• 作成日 : 2025年3月3日

商標使用権設定契約書とは?ひな形をもとに書き方・例文を解説

商標使用権設定契約は、第三者に商標を使用させる際に締結する契約です。これを結ぶことで、他者が持つ商標を用いてビジネスを展開できるようになります。この記事では、商標使用設定契約書の書き方や必要な項目を紹介します。

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商標使用権設定契約書とは?

商標使用権設定契約(しょうひょうしようけんせっていけいやく)は、商標を使いたい者と、その商標権を所有している者が取り交わす契約です。商標とは、自社が提供する商品やサービスを他者のものと区別するための識別標識を指します。

具体例としては、商品名、サービス名、会社名、店舗名、ブランド名、ロゴマーク、キャッチコピー、イメージキャラクター、サウンドなどが考えられます。これらを特許庁に登録すると、商標権者は独占してその商標を使用できるようになります。

商標を使用したい場合、商標権者と商標権設定契約を締結することで、その商標を使った事業を行うことができるようになります。

商標使用許諾契約書との違い

商標使用権設定契約と似たような契約として、商標使用許諾契約があります。いずれも商標を他者に使用させる契約ですが、商標使用権を特許庁に設定するかどうかという点で異なります。

例えば、Aさんが商標権を持つ商標は基本的にAさんのみが利用できます。しかし、特許庁で手続きを行いBさんに使用権を設定すれば、BさんもAさんの商標権を使用できるようになります。このとき、AさんとBさんの間では商標権使用設定契約が締結され、使用権が付与されるのです。特許庁に使用権を登録することで、権利変動について第三者に対抗できるようにもなります。

一方、商標使用許諾契約は、特許庁での使用権の設定を行わずに商標を使わせる際に交わす契約です。手続きは契約のみで済みますが、第三者に対抗する効力はありません。

ちなみに商標使用権には、商標権者を含めた他社の使用を排除できる「専用使用権」と、商標権者や他の商標使用権者も商標を使用できる「通常使用権」の2種類があります。専用使用権を設定したい場合は、商標使用設定契約を締結して特許庁へ登録しなければなりません。通常使用権の範囲であれば、実質的に商標使用承諾契約だけでも問題ありません。

商標使用権設定契約書を交わすケース

商標使用権設定契約は、相手方に商標を使用する権利を与えたいときに結ばれます。例えば、グループ会社や特定の代理店、M&A先などに商標を独占的に使わせるケースが挙げられます。特に、商標を独占的に使用させる場合は、商標使用設定契約を締結して専用使用権を設定する必要があります。

一方、フランチャイズ契約など、複数の事業者が同じ商標を使用する場面では、商標使用権設定契約ではなく商標使用許諾契約を締結するのが一般的です。

商標使用権設定契約書のひな形・テンプレート

商標使用権設定契約は、さまざまな状況を想定して結んでおかないと、後々トラブルに発展するおそれがあります。当サイトでは、商標使用許諾契約書のひな形を用意していますので、ぜひ参考にして契約書を作成しましょう。

商標使用権設定契約書の書き方や例文

ここからは商標使用権設定契約書に記載すべき項目や内容について見ていきましょう。

表題

まずは「商標使用権設定契約書」という表題を分かりやすく大きめの文字で記載しましょう。

概要

契約者(商標権者と商標使用者)の会社名または氏名と、商標使用権設定契約を締結する旨を記載します。あわせて商標の表示(商標番号、登録日、商標名、指定商品・役務)も明記してください。
なお、商標権者を「甲」、商標使用者を「乙」、該当の商標を「本商標」、この契約を「本契約」と置き換えると文面が整理しやすくなります。

使用権の許諾

商標権者が商標使用を認める旨、その範囲(有効となる国など)を明らかにします。また、使用者が商標をどのように使用するかを商標権者に事前承諾を得る必要があることなどを定めておきましょう。

有効期間

商標使用権設定契約の有効期間を明記し、延長の手続きをどうするかも決めておきます。

許諾の対価

使用者が商標権者に支払う対価の算定方法と締め日、支払い方法、振込手数料の負担について取り決めます。
計算方法が複雑になる場合は、契約書本文では「別紙に定めた内容および計算方法に基づく」旨とし、詳細は添付資料にまとめても問題ありません。

報告書の作成

商標が使われている商品やサービスの売上によって対価が決定する場合、使用者は商標権者に対し、売上を報告する義務を負います。報告の期限や締め日、記載内容を定め、商標権者がそれを検査できる旨も規定しておきましょう。

無効事由

契約が無効になる理由を指す「無効事由」について定めます。商標権者側に無効事由がないことを表明し、もし使用者が商標の有効性を争ってきた場合に契約を解除できる旨も記載します。

秘密保持

双方が相手方から得た秘密情報を、無断で第三者に開示・漏洩しないことを取り決めます。

第三者譲渡の禁止

当事者が無断で契約に基づく権利を譲渡しないよう定めます。さらに、使用者が第三者に再使用権を与えないことや、商標権者が契約期間中に商標を維持することなども明確化します。

契約解除

一方が契約違反をし、かつ是正されないときは契約を解除(契約をなかったことにする)できる旨を定めます。同時に、相手方に損害を与えた場合は賠償責任を負うことを明記しましょう。

協議

契約書に明記されていない事柄について疑義や問題が発生した場合は、双方が話し合って解決を図る旨を示します。

合意管轄

当事者間で紛争が起きて訴訟となる場合、どの裁判所を管轄とするかをあらかじめ決めておきます。

契約書の保管

契約書を2通作成し、両当事者が署名押印してそれぞれ保管することを定めます。

署名押印欄

最後に契約締結日と両当事者の住所、会社名、代表者氏名を記載する欄と押印欄を設けます。ここに署名押印することで契約内容に同意したことになります。

商標使用権設定契約書を書くうえでの注意点

以上で商標使用権設定契約書の書き方をご紹介しました。ここからは契約書を作成する際の注意点について見ていきましょう。

該当する商標を特定し、使用範囲や期間を明確にする

契約で許諾した商標以外が使用されている、または使用期間を過ぎているのに商標が使われ続けるといったトラブルが生じることがあります。対象となる商標の範囲や使用期間を具体的に定めておくことが大切です。

対価の計算方法を明瞭にしておく

お金は大きなトラブルになりやすい要素です。対価はいくらで、いつまでに締めて、いつまでにどのように支払うのかをはっきりさせておきましょう。
なお、商標権者は必ず対価を受け取らなければならないわけではありません。例えば、グループ会社やパートナー会社などに商標を使わせる場合は無償とするケースもあります。

契約解除に関するルールを明確にしておく

特に、専用使用権を設定する契約では、商標を使わせるという性質上、商標権者の立場が強くなり使用者に不利になってしまうケースもあり得ます。一方で、使用者が不適切な方法で商標を使うと商標権者が不利益を被る可能性があります。どのような場合に契約を解除できるのか、できないのかを明らかにしておきましょう。

商標使用権設定契約書の保管期間・保管方法

一般的に取引関係の契約書の保管期間は7年です。法人税法施行規則では、取引の証拠となる書類は7年間保管しなければならないと定められているからです。なお、青色申告書を提出している法人に関しては10年となります。

参考:法人税法施行規則|e-GOV法令検索

また、紙の契約書で締結した場合はその元本を保管するか、スキャンして電子データとして保管することも可能です。スキャンする場合は視認性を確保するなど、電子帳簿保存法の要件に従う必要があります。電子契約書の場合は、それをプリントアウトして紙で保管することはできません。電子データのまま保管する必要があります。

商標使用権設定契約書の電子化は可能?

商標使用権設定契約は紙のほかにもパソコンやスマートフォンで締結することも可能です。ExcelやWord、PDFなどで作成された契約書ファイルを用いるほか、電子契約システムを使うという方法もあります。

特に電子契約システムであればWeb上で簡単に契約が締結でき、契約書を作成した日時が記録されるタイムスタンプが付与されるため、高い本人性や非改ざん性が確保できます。

トラブルも想定して商標使用権設定契約書を作成しよう

今回は商標使用権設定契約書の作成方法や注意点についてご紹介しました。商標は事業者にとっては大切な資産です。商標があるからこそ利益が得られるという側面もあります。それだけに商標の利用を巡ってトラブルが発生するケースも多いようです。

しっかりと両当事者間で商標の利用に関するルールをすり合わせておき、さまざまなトラブルを想定した契約書を作成することが大切です。また、契約を締結する際には、再度ご自身が不利になるような内容が盛り込まれていないかを確認したうえで署名押印しましょう。


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