- 更新日 : 2025年3月4日
レピュテーションリスクとは?具体的な事例や対策方法などをわかりやすく解説
ビジネスにおけるレピュテーションリスクとは、悪い評判が経営にネガティブな影響をあたえる可能性を意味します。不祥事が明るみになったり、トラブルに巻き込まれたりして、企業がいわゆる炎上状態に陥る事例が後を絶ちません。こうした事態にならないためには、「レピュテーションリスク」を正しく理解し、適切な対策をとることが重要です。
この記事ではレピュテーションリスクの意味や具体例、表面化した際の対応についてご説明します。
目次
レピュテーションリスクとは
レピュテーション(Reputation)とは、日本語で「評判」という意味です。レピュテーションリスクは、「評判リスク」や「風評リスク」とも言い換えられます。
レピュテーションリスクを英語で表記すると、「Reputation Risk」です。
レピュテーションリスクの意味
レピュテーションリスクとは、ネガティブな評判が経営にもたらす危険性のことを指します。
「あそこの会社は対応が素晴らしい」「このお店の料理はおいしい」というように良い評判が広まれば顧客が増え、売上や利益も増加するはずです。逆に「あの会社は悪いことをしている」「あのお店の料理はまずい」というように悪い評判が広まってしまうと顧客が離れ、売上や利益が低下してしまいます。また、場合によっては謝罪に追い込まれたり廃業を余儀なくされたりといった事態にも陥りかねません。
レピュテーションリスクの概念は事業において当たり前のことのように感じられるかもしれませんが、近年ではSNSによって評判が一気に広まってしまう世の中になってきているため、企業経営においてはレピュテーションリスクをより強く意識し、適切な対策を取ることが求められます。
レピュテーションリスクの使い方
レピュテーションリスクの使い方は、以下の通りです。
- 今期はレピュテーションリスクへの対策を強化する
- 御社ではレピュテーションリスクへの備えができていますか?
- 我々は今一度レピュテーションリスクを強く意識しなければならない
- SNSの普及に伴い企業のレピュテーションリスクも高まっている
- レピュテーションリスクに備えてさえいれば、あそこまで炎上しなかった
なお、レピュテーションリスクと混同されがちな言葉として「コンプライアンス」が挙げられます。コンプライアンスとは「法令遵守」という意味の言葉です。
意味はことなりますが、企業がコンプライアンス違反をすると企業の評判を落とすことに繋がります。コンプライアンス違反は、レピュテーションリスクが高まる要因のひとつといえます。
レピュテーションリスクを測定する方法
レピュテーションリスクを測定する方法は、以下のようなものがあります。
インターネットで自社名を検索する
インターネットなどで自社名を検索し、自社に対する評判を確認する方法、いわゆる「エゴサーチ(エゴサ)」です。
良い評判ばかりであれば問題はありませんが、悪い評判が書き込まれていると自社になんらかの問題が生じていてレピュテーションリスクが高まっている可能性があります。ただし、根拠がない思い込みや嘘、個人的な恨みによる誹謗中傷などが記載されている可能性もあるため、100%正しくレピュテーションリスクを測定することは難しいです。
第三者のアンケート調査を実施する
もうひとつの方法としては顧客や取引先あるいは第三者にアンケート調査を行い、自社の評判やイメージを回答してもらう方法です。ネガティブな印象を抱かれている場合、レピュテーションリスクが高まっている可能性があります。
レピュテーションリスクが高くなる原因
レピュテーションリスクが高くなる原因には「商品やサービスの品質の低下」「経営者や従業員の不祥事」「風評被害」「内部告発」の4つがあります。
商品やサービスの品質の低下
- 製品やサービスの品質が落ちていると評判になっている
- 製品やサービスに瑕疵が発生した
- 顧客との間にトラブルが発生している
経営者や従業員の不祥事
- 経営者や従業員が犯罪行為をした
- 経営者や従業員がコンプライアンスに反する行為をしている
- 経営者や従業員がSNSに不適切な投稿をした
- 経営者や従業員が反社会的勢力と関係を持っている
風評被害
- 個人的な恨みを買っていやがらせを受けている
- 根拠のない虚偽や誹謗中傷を流布されている
- 同業他社が問題を起こした
- 同じ会社名・商号の会社が問題を起こした
- 会社が事件や事故、災害に巻き込まれた
内部告発
- 経営者や従業員の犯罪行為が警察やマスコミに通報された
- 会社ぐるみで行っていた不正行為が警察や監督省庁、マスコミに通報された
- 経営者や従業員がマスコミやSNS、動画サイトなどで会社の内情を暴露した
以上のような事態が発生した場合、レピュテーションリスクが高まっており、炎上につながるおそれがありますので、早めの対策が必要です。
レピュテーションリスクの対策方法
レピュテーションリスクに備えるためには、問題を発生させないことが一番重要です。そのためには以下のような対策を取りましょう。
従業員の教育体制や労働環境を整備する
まずは従業員への教育を徹底しましょう。特に近年ではSNSでの不適切な投稿が広まって炎上騒ぎとなり、企業の評判が落ちてしまうケースが増えています。業務に必要なスキルや知識はもちろん、コンプライアンスやSNSの利用方法、その他ネットリテラシーについて学ぶ機会を設け、日頃から呼びかけて意識付けをすることが大切です。
従業員が発端となる炎上騒ぎは、企業だけでなく従業員個人への損害賠償責任や刑事責任が生じうる行為であることを従業員に理解してもらうようにしましょう。
また、労働環境や職場での人間関係などに不満を持った社員がSNS等を利用して告発を行うケースも少なくありません。そもそもサービス残業やパワハラ、セクハラなどのハラスメントは不法行為にあたり、これによって炎上した場合は企業側の姿勢に問題があるケースも多いでしょう。
労働環境を整備することで、従業員の定着率が上がる、生産性やモチベーションが向上して商品やサービスの品質向上につながるなどのメリットも得られます。
社内規則やマニュアルを強化する
社内規則やマニュアルでコンプライアンスの遵守やSNSの使い方の規定などを定めましょう。SNSを使用禁止にすることはできませんが、たとえば社内での撮影を禁止する、機密情報を定義したうえでそれをネットに投稿したり第三者に譲渡したりしないなどの規則を設けることで、SNSの不適切投稿を防ぐことにつながります。
また、ルールに違反した従業員にはペナルティ(懲戒処分や損害賠償請求など)が課されることを明記しておくことで抑止力になり、実際に問題が発生した際に処分がスムーズになります。
加えて、レピュテーションリスクを早期に発見するためにも、定期的な測定(報道やインターネットのチェックや顧客へのアンケート調査など)も実施しましょう。
商品やサービスの質を向上させる
レピュテーションリスクの要因はSNSの不適切投稿や経営者・従業員の問題行動だけではありません。商品やサービスの質の低下も重大な要素です。
顧客にネガティブな印象を与えないためにも、今一度会社全体で商品やサービスの質の向上に取り組みましょう。良い評判が得られればレピュテーションリスクが軽減されるだけでなく、新規顧客やリピーターの獲得、売上や利益の向上にもつながります。
また、積極的な広報活動や顧客とのコミュニケーションを展開し、日頃から良好な企業イメージを醸成することも大切です。
レピュテーションリスクに対応できる体制を整える
万が一レピュテーションリスクが表面化したときに対応できる体制を整えておくことが大切です。担当部署や担当者を決め、問題が発生した際の流れについても確認しておきましょう。
加えて、いざというときにスムーズかつ適切に対応できるよう、定期的に訓練を行う、他社の事例を学ぶ、弁護士や社会保険労務士などとの連携を強化しておくことも重要です。
レピュテーションリスクが表面化した場合の対応
万が一レピュテーションリスクが表面化した際には、以下のような対処を行うことで被害を最小限に食い止められる可能性があります。
- 事実の確認
- 情報発信(経緯の説明や謝罪、今後の方針など)
- 原因の排斥(問題点の改善)
- ネガティブなコンテンツを掲載しているメディアへのコンタクト(コンテンツの削除依頼など)
- 再発防止策の実施
レピュテーションリスクが表面化した際には素早い対応が求められます。情報発信や謝罪、対応などの初動が遅れれば、より問題が深刻なものへと発展しかねません。そのためにも、しっかりと対応方法を決めておきましょう。
レピュテーションリスクの対策に取り組みましょう
これまでも数多くの企業が炎上し、それによって大きな損失を被りました。今一度会社としてしっかりと対策を取り、全経営者・従業員がレピュテーションリスクを意識することが大切です。
レピュテーションリスクの測定や労働環境の改善、商品やサービスの品質向上など、具体的な取り組みを始めてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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