- 更新日 : 2025年1月30日
業務委託契約書に印紙は必要?金額やどちらが負担するか、節税方法を解説
業務委託契約書には、その内容によって収入印紙の貼付が必要です。ただし、印紙の必要性や印紙の金額は契約書の内容によって異なります。本記事では、業務委託契約書の印紙税額を判断するポイントを紹介します。印紙税額をどちらが負担するか、印紙を貼る場所や印紙なしの場合の罰則、印紙税の負担を減らす節税方法なども押さえておきましょう。

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目次
業務委託契約書に印紙は必要?不要?
業務委託契約書は、多くの場合で印紙の貼付が必要です。印紙が必要かどうかは、契約書の内容によって異なります。
そもそも業務委託とは、「請負」と「委任(準委任)」を含む言葉です。請負契約の目的は作業を行って仕事を完成させることであり、準委任の目的は作業そのものを行うことです。委任は準委任よりも狭い範囲の作業であり、契約締結などの法律行為を指します。こうした点から、「業務委託」と一口にいっても、さまざまな形の契約があると考えられます。
業務委託契約書は、印紙税法における課税文書の「2号文書」と「7号文書」のいずれかに該当することが一般的です。どちらに該当するかを判断し、適切な金額の印紙を貼付することが大切です。
印紙の貼付が必要な契約書については、以下の記事で詳しく紹介しているためご参照ください。
業務委託契約書に貼る印紙の金額は200円?4000円?
業務委託契約書に貼る印紙の金額は、2号文書と7号文書のどちらに該当するかで変わります。以下では、それぞれの内容といくらの印紙が必要なのかを紹介します。
印紙税が200円になる契約内容
業務委託契約書が2号文書「請負に関する契約書」に該当し、なおかつ契約金額が100万円以下であれば、印紙税は200円です。また、契約金額によって、印紙の金額は以下のように定められています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
上記のように、2号文書であれば印紙税額が200円とは限りません。記載されている契約金額によって、印紙税額も変わる点に注意が必要です。たとえば、契約金額が800万円であれば、1万円の印紙を貼付けなければなりません。また、契約金額が1万円以下であれば非課税となり、印紙は不要です。
ただし、一定期間中の建設工事の請負に関するものについては、印紙税額は別に定められています。
参考:印紙税額|国税庁
印紙税が4000円になる契約内容
業務委託契約書が7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当すれば、印紙税額は一律4,000円です。ただし、契約期間が3ヶ月以内で、更新の定めがないものは含みません。
契約金額を明確に計算できるかどうかが、7号文書かどうかを見分けるポイントです。たとえば、契約書に「1ヶ月あたり1万円」「1回あたり5,000円」と単価のみが記載されていても、「何ヶ月」「何回」という記載がなければ契約金額を計算できません。このように、契約金額を明確に計算できなければ7号文書と判断でき、4,000円の印紙を貼付する必要があります。
しかし、「1ヶ月あたり1万円」に加えて「2024年1月より1年間とする」という記載があれば、1万円×12ヶ月で契約金額は12万円と明確に計算できるため、7号文書に該当しないと判断できます。前項の表より、貼付が必要な印紙税額は200円とわかるでしょう。
印紙税が4,000円となるのは、継続して生じる取引のあくまでも基本的な契約を結ぶ場合であり、具体的な取引までは指定しないものと考えるとよいでしょう。
業務委託契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
業務委託契約書の印紙税は、契約の当事者で折半して負担することが一般的です。
印紙税法には、書類の作成者に印紙税の課税義務があると記載されているものの、複数の者が共同で作成した場合には印紙税の負担も連帯して納める旨の記載もあります。
契約書は2部作成して署名捺印し、それぞれが1部ずつ保管することが一般的です。そのため、それぞれが保管する契約書に貼る印紙税を負担することは、自然な流れといえるでしょう。
業務委託契約書の印紙の貼り方
業務委託契約書に収入印紙を貼る場所は、左上のスペースが一般的です。また、署名欄の横に貼付する場合もあります。貼る場所については、法律で厳格に定められているわけではありません。
印紙の裏には糊が付いているため、水分を付けてしっかりと貼り付けましょう。印紙を2枚貼り付ける場合は、上下または左右に並べて貼ることが一般的です。
貼付した収入印紙には、契約書とまたがる「消印」を押しましょう。消印が必要な理由は、使用済みであることを示し、再利用を防止するためです。契約書に押印した印鑑のほか、日付印や認印、朱肉を使うことなく押せるインク浸透印も消印として使えます。
ボールペンによる署名も有効ですが、「印」と記入するのみでは無効となるため注意しましょう。このほか、単なる斜線・二重線や、鉛筆やシャープペンシルなど消えやすい筆記用具による署名も、消印として認められません。
業務委託契約書に印紙がないとどうなる?
本来は収入印紙が必要にもかかわらず貼付がない場合について、契約書の効力やペナルティはどのようになるのか気になる方もいるでしょう。以下では、業務委託契約書に印紙がない場合について、どのように扱われるのかを紹介します。
契約内容は無効にならない
業務委託契約書に印紙がない場合でも、契約の内容は有効です。印紙の貼付がないからといって、契約が無効になることはありません。
過怠税が徴収される
一方で、本来必要な印紙の貼付がないことに対するペナルティはあります。
貼付が必要な印紙税額に加えて、過怠税が課せられます。税務調査で指摘される前に気づき、自主的に税務署に申告する場合は、本来貼付すべき印紙税額とその10%の過怠税、つまり印紙税の1.1倍の金額を納付することで済みます。
しかし、税務調査で指摘された場合は、本来貼付すべき印紙税額とその2倍の過怠税、つまり印紙税の3倍の金額を納付しなければなりません。
貼付すべき印紙の税額によっては、過怠税とあわせて高額の納付が求められることもあります。契約する時点で、貼り忘れのないように注意が必要です。
契約書に印紙がない場合について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
業務委託契約書の割印の押し方
業務委託契約書を複数枚作成して、契約当事者のそれぞれが保管する場合には、「割印」を押すことがあります。割印を押すことは法的に必要なわけではなく、商習慣の1つにすぎません。しかし、改ざんや不正なコピーを防止するために割印を押すことはよくあります。
割印を押す場合は、作成した契約書を少しずらして重ね、契約者全員の印鑑を押印します。ただし、必ずしも契約の際に使った印鑑の押印が必要なわけではなく、認印でも構いません。契約者の中に法人がいる場合は、法人名の印鑑を使うことが一般的です。
業務委託契約書の印紙代を節税するポイント
該当する課税文書の種類や契約金額によっては、高額な印紙代が必要なケースもあります。「契約書に貼るだけなら、印紙税額が少なければいいのに」と考える方もいるでしょう。以下では、印紙代を節約するためのポイントを2つ紹介します。
契約金額を税抜きで表示する
業務委託契約書が2号文書に該当する場合は、契約金額を税抜きで記載することで節税となるケースがあります。
たとえば、税込110万円の仕事を請け負う場合は、「請負金額110万円(税抜金額100万円)」と記載しましょう。この場合は100万円にかかる印紙税額を納付すればよいため、200円の印紙を貼付します。一方で、単に「請負金額110万円」とだけ記載してしまうと、110万円にかかる印紙税額、つまり500円の印紙を貼付しなければなりません。
また、同様の場合に「請負金額110万円(消費税等10万円を含む)」という記載でも、200円の印紙の貼付で済みます。
ただし、請負金額に「税込」「消費税10%を含む」と加えるだけでは、以上の処理は認められません。消費税や税込・税抜の金額を明確に記載することが大切です。
契約書の枚数を減らす
契約書の原本には印紙の貼付が必要ですが、コピーには不要です。一般的には、同じ内容の契約書を2部印刷してそれぞれが署名捺印します。この2部はどちらも原本とみなされるため印紙の貼付が必要です。しかし、原本を1部だけ作成して、いずれか一方がコピーを保管するようにすれば、印紙の貼付は1部で済みます。
ただし、原本が1部しかないため紛失のリスクが高まることや、訴訟における証拠として十分と認められない可能性があることは把握しておきましょう。
業務委託契約書の無料ひな形・テンプレート
契約の内容を明確に残すためには、業務委託契約書を作成しておくことが大切です。しかし、何もない状態から作成することは難しく、法的なリスクも伴うでしょう。そこで、無料のテンプレートを使うと簡単に業務委託契約書を作成できます。ぜひ以下からダウンロードして活用してください。

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なお業務委託契約書については、以下の記事をご参照ください。
電子契約なら業務委託契約書の印紙は不要に
電子契約によって業務委託契約を締結すれば、収入印紙の貼付は不要です。近年は電子契約サービスが普及しつつあり、紙の契約書から電子契約へより簡単に移行できるようになりました。ペーパーレス化によって管理コストを削減でき、契約の作成から締結、管理までシステム上でスムーズにできるため、検討してみてはいかがでしょうか。
電子契約で印紙が不要となる理由は、電子契約が印紙税法における文書の「作成」に該当しないためです。印紙税法では、紙の状態に出力することをもって文書の「作成」としています。紙ではなくデータによって契約を締結する電子契約は「作成」には該当しません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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