- 更新日 : 2024年8月29日
抵当権設定契約書とは?雛形をもとに解説!
抵当権設定契約書は、金融機関でローンを組んで自宅を購入する際に必ず目にする書類ですが、内容を細かくチェックしない方は多いのではないでしょうか。
この記事では抵当権の意義や契約書の雛形・書式、印紙の要否、契約時の注意点などについて詳しく説明します。
目次
抵当権設定契約書とは?
「抵当権」とは、債務者が自己の債務の担保として提供した不動産をそのまま占有して使用収益することが認められますが、債務が弁済されなかった場合は債権者がその担保不動産から優先的に弁済を受けることができる権利のことです(民法369条1項)。
住宅ローンに当てはめると、Aさんが自宅を買うために銀行の融資を受ける際、債権者である銀行が債務者となるAさんが購入した自宅(不動産)に抵当権を設定することになります。自宅の所有権はAさんにありますが、その不動産登記簿には抵当権が設定されていることが明記されます。ローンが完済されれば抵当権は抹消されますが、もし返済できなければ銀行は抵当権を実行し、Aさんの自宅を競売にかけて残金を回収することができるのです。
抵当権設定契約は、当事者同士の合意のみで成立する諾成契約です。すなわち、抵当権の設定登記は法律上の契約成立要件ではありません。登記は、当事者以外の第三者に「この不動産はうちが抵当権を設定していますよ」ということを示すために行うものなのです。
抵当権は、一つの不動産に対して複数設定することも可能です(同373条参照)。先ほどの例では、Aさんが自宅を購入した後、別件で融資が必要になり、別の金融機関に自宅を担保として融資を申し込む形です。金融機関はすでに設定されている抵当権を見て、Aさんの不動産価値から第一順位の債権額を差し引いても自身の債権回収が可能と判断すれば、同じ不動産に第二順位で抵当権を設定します。
抵当権は原則、不動産にのみ設定が可能です。住宅ローンのように債権額はまとまった金額になることが多いですが、生活の基盤である自宅が担保となるため、債権者と債務者はともに抵当権設定契約の内容について正しく把握しておかなければなりません。そのため、法律上書面によることが必須ではないにしても、抵当権設定契約書を作成しないということはまずあり得ませんし、作成および契約締結についても双方が慎重を期すべきものなのです。
参考:民法|e-Gov法令検索
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抵当権設定契約書の雛形
住宅ローンの場合、抵当権設定契約については金融機関が雛形を準備しており、債務者(抵当権設定者)は必要な部分を記載すれば、抵当権設定契約書が完成するようになっています。
とはいえ、金融機関の契約書は長くなることが多いため、どの部分が重要なポイントかわかりにくいかもしれません。
そこで、一般的な抵当権設定契約書の雛形を紹介します。次章で解説する書式と併せて、契約時の項目チェックの参考にしてください。

抵当権設定契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
抵当権設定契約書の書式
実際に住宅ローンを組む場合は、通常弁済期間が長期にわたるため、損害保険契約に関する条項を入れるなど、上記のテンプレートよりもかなり複雑な内容になります。ここでは、抵当権設定のみに関する書式と記入必須項目について説明します。
債務と担保物件の特定
債務者が債権者に対して負担する債務の種類を記載します。住宅ローンであれば、金銭消費貸借契約による債務となります。債務額および利息や遅延損害金の年利率、弁済期などを明記して特定します。
特定された債務に対してどの不動産を担保物件とするかについても、登記簿に記載されているとおりに記入します。
抵当権設定登記の時期
自己の不動産を抵当に入れるという重要な行為ですから、当然不動産の所有者である債務者自身が設定登記手続きを行う必要があります。契約書作成後直ちに、もしくはローンが実行されるまでに登記を済ませるのが基本で、登記費用についても債務者の負担となることが多いです。
行為の制限
債権者としては、弁済が終わるまで勝手に抵当物件を処分されては困るため、債務者に対し一定の行為を制限する必要があります。
具体的には物件の第三者への売却、根抵当権や地上権などの設定、土地であればその上に建物を建てる、建物であれば増改築などの行為が制限されます。「これらの行為には債権者の承諾を必要とする」という内容にするのが一般的です。
期限の利益の喪失
どのような場合に抵当権が実行されるかについて書かれた、重要な条項です。実行の条件は当事者で協議するに越したことはありませんが、住宅ローンの場合は金融機関側が準備した定型どおりになるケースがほとんどです。
「一度でも支払いが遅れたら直ちに実行される」というのはかなりシビアですが、実際は一度の遅滞で即抵当権が実行されることはまずありません。遅滞のおそれがある場合は、すぐに金融機関に相談しましょう。
抵当権実行の方法・弁済の充当
抵当権の実行は競売のみ、と思う方がいるかもしれませんが、必ずしもそうではなく、最も債権回収が見込める形で債権者が処分できるという任意売却という形を取ることもあります。債務者としても、周りに滞納が知られることなく売却でき、弁済充当後に残金があれば返金してもらえる可能性がある任意売却のほうが、競売よりもメリットが大きいかもしれません。
そのため、どのような方法で抵当権を実行するかについて記載した条項を入れることが一般的です。
抵当権設定契約書の書式と注意点
通常の諾成契約と同じく、抵当権設定契約も契約履行に関して必要な内容を記載し、双方が合意した証明として署名捺印し、各々が1通ずつ保管します。
作成時に注意すべき点としては、債務者側は特に行為の制限や期限の利益喪失にかかる条項をしっかりチェックしておくこと、別途締結する損害保険契約が本契約書にどう盛り込まれているか確認しておくことなどが挙げられます。
一方で債権者側は、抵当とする物件に他の権利が設定されていないか事前に確認しておきましょう。
抵当権設定契約書に印紙は必要?
抵当権設定契約書は「印紙税法別表第1(課税物件表)」に掲げられている20種類の課税文書にはあたらないので、収入印紙を貼る必要はありません。
ただし、抵当権登記の設定には登録免許税がかかります。税法における登録免許税額は債権額の1000分の4ですが、居住用住宅であれば一定の要件を充たすことにより、1000分の1に減税されます。
※ この軽減措置は適用期限が令和4年3月31日までの特例です
抵当権設定契約の前提となる住宅ローン契約書は、金銭消費貸借契約書として課税文書にあたるため、印紙税がかかります。
参考:
No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
抵当権設定契約書を締結する際には、内容をよく確認しておこう
抵当権設定契約書は、債務者が自己の不動産を担保にし、もし債務を弁済できなかった場合は債権者がその不動産を処分して、債権回収に充てることを承諾した証明として作成される書類です。抵当権を設定しても不動産は債務者がそのまま使用できるため、一般的に弁済が長期間にわたり、かつ弁済総額が大きい自宅購入の際に締結されます。しかし、自宅は生活の基盤となる財産ですから、抵当権の意義や契約内容についてよく理解し、納得した上で契約締結に臨むようにしましょう。
よくある質問
抵当権設定契約書とは何ですか?
債務者が自己の債務の担保として提供した不動産を、もし債務が弁済されなかった場合は債権者が処分し、弁済に充てることを可能とする「抵当権」を設定する契約書類です。詳しくはこちらをご覧ください。
抵当権設定契約書に印紙は必要ですか?
抵当権設定契約書は課税文書にはあたらないので、印紙は不要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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