- 更新日 : 2025年1月10日
商業登記電子証明書とは?手数料やオンラインで取得する流れを解説
商業登記電子証明書とは、商業登記や公証をオンラインで行えるようになる非常に便利なものです。商業登記電子証明書は、登記所に申請して発行してもらえます。この記事では、商業登記電子証明書の用途や発行方法についてご紹介します。
目次
商業登記電子証明書とは?
まず、商業登記電子証明書がどのようなものなのか、何に利用できるのかを説明します。
オンライン申請の手続に利用できる
商業登記電子証明書は、商業登記のオンライン申請を行う上で欠かせないものです。
商業登記法や同規則の改正が進み、会社をはじめとする法人に関する商業登記のオンライン申請の利便性が向上しています。登記所に出向かずとも登記が完了するので、企業にとってオンライン申請はメリットのある仕組みです。
商業登記のオンライン申請を行うにあたり、これまで窓口で行っていた本人確認もオンラインで行わなければなりません。電子データの作成者について、オンライン上で本人確認を行うために用いられるのが「商業登記電子証明書」です。商業登記電子証明書により、電子データの受領者(法務局や自治体など)は、その電子データの作成者が誰なのか、電子データが改ざんされていないかといったことを確認できるのです。
商業登記電子証明書は法務局しか発行できない
商業登記のオンライン申請で必ず用いることになる商業登記電子証明書ですが、これを発行できるのは法務局のみです。
商業登記に基づく電子認証制度は、法務局(登記所)が管理する会社や法人の登記情報をベースにして、会社や法人の代表者に対し商業登記電子証明書を発行する仕組みです。そのため、商業登記電子証明書を取得したい場合、登記情報を有している登記所に申請し、発行を受けることになります。
書面で申請することもできますが、令和4年2月15日以降はオンラインで申請することも可能になりました。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
商業登記電子証明書を利用することができるオンライン申請
商業登記電子証明書を利用してできるオンライン申請の種類は多岐にわたります。ここでは、どのような手続がオンラインで可能なのかご紹介します。
企業の業務として関わりが深い手続は、以下のものが挙げられます。
いずれも企業の業務として日常的に発生する手続です。これらを商業登記電子証明書を用いずにやろうとすると、わざわざ紙の書類を持って登記所、税務署、年金事務所、労働基準監督署などへ行かなければなりません。商業登記電子証明書を取得してオンラインで手続を進められるようにしておけば、登記所などに行くことなく手続できます。
また、必要となる業種は限られますが、商業登記電子証明書の利用により、以下の手続もオンラインで行えるようになります。
- 特許のインターネット出願
- 自動車保有関係手続
- 総務省の電波利用の電子申請/届出
- 防衛装備庁の電子入札/開札
- オンラインでの支払督促手続
- 府省共通の電子調達システム
- 電子自治体における各種の申請/届出
このように、商業登記電子証明書があれば数多くの手続がオンラインで完結します。商業登記電子証明書の取得やオンライン申請を行うための体制づくりには、短期的にみるとある程度の費用や労力はかかりますが、中長期的にみれば、コスト削減に大きく貢献するでしょう。
加えて、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑みれば、オンライン申請の活用は公衆衛生の観点からも有意義といえます。
商業登記電子証明書の発行手数料
商業登記電子証明書を取得するためには、いくらかの発行手数料が必要です。無料での取得はできません。
発行手数料は、証明期間の長さに応じて1,300円~9,300円です。
| 証明期間 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 9ヶ月 | 12ヶ月 | 15ヶ月 | 18ヶ月 | 21ヶ月 | 24ヶ月 | 27ヶ月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 手数料 | 1,300円 | 2,300円 | 3,300円 | 4,300円 | 5,300円 | 6,300円 | 7,300円 | 8,300円 | 9,300円 |
証明期間とは、取得する商業登記電子証明書の有効期間のようなものです。証明期間の長さは上記の期間から申請者が選択できます。証明期間が長い方が、商業登記電子証明書の取得を申請する頻度を減らせます。
もっとも、証明期間内であっても会社の商号、本店所在地、代表者の氏名など、電子証明書の記載内容に変更が生じると、取得した商業登記電子証明書が失効してしまいます。失効した場合、証明期間を満了していなくても一度払った手数料は戻ってきませんので注意が必要です。
証明期間が長ければ長いほど手数料は割安になりますが、記載内容に変更が生じる可能性も考慮し、自社の実態に合わせて証明期間を選択しましょう。
商業登記電子証明書を取得するまでの流れ
では、商業登記電子証明書を取得するにはどうしたらいいのでしょうか。書面で取得申請する方法もありますが、今回はオンラインでの取得申請の流れをご紹介します。
電子証明書発行申請に必要な専用ソフトウェアを入手する
商業登記電子証明書の取得を申請するためには、申請に必要な電子ファイルを作成しなければなりません。この電子ファイルは、専用ソフトウェア「商業登記電子認証ソフト」を使って作成します。
「商業登記電子認証ソフト」は法務局が提供しているソフトウェアで、法務局ホームページからダウンロードできます。ダウンロードにあたり費用はかかりません。
なお、商業登記電子証明書の取得申請をオンラインで行うのが初めての場合、「申請用総合ソフト」をダウンロードする必要があり、登記・供託オンライン申請システムを使うためには、事前に申請者情報登録も必要になります。
電子証明書を用意する
取得申請した者の本人確認や電子署名を付すため、事前に電子証明書を取得しておかなければなりません。
ここで必要となる電子証明書は、公的個人認証サービス電子証明書、特定認証業務電子証明書(例:セコムパスポートforG-ID)のいずれかです。なお、すでに商業登記電子証明書を取得している場合、有効期間内に限り、取得済みの商業登記電子証明書を用いて新しい商業登記電子証明書の取得申請を行うことができます。
電子証明書発行申請に必要なファイルを作成する
商業登記電子認証ソフトをダウンロード・インストールしたら、これを使って電子ファイルを作成します。申請に必要な電子ファイルは「鍵ペアファイル」と「証明書発行申請ファイル(SHINSEIファイル)」の2つです。
「鍵ペアファイル」とは、電子証明書を作成するために必要な秘密鍵と公開鍵のペアのファイルで、SHINSEIファイルとは、会社情報、代表者情報、公開鍵の情報が記録されたファイルです。
商業登記電子認証ソフトを開くと操作手順が記載されたメニュー画面が表示されるので、この記載に従い作成を進めます。緊急時に商業登記電子証明書の使用をストップするための暗証コードの入力を求められるので、事前に暗証コードを決めておくとスムーズです。
作成した電子ファイルを送信する
申請書情報に、作成した「証明書発行申請ファイル」を添付し、申請人が電子署名を付与したものを登記・供託オンライン申請システムへ送信します。
手数料を納付する
インターネットバンキング、モバイルバンキングまたはATMでの電子納付を用いて、手数料を納付します。登記・供託オンライン申請システムへ電子ファイル等を送信すると、手数料納付のための「電子納付情報」が発行されます。「電子納付情報」が発行された日の翌日から起算して1日間が納付期限(発行されてから、おおむね2日以内)となりますので、電子ファイルを送信したらすぐに手数料を納付しなければなりません。他の公的サービスと同様に、商業登記電子証明書の手数料も前払いです。
電子証明書の取得(ダウンロード)
手数料納付まで完了すると、申請総合ソフト上の「処理状況」の欄が「手続終了」の表示になります。この表示になったら、「お知らせ」内に電子証明書のシリアル番号が通知されています。
商業登記電子認証ソフトの「電子証明書の取得(ダウンロード)」をクリックし、作成した「鍵ペアファイル」やシリアル番号を入力した上で、「電子証明書取得実行」をクリックします。これで、商業登記電子証明書のオンラインでの取得は完了です。
商業登記電子証明書を更新する方法・手続
取得した商業登記電子証明書の証明期間が満了した場合、新しい商業登記電子証明書を取得することになります(そのため、厳密にいえば「更新」ではありません)。
手順は前章「商業登記電子証明書を取得するまでの流れ」と同じです。
商業登記電子証明書のメリット・デメリット
商業登記電子証明書の最大のメリットは、登記、納税、保険などの手続をオンラインでできるため、各機関の窓口まで行かずに済むという点です。また、申請書類などをプリントアウトして郵送する必要もありませんから、これらのコストも削減できます。暑い(寒い)日や天気の悪い日に書類を持って役所に行かなくてもよくなることは、大きなメリットといえるでしょう。
デメリットとしては、発行の度に手数料がかかることやオンライン申請のやり方に慣れる必要があるという点が挙げられます。特に後者は、パソコンなどの電子機器に慣れていない人にとっては大きな負担となります。そのため、まずは手数料負担の小さな短い証明期間の商業登記電子証明書を取得し、使い勝手を確かめてから長い証明期間のものに切り替える方法をおすすめします。
商業登記電子証明書で登記、納税、保険等の手続がオンラインでできる
商業登記電子証明書を取得すれば、様々な手続がオンラインでできるようになります。初期投資として一定の費用や労力は発生してしまいますが、中長期的にみれば企業に大きなメリットをもたらすものです。この記事を参考に、積極的に導入してみてください。
参考:電子証明書取得のご案内
よくある質問
商業登記電子証明書とは何ですか?
登記や納税などの手続をオンラインで行う際に必要になる電子証明書です。法務局から発行されます。詳しくはこちらをご覧ください。
商業登記電子証明書を利用することができるのは、どのような手続ですか?
商業登記、国税・地方税の申告、社会保険・労働保険の手続や印鑑証明書の請求など多岐にわたります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
デューデリジェンスとは?M&Aにおける意味や種類を解説
デューデリジェンスとは、企業の経営状況や財務状況などを調査することで、日本語に訳すと「買収監査」です。調査項目は多岐にわたり、「ビジネス」「財務」「法務」「人事」「IT」などが主要項目として挙げられます。デューデリジェンスの意味や種類、実施…
詳しくみる取締役会とは?株主総会との違いや設置義務、議事録作成などの流れを簡単に解説
取締役会とは、取締役が業務執行を監督し、重要な経営判断を行う機関です。企業の意思決定機関には株主総会もありますが、それぞれの役割や権限は異なります。 本記事では、取締役会の役割や株主総会との違い、設置義務、開催手順、議事録作成の流れについて…
詳しくみる2022年施行のプロバイダ責任制限法改正とは?改正内容と求められる対応を紹介
2022年にプロバイダ責任制限法が改正され、「プロバイダ」に該当する事業者は新しいルールを正確に把握して対応する必要がありました。今回は2022年に行われた改正のポイントや事業者に求められる対応について、改めて詳しく解説していきます。 20…
詳しくみる契約書を製本をする方法は?手順とやり方を図を使って解説
ビジネスにおいて重要な役割を果たす契約書は、契約内容によっては多くのページが必要とされます。1ページでも抜けてしまうと大きな問題になる契約書を安全に扱うには、一冊の本の形にまとめる製本の処理が求められます。 ここでは製本を行う2つの方法を紹…
詳しくみる企業法務とは?仕事内容や関連する資格、法律を解説
企業が安定して事業を継続するためには、法的なリスクを適切に管理し、最小限に抑える努力が求められます。その役割を担うのが「企業法務」です。この記事では企業法務について、具体的な仕事内容や関連する法律・資格などを解説します。 企業法務とは? 企…
詳しくみる商号とは?屋号・商標との違いや決め方・ルールについて解説!
商号は、企業や個人事業主が営業活動を行う際に使用する名称です。商法においては、登記された会社の名称を指します。法人は定款内で規定した商号の登記が必須です。 商号を決める際は、一定のルールがあります。本記事では、商号とは何か、商号と屋号や商標…
詳しくみる


