- 作成日 : 2025年1月30日
債務確認書とは?効力や書き方をひな形つきで解説
債務確認書とは、自ら負担している債務の内容などを確認するため、債務者が債権者に対して交付する文書です。取引先に対して債権を有しており、その内容を明確化する必要がある場合は、債務者に対して債務確認書の提出を求めましょう。本記事では、債務確認書の書き方やレビュー時のポイントを、文言の具体例を示しながら解説します。
目次
債務確認書とは?
債務確認書(さいむかくにんしょ)とは、債務の内容や弁済方法などを確認する旨の文書です。債務者が債権者に対して交付します。
債務確認書の交付を受けることは必須ではありませんが、債務の内容や弁済方法などが明確化されるため、債務者に対する請求がしやすくなります。また、債務者に対して債務の存在を自覚させ、スムーズな支払いを促す効果も期待できます。
債務確認書の交付を受けるべきケース
債務確認書の交付を受けた方がいいのは、債務の内容や弁済方法などを明確化する必要がある場合です。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- すでに債務不履行が生じており、債務者が支払うべき金額や弁済期限などを明確化したい場合
- 契約上の債務の内容(金額や弁済期限など)を変更したことに伴い、新たな合意内容を明確化する必要がある場合
- 債務の発生根拠となる契約書類が存在しないか、または紛失してしまったため、債務の内容が不明確となる恐れがある場合 など
債務確認書のひな形
債務確認書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に債務確認書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
債務確認書に記載すべき内容
債務確認書には、主に以下の事項を記載します。
- 債務の内容に関する確認
- 債務の弁済方法に関する確認
債務の内容に関する確認
(例)
私は、貴殿(貴社)と私の間で令和〇年〇月〇日に締結した金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務として、令和〇年〇月〇日現在、貴殿に対し金○○円の支払義務があることを確認します。
債務の内容を特定するための事項を明記します。記載すべき具体的な事項については、後ほど解説します。
債務の弁済方法に関する確認
(例)
私は貴殿に対し、上記金額を分割して、令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、毎月末日限り金○○円を貴殿の銀行口座に振り込む方法により弁済いたします。
なお、銀行口座への振込手数料は、私が負担します。
支払義務があることを確認した債務につき、実際に弁済する際の方法を明記します。具体的には、以下の事項などを記載しましょう。
- 支払期限
- 分割払いの場合は、各回の弁済金額
- 支払方法(銀行振込など)
- 支払いに要する手数料の負担者(債務者負担とするのが一般的)
債務確認書の交付を受ける際の注意点
債務確認書の交付を受ける際には、以下の各点に注意しましょう。
- 債務の内容を疑義がないように特定し、明記する
- 債務者に署名や押印をしてもらう
- 紙の債務確認書には、収入印紙の貼付が必要な場合がある
債務の内容を疑義がないように特定し、明記する
債務確認書においては、債務の内容を特定するための情報を、疑義がないように明記することが大切です。
債務の内容を特定するための情報 |
---|
①契約によって発生した債務の内容を確認する場合
(例) 「私は、貴殿(貴社)と私の間で令和〇年〇月〇日に締結した金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務として、令和〇年〇月〇日現在、貴殿に対し金○○円の支払義務があることを確認します。」 ②不法行為によって発生した債務の内容を確認する場合
(例) 「私は、令和〇年〇月〇日に私の過失により発生した○○事故に関し、不法行為に基づく損害賠償債務として、令和〇年〇月〇日現在、貴殿に対し金○○円の支払義務があることを確認します。」 |
債務の内容が明確に特定されていないと、その支払いに関してトラブルが発生するリスクが高まります。他の債務と明確に区別できているか、基準時や金額などについて曖昧な点がないかなどをチェックしましょう。
債務者に署名や押印をしてもらう
債務確認書には、作成者である債務者に署名や押印をしてもらいましょう。債務者が個人であれば署名と押印の両方を行う「署名捺印」、法人であれば記名のうえで押印をしてもらう「記名押印」を求めるのが一般的です。
債務者の署名、または債務者の印章による押印があれば、債務確認書が真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法第228条第4項)。将来的に債務者が偽造や改ざんを主張しても、その合理的な根拠が債務者によって示されない限り、債務確認書が有効なものとして取り扱われます。
なお、署名と押印はどちらか一方でもなされていれば、債務確認書の真正な成立が推定されます。しかし両方あった方がより安心なので、債務者が個人である場合は、基本的には署名と押印の両方を求めることをおすすめします。
紙の債務確認書には、収入印紙の貼付が必要な場合がある
原契約の種類によっては、紙の債務確認書が印紙税法上の課税文書に当たり、収入印紙の貼付を要する場合があります。
例えば、金銭消費貸借契約に基づく債務を確認する場合、紙の債務確認書は「第1号文書」に当たり、作成時に以下の金額の収入印紙を貼付する必要があります。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
すでに締結した契約書に基づく債務を変更せず、その内容を確認するに過ぎない場合は「契約金額の記載のないもの」として取り扱われるため、印紙税額は200円です。
これに対して、原契約書に契約金額の定めがない場合や、原契約が口頭でなされた場合には、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。
そのほか、請負代金債務を確認する場合は「第2号文書」、保証債務を確認する場合は「第13号文書」に当たるなど、確認する債務の種類に応じて収入印紙の要否や金額が決まります。
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで|国税庁
債務確認書の保管期間・保管方法
債務者から提出を受けた債務確認書は、セキュリティが確保された状態できちんと保管しておきましょう。
法人税法により、債務確認書を含む契約書類は、原則として事業年度終了後7年間保存しなければなりません(法人の場合)。ただし、欠損金が生じた事業年度に提出を受けた債務確認書は、事業年度終了後10年間の保存が義務付けられます。保存期間中は、税務調査の際に債務確認書の提示を求められる可能性があるので、すぐに準備できるよう整理して保管しましょう。
また、債務確認書を保管する際には、紛失、改ざん、個人情報の流出などのリスクをできる限り防ぐ必要があります。
紙で債務確認書の提出を受けたときは、鍵のかかるキャビネットなどに保管したうえで、その鍵を厳重に管理して無関係の人が持ち出せないようにしましょう。
電子データで債務確認書の提出を受けたときは、データにアクセスできる人を必要最小限に絞ることが大切です。そのためには、アクセス権とパスワードを適切に設定しましょう。
債務確認書の電子化は可能?
債務確認書は、電子データで交付を受けることもできます。
ただし、電子データで作成される債務確認書には、債務者による署名や押印がなされません。債務者本人が作成したことを証明するため、債務確認書の電子データには電子署名を行ってもらいましょう。
債務確認書に電子署名を付与するメリットと方法
パスワードなどを適切に管理することにより、本人だけが行うことができる電子署名が付されていれば、債務確認書の電子データは真正に成立したものと推定されます(電子署名法第3条)。債務確認書の有効性が確かなものとなり、債務者とのトラブルの予防につながります。
電子署名を行う際には、「マネーフォワード クラウド契約」などの電子契約サービスが便利です。簡単な操作で、セキュリティの確保された電子署名を付与することができます。
紙の債務確認書をスキャンして電子化するのはOK?
紙で提出してもらった債務確認書は、スキャンしてデータ化することもできますが、原本を破棄すべきではありません。スキャンした後で原本を破棄すると、スキャンデータについては真正に成立したことが推定されないからです。
債務者とのトラブルを防ぐため、スキャンによってデータ保存した場合でも、紙の債務確認書の原本は引き続き保管しましょう。
確実に債務を支払わせたいなら、債務確認書の提出を求めましょう
債務者に債務確認書を提出させれば、債務の内容や弁済方法などが明確になるほか、債務者に対して債務の存在を自覚させることができます。債務の回収可能性を高めたいなら、債務者に対して債務確認書の提出を求めましょう。
債務確認書においては、債務の内容を明確に特定することが大切です。本記事を参考にして、必要な情報を十分に記載した債務確認書を提出させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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