- 更新日 : 2023年3月23日
契約における「解除」と「解約」の違いを解説
契約関係を解消することを表現する際に、「解除」を用いる時もあれば、「解約」を用いる時もありますが、一般的に解約と解除は法的な用語として意味に違いがあります。この記事では、解除と解約の違いについて解説します。
解約と解除の違い
解除と解約は、いずれも契約関係を解消するという点では共通する法令用語です。しかし、その法的効力については意味が異なります。
「解除」は一般に契約締結時にまで遡って契約関係が解消されることを指し、これに対して将来に向かってのみ契約関係が解消されることを解約といいます。両者の違いは、たとえば契約関係を解消した場合に解消するまでの間でやり取りしたものを返還する必要があるか否かという形で表れます。
以下で、解除と解約について個別に整理していきましょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
契約の解除とは
契約の解除とは、契約が有効に成立した後、契約の当事者の一方が解除権を有する場合に相手方に対する意思表示によって契約関係を解消することをいいます(民法540条)。この場合の法的効力のポイントは、原則として、はじめから契約がなかったことになるため、契約関係を解消する時点までにやり取りしたものを返還しなければならない(原状回復が必要)という点です(民法620条、民法545条)。
原状回復をする場合において、金銭の返還をする場合には利息を付さなければなりません(民法545条2項)。また、金銭以外の契約の目的物から経済的な利益が生じていた場合も返還しなければならないので、注意が必要です(民法545条3項)。
賃貸借契約における解除
上記では、契約の解除における法的効力のポイントは、原則として、はじめから契約がなかったことになることであるといいました。もっとも、賃貸借契約における契約の解除については、はじめから契約がなかったことになるのではなく、将来に向かってのみ効力を生じます(民法620条)。賃貸借契約のような継続的な契約の場合には、契約に基づく相互の債務の履行が長期間にわたるため、過去に遡って返還・清算を行うことは現実的ではないからです。
賃貸借契約が解除される例として、賃料が滞納された場合や貸主に無断で借主が第三者に賃借物を貸した(転貸借)場合が考えられます。
なお、賃貸借契約の詳細については、以下の記事を参照ください。
契約解除の方式とは
契約の解除は、相手方に対する意思表示によってします(民法540条1項)。この意思表示は、口頭で相手方に伝えることでも可能です。しかし、後になって相手方が「契約は解除されていない」などと主張するなどトラブルとなる可能性があります。そのため、証拠として残すために書面で行うこと少なくありません。
書面で行う場合に最低限記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 契約当事者の特定
- 契約内容の特定
- 契約締結日
- 解除理由
- 催告が必要であれば催告期間を明示し、期間終了後ただちに契約解除をする旨
なお、契約解除通知書の詳細については、以下の記事を参照ください。
契約の解約とは
一方、契約の解約とは、一般的に契約の効果を将来に向かって消滅させることをいいます。
民法上の契約で解約される典型例として、賃貸借契約、委任契約、組合契約などが挙げられます。以下では賃貸借契約における解約を整理します。
賃貸借契約における解約
契約期間の定めのない賃貸借契約の場合はいつでも解約でき、一定期間が経過すると契約関係が解消されます(民法617条)。申入れから契約関係の解消までの期間は、土地の場合には1年、建物の場合には3ヶ月、動産及び貸席の場合には1日とされています。
契約期間の定めのある場合は、原則契約期間中の解約はできません。ただし、解約権留保特約が付されていれば、民法617条に準ずる形で、申入れから一定期間経過すると契約関係を解約することができます(民法618条)。
建物所有を目的とする土地の賃貸借と建物の賃貸借
賃貸借契約における解約は、①建物所有を目的とする土地の賃貸借と②建物の賃貸借の場合に大きく修正されます。
①の場合、契約期間は通常30年となります(借地借家法3条)。したがって、契約期間の定めのない賃貸借契約がありません。②の場合、貸主による解約の申入れから契約関係の解消までの期間は、6ヶ月とされています(借地借家法27条)。
借主が解約の申入れをする場合、解約通知書には、最低限、以下の項目を記載します。
- 物件情報
- 契約者情報
- 提出日
- 解約日
- 退去理由
- 転居先
- 返金分の振込口座
なお、不動産賃貸借契約における解約通知書(退去届)については、以下の記事を参照ください。
契約の解消では解除と解約の違いに注意
解除と解約の大きな違いは、その法的効力が、はじめからなかったものとして契約関係を解消するものなのか、将来に向かって契約関係を解消するものなのかという点にあります。
また、建物所有を目的とする土地の賃貸借と建物の賃貸借の場合には民法だけでなく借地借家法も関係しますので、状況を整理した上で法令の理解に努めましょう。
よくある質問
解約と解除の違いは?
一般的に解約が将来的な契約関係の解消であるのに対し、解除は初めから契約関係がなかったものとして解消されます。詳しくはこちらをご覧ください。
契約解除の方式は?
契約の解除は、相手方に対する意思表示によってします。法律上、意思表示は口頭で行うことも可能ですが、トラブル回避のために書面で行うことが少なくありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)についてわかりやすく解説
民法717条は土地の工作物から生じた損害について、土地の占有者や所有者に無過失責任を課している規定です。本記事では、事例ごとに土地の工作物が原因で他人に損害を与えた場合の法律関係をわかりやすく解説します。要件を把握して、自然災害などで突然大…
詳しくみる特許とは?特許権の出願方法も簡単にわかりやすく解説
特許とは、発明を公開する代わりに、その発明を保護する制度のことです。特許権を得ると、出願から20年間、権利の対象となる発明の実施を独占できます。本記事では、特許や特許権の意味のほか、取得方法や特許侵害にならないようにするポイントなどを解説し…
詳しくみるシルバー人材センターはフリーランス新法の対象?適切な契約方法や注意点
2024年11月に施行されるフリーランス新法は、シルバー人材センターの契約方式にも影響を与えます。請負・委任の仕事をするセンターの会員はフリーランスに該当するためです。 本記事では、フリーランス新法の施行により見直しが行われる契約方式の変更…
詳しくみる2022年6月施行の公益通報者保護法改正とは?事業者がおさえるべきポイントを紹介
2022年6月に改正公益通報者保護法が施行されました。改正を受けて、事業者には従事者の指定や通報に対応する体制の整備など、対応が求められます。違反により罰則が科せられる可能性もあるため、改正のポイントについて正しく理解しましょう。今回は、公…
詳しくみる2026年下請法改正の要点は?企業への影響やとるべき対策を解説
2026年1月施行の改正下請法(通称:取適法)は、企業の取引実務に大きな影響を与える法改正です。本記事では、その背景や目的から、主要な変更点(価格協議義務の明文化、手形禁止、適用範囲の拡大など)をわかりやすく整理し、企業が取るべき対応につい…
詳しくみる特定商取引法違反となる事例・罰則は?時効や通報先もわかりやすく解説
特定商取引法は悪質勧誘を排し、消費者を守る法律です。違反があれば契約取消しやクーリング・オフ、業務停止命令、懲役刑など重い責任が及びます。 本記事では、特定商取引法違反の事例や罰則、時効・通報窓口まで詳しく詳説します。 特定商取引法とは 特…
詳しくみる


