• 更新日 : 2024年1月25日

2024年版 – 電子契約システムとは?導入メリットや注意点を種類別に解説

2023年版 - 電子契約システムとは?導入メリットや注意点を種類別に解説

デジタル化やペーパーレス化によって、さまざまなものが電子化されるという流れが強くなってきています。契約においても例外ではありません。従来の紙の契約から「電子契約」に移行する企業や個人が増えてきています。電子契約にシフトする第一歩は電子契約システムを選んで導入することです。

とはいえ、「なんとなく不安」「よくわからない」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。そこでこの記事では電子契約システムについてわかりやすくご説明します。

電子契約システムとは

電子契約ではインターネットを介して契約を締結します。電子契約システムを用いた契約の場合、契約書の原案を作成したらサーバーにアップロードするとともに、電子署名の生成を指示します。アップロードが完了すれば、自社側の電子署名が生成・付与されます。取引先も同様に電子契約システムを介して契約書を確認し、電子契約システムを介して電子署名の生成指示を行います。電子署名が付与されたら、契約が成立します。

契約書の原本はサーバーに保管されます。それによって原本性が担保され、検索や閲覧も可能となります。

段階が多く非常にややこしく感じられるかもしれませんが、電子契約に必要な手続きを行ってくれるのが電子契約システムです。これを使えば瞬時に・簡単に電子契約を締結することが可能です。

そもそも電子契約とは?書面契約との違い

電子契約と書面契約の一番の大きな違いは「紙」があるかどうかです。書面契約ではパソコンでデータを作成し、紙に印刷します。それに双方が署名押印をすることで契約が成立したとみなし、原本も紙のまま保管します。

電子契約は電子データのやり取りのみで、紙に印刷する、署名押印するといった工程はありません。契約書はパソコンやスマホなどの画面上で確認し、署名押印の代わりに電子署名を付与することで契約を締結します。契約書の原本についても電子データとして保管します。

電子契約の仕組みについてはこちらの記事でも詳しくご説明しています。

電子契約システムの基本機能

電子契約システムには主に「契約締結に関わる機能」「契約書の管理に関わる機能」「業務を効率化できる機能」の3つが搭載されています。

契約締結に関わる機能は電子署名の付与や電子証明書の発行機能、タイムスタンプ機能などです。電子契約システムには必須の機能で、これらが備わっていることで高い本人性、非改ざん性を担保することが可能となります。

契約書の管理に関わる機能はクラウド上で電子契約の原本を保管できる機能や検索できる機能などが挙げられます。こちらも多くの電子契約システムに搭載されている機能です。

業務を効率化できる機能は契約の期限日などを知らせてくれるアラート機能や進行状況が確認できる機能などが挙げられます。これはベンダーやシステムによって大きく異なります。

電子契約システムの種類

電子契約システムには大きく分けて「当事者署名型」と「立会人署名型(クラウド型)」の2種類があります。当事者署名型は当事者同士が秘密鍵(情報を暗号化するキー)を購入し、それが入っているICカードなどを各々が保管し、契約書もローカルか別途用意したサーバーに保管します。

立会人署名型(クラウド型)は秘密鍵をクラウド事業者が準備・提供するため、当事者同士が秘密鍵を用意・保管する必要はありません。契約書データもクラウド上での保存が可能です。ユーザーとしては後者の方が手間を省くことができます。

電子契約システムの導入メリット

電子契約システムを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

経費・コスト削減

書面の契約では紙代やプリンターの電気代やインク代、郵送費などの経費、契約書の作成や郵送、保管・管理に関わる人件費など、さまざまなコストがかかります。また、契約書を作成する場合は印紙税法に従って印紙税を納め、収入印紙を貼付しなければなりません。金額が大きければ大きいほど、印紙税額も高くなります。

電子契約システムを導入することで契約書の作成・送付・保管・管理に関わる経費や人件費を大きく削減することが可能です。また、電子契約で契約を締結した場合、印紙税もかかりません。

特に契約の件数が多ければ多いほど、あるいは契約金額が高額であればあるほど、電子契約を導入するメリットも大きくなります。

コンプライアンスの強化

書面の契約書は改ざんやなりすましなどの不正行為、紛失や外部流出などのリスクがともないます。

電子契約システムを利用し、適切な認証を行えば、本人以外が契約行為をすることを防ぐことができます。タイムスタンプにより契約を締結した日時が記録され、改ざんや不正アクセスを行った場合は記録に残るので、不正行為のリスクが大幅に低減されます。契約書の原本データはクラウドに保管されるため、紛失のリスクも低く、コンプライアンスの面でもメリットが大いにあります。

業務効率の向上

紙の契約書で契約を締結する場合は契約書を印刷する、封入する、郵送する、相手方に署名押印して返送してもらう、自社で署名押印をする、原本を保管するというように、さまざまな作業が必要です。

電子契約システムであれば紙への印刷や郵送、署名押印などの作業が不要になり、今まで契約書の作成や郵送にかかっていた時間を別の仕事に充てることができるため、業務効率を大幅に向上させることができます。

また、原本はクラウド上に保存され、契約書をファイルに綴じて保管する、内容を確認する際に原本を探し出すといった手間も不要です。

電子契約システムの導入デメリット

以上のように電子契約システムを導入することでさまざまなメリットが得られますが、以下のようなデメリットもあります。

  • 契約書によっては電子契約が認められない場合がある
  • セキュリティ対策が必要
  • 取引先への説明や説得が必要

詳しくご説明します。

契約書によっては電子契約が認められない場合がある

すべての契約が電子契約に移行できるわけではありません。

  • 定期借地契約書
  • 定期借家契約書
  • 宅建業者の媒介契約書
  • 不動産売買における重要事項証明書
  • 任意後見契約書
  • 訪問販売等で交付する書面

これらの契約書は書面による契約が義務付けられています。不動産関係の契約は取引金額が高額であることから、権利関係を明確にしておくために書面での交付が必要とされてきました。「任意後見契約書」は公証人の前で署名する必要があるため、「訪問販売等で交付する書面」は悪質な訪問販売などから消費者を保護する目的で、やはり書面での契約締結が必須とされています。

ただし、これらの書面でも将来的には法改正によって電子契約が認められるようになる可能性もあります。

セキュリティ対策が必要

先ほど「コンプライアンスの強化」をメリットとして挙げましたが、これはセキュリティが万全であることが前提です。適切なセキュリティ対策がなされていないと、かえって改ざんやなりすましなどのリスクが高まります。

電子契約システムを選ぶ際にはセキュリティ面にも着目することが大切です。また、契約を結ぶパソコンやスマホなどの端末においてもウイルス対策ソフトをインストールしておく、他人に類推されにくいパスワードを設定するなどの対策を講じましょう。

取引先への説明や説得が必要

下請業者と製造委託契約や修理委託契約を締結する場合など、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の対象となる取引の場合、原則として書面で契約を締結する必要があり、電子契約で締結する場合は下請事業者の承諾を得る必要があります。

(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。

2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

引用:下請代金支払遅延等防止法|e-Gov法令検索

すべての企業が電子契約を導入しているわけではありません。会社ごとに規則や業務フローも異なります。

下請法の対象とならない取引であったとしても事前に取引先に合意を得て、場合によってはマニュアルの送付や締結の方法を説明するなどフォローを行うことで、スムーズに契約を締結できるようになります。

電子契約システムの選び方・比較ポイント

電子契約にはメリット・デメリットがあるため、それぞれ考慮したうえで導入を検討しましょう。特に肝心なのは電子契約システムの選び方です。備え付けられている機能や使い勝手によって複数のサービスを比較することで、自社に合ったものを選ぶことができます。そのポイントを3つご紹介します。

目的やニーズに応じた機能で選ぶ

まずは「なぜ電子契約を導入するのか」という目的を明確にしましょう。例えば、コストを削減したいのであれば、低価格なサービスや利用料金が定額制になっているサービスが好ましいです。コンプライアンスを重視するのであれば、セキュリティ性能が高いものを、業務効率の改善であれば検索機能や通知機能が充実しているものを選ぶと、目的が達成できる可能性が高まります。

また、自社のニーズについても整理しておきましょう。スマホで契約を締結したいということであればスマホアプリに対応しているもの、パソコン操作が苦手な従業員が多いのであれば簡単に操作ができるものなど、その会社や使う人の状況によって、求められる機能や仕様も変わってきます。

電子契約の種類で選ぶ

前述の通り、電子契約システムには大きく分けて「当事者署名型」と「立会人署名型(クラウド型)」の2種類があります。当事者署名型は契約書の原本をハードディスクやサーバーに保存し、電子契約ソフトのほかに秘密鍵が入ったICカードを保管する必要があります。立会人署名型では契約書の原本がクラウド上に保存され、秘密鍵もクラウド事業者が用意します。

後者のほうが利用者にとっては手間がかかりません。実際に今普及している電子契約システムもクラウド型が主流となっています。

導入までの期間や費用で選ぶ

特に取引先が電子契約を導入しているケースやIPOを控えているケースなど導入を急いでいる場合は、すぐに使えるサービスを選ぶ必要があります。使える予算に応じて導入できるサービスやプランも異なります。

「電子契約をいつまでに導入したいのか」「導入にかかる予算はいくらなのか」といった期間や費用の面も考慮して選びましょう。

既存システムとの連携有無で選ぶ

今クラウドシステムやファイル共有システム、その他のツールを導入されている場合は、それと連携することでより使いやすくなり、業務効率改善につながる可能性もあります。ほかのサービスやシステムとの連携のしやすさも考慮しながら選ぶのがおすすめです。

電子契約システムの導入フロー

せっかく電子契約システムを導入しても、使い勝手が悪い、自社に合っていないとなると、メリットよりもデメリットのほうが際立ってしまいます。電子契約を導入するまでには以下のような流れで検討を進めていきましょう。

  • 課題やニーズなどの導入目的の特定
  • 電子契約システムの比較検討:
  • 予算と導入スケジュールを決める
  • 業務フローの変更と社内アナウンス

それぞれ詳しく見ていきましょう。

課題やニーズなどの導入目的の特定

まずは契約業務に関して自社あるいは従業員が抱えている課題やニーズなどを洗い出すことが大切です。実際に契約をとってくる営業担当や決済をする管理職、契約書を管理する事務職などの担当者など、契約に従事している従業員から広くヒアリングしてみましょう。もちろん人によって考え方は異なるかもしれませんが、さまざまな意見に触れることで、自社の課題やニーズが見えてきます。

電子契約システムの比較検討

次に電子契約システムの比較検討を行い、自社に合ったものを選びます。今ペーパーレス化やデジタル化、あるいは新型コロナウイルスによるリモートワークの普及によって電子契約市場も拡大し続け、国内だけでも数十種類のサービスが存在します。

まずは各社のホームページや資料を確認するなど、情報収集をしてみましょう。そのうえで自社の課題やニーズが解決できる仕様や機能が備わっているか、セキュリティは万全か、使いやすいか、いくらコストがかかるのかなど、さまざまな側面で比較検討します。無料トライアルで一定期間使ってみることで使い勝手がわかるので、積極的に活用してみましょう。

予算と導入スケジュールを決める

次に電子契約システムの導入にかけられる予算とスケジュールを決めましょう。電子契約システムを使うにあたっては主に毎月かかる「基本料金」と契約ごとにかかる「定量課金」がかかります。それ以外にも、オプションを使えばオプション料がかかる可能性があります。
現在の1ヶ月あたりの契約件数によって大まかな費用を試算できます。プランによっても金額が異なりますので、自社に合ったものを選びましょう。

導入までのスケジュールも決めておきましょう。特に、取引先が電子契約を導入しているケースやIPOを目指しているケースだとタイトになりがちです。電子契約システムの選定や設定は思った以上に時間がかかるので、しっかりと計画を立てて進めていく必要があります。

業務フローの変更と社内アナウンス

電子契約を導入することで業務の流れも大きく変わる可能性があり、これまで紙の契約書でとっていた業務フローを適用できない場合があります。決裁規程なども改正しなければいけないかもしれません。

また、いきなり「電子契約を来月から導入します」ということでは社内が混乱することにもなりかねません。説明会を開く、マニュアルを配布するなどして周知しましょう。この工程は手間がかかりますが、電子契約で業務効率改善やコスト削減を実現させるためには避けて通れない道です。

電子契約システムの導入事例

ここまで電子契約システムのメリット・デメリットや導入までの流れについてご説明してきました。やはり気になるのは「電子契約を導入してどのような効果があったのか」「本当に業務効率改善やコスト削減につながるのか」ということではないでしょうか。そこで、最後に実際に電子契約システムを導入されたお客様の事例をご紹介します。

押印申請フローが1週間から最短5分へと短縮

マッサージチェアの製造・販売をされているファミリーイナダ株式会社様では押印に時間がかかっており、契約締結までに1週間かかる、印紙代や郵送代などの金銭的なコストがかかっている、押印申請フローに法務が入っておらず締結のタイミングが共有されていない、台帳が複雑化してきているなど、さまざまな課題をお持ちでした。

そこで、2021年9月にマネーフォワード クラウド契約を導入されました。

最短5分で押印が完了し、契約締結まで大幅に時間を短縮。印紙代が不要となり、年間10万円以上のコストを削減。法務も契約締結に関与できるようになり、台帳も管理しやすくなったとのことです。今ではNDAや基本契約、ライセンス契約や業務委託契約など、さまざまな契約を電子化されています。

事例の詳細については、以下のページで詳しく紹介しています。

1,000件を超える契約書の一元管理を実現

オフィスビルや住宅、マンションなどの設備・建物メンテナンス事業を手掛けられている東京日化サービス株式会社様では、日々数多くの契約業務が発生し、担当者が処理に追われている状況でした。しかも契約書は各担当者個別が管理しており、過去の契約書を探すまでに数時間かかるということも珍しくありませんでした。

そこで、2021年5月にマネーフォワード クラウド契約を導入され、1,000件を超える契約書の一元管理体制を構築。業務効率が大幅にアップし、契約内容の抜け・漏れもチェックできるようになりました。検索機能によって契約書の内容確認作業も瞬時にできるようになったそうです。

事例の詳細については、以下のページで詳しく紹介しています。

電子契約システムでデジタル化・ペーパーレス化を実現しよう

電子契約システムを導入すればコスト削減やコンプライアンスの強化、業務効率の向上など、さまざまなメリットを享受することができます。しかし、自社の実態に合ったシステムを選ばないと、無駄な投資にもなりかねません。まずは自社の課題やニーズを洗い出し、予算やスケジュールもしっかりと決めて、さまざまなサービスを比較・検討してみることが大切です。

今後、デジタル化やペーパーレス化がますます進んでいくのは間違いありません。これを機会に、電子契約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

電子契約システムとはなんですか?

電子契約に必要な手続きを行ってくれるのが電子契約システムです。詳しくはこちらをご覧ください。

電子契約システムの機能にはどういったものがありますか?

電子契約システムには主に「契約締結に関わる機能」「契約書の管理に関わる機能」「業務を効率化できる機能」の3つが搭載されています。詳しくはこちらをご覧ください。


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