトにアクセスしてきた一般消費者が商品を購入したが、操作を誤ったため取引の取り消しを求める、という場面で適用されます。
この法令が適用されるのは、電磁的方法によって契約の申込みなどを行う場合に限られるため、対一般消費者の取引であっても、対面による契約には適用されません。
スマホやパソコンを使った、インターネットを介するネットショッピングなどが典型的な事例です。
錯誤の取り消しに該当しない取引事例
前項の内容を踏まえると、事業者間での取引には、電子消費者契約法の錯誤の取り消しは適用されません。なお、「事業者」は必ずしも法人である必要はなく、事業主として取引を行った個人も「事業者」に含まれるため、注意が必要です。
また、一般消費者が相手でも、電磁的方法による意思表示をしていない場合は取り消しの対象にはなりません。
電子消費者契約法において事業者が講じるべき確認措置とは?
電子消費者契約法によって、ECサイトなどでの消費者の操作ミスに対してはキャンセルが認められやすくなっています。
そのことは事業者としてはリスクが大きいため、民法95条の「重大な過失があれば錯誤取り消しはできない」という規定を適用させるための「確認措置」を講ずることが大事です。
注文内容の確定前に確認画面を表示する
消費者による最終的な意思表示に関して、画面表示を介し、契約締結の意思を確認する措置を講じたときは、電子消費者契約法による錯誤取り消しを防ぐことができます。
具体的には次のような措置を検討すべきです。
- 注文内容を確定する、最終的な意思表示となるボタンを押させる前に、いったん申込内容を表示して内容に間違いがないことを確認させる。
- 送信ボタンと同じ画面上に、「そのボタンをクリックすることが意思表示になる」と消費者が明らかに確認できる画面を設ける
- 電子契約サービスを使って「電子署名による契約締結」の手順を1つ挟む など
大事なのは、消費者目線に立って操作ミスなどが生まれないように配慮することです。意思について念入りに確認できる措置を講じておきましょう。
電子消費者契約法に関連するその他の法律は?
電子消費者契約法と直接関わりがあるのは「民法」という法律です。また、電子取引に関わる法律という意味では、「電子帳簿保存法」や「電子署名法」も近い分野にあるといえるでしょう。
民法
民法は私人間の権利義務関係について規律している一般法です。
(参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
電子契約を含む契約全般にはこの民法が適用されますので、もっとも基本的な法律といえるでしょう。そのうえで、特定の場合には別のルールが適用されるよう、電子消費者契約法やその他の法律により特例が定められています。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、原則として紙で保存する義務が課されている国税関係の帳簿や書類について、一定要件下で電子データでの保存を認める法律です。
(参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025/)
領収書や請求書などの証憑書類、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿、その他決算書類などをどのように保存するのかが定められており、昨今のデジタル化に適応するよう法改正も繰り返されています。
電子署名法
電子署名法は、電子署名の要件や効力などを定めた法律です。
(参考:https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000102)
「紙の文書に対する押印」と同様の仕組みを、「電子文書に対する電子署名」に導入する役割を担っています。また、電子署名に関する技術レベルを一定以上に保つための認定制度などを定めていることも、同法の特徴です。
消費者に優しいサイト設計にしよう
電子消費者契約法に基づく注文のキャンセルを増やさないようにするためには、さまざまな配慮が必要です。消費者目線でサイト画面やサービス内容を設計し、誤操作を生まれにくくしましょう。
はじめは事業者側に一定の手間がかかるかもしれませんが、誤操作をめぐって消費者とトラブルになるほうが大きな損失につながります。同法に適応することが自社のためにもなると理解し、親切なサイト設計を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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